「こういう時に毎度思うことがあんだけどよ?」
「へぇ~、イックンも考えることがあるんだ?」
「よーしっ、そのまま動くなよ?そのケツを空の彼方まで蹴り飛ばしてやっからな?」
その減らず口とともにな。
「何でお前は、そんな早ェんだよ・・・今、集合時間の五分前だぞ?」
「早めに来るのは常識だろう?」
ったく、このリア王は・・・。
爽やかな顔して俺らを出迎えてんじゃねぇぞ。
「井久だって、必ず五分前には来るじゃないか?」
「テメェはその前から来てんだろうが!」
まさかこいつ・・・神経質なのか?
そういうとこは見たことねぇが・・・・。
「井久さんっ、おはようございます」
「あ?お、おう・・・」
な、何だ?こいつのこの輝き様は!?誰がどう見たって気合入ってんのが一目瞭然だぜ?
「・・・・」
「や、やけにフリフリしてんな・・・今日は」
「もちろんですっ、何しろワタクシの退院してから初のお出かけですから!」
な、なるほどな・・・気合いの入り方が違うわけか・・・。
にしても、晴臣の奴もちゃんと服装は選んで来たみたいだな。
どっからどう見ても、カップルがどっちかなんて、分かり易すぎて反吐が出ちまう。
「とりあえず、入ろうか?」
日曜日。
仕事で忙しいお父さんも、家事で忙しいお母さんも、学業で嫌気の差したガキンチョ共も、皆が休める日。
そんな日に俺たちは遊園地へと来ていた。というよりも、そう計画してたんだけどな?
まぁ、今回は明美を晴臣に惚れさせよう作戦だ。・・・特に何も考えちゃいねぇがな。
そんなことする理由は分かるよな?
だけど、一つだけミステイクな問題が起きちまった。
「ねぇ、エレーナちゃん?あっちにチュロスがあるよ、食べる?」
「・・・・・は、・・・い」
文字通り、エレーナ・フランチェスカがこの中に居ることだ。
下手すりゃ・・・。
「ご愁傷様です。どうか、安らかに眠って下さい・・・晴臣様・・・」
「??何か言いましたか?」
「いや、何でもねぇ」
お前は目の前の爽やか君の相手をしてりゃいいんだ。
にしても、どうすっかな・・・。
「悪りぃ、俺ちっとトイレ行ってくっから、二人で何か乗っててくれ」
「あっ、おい!井久!」
すまねぇな。
だけどよ、こうでもしねぇと二人の距離が縮まんねぇだろ?
・・・・・・・。
さて、どうしたもんか。
晴臣と明美が二人で居るところをエレーナに見られちまったら、血祭りどころの騒ぎじゃ済まねえからな。そのために美玖を呼んでんだからな。エレーナの足止め要員だ。
もし、このまま俺が何もせずじっと経過を見守るだけで事が進んでくれりゃ文句はねぇんだけどなぁ。
prrrrrr・・・・・
まぁ、そうは問屋が降ろさねぇか。
》リア王(晴臣)
・至急、増援を求む!
まだ、俺が離れて五分も経ってねえのに・・・・。
「仕方ねえ、戻るか・・・」
ずっと二人きりにさせて、その光景をエレーナに見つかったら大惨事だからな。
「あれぇ?美玖ちゃん!?」
「こんなとこに一人でどうしたの?」
ありゃ、同じクラスの奴らか。
「もしかしてはぐれた?それとも一人で来たの?」
「ううん、イックン達と来て今別行動中」
そりゃ来るよな、割りかし近かったしな。バスで数十分だもんな。
「なんだ・・・荒峰も一緒かよ」
俺がいちゃ悪りぃのか?
「なぁ、美玖ちゃんが暇なら俺たちと一緒しねえ?」
「え?・・・でも」
「・・・・ったく、何ナンパされてんだ?」
「イックン!?」
「うぉっ!荒峰いつの間に」
半径一メートル以内に入らなきゃ気付かねえ程影が薄くて悪かったな。
「なにやってんだ・・・エレーナは?」
「目を離した隙に消えちゃって・・・」
ったくなにやってんだこいつは。
「なぁ?ずっと思ってたんだけどさ?」
ん?何だ?晴臣二号《リア充野郎》
「お前らって付き合ってんの?」
・・・・・・・・は?
こいつ、頭どうかしてんじゃねぇのか。そんなに髪に整髪料ギンギンに付けたせいで脳みそまで浸透してんじゃねえのか?
「んなわけ・・・・」
「そうなの!私達、実は付き合ってるの!」
「は!?」
「やっぱりな、やけに仲良いと思ってたんだよ」
何言ってんだお前ら、どこをどう見たら、俺と美玖が恋人同士に見えんだよ。
目が腐ってんじゃねえのか。
「今日もイックンとデートなんだけど、エレーナちゃんが遊園地に行って見たいって言いたしちゃってぇ~」
・・・・ったく、美玖のやつも楽しそうにしてんじゃねぇよ。いくら誤魔化すっつっても、俺と付き合ってるってことにする必要ねぇだろ。
・・・いや、誤魔化す必要がねぇだろ。
「あーあ、俺美玖ちゃん狙ってたのになぁ・・・残ね――――」
「は、何言ってんだ・・・?」
「・・・・?」
「俺と美玖が・・・付き合ってる・・・?馬鹿言ってんじゃねぇよ」
こういう誤解は解いておかねぇと、後々面倒くさいことになっちまうからな。
「付き合ってるってのは、お互いが好き通しってことだろ?」
「ちょっ、イックン・・・?」
黙ってろよ。今ちゃんと説明してやってんだから。
「俺が、何時、誰を好きだ、なんて言ったんだ?」
「お、おい・・・荒峰・・・?」
「俺は美玖が好きじゃねえ、ただの幼馴染だ。
それ以上でも、それ以下でもねぇ。
だから、テメェらで勝手に取り合いでもしてろよ?」
「「「・・・・っ」」」
「別に俺のものってわけじゃねぇんだ。好き勝手に遊べよ?
俺を巻き込まねぇなら何したって――――――っぐ!!」
「「――――っ!?」」
んだぁ?
何だ?なんで俺、横なんて向いてんだ?
つか、頬が痛ぇ・・・。
あぁ・・・殴られたっことか。
「み、・・・美玖ちゃん?!」
「・・・・・・・・最低」
最低・・・かよ。
「ごめん、・・・やっぱ今のウソ、イックンとデートなんて言い訳なんだ?」
「・・・・・」
「ねぇ、こんどみんなで遊ぼうよ?」
・・・・・。
「アドレス教えて?時間ができた時にでも連絡するからさ?」
・・・・・・・・。
「ありがとっ、それじゃね?」
・・・・・・・。
「おい・・・荒峰、幾ら何でも今のは――――」
「行った・・・・か・・・」
・・・・・・・・。
「おい、聞いてんのか?美玖ちゃんが殴らなかったら俺が殴ってたぞ!?」
「・・・・うるせぇ」
「はぁ!?お前、ちょっとこっち向け!!おいっ!!!」
のどかな休日。
波乱とともに始まって、井久の進む道は何処へやら。
晴臣達の元へ行くのだろうけれど・・・・。
「おっ、井久!ちょうどよかった、これに乗らないかっ!?」
「二人で乗るのより、大勢で乗った方が楽しいはずですからっ!」
・・・・・・・・。
「・・・・・」
「井久・・・どうし――――」
「・・・あぁ、乗るよ」
・・・・・・・・・・・痛え。
「悪りぃ、俺ちっとトイレ行ってくっから、二人で何か乗っててくれ」
「あっ、おい!井久!」
・・・・・・・・・・。
「行ってしまった・・・」
「そう・・・ですね・・・」
「・・・・」
「・・・・・」
「あ、・・・・え・・・と」
「そ、そうだっ!ひ、日野ささんん!!」
「え、は、はい・・・?」
「と、取り敢えず・・・な何か乗りませんか?」
「え・・・えと・・・何に・・・・?」
「・・・・・」
「・・・・」
「あ~!ダメだ!すまない、日野さん。気づいているとは思うんだが、オレは日野さんが苦手なんだ」
「え・・・は、はぁ・・・」
「理由は分からないのだが、・・・とにかく苦手なんだ。理不尽だと思うかもしれんが、オレ自身でさえ分からないんだ」
「・・・・」
「だから、今井久に戻ってくるように頼むから、その間だけ辛抱して欲しい」
「は、はい・・・わかりました」
ピッピッピッ・・・・(携帯操作音)
「これでよし・・・・」
「・・・・・」
「「・・・・・・・」」
「の、喉乾いていないか?」
「あ、いえ、お気になさらず・・・」
「・・・そ、そうか」
晴臣(しばらく待てとは言ったものの・・・)
明美(しばらく待つのは良いのですが・・・・)
「「(・・・・気まずい)」」
その後、井久が到着するまでの間、二人は無言のままだった。