「パチェ、準備できた?」
「えぇ。今すぐにでも行けるわよ」
なんだかまた物騒な話をしている。
少し状況と予定の説明をしてくれないか。
「.....あなたからは、何か意見はある?」
状況分かってないのに急に話を降らないで下さい。
いや、本当に。何がなにやら。
ここはとりあえず。
「......いや、無い。レミリアの好きにすればいい」
解ってますよオーラを出しながら信頼してるんだぞ風な雰囲気を醸し出して誤魔化す。
場の雰囲気を壊すのも忍びない。
.....大丈夫かこれ。
「そ、そうかしら!?わ、わかったわ」
レミリア、なんで驚いたの?
え、もしかしてバレた?バレたの!?
「パチェ!!こうなったら失敗は許されないわよ!?いや、本当にお願いよ!?」
「レミィ!!あ、あまりプレッシャーを与えないでちょうだい!!」
なんだか、ワタワタしだした。
やっぱあれかな。
私が理解できてなかったのは計算外で、ここからの計画に何らかの支障でも出たのだろうか。
レミリアの能力ならそれが解るからな。
.....すいません。
「いくわよ!!レミィ!!」
「えぇ、えぇ!!行ってちょうだい!!」
パチュリーちゃんが描いた大きめの魔法陣が輝きだし、使い魔達にも緊張した雰囲気が流れる。
「転移魔法起動!!」
その一言と共に、視界が真っ白に染まった。
―――――――――――――――――――――――――――
いよいよ、幻想郷への突入だ。
以前会議した順序通り、パチェが転移の魔法陣に魔力を注ぎ出す。
「パチェ、準備できた?」
「えぇ、今すぐにでも行けるわよ」
よし。順調の様だ。
なので、彼に最終確認をすることになった。
あの二月程前の会議で......。
☆
二月前......
「......これが、幻想郷を落とすにあたっての順序よ」
『まず、できるだけの吸血鬼や使い魔を呼び出し、戦力を揃える。
次に、パチェの転移魔法で幻想郷の中へ入り込む(その日付は、次の満月とする)
管理者に、挑戦状を叩きつけ、総力戦で打ち勝つ』
「.....随分ストレートなやり方ね」
「そっちの方がわかりやすいでしょう?」
会議は順調に進んでいた。
ここで、私はあることに気が付いた。
(.....彼の重圧を感じない)
そう思って彼の方を見てみると、彼は目を瞑って瞑想しながら静聴していた。
(そうか、会議の邪魔にならないように......)
彼の重圧があれば、きっと全てが彼の指示になってしまう。
そう彼は思って、普段の威圧感を抑えているのだろう。
(気を使わせてしまってるわね......)
だが、そうしなければ全部彼の王気に持っていかれてしまうだろう。
やはり彼は聡明だ。
「.....貴方も、これでいいかしら?」
一応確認を取る。
「.......」(コクリ)
彼は無言で頷く。
言葉を発するだけでも、彼の存在感は漏れ出てしまうのだろう。
「じゃあ、もし何か不備があると思ったら、確認するからその時言ってくれないかしら」
「.......」(コクリ)
最終確認を彼に任せることにした。
聡明な彼ならば、何か問題が発生する時もいち早く察知してくれるだろう。
一応、私も能力を使って確認はするが、運命の糸は一つではないのだから。
「.....zzzzz」
☆
といったことがあったのだ。
「あなたからは、何か意見はある?」
吸血鬼や使い魔も、一瞬で張り詰めた顔になり彼の言葉を待つ。
そして返ってきた言葉は......。
『いや、無い。レミリアの好きにすればいい』
......固まってしまった。
彼から発せられたのは、その一言と、そこから発せられる彼からの莫大な信頼。
「そ、そうかしら!?わ、わかったわ」
これは......失敗でもしてしまえば、私に明日は無いんじゃないのだろうか。
「パチェ!!こうなったら失敗は許されないわよ!?」
「レミィ!!あ、あまりプレッシャーを与えないでちょうだい!!」
パチェも一層緊張が篭った顔になる。
そして先程よりも緊張した面持ちで魔法陣に魔力を注ぎ込む。
「いくわよ!!レミィ!!」
「えぇ、えぇ!!行ってちょうだい!!」
そして、パチェが転移魔法を起動した。
――――――――――――――――――――――――――――――
光が収まると、そこは森の中だった。
屋敷ごと転移させたのか。
流石パチュリーちゃん。とんでもないことをするよね。
「成功、したかしら」
「えぇ、ついに来たのよ」
窓を開けると、まだ日が登ってないのか、少し薄暗い。
だがしかし、先程とは違い、体の隅々にまで行き渡るかのような綺麗な空気が流れ込む。
「ここが、幻想郷よ」
そこには、羽根の生えた小さな女の子達が飛び、見たこともない程に澄んだ湖が広がっていた。
後になれば解るのだが、そこは霧の湖と呼ばれている場所だった。
「さて、まずは挑戦状ね!!」
レミリアは、意気揚々と部屋に入っていった。
―――――――――――――――――――――――――――
「紫様、如何がなさいますか?」
式の藍がそう聞いてくる。
突如現れた真っ赤な屋敷。
恐らく西洋の妖怪だろうことは一目見てわかった。
「そうねぇ......少し様子を見て.....!?」
「ど、どうかなさいましたか?」
屋敷にスキマを繋ぎ、中を見ようとした瞬間、とてつもない威圧感が溢れ出てくる。
威圧感の出処はすぐにわかった。
あの男だ。蝙蝠の様な羽を広げ、少し高めの場所で陣取っている男。
その下には、同じ様な羽を生やした妖怪と、無数の異形で埋め尽くされていた。
その広さと数は、おおよそあの屋敷には入り切らないだろう規模だ。
その男からは、同時に強い存在感が滲み出ていた。
自分を知らしめるような。
生物の上に立つことが運命付けられた様な圧倒的な存在感。
それも恐らく、無意識に放っている物だろうことは、表情を見ると分かった。
勝てない。
あれは、自分よりも上の次元の存在だ。
見ただけでそう思い知らせて来るような重圧感。
カリスマを極めればこうなる、といった感じだろうか。
頭に浮かんだ考えを振り切り、アレに呑み込まれないように踏ん張る。
私は、それでなんとか凌げた。
「グッ....!!」
「藍....!?大丈夫!?」
が、藍はそうじゃなかった様で、青ざめた顔で膝をついている。
私は急いでスキマを閉じた。
その際に、一瞬あの男と目が合った。
まるで、こちらを歯牙にもかけていない様子だった。
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.....ん?
今さっき何か変な物が浮いていた様な.....?
気のせいか。
藍しゃま撃沈。
これが我らが主人公様や!!