後日談。【清水晴臣・著者】
あの後の荒峰井久は、静かだった。
いつも賑やかなわけではないのだが、どこか、抜け殻のような、心ここに在らずな状態だった。
友人としては、なんとかしてやりたい気持ちがあった。だが、何と言って声をかければいいのか分からなかった。
教室へ入るなり、机に突っ伏し、そんなはずもない睡眠をする日々。
一方、更科美玖は、教室へ入るなり、授業開始一分前になるまで席を外していた。そして、戻って来る時にはクラスの男子と楽しげに談笑しながら戻ってくる。
その光景を、きっと一人の生徒だけが見ているのだろう。
まるで子供のような当て付け。
オレには、どちらもそう思えて仕方が無い。早く仲直りしてしまえばいいものを、妙な意地と、見栄が邪魔しているのだろう。
だからこそオレは、痺れを切らすように問題の彼の元へと向かった。
「――――おはよう井久、寝不足か?」
「・・・・・・・・・」
「新しいゲームでも見つけたのか?」
「・・・・・・・・・」
「だったら、なぜ要領良くやらないんだ?」
「・・・・・・・・・・」
「オレはいつも聞いていただろう?それでいいのか、と」
「・・・・・いいんだよ」
「だが、現に今、井久は辛いだろ?突っ伏しているくらいだからな」
「・・・・リア充は黙ってろよ・・・・」
「そういうやり方で自分は満足するかもしれないが、そのせいで傷付く者が居ることくらい分かっていただろう?」
「・・・・・・・・・」
「程々にするということを――――」
「・・・・ったく、わかったっての・・・」
「井久・・・?」
「言いてぇことは理解したっつってんだろ・・・・・ったく、面倒くせえなぁ・・・テメェはよぉ」
「ふむ、そうかもな・・・」
「訳分かんねぇこと言ったり・・・・よ」
彼は決して人が嫌いなわけではない。
人を好きになることに怖さを知ってしまっただけなのだ。失うことの怖さを。
ならば、失うより先に与えられなければいい。そんな考えに至ってしまっただけなのだ。
親友であるオレには、井久の気持ちを分かっているつもりだ。汲んでやれるつもりだ。
オレは何時だって井久の味方だ。
だからこそ、厳しくも、優しくも、突き放すことだって厭うつもりはない。
井久が幸せになるというのならば・・・・。
「うむ、そう・・・それが俺の立ち位置というものだ・・・・・!」
「井久さんと一緒に居過ぎたせいで、独り言が移ったんですかね・・・?」
「・・・・・さ、・・・・さぁ・・・・?」