入院中の日野明美。
ある日、見舞いに行った時に、彼女の兄に言われた約束。
明美を自分の元から去るように仕向けること。
要は、嫁がせりゃいい訳だ。でも、それだと俺たちじゃどうしようもねぇわけで、かと言って、放っておくわけにもいかねぇ。だから、癪だが俺はある人物に助けを求めた。
「てな訳なんだ、どうすりゃいいと思う、夜弥姉?」
俺は大まかに明美の境遇を説明した。珍しく、聞き耳立てて真剣に話を聞いたくれた。まぁ、知らねぇ仲じゃねぇしな。
「う~ん・・・・」
「完全に解決出来るとは思ってねぇけどさ、助けてやりてぇんだよ」
「そうだねぇ・・・」
夜弥姉が真剣に悩んでやがる、こんな姿を俺は初めて見る。何だかんだ言って頼りになるん――――――
「あんたは次に、こう言うゥ
『真面目に答える気あんのかよ!』
とな!!」
「真面目に答える気あんのかよ・・・ハッ!!じゃねぇよ!ふざけてる場合じゃねぇんだよ!!」
一瞬でも、頼りになる姉だ、と思った俺を殴ってやりたい・・・。
「とにかく、俺は助けてやりてぇんだ!どうしたらいいと思う?」
「さぁ?」
「さぁ、じゃねぇだろ!!真剣に考えてくれよ!」
友だ――――――クラスメイトの一大事だってのにこの姉ときたら、せんべい食いながら携帯弄りやがって・・・。
「別にいいんじゃない?」
「は?別にって・・・」
「あんたら付き合ってんの?」
「いや、・・・そういうわけじゃ・・・」
「だったら放っとけば?」
「いや、それができねぇから頼んで―――」
「小さな親切、大きなお世話っていうだろ?明美ちゃんの兄は、妹をこれ以上自堕落な自分の元に置いておきたくない。ってな考えなわけでしょ?」
「ああ」
「でも、明美ちゃんは兄と一緒に過ごしたい。真実がどうであれ、助けを求めてない限りそうなるわな?」
「・・・ま、まぁ」
「だったらもう答え出てんじゃん?」
「え?」
「明美ちゃんを――――――」
「お、おぅ・・・」
「私専用の娼婦にする」
「最低な結論だな・・・」
我が姉ながら、最低だ。
「まぁ、今のは冗談として」
だろうな、じゃなぇと警察に通報するとこだ。
「井久が付き合えばいいんじゃない?」
「なんでそうなんだよ?」
「だって付き合うでしょ?デートを重ねるでしょ?唇を重ねるでしょ?そして、身体を重ねる。完璧!」
「誰も行程を聞いてねぇよ!理由を聞いてんだ!
あと、上手いこと言わなくていいんだよ!」
「理由なんて決まってんじゃん。あんたらが初夜を迎える時に明美ちゃんを寝取る!完璧でしょ?」
「待て、誰にもメリットがねぇじゃねぇか!!」
「そんなもん、わた――――――」
「黙れゲス野郎!」
・・・待てよ?寝取る?いや、この場合は奪うか・・・案外、いいかもしんねぇな。
「何か思いついたのかい?」
「まぁな、あんがとさん」
「さすが井久、俺たちに出来ないことを平然とやってのける。そこにシビれる憧れるゥ!」
「・・・てか、いつまで休んでんだ、働けよ」
「もうすぐ、戻るつもり」
「そうかよ・・・」
ひとつ屋根の下。
仲の悪い姉弟の会話は、何気ないものとは程遠く、かけがえのない友人のことの相談だった。
だが、夜弥にはそれ以上に大事な、大切な事があったのだ。
「井久、ゴメンね」
「は??何かしたのか?」
「いや、何て言うかさ・・・一応言いたくってね?」
「夜弥姉・・・」
「死亡フラグみたいなセリフをさ・・・」
「さっさと行っちまえ!!」