サキュバス、バンパイア、デュランはんなどなど……。この世の中には「亜人」と呼ばれる特別な性質を持つ人間がいるらしい。
俺の幼馴染もこの「亜人」に該当している。バンパイア(ズバット)の「亜人」である幼馴染は、やはりバンパイア(ズバット)の性質を持っていて、素が洞窟によく生息しているズバットということもあって、太陽の日差しに弱かったりする。
これは昔からで、日の光に当たりすぎたり気温が高すぎると貧血を起こしやすいのだ。
「だからって梅雨が好きってわけじゃないんだけどね」
今日も今日とて小鳥遊家。ひかりの部屋でグータラしていた。時期が梅雨ということもあり、本日は雨。ちなみに昨日も雨で明日も雨。天気予報ではここ一週間は傘マークで埋まっていた。気が滅入る。
「じめじめ」
「梅雨だからね」
「じめじめシメジ」
「シメジよりも松茸食べたい」
「そういうと思ってほら」
「いやいや。それシメジ。今日の晩御飯のやつでしょ。さっき台所に置いてあったよ」
ばれたか。
俺は素直にシメジをひかりの部屋に設置されている冷蔵庫にしまった。さっきおじさんに聞いたら小鳥遊家の今日の晩飯はシメジ入りのレバニラ炒めとか。いいなー。
「だったら、今日は食べてけばいいじゃん」
「いやいや。さすがにおじさんに悪いっしょ」
いつもご飯貰っといて今更だけど、俺だって罪悪感というものがありまして。それに親しき仲にも礼儀ありとかいうし。
「本当に今更だね。でも、大丈夫だよ」
「あん? なんで?」
「だってお父さん。いつも家族+カズの分でご飯作っているみたいだし」
初耳学なんですけど。だから、小鳥遊家に行くたびに、今日もご飯食べていくよね、って確定系の聞き方してくるのか、なるほど。
じゃあ、今日も食べていこうかな。
「そうしなって。お父さんとお母さんもカズがご飯食べていくと嬉しそうだし」
「ありがたき行幸」
「じゃあ、シメジ戻してくるついでにお父さんに伝えに行ってくるね」
ということで、母親に今日も晩御飯がいらないことをラインで報告。
ポロンッ。おっと返信きた。
なになに……、ふぁっきん? なんでさ。
その後、母親からのラインでもっと早く言えとお小言をもらい、そして、今度なんかしらお菓子持ってけとも言われたので、御意と返信する。
そんなこんなしていたらひかりが部屋に戻ってきた。その手には有名洋菓子店の紙袋をぶら下げていた。なんぞ、それ。
「さっきカズのお母さんが家に来てこれ食べてって」
お母様、さすがです。
「愚息には食べさせないでって」
……お母様、さすがです。
しかし、おじさんが、僕らの分を抜いといたから残りは二人で食べなさい、と言ってくれたみたいなので、ひかりは持ってきたらしい。おじさん、さすがです。
というわけで二人してショートケーキをパクつく。
「うまうま」
「んーッ! おいしーッ!」
「たのしー!」
「うれしー!」
ショートケーキのあまりのおいしさに俺たちの語彙力は、だんだんと失われていった。僕たちは有名洋菓子店のショートケーキを食べると語彙力が無くなってしまうフレンズなんだね!
ショートケーキを食べ終わり、ひかりは、ふと思い出したのか、口を開く。
「そういえば貧血の話をしてたと思ったんだけど」
「してましたが、なにか?」
「なんでそんな威圧的なの……? まぁいいけど」
ため息を吐いたひかりは、話を続ける。俺はクリームがついたフォークを口に咥えながら話を聞いた。
「昔特に貧血が酷かった時期合ったじゃん」
「あったあった」
夏の日とか日差しがギンギラギンにさり気なくなる時期になると、ひかりの貧血具合が悪くなる。特に小学校高学年から中学にかけて貧血が酷かった。
「その時にカズが作ってくれたレバニラ炒めが最近になって恋しくなってきまして」
「……」
当時小学生の俺は、レバーが貧血にいいと保健室の先生から聞いたため、偉大なるお母様に教えを請い激しい修行に修行を重ねた結果レバニラ炒めを作れるようになった。今では得意料理の一種ではある。あるのだが……。
「急にカズ作ってくれなくなったじゃん。私専用のレバニラ炒め」
「……うへー」
—————ひかりのためにレバニラ炒め作れるようになってきたぞ。いわばひかり専用レバニラ炒めだ。シャア専用みたいでかっこいいなッ!
一番最初にひかりに食べてもらうために言った言葉。ホント余計な事言ったな、ショタッ子の俺。
こいつの好物ということもあって毎日のように振舞った結果、その効果もあってかひかりの貧血がよくなった。今でもたまに貧血を起こすが、昔よりは頻繁ではなくなったし、日差しに当たりすぎなければ大丈夫なまでになったのだ。
「だからさ。今度振舞ってよ。さっき家でご飯食べるのに罪悪感あるって言ったんだから、たまにはカズが作ってもいいと思うけど」
「……あれはひかり専用だから、NGです」
「ひかり専用から家族専用にグレードアップってことでここは一つ」
あまりよろしくない。だって、これ作った後の小鳥遊家の人たちの暖かい目とひまりのニヤニヤに堪えれなくなったのが、作るのを止めたきっかけなのだから。
そんな俺とは裏腹にひかりは、よっと立ち上がり、部屋から出ていこうとした。おいおい、急にどうしたってんだ、このズバットは。
そんなことを思っていると、ドアを開けたところでひかりは振り返り、
「私専用っていうなら今度私だけに作って。今日のカズの晩御飯は私が作る、いわばカズ専用レバニラ炒めだから、そのお返しってことで」
楽しみにしてねー、とウインク一つした後、ひかりは部屋を出ていくのであった。
俺は数秒固まってしまったが、我に返ってため息をついた。言いたいことだけ言いやがって。こっちの返答も聞いてけよ、ばーか。それに顔を赤くするのならカズ専用とか恥ずかしいこと言うなっつーの。
あー……、湿気ているせいか、この部屋蒸し熱いわー、やだやだ。
俺は雨が入らない程度に窓を開け、晩御飯が出来上がるまで体の熱を冷ますのであった。
ちなみにカズ専用レバニラ炒めは変てこな味はしたがおいしかったっと言っておこう。