もう一度、飛び上がった空で   作:zwart

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お待たせいたしました。運転免許も取れたのでひとまず更新再開ということでよろしくお願い申し上げます。


デルタ映画化キタコレ。

あとジクフリのマスターファイル買いました。個人的に素晴らしくて鼻血ものです。ECMユニットをGEの神機みたいにしたら素敵だと思うんだ。あと一番イケメンなVF-31はフェイタルスパイカーズ仕様な。異論は認める。


第九話

ごつん。

瞼の裏で視界明滅するほどの激しい痛みを後頭部に感じて、僕の意識は目を覚ました。

 

「ったぁ・・・。なにするんだダリ―-」

 

いや、違う。そうじゃないだろう。

ここは裸喰娘々で借りている部屋だ。より正確に言うならば備え付けベットの隣。シーツがよれてベット脇に垂れている。今の自分は寝間着姿。

 

何を大層に確認するまでもなく僕はベットから転げ落ちたらしい。頭から。寝相には一定の自信があったのだがどういうことだ。明日は鉄靴の雨でも降るのか。

「・・・自分で突っ込んでりゃ世話ないな」

 

窓の外は白みはじめている。今から起きてしまっても構わないだろう。どうせなら仕事に備えて気分を切り替えてしまえばいい。

 

今日の任務は、墜落死の間際からΔ小隊入隊試験の合格をもぎ取ったハヤテと、彼と感化しあうように調子を伸ばしているフレイヤの初の実践投入の日だ。

惑星ランドールで行われるワルキューレのワクチンライブと、それに随行するΔ小隊のエアショーと護衛である。

 

 

マクロスエリシオンの広げられた両腕のうち、左腕が分離して独立飛行を始める。ワルキューレとデルタ小隊を乗せて。

 

「おお、これが俺の機体か!」

 

格納庫で固定された真新しい機体を目の前に、ハヤテ・インメルマンは歓声を挙げた。初実践で乗機と初めて対面するのは不自然に思われるかもしれないが、機体がギリギリまで間に合わなかっただけだ。彼のVF-31Jもかなりのカスタム機なのである。

まずAIによる機体制御の大幅なカット。ハヤテがAIの補助による挙動にとうとう馴れられなかったためにとられた処置だ。そしてEXギアシステムのヘッドセットが緊急時以外は機体側に格納される機能。これもハヤテがヘルメットをつけるとつけないとで機体の挙動のキレが段違いに変るためだ。本人曰く「風を感じられない」とのこと。

個人的にはとても共感できる感覚である。ノーヘルは危ないが確かにその方が気持ちいいし、AIなんてなくても飛行機なんだから飛ぶのだ。むしろ余計なことはしないでほしい。いっそハヤテも飛行制御を全部切ったらどうだろうか。

「どうよ、最新鋭のVF-31は。フルカスタマイズまでしてやってんだから堕とすなよ?」

 

整備班のデイン機付き長が言う。

 

「ああ、いい感じだ!」

「それと、これ俺らからのプレゼントな」

 

彼にタブレット端末が渡される。後ろから除き込むと動画ファイルが再生された。機体のカスタマイズ部分の説明のようだ。マキナさんとレイナさんが画面の中で解説している。

 

こちらも準備しなければ。もう殆ど終わっているが、自分のジークフリートに乗り込む前にFFR-41のプリフライトチェックを済ませなければならない。

一つだけ小柄で、真っ黒なその機体のコクピットに乗り込む。と、それを見つけたのかハヤテがFFR-41に近づいてくる。

 

「あれ、ヒューイはソイツに乗るのか」

「いや、あっちのジークフリートだよ。コイツは無人で動かすんだ。エアショーにも参加しない」

「それってゴーストってことか?」

「ちょっと違うけど、まあそんなものかな。それより他人の機体を気にしてるヒマはないだろ?新しい機体についていてやれよ」

「おう!そっちもしっかりな!」

 

言ってくれる。だけどせっかく空にあがるんだから新人はそれくらい活きがよくないと。

 

「にしても、エアショーか」

 

昔、ヘンドンで行われるというそれに参加しないかと誘われたことはあったが、まさかこんなところで参加することになるとは。あの頃は飛行機に乗って見世物になるような気分ではなかったから辞退して少尉に譲ったが、今度は仕事だ。どうせやるのならば楽しまなければ。

「うん、町中で思い切り飛ばせるというのも案外楽しいかもしれない」

FFR-41のキャノピーを外部操作で閉じて自分のVF-31に乗り込む。こちらは既に万全の状態だ。機付き長にサムズアップを返してキャノピーを閉じ、出撃待機に入る。

 

間もなくフォールド航行終了のアナウンスが入り、離艦まで秒読みに入った。

 

 

 

 

そこは宮殿であり、砦であり、ヤドリギだった。

背の高いその建物の中ほどにつくられたテラスの一つに、数人の甲冑の青年たちが集まっている。

 

お互いそっくりな双子、赤い髪をした猛々しい青年、柔和な笑みを浮かべた老兵、それに付き従う静かな大木のような男。

そして最後に現れた、隠せぬ血統の高貴さと確かな実力を感じさせる統率者。

彼らは全て騎士だった。

己の翼を誇り、君主に捧げ、研ぎ澄ました牙と全霊を賭すことを誓った兵の群れ。

彼らは一様に殺気立ち、戦の時を待っていた。

「思い知らせてやる・・・我らの恨みを・・・憎しみの強さを・・・!」

若い翼が吠える。生来優しすぎるほどに優しかった彼は親兄弟を失い、今までの全ての人生を復讐のために費やしてきた。その激情はこの場の誰より強く、その敵意も殺意も隠し切れぬ程に燃え盛っている。

「僕らの長い準備期間も、これで終わりだ」

「いよいよ幕開けか」

兄弟の翼は最初の若者よりかは冷静だった。ここに集う面々でこれより相手にする敵のことを最も知るのは他ならぬ双子だ。故にその強大さも、脆弱さも熟知している。彼らは己が鍛えた比翼連理でもって抹殺する様を酷薄にシュミレートし続ける。

「気合いがあることはよいことだが、三人ともあまり気負いすぎるなよ」

気迫ある老骨。その男は自然体にして覇気を漲らせていた。出来のよい教え子と供に戦える。あまりに多くの戦いを経験した彼にとって闘志を漲らせる理由はそれだけで十分だった。

 

「故郷のために」

 

戦士になると、決意したその日から続く決意と覚悟を口にするのは大柄なその身を、さながら己の中の炎を全て内側に封じ込めてしまった求道者の如き静かさで包む青年だ。

 

そして騎士。本来はここにいる者全てが騎士と呼ぶに足る身分・実力・忠誠心を備えているが、その全てが彼の前では霞んでしまう。

 

「いくぞ」

 

短い言葉が重く響いた。ただの一言でその場の全ての意識が磁石に吸寄せられたかのように集い、方向を同じくした。

彼等は一斉に駐機されていた己の愛機に体を預け、火を入れた。

出撃の時間だ。

 

 

 

 

 

ステージに華が咲いたみたいだ。

遥か上空を編隊飛行しながら見下ろすヒューイの胸中はある種の感動のさなかにあった。それは彼にとって正しく未知の音楽、未知の世界観、未知の文化だった。一応、動画や情報の類でそれらについては知っていても落ち着いて、生のそれを目の当たりにするのは、更にはバックグラウンドとはいえ自らもそれに参加するというのは強烈な刺激をもたらしたのだ。

 

「――人類は神秘に頼らずに妖精を再現するに至ったのか」

『大げさじゃね、ヒューイ?』

「いや、すごい。それにハヤテのインメルマンダンスも、あれは確かに決まっている」

『おおう、高評価?』

『お前たち、私語は慎め』

 

五機のジークフリートが上空で航空ショーをするその眼下、ステージのすぐ上ではハヤテの機体が空中で器用に踊っている。マルチドローンもその動きに合わせて機動が組み込まれており、至近距離を通過はしても接触することはない。

新人に高難度のアクロバットはまだ早いという理由で成された采配のはずだったが、それはもはや他のどの隊員にも不可能なオンリーワンの神業だった。

ステージ初めに新メンバーとして紹介されたフレイヤも失敗こそあったが掴みは十分だろう。続く曲も上手くこなしている。

 

不意に立体コンソールにテキストメッセージの受信アイコンが表示された。展示飛行プログラムの誘導画面を避けるようにしてそれを展開する。送り主はFFR-41だ。すわ敵襲か何かかと思えば、全く見当違いの内容が短縮英語で記されていた。

要約すれば「対ヴァールシンドロームのための作戦行動がライブやショーと呼ばれるモノである意味の説明を作戦後に求める」というようなものだ。

ふむ、と目は周りの小隊機やホロコンソールに向け、手足のラダー、スロットル、スティックなどに一定の注意を続けつつ思考に走る。既にワルキューレの生体フォールド波がこの作戦の必須条件だということはFFR-41も知らされている。その上での質問ということになると、ライブによる視覚的な刺激、雰囲気づくり、歌という文化についての話になるだろう。人の文化についての説明を求めている。これはFFR-41は完全な戦闘マシーンとして作られているはずという本人の認識が揺らぐかもしれない――。

 

「彼女達の音楽がアイツにも影響を与えている、なんてね」

 

実際のところはもっと戦闘論理に直結した理由が何かあるのかもしれないが、それはそれとして帰った後にするだろう問答が楽しみになってきた。期待するだけならタダなのだし。ヒューイとしてはつまらないのだ。相棒がただ戦闘のみを目的としているなど。強要するつもりはないがどうせならもっと多様な目的意識や目標、認識の形態を知ってほしい。

再びFFR-41からの通信。今度はエリシオンからのものとほぼ同時、全体通信の警告だった。未確認機、照合。コールサイン“ファヴニル”接近中。対空戦闘開始――。

地上からは見えない遥か上空で、女王がその獰猛な牙を射出する。

 

非常警報が鳴り、ライブの観客達が避難を開始する。同時にマルチドローンのシステムが対VF・要人防御パターンに移行。至近にいたハヤテのジークフリートからバッテリーの寿命を無視した高速充電が行われワルキューレを覆う様に展開していく。充電行動を速やかに終えた5番機を含む全ての機体が上昇、迎撃態勢へ。データリンクにより上空のFFR-41が発射したロングレンジ・自己鍛造型ミサイルは全弾回避されたことが報告される。一時防空網は抜けられた。6機の敵が音速を超え降下してくる。通報を受けた新統合軍のナイトメアプラスが到着するまで残り3分。例のジャミングへの対処のためFFR-41の空間受動レーダーが索敵しているが上空では続けて大気圏を突入してくる機体の対処に忙しいようだ。完全な情報支援は望むべくもない。

全てがあっという間に変わり果てた。

ここはもう音楽を楽しむ場ではなく、人が鉄と炎の嵐にさらされる地獄へと変わってしまった。

アラド少佐が連携のとれた二機を同時に相手する。メッサーは格段に動きの違う――どうやら機体も他と違うらしいそれにドッグファイトを挑まれ、孤立していく。チャックがその支援に向かうもその別格の機体から放たれたゴーストらしき小型機が猛然と襲い掛かり思うようにいかない。残りの三機をミラージュ、ハヤテ、ヒューイの三機で抑えるべく動くが、相手はヘッドオンでゴーストとミサイルを囮に低空に抜けワルキューレへの攻撃コースを取ろうとする。

 

「抜けられた!?」

「クソ、ゴーストを盾に!」

「まだ捉えられる」

 

ジャミングにより視覚、レーダーの全てがかく乱され敵位置を見失うが、数秒遅れて送られてきたFFR-41からの情報支援により位置を判明。勘で機動を予測し追尾を開始していた位置と大体同じだった。なまじ三機に見え、追撃していたつもりのそれはたった一機のゴーストで、実際は一機がワルキューレへの爆撃コースに入り、二機がその護衛につくように背後から攻撃をしかけてきていた。一機づつ潰していく腹なのか予測分他の

二機より先行していたヒューイのジークフリートは十字砲火に晒される。

 

「ヒューイ少尉!」

 

ハヤテは再旋回、ミラージュは速やかにゴーストを撃墜する。

 

「上の二機を!爆撃はこっちで止める」

 

ヒューイはその場でラダー操作と同時に俯角をとりビーム砲を紙一重で回避しつつ爆撃機に追従するコースへ。同時にミラージュとハヤテに攻撃支援の二機の頭を押さえるように指示。ヒューイのジークフリートは攻撃コースに入った機体よりさらに下をとり市民とワルキューレに中らないように射角をとる。先に音速を超えて飛びぬけていった敵機のせいで眼下の町は既に滅茶苦茶だ。それにこの速度である以上相手を撃墜してもその莫大な質量の破片がワルキューレに降り注ぐ。厄介、卑怯。そんな言葉が頭の中で生まれる。だが攻撃行動を止める方法を思考の冷たい部分が機械的に模索している。それでいい。取るべき行動は決まった。スティックを握る両手は軽い。体はほどよく弛緩していた。

 

速やかに背後をとりFCSに標的をマークさせ、相手のコクピット内に盛大にロックオン警報を鳴らしてやる。同時に機体直下に取り付けられた25mmレールガンのプロジェクタイル射出速度を下限値限界まで引き下げ相手の両翼につけたドローンに射撃する。万が一貫通でもしたらワルキューレに中ってしまうかもしれない。放たれた二発の銃弾はエンジンノズルに直撃。相手の推力が激減し、パイロットの動揺が機動に生じた僅かな迷いに見えた。ミラージュとハヤテはなんとか相手を押さえて――いや、もう抜かれかけている。安全に攻撃機を無力化することは時間的に不可能だと判断し向こうの減速分の速度差により優速になったタイミングを狙って追い越し、ワルキューレの盾になれる位置をとることに。

 

主翼が折りたたまれ、前進翼だった分の抵抗の喪失と共に地上数メートルであることを度外視したABの加速。衝突寸前のところで敵機をバレルロールで避け、そのまま背面飛行で相手の前を盗る。刹那の間舗装された地面を間近に見つつスラストリバース、ガウォークへの変形、機首上げを同時にこなし、続く動作で突き出した腕部のバックラーにピンポイントバリアを集中させる。その突き出す先は正面と――右上方。ミラージュの妨害を抜けてきた敵機が狙いすました一撃を仕掛けてくる。左ではワルキューレを背に二機に挟撃される形になったヒューイに意識を裂かれたハヤテが逆に猛攻を受けている。

 

『抜かれた!・・・いけない、ヒューイ少尉!』

『くそ、コイツ堅ェ・・・!』

 

先に右上からの機銃掃射が来た。持ち上げた右腕のバックラーで赤のビームを受けるが、ピンポイントバリアの張られていない25mmレールガン部に一発命中し爆発。その爆風分の威力が追加され残る数発が対光学兵器用気化装甲まで抜けたあたりでミラージュが背後をとり直し攻撃が逸れる。正面の機体は使い物にならなくなったゴーストをパージし衝突コースから離脱していく。至近距離からマイクロミサイルの雨を撃ち込んで。またたく間もなく迫るそれらに機首のレールガンで迎撃を試みる。が、そもそもタイミングと数から考えて全て撃ち落とすことは不可能。残りは左のピンポイントバリアと機体で受け切れるだろうか。

 

「・・・っ!」

 

轟音、衝撃。だがこわ張る体とは反対に機体に重大な損傷はなかった。そして着弾の直前にミサイルとの間に割り込んできたシルエットには見覚えがあった。

 

「助かった、ありがとうレイナさん」

『私は守られるだけじゃない女』

 

背後を見やると、五人とも健在で幾分か減ったマルチドローンに守られているのがわかった。レイナさんの手元にはホロキーボードがある。あれでドローンのプログラムに割り込んでミサイルに体当たりさせたのだろう。

敬礼で返し、ファイターに変形しつつ上昇する。上ではミラージュとハヤテ、更にチャック少尉がゴーストを撃墜し戻ってきて加わり3対2の戦闘が繰り広げられていた。ここで戦闘に加われば勝敗は決するだろうが、その間ワルキューレが無防備になる。

 

「チャック!」

『ようヒューイ、無事か!?』

「問題ないけどシールドが両方とも逝った。ハヤテ、ワルキューレの防衛を代わってくれないか?」

『わかった。こいつら任せたぜ!』

『!接近する機影・・・新統合軍です!』

『おおう、愛しの援軍っち!』

 

ミラージュとチャックの声に喜色がのる。総数12機の中隊だ。これで完全に勝敗は決した。「長かったな、3分は」と誰かがつぶやいた。

ナイトメアプラスの中隊が編隊を組んで突撃してくる。ビームガンとミサイルの雨を降らせるべく。

 

そして、これから何度も聴くことになるあの歌声が響き渡った。

 




ファヴニル:ケイオスがブリージンガル球状星団に度々出現する特定の機種のアンノウンにつけたコールサイン。型番、製造メーカー、国籍共に不明だが熱源形状から出現時に特定することは可能である。

自己鍛造型ミサイル:ここでは多弾頭ミサイルのこと。まず母機から一発のミサイルが射出され、そのミサイルが内包していた子機のミサイルを空中で放出する。ヘッドオン:相手の機体と正対した状態のこと。

十字砲火:二人、ないし二か所から一つの目標に対して射撃が行われ、その射線が交差するような攻撃のこと。まかり間違っても射撃の軸線が重なった状態でやってはいけない。味方に中るから。

対光学兵器用気化装甲:エネルギー系のビームなどが着弾すると蒸発してエネルギーを散らす、ビーム版の爆発反応装甲のようなもの。VF-31に使われているものは約40%程出力の落ちた照射に相当する威力にするまでの拡散を可能にしている。
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