亜人ちゃんとカタルシス   作:社畜系ホタテ

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アニョハセヨ亜人ちゃん

 

 サキュバス、バンパイア、デュランはんなどなど……。この世の中には「亜人」と呼ばれる特別な性質を持つ人間がいるらしい。俺の幼馴染もこの「亜人」に該当する。

 

 ちなみにバンパイア(ズバット)の性質なのだが、最近こいつが「亜人」っていう事自体忘れがちである。基本どうでもいいし。

 

「一番必殺技っぽい言葉を言った人が勝ち選手権!」

 

 二人して俺の部屋でスマフォをイジイジ、床にゴロゴロフィーバー確変状態だったのだが、ひかりは何を思ったのか、おもむろに立ち上がり、持っているスマフォを天へと掲げながら叫びだした。

 テンション高すぎなのとドヤ顔が相まって超うぜー。

 

 今のひかりは、艦これでいうキラキラ状態に当たるみたいで、何分テンションがおかしいが、さっき久方ぶりに作ったひかり専用レバニラ炒めを食したせいだと思う。ちょっと複雑な気分。

 何かを期待した表情でこっちを向いているひかりを見て、ため息一つ。……ルールがよくわからんが、仕方ない付き合ってやるか。

 

「今のはメラゾーマではない……メラだ」

「違うそうじゃない」

「今のは美輪明宏じゃない……米良だ」

「はりつめた弓の~♪」

 

 そのままもののけ姫寸劇が唐突に始まった。ひかりがモロの「黙れ小僧ッ!(迫真)」を叫んだところでようやく彼女は当初の目的を思い出し、話題を戻すのだった。

 

「有り触れた言葉を言って一番必殺技っぽかった人の勝ちっていうのをネットで見つけまして」

「それでやりたくなったと?」

 

 ひかりは、ネット検索に引っかかったまとめサイトを俺に見せながら、こくんっと頷いた。

 なんでもいろんな単語が必殺技っぽく書かれているが、なんだかどれもしっくりこなかったみたい。

 最終的に、読んでいるからしっくりこないわけで実際言葉に出してみればそんなことないかも、という結論に至り、この選手権という名のお遊びを開催したとのこと。

 

「ほらほら、早くそれっぽいこと言ってよ。カズが先攻だよ」

 

 なぜか勝手に先攻にされてしまった。提案したほうが最初にやれよと思うことこの上ないが、俺はできる男。

 幼馴染の無茶ぶりにも華麗に対応してやるぜ。

 

 てなわけで、まずは一つ。

 

「ふぁっきん」

「なんでッ!?」

「え?」

「いやいや、こっちが、え? だよ! それに全然必殺技っぽくないし……」

 

 なんで心底驚いた顔すんのかな、とぷりぷり怒り出したので、異議を申す。

 

「おいおい、それはふぁっきんって単語を侮辱しているぞ」

「侮辱も何も、はっきり言ってこの場面でその単語使っている時点で私に対する侮辱だよッ!」

 

 たしかに。

 

 突っ込みに体力を削ったのか、ぜーはー言いながら肩で息をしているひかりにため息を吐いた後、あのな、と続ける。

 

「あのな、ひかり。要は有り触れた単語を必殺技っぽく言えばいいんだろ?」

「え? ……う、うん。そういうゲームだし」

 

 なるほど、なるほど。つまりこういうことだろ。俺は全神経を集中する。

 そして、深く深く息を吸った。

 

 深呼吸。コォォォォオオオオオ………ッッ!

 

「FUCKINッ!!」

「何そのネイティブな発音ッ!?」

 

 親父にハワイで教わったんだ。

 俺ハワイ行ったことないけど。

 

「しかもその、いかにも必殺技っぽい発音だろ、っていうドヤ顔もうざいし。カズのは必殺技っぽいんじゃなくて、ただただ無駄に発音が良いだけだからね!」

 

 なんね、この娘。さっきから超叫んでんじゃん。

 テンションが天元突破している件。

 

「じゃあ、お前やれよ」

「ふふん。まー任せてよ」

 

 腕を組んで得意満面な表情を俺に向けてくるのはいいんだが、その得意げな顔は大変非常にむかつくからやめていただきたい。

 ひかりは、その自信満々の表情を崩さずに、むしろそれに気合やら気力やら、何かしら熱血的な成分を過剰させたような表情へとパワーアップさせて口を開いた。むかつき度が上昇した。

 

「ヴァンパイアッ!」

「ふぁっきん」

「だからなんでッ!?」

 

 いやなんか反射的に。多分お前の表情とヴァンパイアの言い方がそうさせたのだろう。

 つーか、ヴァンパイアを高田延彦の「出てこいや!」風に言うな。声も寄せるな。若干似てたから腹立つわ。

 

「……何その顔むかつく」

「おまいう」

「おまいう」

「おまおまいういう」

「おまいういう」

 

 なんかもうわけわかんなくなってきたな。

 

「で、必殺技だっけ? バンパイアなんだし、紅符『不夜城レッド』とかでいいんじゃね?」

「違うよ! 一番必殺技っぽい普通の言葉を言ったら勝ちゲームなんだって!」

「え、なんだって?」

「今更聞こえてないふりしないでよ!」

「え、なんだって?」

「無限ループって怖いよね!?」

「ルービックキューブがなんだって?」

「そんなこと一言も言ってない!」

 

 ギャーギャーと抗議を申し立てるひかりをしり目に俺は欠伸をひとつ。それはもう深い深い欠伸だった。ねむ。

 

「さてはめんどくさくなったなー?」

「うん」

 

 ひかりはジト目をこっちに向けた。やっぱり幼馴染はすごい。ひかりは、俺の仕草をみてすぐさま俺の心情を察してくれる。これぞツーカーの仲ってやつだね。

 

 ひかり自身も、もうどうでもよくなったのか「そっか」と呟くだけ呟き、そしてTwitterにも、幼馴染が冷たいなう、とつぶやき、そのままモンストへと移行していった。俺もパワプロやろ。

 

 そんなこんなで今日も二人してダラダラと過ごすのであった。

 

 

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