「.......」
私、レミリア・スカーレットは、少し物思いにふけっていた。
何を考えていたわけでもなく、ただただ少し昔を思い出していた。
『すまないが、匿って貰えないだろうか』
彼は、なんでもない日に、唐突に訪れた。
当時私は200歳程だったと思う。
彼を見たその瞬間、自分なんぞとは格の違う存在だと思い知った。
「うあ....あぁ....!!?」
それに気圧されて、まともに声が出なかったのを記憶している。
『......緊張しなくていい。楽にしてくれないか?』
その一言と共に、全身から力が抜けた。
体の芯から緩んで、恐らくだらしない顔をしていたと思う。
先程の上どころか全方位から握りつぶされるような威圧感とは一変して、どこか浮き足立ってふわふわとした綿に包まれた様な空気が私を包んだ。
「え、えぇ.....ありがとう、ございます」
それでも、その頃はまだ本能的に彼を上位の存在と認識してしまっていた。
.....今も一緒だが、今は当時に比べて軽いと思う。
もちろん、匿うと言うのにはOKを出した。
断ったら何されるかわからなかったし......。
『私の名はロミオ・スカーレット。君の家であるスカーレット家の、いわば親戚だよ』
彼はロミオと名乗った。
それに私は「ロミオ......と言われるのですか」とぎこちない返事をした。
『敬語はやめてくれ。私は、これからここに住まわせてもらう身なのだから』
そう彼は言うが、無理な話だ。
彼を前に軽口が言える奴は、よっぽど気が大きいか、同格の存在だけだろう。
......そういえば、彼の威圧感を気にせず相手できるのが1人居たわね。
妹のフランである。
あの子だけは最初から普通に接していたわね......。
まぁあの子は少しアホの子の気があったし......。
話を戻そう。
今でこそ慣れのせいで普通に会話できているが、当時はガチガチだった。
朝に会うだけでもまぁ大変だった。
「お、おはよう、ございましゅ」
カミカミでそう言うのがやっとだったのだから。
そこから、およそ290年。
今ではパチュリーや咲夜も彼には慣れ、なんとか普通に接することができている。
ただ、あまり会うことのない美鈴は慣れきって居ないようだ。
「はぁ.....彼にはもっと自覚を持ってほしいわね」
これはこの屋敷に居る全員が思っている事だ。
彼には自分がどういう存在なのかということと、自分の影響力への理解と自覚が足りていないように思える。
彼自身、自分を普通の吸血鬼だと思っているようだ。
勘違いも甚だしいが、誰が何度言っても笑いながら否定するのみだ。
最近はわざとやってるのかと思うこともあった。
「失礼します。お嬢様」
咲夜が来た様だ。
紅茶のいい香りもすることだし、少し早いがおやつの時間にしよう。
なんだか、彼のことを考えるのは疲れるのだ。
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そういえば、ここに来た時のレミリアは凄い『恥ずかしがり屋』だったよね。
何かを言おうとしているのだが、「あうあう......」と、口をアワアワさせて戸惑っていた。
私が緊張しなくてもいいと優しく言うと、心底安心した子供の様にほにゃっと笑った。
とても可愛かったなあれは。
その後もどもりながらお礼を言ってて、いい子だと思った。
そして私に慣れるまでは、喋る度カミカミでその都度顔を赤くしていた。
あれも可愛かった。
「ロミオォ、もっとモット遊ぼウヨォ!!ねェ、良いヨねぇ!!!??」
「あぁ、いいとも。だがあまり強くしないで貰えると嬉しいのだが」
今私は、地下室でフランちゃんと遊んでいる。
パチュリーちゃんからの頼みでだ。
レミリアに狂気を持っていると言われて引き篭もったらしい。
全く。ちょっと癇癪持ちなだけでそれとは。
レミリアには姉としての自覚はあるのだろうか。
前々から、月に3回程度の頻度でこうやってフランちゃんの遊び相手になっている。
まぁ、こんな所に入ってずっと動かないのもあれなんだろう。
だがこの子、力と能力が強くて遊び感覚の攻撃が一撃必殺になるのだ。
再生力の高い私が相手だから良いものを.....。
「やっぱりロミオとのオアソビはたまらないよォ!!!!
不思議だよねェ!!目を潰してコワシテるのに!!治っちゃうんだもん!!!」
とても嬉しそうに突撃してくるフランちゃん。
受け止めようとしても勢いが強過ぎるので、躱すしかない。
そんなフランちゃんを相手できるのには理由がある。
俺の能力は『再生する程度の能力』。
治る傷はもちろん、普通なら治らない傷もすぐに治る。痛みはあるがな!!
「ねぇロミオォ、フランとずっと一緒に居ようよ!!あんな上の奴らなんか気にしないで、ずっとフランと居てよ!!ネェ、イイヨねぇ!?ロミオォォォオオオ!!!」
「心配しなくても、フランから離れるつもりはないさ。だからこうやって遊びに来てるんじゃないか」
「いや!!ずっと!!ずっとがイイのぉ!!!」
フランの一撃で地下室の壁にクモの巣状にヒビが入る。
本当に強いなぁこの子(震え)
「安心しろ。私はずっとフランと遊んでやるとも」
駄々をこねるフランちゃんの頭を撫でる。
すると、俺の腕を取って掌を自分の頬を擦り付ける。
あぁ、頬を撫でて欲しかったのか。
そう思ってゆっくり優しく撫でてあげる。
「ロミオォ、好き、スキ、スキ、好き、好キ、スキィ!!」
それが嬉しかったのか俺の腕に抱きついてくる。
暗い地下室に篭っているせいだろう。人恋しいんだろうなぁ。
子供特有の直球な好意にほっこりしながら、続けて撫でてあげる。
すると、フランちゃんが私の指に噛み付いて血を吸い出す。
なので、もう片方の手で逆の頬を撫でてあげる。
気持ちよさそうに目を細くする。
「ん、んちゅ、ちゅう、ちゅぷ、ちゅぱ、ちゅ〜、プハァ」
美味しかったのか、幸せそうな顔をするフラン。
落ち着いたようなので、そろそろ休憩しようと提案する。
流石に疲れた。
「フラン、少し休憩するか?」
「うん!!」
元気よく返事するフランちゃん。
可愛いので撫でてあげる。
「ん〜♪ロミオの手は気持ちいいね!!」
うん、今日も良い笑顔だ!!!
そこからフランちゃんは、遊び疲れたのか寝息を立て始めた。
フランちゃんを静かにベッドに置く。
なんだか私も眠たくなってきたので、フランちゃんのベッドの横で私も眠ることにする。
フランちゃんが、良い夢を見れるように願いながら。
いやぁ、ロミオさんは子供好きだなぁ(白目)