「いいえ見当たりません」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・ん?あれは?」
「おや?あの体つきは・・・・・井久か?」
「・・・・・・・・体つきって」
「何か言ったか?」
「・・・いいえ」
「ふむ、何やら話し込んでいるようだぞ」
「あれは・・・美玖さん?」
「・・・いたた・・・」
「・・・ったく、だから言ったじゃねぇか。コケるってよ」
「・・・だって・・」
わざわざ近道してぇからって、足場の悪い脇道通るかよ・・・・。下駄履いてんのに・・・。
「せっかくのかわいい浴衣が汚れたりしたら台無しだろうが。・・・・弁償もんだぞ。」
「・・・・え・・・・・?」
「しばらくそこで休んどけ」
「・・・今、何て・・・?」
「あ?聞こえなかったのか?休んどけって――――」
「その前」
「はぁ?かわいい浴衣が汚れたら台無しだなって?」
「か、かわ・・・いい?」
・・・・何顔赤くしてんだよ。褒められんのが嬉しいのか?大体、褒めるのは当たり前だろうが、そんな常識も知らねぇのかよ。
「ああ、かわいい」
「ほ、本当に?」
「何度も言わせんな」
「・・・・・・・よかった・・・・」
「つか、ノロケんな。俺は彼女じゃあるまいし」
「・・・・・・・・・・」
「かわいいもんにかわいいと言うのは常識だろうが」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・なに黙ってんだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よしっ、いこう」
「は?どした?」
「・・・・・彼女だったら」
「のろけていいんだよね?」
「・・・・・・・・・・・・」
「もし、私がイックンの彼女だったら――――!」
「――――は、はぁ!?なんつった!!?わりぃよく聞こえねぇわー!!」
「だ、だから!!私がもしイックンのかの――――」
「ああぁ~喉渇いたわ~~!ちと何か買ってくるわ!」
・・・・あぶねぇ。もうちょっとで流れに入るとこだったわ。なんとか誤魔化せたか?強引すぎたか?・・・・まぁいい、とりあえずここから立ち去らねぇと。
「――――――待って」
・・・・・・・・・・・・・なんだよ・・。その男を射止めるみてぇな裾の持ち方は・・・・・?そんな事で止められるとでも思ってんのかよ。
「・・・・・行かないで」
・・・・・・・・・・・・なんだよその甘えた声は・・・・?俺がそんなことでテメェの話を聞くとでも思ってんのか?
「・・・・・・・私、ね」
・・・・・・・・・いつでも振り払えんだぞ?その摘んだ手を。
「・・・・・・・・・・・・ずっと、ね」
・・・・・今すぐにでも走りゃ、そのくだらねぇ話を切り上げられんだぞ?
「・・・・・・・・イックンのこと」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、やめた。んなもん、必要ねぇや。きっぱりと言っちまえばいいだしな。
「―――好きだったの」
やっぱりな・・・・まぁ流れとしちゃぁ妥当だよな。
「俺も―――」
「―――ッ」
「お前の好意は知ってた」
「じゃあ―――」
「悪ぃが、俺はお前が好きじゃねぇ」
「・・・・・・・・・・え?」
「てめぇが幾ら俺を好きだったとしても」
「俺がお前を好きじゃねぇんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「・・・・・」
「・・・・・・・・・・で、でもっ」
「でも好意があるように見えたってか?・・・ありゃ演技だ」
さて、ここからはちょっとシリアスに行くか。・・・・苦手だけどな。
「・・・・・・・・・・・・っ・・・」
「・・・・・・・・・・・でもっ・・でもっ・・・!!」
「覚えてねぇか?小学校のとき」
「・・・・・・・・・・・・・・・?」
「俺がお前に告ったこと」
「・・・・・・・・・・・・っ!?」
「覚えてるわきゃねぇよな?何年前だっけか?」
「お前は俺をフッたんだぜ?」
「・・・・・・・・・・そ、そんなぁ・・・・・・・」
「言葉も出ねぇか?」
「そうだろうな・・・・・俺だってそうだった」
――――――付き合ってくださいっっ!!
――――――え?・・・・えっと・・・・
――――――・・・・・・ごめんね。それじゃっ
「俺にとっちゃ、人生の分岐点だったのかもな・・・。そっからゲームにハマっていったな・・・」
「・・・・・・・・・・は・・・・・はぁ・・・・・・・ご、ごめ・・・・・」
何泣いてんだ。あの頃の俺は泣くことすらなかったってのに。
「さて、お前はオレンジでいいな?買ってくっから、・・・・・そこでおとなしく待ってろ」
「・・・・ご、ごめ・・・・・っ・・・・ごめんなさっ・・・・・っ・・・」
「・・・・・・・・あれ・・・・は・・・・っ・・・ちが――――」
「うるせぇっ!!!!!謝ってんじゃねぇよっ!!テメェにどんな事情があろうと、俺はっ!!!」
おっと、頭に血が上っちまったな・・・・。いや当然の報いか・・・。あっさりフッたやつとは思えねぇな。涙でグシャグシャじゃねぇか。
・・・・・しっかり看てやれよ、日野。どうせ隠れてんだろ?
「・・・・・お前を好きじゃねぇ」
町内の祭りは佳境に差し掛かる中、一人の恋は散ってゆく。女は顔を濡らし、心を痛める。男は平然と、過去を憂いていた
はぁ、ったく。俺はシスコンだってのに・・・・。
「井久!!」
「お、リア王じゃねぇか」
「・・・・・・・・・っ・・・・」
「なんだよ・・・・その目は」
「・・・・・・なんでもない」
「言っとくが、俺は何も後悔はしてねぇぞ」
「・・・・・」
「どうせ見てたんだろ?リア王のくせして趣味悪ぃな」
「今、ものすごくお前を殴りたい気分だが・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・何やってんだ?」
「・・・・・?」
「テメェは何やってんだ?」
「何・・・とは?」
「何で今、美玖の傍にいてやらねぇんだ?」
「・・・・・何・・・?」
「はぁ・・・・ほんとにテメェリア王かよ・・・・」
「美玖ちゃんの傍には明美さんが――――」
「いいから行けっ」
「な、何故蹴るんだ・・・?」
「いいから行けってんだっ!」
「・・・・わ、わかった」
「・・・・ったく、わかりゃいいだよ」
「これで、いいだよ」