もう一度、飛び上がった空で   作:zwart

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おまたせしました。そして今更アニメ第一話に追いつきました。



第五話

「作戦を説明する。今回の任務は惑星ラグナにおける潜入調査、およびヴァール発生時の事態鎮静化だ」

 

「ここ一か月、惑星アル・シャハルでヴァール化の発生、および危険率が急激に上昇している。確実に強襲ライブを実行することになるだろう」

 

「また、アル・シャハルでは生体フォールド波の異常も確認されている。これについての調査も任務内容に含まれる。潜入と並行して調査するように」

 

「なお、前回の任務で交戦したアンノウンが再び出現する可能性がある。この場合は現地の新統合軍と連携して対応することで決定しているので、そのことも頭の隅に入れておけ」

 

「作戦の決行は0500。各自、心してかかれ」

 

 

いよいよ実戦か。

今回は、完全に歩兵として任務にあたることになっている。僕のジークフリートはほぼ完成しているが、システムの調整がまだ未完了らしい。僕からしてみれば、この短期間でもう機体が完成しているという方がどうかしていると思うのだが、彼女達は正しく一流のエンジニアらしい。

「まあ、エンジン出力の上がったメイヴに乗るのも悪くないけどね」

 

「そりゃ無理だろう。いくらナイトメアEXのエンジンを積んだからって不整地での垂直離着陸ができるわけじゃない」

 

アイテール、出撃待機室で一緒になったアラド隊長の言だ。強襲ライブを行い、その護衛機として飛ぶとなると一度適当なところで機体に降りてきてもらってから乗り込むしかない。そんなアクロバットなことは(他のアクロバットは大概できるのに)メイヴにはできない。

 

「わかってますよ。任務に集中します」

 

「よろしい」

 

懐に重み、デルタ小隊入隊と同時に返却されたオイルライターと拳銃だ。

さて、そろそろ時間だ。輸送機に乗り込むとしよう。しかしこれほど簡単に空挺作戦が行えるとは。ひと昔前ならば長期の訓練を受けたエリート御用達の任務なのに。今や一パイロットやアイドル(と呼ぶには特殊すぎるけど)が気軽にこなせる時代か。

 

「ヒューイ少尉、どうかした?」

 

「え?」

 

「まさか降下が怖いとか」

 

「えーヒュイヒュイ空挺できないのー?」

 

「いやいや、そんなまさか。戦闘機に乗ってたら急降下なんてよくやることですよ」

 

「そうかなー?足元なんにもないんだよー?」

 

「平気ですって」

 

「本当に?」

 

「本当に。絶対。間違いなく問題ありません」

 

パラシュートを背負っての降下。まあ促成訓練だったから実際にやるのは初めてだけど、訓練は受けてるし。技術もだいぶ進んで降下の安全性は段違いだし。

 

「さあ、そろそろ降下するわよ」

 

「「「了解」」」

 

え、ここから?この高度から降りるの?こんなに速いのに?本当の本当に?いや、怖いっていうか、え、えぇー・・・。

 

「・・・南無三」

 

「ふふ、翼をもがれた鳥といったところかしら?」

 

美雲さん、今それはちょっと笑えないかな。足が動かなくなるから。

 

 

降下地点に到着し、それぞれが分担位置についた。市街、住宅街、空港、統合軍駐屯地、ゼントラーディ駐屯地など。その範囲は多岐にわたる。

僕の担当は、電気街と呼ばれる古びた街並みの一角だった。無秩序に民家や商店が並ぶこの町の名称は、なんでも東洋のある商店街から名づけられたらしい。まあ、アラド隊長のこの配置は正しいものだろう。すこし路地を覗けば、かなり薄暗く、また薄暗いにおいがする。ここにワルキューレの面々を放り出すのはいくら訓練を受けているとはいえ心配だ。

スリの少年の伸ばした手を避けて通りながら、商店に並ぶ品々を見る。情報端末、ジャンクパーツ、食べ物、家具、そしてまた機械部品。なるほど、電気街とは言えて妙だ。

 

「おや」

 

少し離れたところに古風な鉄製のつり看板をみつけた。あの絵柄は恐らく・・・。

 

「やっぱり本屋だったか」

 

「いらっしゃい、外のお客さん」

 

「どうも、すこしお邪魔するよ」

 

小さな店だった。間口のわりに奥が深く、壁には本がぎっしり並んだ本棚がおかれている。その最奥に店主のじいさんがすわるカウンターがあり、みえずらいがその奥にスタッフルームへつながる扉があるらしい。どこかで見たようなレイアウトだ。

 

一冊、適当にとってみると少し前に流行した時代小説だった。地球滅亡から新統合政府樹立までを描いたシリーズものだ。これは読んだことがある。一応巻末の奥付を確認するが、何か修正や加筆がされたということはなさそうなのでこれは特に買う必要ない。初版をもっているし。

 

「何かお探しの本でも?」

 

「どうしてそう思うんです?」

 

「こんな寂れた街の本屋に外の人間がくることは普通ない。外には売ってない本をお探しなのだろうと思ったのだが、違うかね」

 

「まあ、そんなところです。なにか珍しい本とかありますかね。手記や記録。詩、童話。なんでもかまいませんが」

 

「よほど本が好きなのか、蒐書狂(ビブリオマニア)か。どちらにせよ今時珍しい人種じゃな」

 

どれ、ちょいと空き巣が入らんように見張っといとくれ、と店主は体を重そうに持ち上げて奥の扉に入っていく。三分ほどしただろうか、彼は一冊の本を抱えて戻ってきた。

 

「これは?」

 

「知らん。前にどこぞの旅人が売りつけていきおった。見たことのない本だったから置いておいたが、わしは読めんからのう」

 

「開いても?」

 

「ああ」

 

分厚い表紙を開く。予想外の手触り。布張りだ。かなり古い。いや、表紙は一度取り換えられている。中身の紙は、予想よりは新しい。

 

「どうじゃ、読めるかの?」

 

「ええ、ラテン語ですね。ご主人、この本を売ってもらえますか?」

 

「1000でいい。お前さんが買わなきゃ、もう誰も買わんじゃろうからな」

 

「ありがとう。また来ます」

 

ああ、とてもいい本を手にいれた。まさか2067年に模倣・・・つまり写本の写本とはいえ装飾写本が手にはいるなんて。これはちょっと想定外に運がいいな。今日はヴァールシンドロームなんておきないんじゃないだろうか。そうに違いない。

 

『ヒューイ、ヒュー・アンソニー・ディスワード少尉。聞こえるか!』

 

電気街の端まできたところでアラド少佐からの通信。

 

「こちらヒューイ、どうしました?」

 

『ヴァールシンドロームが発生した。場所はゼントラーディ駐屯地』

 

「アンノウンは?」

 

『そちらはまだだ』

 

「了解。市民誘導とワルキューレの護衛に回ります」

 

『おう、地上は頼んだぞ!』

 

どうやら運を使い果たした方の事例だったらしい。本を持ち込んだ肩掛け鞄に出来るだけ丁寧に入れて、現場に駆け出した。

さあ、仕事の時間だ。

四人のワルキューレが集い、強襲ライブを始めたあたりで現場に到着することができた。既に何人かヴァール化した人をみかけたので専用の短時間タイプの麻痺毒で手早く無力化している。ライブが始まった今、やるべきことは歩兵単位でのライブに対する妨害に対処したり、周囲でパニックになっている市民を誘導、支援すること。

上空をΔ小隊が通過し、マルチドローンプレート「シグナス」を散布していく。そのはるか上空でわずかに光を反射したのはおそらくメイヴだろう。

 

「こっちは・・・と」

 

グラージの進行方向で少年が動けなくなっているのを見つけた。このままでは乱射される弾丸に撃たれるか踏みつぶされるかしてしまう。美雲さんが対応するような素振りを見せたが僕のほうが近い。片手で合図しつつ少年の元へ駆ける。

 

「ッツ!」

 

グラージの巨砲が下を向いた。時間がない。声をかけるのも忘れ、半ば飛び込みぎみに少年を抱きかかえ、そのまま射線に対して横切るように逃げる。直後、地面が爆発した。

 

「あぶなかった・・・大丈夫かい?」

 

反応がない。驚いて状態を調べるが、気絶しているだけのようなので安心した。しかしこの子を放っておくわけにも、抱えて任務にあたるわけにもいかない。少し遠いが、避難誘導をしている警官に預けるか。

 

『各員に通達!アンノウンが出現した。6機が守備隊を突破してそちらに接近中!四機が残って足止めしているため新統合軍の援護はない!』

 

『メイヴから敵、位置データ来たぜ!』

 

『各機、フォーメーションヘルメス!』

 

まずい。Δ小隊が抜けて暴走しているリガードやグラージの相手をする者が足りなくなった。シャイアンⅡだけでは鎮圧しきれないし、敵機の地上攻撃から市民とワルキューレを守りきれない。新統合軍の部隊も警戒を強めていたはずだが、Δ小隊はもうアンノウンと接敵してしまった。

とりあえず少年は母親が大声で探していたので預けて自由に動けるようになったが、状況を打開するには戦力が足りない。

 

「それに前回の戦闘が威力偵察だったなら、今度は本気でくるぞ」

 

無論、そんなことは作戦参加の全員が理解しているので、ライブに参加しないメイヴのハードポイントにはマイクロミサイルを満載したポッドが装備されているが、それでも事前の分析では新統合軍と共同で対処するのが前提だった。

 

そして大気圏にいたナイトメアプラスは・・・どうやら、最後の機体が今撃墜された。アンノウンがワルキューレにミサイルを放つ。ドローンが盾になり、ワルキューレはその背後で散開するが―――。

着弾。爆炎で何も見えなくなった。

「美雲さん、カナメさん、レイナさん、マキナさん!」

バイタルデータはアクティブ。だがそれは生存を保証するだけで無事かどうかは・・・。

 

『―――まったく、やってくれるわね』

 

『こちらマキマキ、無事だよ!レイナも一緒』

 

『カナメ、問題ないわ。美雲も無事みたいね。ワルキューレは各自で美雲のところに集まって!』

 

ミサイルは至近で爆発したように見えたが、無事ならそれでいい。あたりをぐるりと見まわすと、墜落したナイトメアプラスからパイロットが搬出されていくのを遠目に見つけた。機体はほとんど無傷らしく、かわりのパイロットが乗り込んでいく。

 

「って、民間人じゃないか!」

 

 

無人の機内に、比較的静かなアラートが鳴り響く。どこか古い電話の着信音にも似たそれは自機のレーダーで敵を補足したというものだ。そのデータは瞬時に解析され、三次元座標、対地速度、方向のデータに纏められて味方の機体にデータを転送する。―――と、平行してスロットルが巡航速度から戦闘速度に移行して感圧型サイドスティックが目に見えるほど倒れた。急激な加速と同時の機首上げ。瞬く間に90度近いハイレートクライムに突入する機体は四か所のエアインテークによりストールを起こさない。そして成層圏へ突入する敵アンノウンを軸線にとらえると20mmガトリング砲が毎秒数百発という速度で射撃される。その照準ははたして、正確無比だ。

閃光。爆風。成層圏に突如として鉄と炎の嵐が誕生する。

その結末を見送ることなく、いや正確には搭載されたセンサーで確認しながらも他の目標をまとめて補足してアクティブホーミングミサイルに情報を入力。即座に射出。

だが敵は数を減らさず、即座に散開して回避行動と急降下軌道をとる。最初に撃破されたのも本体ではなく、ロールして機体両端につけられた子機を盾にしたのだ。だから本体は多少の傷がつきこそすれ飛行不能には陥っていない。ただし、片側の子機が破壊され左右のバランスが不安定になるのを防ぐため早々にもう一つの子機を分離する羽目にはなったが。都合10発放たれたミサイルのうちひとつは速やかにその分離した子機を撃墜。残り9発は散開した他の目標をバラバラに追い続ける。

対して黒塗りの前進翼機―――FFR-41メイヴは上昇を続け、ある一転でSTOLしたかのようにマイナスピッチの大回転をする。180度を回るそれは有人機ではまずあり得ない動きだ。そしてその暴れるような動きでもなおメイヴの翼は即座に風を掴む。主翼が反転したのだ。結果、外側から見れば胴体だけが一回転したようにも見える。

そのメイヴ版短縮ハンマーヘッドターンともいうべき動きで急降下しながらミサイルを躱す敵機に追従する。

 

『メイヴから敵、位置データきたぜ』

 

『各機、フォーメーションヘルメス!』

 

味方が交戦を始める。ミサイルで撃墜できたのは子機が4。本体にはダメージこそ入ったが撃墜には至らなった。そしてメイヴは当初の予定どおりに味方援護と敵影補足に入る、ことはできなかった。

ミサイルを回避した一機は急降下することなく旋回してメイヴに向かって接近してきたのだ。

 

状況を認識。脅威判定。優先事項により任務を一時放棄。ジャミング開始、交戦を開始する。

 

ヘッドオンの状態に突入。アンノウンがビーム機銃を発射。メイヴは揚力を一時的に引き上げて空中で飛び跳ねた。結果、メイヴは光を放つ弾丸を回避して相手の垂直尾翼スレスレを飛び抜ける。直後、両機は旋回。もう一度八の字を描くように交錯したのちローリングシザースに突入する。

空中で機体が連続で交錯する。ビームが黒い翼をかすめ、レーザーがジャミングの雲の向こう側で主翼を焼く。ロック可能な一瞬のタイミングでミサイルが発射され、それに対してミサイルが迎撃モードで応射される。そのうち数発は迎撃ではなく敵機を捕捉、追尾していく。至近距離で撃ち込まれたそれを、アンノウンは一瞬だけガウォーク形態になり直接ミサイルを機銃で迎撃する。その一瞬のスキをついてメイヴは残ったミサイルを全弾発射。同時にアフターバーナーを点火して上昇離脱していく。

脅威目標より離脱。強制誘導ミサイルの戦果は腕部破壊。任務に復帰する。

空中戦闘は続いていく。




最近、運転免許の教習を始めました。そして今日シュミレーターやったら3速に入れたところでハンドル越しにランプが転倒して、たぶんエンジンの振動を再現したのが止まって・・・なんかエンストしたみたいです。ま、まあ三日目だし・・・。
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