もう一度、飛び上がった空で   作:zwart

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難産です。早く10話あたりまで書きたい。メサメサのコロコロ回避したい。(デキルトイイナー)


第七話

惑星アル・シャハルでの作戦が終了しておよそ一週間後。ワルキューレの新メンバーオーディションの日に、僕はインメルマン少年と稀有な再開を果たした。

その日の昼食を館内の食堂で済ませた僕は、先日マキナさん達整備部門(メインメカニックのマキナさんはワルキューレ所属だが)から受け取ったVF-31Mの慣らしに行こうと、機体が駐機してあるアイテール甲板上に向かった。涼しい風に乗り下でやっているオーディションの音楽が微かに聞こえてくる。後でその音楽をBGMに本を読もうかなとぼんやり思考しながら甲板に出ると。アラド隊長とメッサー中尉、そしてもう一人見覚えのある顔がいた。

 

「インメルマン君?」

 

彼はこちらに背をむけて飛行甲板の端をバランスをとりながら歩いていくと、ある一点で立ち止まる。そしてクルリと向きを変え―――。

 

「ちょ」

 

「!」

 

「なに!?」

 

背中から空中に身を投じた。その場の全員が驚き、慌てる中で彼は一瞬に吹いた上昇気流を全身で捉えると、それに乗り甲板に見事に着地。戻ってきた。

 

「・・・こいつ」

 

「風に乗っただと」

 

「・・・いい感じだ」

 

一切の冷や汗もかくことなく、彼はにやけた顔でそう言ってのけたのだ。

 

「・・・驚いた。ただの民間人じゃなかったのか」

 

「あ、あんたは!」

 

「やあ、一週間ぶり」

 

「ヒューイ少尉、知り合いだったのか」

 

「ええ、この間の作戦の時に少し」

 

しかしここに、この二人と一緒にいるということは・・・まさか入隊するつもりなのか?

 

「というより、俺がスカウトした」

 

「はい?」

 

「バトロイドの操縦を隊長が見込んだ。お前とは丁度逆だな」

 

ああ、そういえばデブリーフィングの後に裸喰娘々でラーメンをご馳走になった時にダンスがどうとか言っていたような。

 

「ま、肝心の戦闘機はてんでダメだがな!」

 

「だから初めてだったんだって!」

 

なんだかんだで隊長と彼のウマは合っているようで何より。

 

「で、彼は入隊するんですか?」

 

「返事はまだ聞いていない」

 

そこで、僕を含む全員の視線がインメルマン君に集まる。彼も腹を決めたらしい。静かな決意が顔に出ている。彼は駐機中のジークフリートに歩み寄り、ようやく言い放った。

 

「・・・俺は軍隊が嫌いだ」

 

「俺もだ」

アラド隊長が答える。

 

「誰かに命令されるのも嫌いだ。指図を受けていい気分だったことなんて一度もない」

 

「そうかい」

 

「だから、俺はすきにやらせてもらう」

 

「ご自由に」

 

その言葉が欲しかったとでも言うかのように、彼は一転して破顔する。ジークフリートに手を伸ばし、その感触を確かめながら彼は自分の決断を口にした。

 

「俺は、コイツで空を飛ぶ」

 

 

 

「で、こうなったと」

 

「すみませんヒューイ少尉・・・」

 

インメルマン君が・・・いや、先ほどハヤテと呼ぶように言われたのだったか。ハヤテが触れていた機体がたまたまミラージュ少尉の機体で、さらに間の悪いことに訓練のためにそのミラージュが甲板に上がってきて、とにかくハヤテが気に入らないミラージュがブチ切れたのだ。で、戦場を甘く見るなだとか空を飛びたいだけだとか言い合ってるうちに売り言葉に買い言葉でハヤテをVF-31の後席に乗せたミラージュが思い切りアクロバット飛行をかましてハヤテを酔い潰してダウンさせた。まではまだよかったのだが。

 

「じゃあミラージュ。お前がハヤテ候補生を訓練教官として面倒を見るように。ひと月で使えるようにしとけよ」

 

とアラド少佐はメッサーを伴ってその場を退散してしまった。

 

「・・・え、ちょ、待って下さいアラド隊長!」

 

隊長は待たなかった。

そしてグロッキーになったハヤテの嘔吐物も待たなかった。

 

「ちょっと人には聞かせられない惨い音やら悲鳴が木霊したり人間が本能的に忌避する臭いがアイテール甲板と匿名希望のデルタ小隊パイロットにまき散らされたりしたが結論だけ言うと僕のタオルをミラージュにあげる羽目になった。昼食を済ませておいてよかったと思う」

 

「そんなこと細やかに説明しないでくださいお願いですから。あと誰に言ってるんですか」

 

「いや、今日の日記のネタを考えてただけだけど」

 

「ホントに勘弁してください」

 

冗談だよ、ごめんごめん。

ちなみに僕はミラージュ少尉とハヤテが四番機に乗り込んだあたりで自分の機体に移動していたのでその顛末を見ていない。

 

「しかし、訓練教官か。大変だねミラージュ少尉」

 

「そう思うなら手伝ってください」

 

「残念ながら僕は新しい機体の慣らしをしなきゃならない。それに彼の教育は君の仕事なんだろ?」

 

「うぐ」

 

「じゃあ、ちょっと飛んでくる」

 

これ以上話していて手伝わされる羽目になるのは嫌なのでさっさと自分の機体に乗り込んでしまうことにした。背中ごしに何か言われている気もするがきっと風の音だろう。アイテールはかなり高い位置にあるから、風も強いのだ。

 

「さて、と」

 

焦げ茶色とオレンジをメインカラーに塗装されたこの機体はVF-31Mという形式番号がつけられている。ちなみにペットネームはジークフリート。つまり、というかデルタ小隊所属なのだからある意味当然といえるが、前進翼のタイプをベースに改造が加えられている。具体的には、ファイター形態での戦闘能力と機動性に重点を置いた改造とでも言うべきか。まずキャノピー正面に露出しているフォールドクオーツを一部配置を変えて25㎜レールガンが装備されている。給弾装置の位置を変更することでなんとか機首に収まったらしい。その代わりコクピットが多少手狭になったそうだが、使用者としては何の文句もない。また、両翼ないし両腕のミニガンポットは単射と連射を切り替えられるようにしてもらった。どうにも、バトロイドで弾をばら撒くのに慣れなかった僕へのありがたい配慮だ。

そして、最大の特徴は間違いなくその翼だろう。シルエットは通常のジークフリートと大差ない。が、エルロン等動翼部分の比率が倍以上増している。カナード翼にはウイングレットが取り付けられ高速性能の上昇を図り、前進翼部分は形こそ大きく変わらずとも動翼部分の面積比率が70%を上回っている。尾翼とエンジンの間のスペースにも動翼とベントラルフィンが追加され、その付け根にはスポイラーが装備された。ちなみにエアブレーキも別途搭載している。もちろんラダーも大型化した。

外観や重量配分に大きな変化があったわけではないのでバランス事態は崩れていない。が、動翼が大きすぎて空中で安定しにくい。少しの操作で揚力が変化したり、方向がズレてしまう。過敏に反応すると言い換えてもいい。そして調整もその通りにされているのでいよいよもってその扱い辛さはメイヴといい勝負だ。しかし操作に対する反応は素直だし、正確だ。見事に仕上げられている。

だから、この機体に残された課題はパイロット―――つまり僕がどれだけ体の一部にできるかという一点のみだ。

電源を入れ、あらゆるステータスが基準値に達しているのを確認したところで深呼吸をする。覚悟が決まったのでスロットルを押し込んでジークフリートを離陸させた。ギア収納。ベントラルフィンが自動で展開され、心地よい負荷と共に機体が持ち上がっていくのがわかる。

規定高度に到達。これより訓練を開始する。

スティックを左に動かす。ぐるんと視界が回りあっという間に背面になる。視界に映る姿勢儀はしっかり反転状態で維持されている。どうやら180度丁度回ることが出来たようだ。この機でのフライトは三度目だが、前二回はなかなか正確な位置で止まらなかった。最初など勢い余って360度回転し元の姿勢に戻ってしまったし。

もう一度左ロールを行い正位置に戻るとループ、シャンデル、インメルマンターン等を繰り返す。望んだ位置を機体が通るまで何度でも繰り返す。クセをつかみ、運動特性を体を理解し、反射的な動きで理想の反応が返ってくるように。

 

「・・・よし」

 

1時間も飛び続けただろうか。感覚は掴んだ、と思う。だから最終確認のプログラムを飛ぶことにした。パネル操作であるデータを引っ張り出す。デルタ小隊の編隊飛行シュミレーションだ。展開するとコクピット内にデルタ1から4までの機体が一斉に、あたかも編隊飛行しているかのように映し出される。ただ、ホロだとわかるように色は一括して薄い赤だが。正面に数字が表示され、パフォーマンス開始までの秒読みが始まる。自分は5番機の位置だ。しかし難易度は最も高くなるように設定してある。衝突事故の多発するようなクロス軌道、両機と背面を向けた状態でのバレルロール。スモークで描かれたハートの中心を射抜くものや、木の葉のようにヒラヒラと舞うように落ち、地上数十メートルで回復するような変則技まで。

Gは、それほど掛からない。そもそもジークフリートという機種はEXギアシステムとISCのおかげでパイロットにかかる負担は従来機とは比較にならないほど少ない。だが、この機体は少しエルロンやラダーの角度が変わるだけで姿勢が変わるじゃじゃ馬だから神経をつかうのだ。そしてとうとう、一瞬のブレが原因で背面中の両機に衝突。パフォーマンスは失敗となりシュミレーターは強制停止になった。

 

「くそ、またダメだった・・・」

 

「スティックにもっと遊びを入れればいいのに」

 

アイテール甲板に降ろした機体の足元で汗を乾かしていると、ばさりとタオルが掛けられた。

 

「ああ、マキナさん。タオルありがとう」

 

「ミラミラに貸しちゃったって聞いたから。で、どうだった?ジクフリちゃん改は」

 

「編隊飛行プログラムで失敗したよ。レベル7まではいくんだけど・・・」

 

「流石のヒュイヒュイもまだ使いこなせないかー。さっきも言ったけど、スティックの感度落そうか?」

 

「それは甘えだと思うんだ」

 

「ヒュイヒュイもやっぱり男の子だねー」

 

「今のところ飛行機くらいしか本気になることはないからね。大事にしたいんだ」

 

「うん、どうしてもダメだったらいつでも言ってね。調整するから」

 

汗を拭き終わったタオルを首にかけて立ち上がる。夕方だ、今日はもう上がりにしよう。

 

「タオルは洗って返せばいい?」

 

「ヒュイヒュイのにしちゃっていいよ。さっき購買で買ったやつだから」

 

「わざわざ買ってきてくれたのか。お金払うよ」

 

「いいって。じゃあ私は先に帰るねー」

 

笑顔でまた明日と言った彼女は、逃げるように彼女は甲板から去っていく。

 

「さて、彼女の意思じゃないんだろうけど、気になるな」

 

ジークフリートのノーズにはデルタ小隊所属を示すマークと数字が描かれていない。主翼や尾翼も同じだ。機体のペイントが本決まりではないかららしいが・・・。

そもそも、なぜ僕の機体だけ特別に改造する必要があるのか。新しい機体の調達のついでなんてことはありえない。機体の用意に余計に時間がかかるのは明白で、事実前回の任務には間に合わなかった。コストもかかる。新人でその能力値も未知数だし、経歴も調べたのなら異常なしと認識される方がおかしい(・・・・・・・・・・・・・・・・)

マキナさんとも、接触が割と多い。だが彼女の表情からして別に特別な好意を抱かれているわけではないだろう。監視、もしくは観察。本人が乗り気ではなさそうなのが救いといえば救いか。もし、彼女の意思で自分の特別扱いが行われているのなら機体のマーキングを抜くなんて意味深なことはしないだろう。まさか彼女の性格で、嫌がらせなんてことはないだろうし。だとしたらどんなひねくれて手の込んだイジメだ。ないない、絶対ない。

アラド隊長やアーネスト艦長なら何か知っているだろうか。まあ、彼らはあれで軍人気質だから機密事項は喋らないだろう。ミラージュ少尉あたりなら良心をつつけばなんでも言ってくれそうだが、彼女は何も知るまい。チャック少尉も同上。メッサー中尉は論外。かと言ってマキナさんに直接聞くのも、なんだか悪い気がする。本当に嫌がらせだったらダメージ負うのはこっちだし。

 

「・・・まあ、いいか」

 

結局、実害はないのだし。分からないことがあるからってなんでも解き明かさなきゃいけないわけじゃない。監視結構。機体が高機動化されて満足している。給料も出て社員として正当な自由も与えられている。何より、自分が事を重要視していない。疲れた頭がぼんやりと生み出した程度の、ふんわりした疑問なのだ。

そろそろ帰ろう。きっと新人のハヤテもそっちにいるだろうし、もしオーディションで受かった者がいるなら、きっとその人も一緒だ。夜飯は裸喰娘々でいいし。

 

 

 

いつも通り、寝る前にはじっくり日記を書いた。




ウイングレット:主翼などの水平翼の先端につける垂直の小さな翼。翼端に発生する渦の影響を抑え、燃費や翼端振動、速度などに貢献する。ボーイング747の主翼にもついてるアレ。VF-31Mの場合は下向きについている。
ベントラルフィン:飛行機の底面につける第二の垂直尾翼。離陸の時に滑走路と干渉する場合、折りたたむ機体もある。F-16やMiG-27などが装備する。


書いてる途中にAbemaTVでブレイブウィッチーズが始まって、ストパンss書きたいなーとか思ってたらいつの間にかブレイクブレイドの落書き描いてた。ファブニル魔改造たのしい。

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