無自覚な吸血鬼の王   作:トイレの紙が無い時の絶望を司る神

7 / 25
それぞれの決着が付きます。
それと長めです。

連日投稿なんていつぶりだろうか.....。
下がった評価を上げる為に奮闘する作者に応援を。


王者、突入す(後)

「グングニル!!」

 

手始めに、魔力の槍を烏にぶつける。

 

「おやおや、部屋が壊れても良いんですか?」

 

だが烏は扇子で仰ぐだけでグングニルをへし折った。

あれは.....風の刃か?

風を纏めているのか。

 

「気づきましたか。天狗の長たるもの、これくらいできなくてはやっていけませんからねぇ」

 

扇子を振るうと、まさに風を斬るような音がする。

見る限り重さも無いようだ。

 

「では、次はこちらから!!」

 

目視もできない速度で駆けてくる烏。

だが私は、繰り出された蹴りを《視て》回避する。

 

「なっ!?」

 

「視えているぞ」

 

カラクリは単純、能力を使っただけだ。

運命、つまりは未来を視てそれに沿って攻撃を避けているだけだ。

もちろん、それは攻撃だけではなく回避も視える。

その証拠に私には、私から距離を取ろうとしている烏の姿が能力越しにはっきり視えた。

 

「そら!!」「なに!?グハァ!!」

 

距離を取ろうとして、体を浮かせた烏の脇腹に蹴りを入れる。

吹っ飛ぶが受け身を取って体制を整える烏。

そこに追い打ちを掛ける。

 

「!?」

 

烏は驚いて右に避ける。

ここまでも『全てが運命の通り』だ。

もう1度床を蹴り、方向転換する。

 

「視えていると言っているだろう」

 

「ッ!?」

 

今度は烏の腹に蹴りを入れる。

腕で防いでは居るが、足からは小枝を踏み折ったような感触が伝わる。

真上に蹴りあげる様にしたから烏は天井に打ち上げられ、落ちてくる,.....ことはなく、羽で距離を取り、息を整える。

 

「はぁ.....はぁ.....」

 

「どうした?先程の嫌味ったらしい笑みはどこに置いて来たんだ?」

 

クツクツとお返しにイラつくであろう笑みを浮かべる。

 

「あまり、図に乗るなよ蝙蝠如きがぁ....!!!」

 

素が出たのか烏の言葉使いが荒くなっていく。

 

「あら、薄汚い烏に言われちゃ終わりね」

 

「図に乗るなと、言っているだろうがぁぁぁああああ!!!!」

 

貶したのが余程気に食わなかったのか、逆上して突っ込んでくる。

 

「はぁ、つまらないわね」

 

私も烏に向かって拳を振るう。

だが、油断して未来を視ていなかった。

 

烏は、体を捻って拳を躱し、顔面に蹴りを入れてきた。

幻想郷最速を名乗っているだけあって、蹴りも速度が速く鋭かった。

 

そのまま飛ばされ、壁にぶつかる。

 

「ふぅ.....やっと一撃与えられました」

 

先程とは打って変わって冷静な声音の烏。

口を切ったのか血の味がする。

それを吐き出し、油断を断ち切る。

再び構えたその時、烏は動いた。

 

「あぁ、すいませんね。実は私は時間稼ぎでしてね。貴方の本来の相手は、あちらです」

 

烏の目線の先には、日傘を指し洋服を着た、冗談かと思う程の妖力を滾らせた女。

それに付き従う様に立っている九つの尾を持つ女の2匹の妖怪が居た。

片方は知っている。確か妖怪の賢者と呼ばれていた、相手陣営の大将首の筈だ。

 

「遅れてしまってごめんなさいね。私は八雲 紫。

こっちの九尾は私の使い魔、藍よ」

 

九尾の女は軽く会釈する。

 

「相手が突然変わって不服かもしれませんけど、不精ながら、お相手するわ」

 

「結構だ。せっかく相手方の大将が出てきたのだ。それに応えないと紅魔館に泥を塗ることになる。

御託はいい、さっさとけりを付けよう。」

 

「全くもってそうですわね。では、行きますよ」

 

女は動かずおかしな切れ目を空間に生み出した。

私は気にせずに能力を展開して突っ込んでいった。

 

 

レミリア・スカーレットVS天魔

 

引き分け

 

 

レミリア・スカーレットVS『妖怪の賢者』八雲 紫

 

開幕

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ほれ、ロイヤルストレートフラッシュだ」

 

「ま、また?またなの....!?」

 

パチュリーは現在、鬼に完敗している状態だった。

それも40戦40敗。

見事なまでの完敗である。

 

「なぜ、ここまで.....!?」

 

「私の能力さ」

 

「能力ですって!?」

 

パチュリーははっとした様な表情で萃香を見つめる。

 

「私の能力は『密度を操る程度の能力』。それを使って、都合のいい札を『萃めた』のさ」

 

「そ、そんなのイカサマじゃない!!」

 

立ち上がり怒鳴るパチュリー。

無理が祟ったのかゲホゲホと咳き込む。

持病の喘息だった。

 

「あんただって、使ってたじゃないか」

 

「なっ!?」

 

してやったりと言う様な顔をする萃香。

 

「わからないと思ったかい?

カードの絵をあんたの魔法....だっけ?それで変えて不自然ではないが勝てそうな役に変えてたじゃないか。

相手が出した物を疑うのは賭け事の基本さね」

 

ペラペラとネタばらしをする萃香。

パチュリーは焦っていた。

確か文献によると鬼は......。

 

「あんた、あたし達のことを知っているなら、もちろん解っていた筈だろう?

鬼は、嘘が大嫌いだってね」

 

そう、鬼は嘘が嫌いだ。

鬼に嘘を吐いた人間は、例外なく酷い目に遭ってきた。

 

「だがこれは賭け事で勝負じゃない。だからあたしも見逃して、イカサマ代わりに能力をつかったのさ」

 

「そ....そんなの理不尽よ!!」

 

そう。理不尽なのだ。

萃香の能力は、使い方や考え方によって応用の幅がこれでもかと広がるタイプの能力だった。

怒鳴るパチュリーを前に、鬼は面白そうに嗤う。

 

「知らなかったのかい?鬼は、得てして理不尽な物さね」

 

鬼は理不尽。

幻想郷に住む人間や、妖怪の山の天狗やその他の妖怪は、思い知るほど解っていることだった。

パチュリーもそれを聞いて、諦めたように椅子に座り直した。

 

「さて、賭け事は私の勝ちだが、命を賭ける様な物でもなかったからね。今回は見逃してあげるよ」

 

勝ったのが嬉しいのかニヤニヤしながらパチュリーにそう言う。

そして、また口を開いた。

 

「その代わり、あの扉の奥からずーっと殺気を向けている奴の所に連れて行ってくれないかい?」

 

鬼が指さした場所は、地下室への入口だった。

 

 

パチュリー・ノーレッジVS伊吹萃香

 

勝者、伊吹萃香

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「行くわよ」

 

その言葉と共に、女性の姿が掻き消える。

同時に、私の体から抉られた様な音が聞こえた。

同時に、地面に血しぶきが舞う。

私は一瞬でそれが自分のものだと理解した。

.....いや強すぎぃ!!

こんなの、私に当てるような物じゃ無いと思うんだよね!!!

 

「あら?確かに攻撃は当てたはずよ?それにちゃーんと手応えもあったわ。血もついてるし。

なのに、どうして傷一つ無いのかしら?」

 

いつのまにか後ろに.....恐らくだが目視できない速度で私を手に持つ傘で抉りとりながら移動したであろう女性が、手に持つ傘に付いた血を振り払いながら不思議そうに呟く。

 

「吸血鬼の回復力は確かに目を見張る物はあったけど、あの一瞬じゃ到底治せる様な傷じゃ無かったわ」

 

そう呟き少し考える素振りを見せ、すぐに笑顔になってこちらを見てくる女性。

 

「吸血鬼の回復力は実力があればあるほど強いって聞いたわ。もしあの一瞬で直る程の回復力の持ち主だとすると、やっぱり貴方は強いことになるわねぇ」

 

おい、誰だそれを広めた馬鹿は。

誤解ですー。ただの体質で決まるんですー。

 

「誤解だ。現に私は手も足も出せなかったじゃないか」

 

「痛がる素振りも無いのに?面白いことを言うわね」

 

クスクスと蠱惑的に笑うな。

抉られるのも直るのも速すぎて痛みが追いつかなかっただけです。

 

「それにしても、ドンドン『重い』空気になっていくわねぇ。息苦しいからやめてくれないかしら?」

 

重苦しいのはこっちだ。

突如現れた馬鹿強い女性を相手に生き残る術を見出さなければいけないのだから。

これじゃフランちゃんに友達を作るという約束が守れない。

ここは逃げてでも生き残らなければ。

 

.....あの速度からは逃げられないだろうが。

 

「あら、また重くなったわね。これが貴方の能力なのかしら?」

 

空気を重くするとかそんなの真剣な話以外に使い道無いだろう。

あぁ逃げたい。

 

「さぁ、続きをしましょうか」

 

うわぁ、逃げたい。

特に今女性が浮かべている野獣の様な笑顔(?)には近づきたくない。

 

「もう私はお腹いっぱいなのだがね.....」

 

「冗談も程々にしないと.......面白いのは最初だけよ?」

 

急に真顔にならないでください。

能面も顔を青くする程の冷たい真顔だ。

 

そして、また体を何かが通り過ぎる音がする。

しかし今回は1度だけではなく、何度も聞こえる。

特に痛くは無いので立ち尽くす。

辛うじて見えるのは緑色の残像だけだ。

 

「らちが開かないわね。もう一気に吹っ飛ばしましょう」

 

すると女性は動きを止めて、傘を前に突き出し魔力か妖力か.......高くなり過ぎて判別がつかなくなった物を傘の先端に集める。

これは本気でマズイ。確実に紅魔館が崩れる。

本能的に察した。

私は逃げた。あれを打ち出される前に別の物に興味を向けなければ。

彼女は恐らく生粋のサディストだ。

逃げるネズミは追いかけて踏みにじるタイプだろう。

 

「あらぁ?追いかけっこ?それともかくれんぼかしら?

どっちも大好きよぉ?相手を追い詰めるのは大好きだもの」

 

やはり掛かった。

傘を下ろして笑顔でこちらに向かってくる女性。

隠れて気配を消し不意打ちでもするしかないか.....。

私はスニークには自信がある。

百年程前にフランとかくれんぼをした時は、隣にいるのに探されるという虐めにも似たことをされた。

どんだけ影薄いんだよ。

しかし今はこれに賭ける他ない。

息を整え、空間に同調するように脱力する。

 

「どこへ逃げても無駄.....あら?あらら?気配が完全に消えた......?」

 

いや通用するのかよ!!

 

「生きていれば少なからず気配はあるのに.....。本当に飽きさせないわねぇ」

 

遠まわしに死体みたいだなと言われたんだが。

 

「それじゃあやっぱり纏めて吹き飛ばすしか無いわね♪」

 

分かってやってるだろ!!

私が嫌がるの分かってやってやがるよこの女性!!

 

「分かった。分かったから、それは止めてくれ」

 

「フフ♪やっと出てきたのね♪」

 

ルンルンとでも言いた気に上機嫌な女性。

くそ.....可愛いなおい。

 

「さぁ、改めて行くわよ!!」

 

ゴウッという音と地面が凹む音と共に私の体に衝撃が叩き込まれ、同時に獰猛な笑みを浮かべる緑髪の女性が目に入る。

私の体はその一撃に耐えきれずに、女性の腕が貫通する。

その衝撃波で、窓が割れ後ろの壁には穴が空いた。

 

「はぁ、呆気ないのね」

 

「勝手に殺すんじゃない」

 

「!?」

 

すごく驚いている。そうだろうね。

体を貫かれたのに平然と話し掛けて来るんだもんね。

だけど.....ねぇ?

体を貫かれるくらいはいつもフランちゃんが何度もやってくれるから。

私の中では今更感がある。

 

「さて、そろそろ終わりにしよう」

 

まぁあれだ。

全力で殴って.....効かないだろうけど、全力で殴って降参を申し出れば良いか。

私は、腕を引き絞り、出来うる限りの力で殴り抜いた。

 

すると、女性は腕を引き抜き、青白い顔で後ろに下がった。

.......あれ?なんで?

 

「はぁ......はぁ.......。あ、ありえない。そんな、この私が.....!?」

 

え?え?なんで?どうしたの?

......もしかして、怖かったのか?

あぁ、だから『ありえない』なのか。

そうだよね。男が女性を殴るとか『ありえない』よね。

男が全力で殴ってきたらそりゃ怖いよ。

 

「済まない。大人気無かった。怖かったろう?大丈夫か?」

 

できるだけ優しく声をかける。

 

「大人気....!?怖い....!?......ふふ、フフフ、アッハッハッハッハ!!!!」

 

急に笑い出したんだけど!?

 

「......けよ」

 

え?なんだって?

 

「だから、私の負けよ。ほんっっっとうに久々の『完敗』ね」

 

.......はぁ?

 

 

ロミオ・スカーレットVS風見幽香

 

勝者、ロミオ・スカーレット

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「はぁ......はぁ.......」

 

「あらあら?もうおしまい?」

 

何故だ....。先程からまるで能力が使えない。

そのせいでこの女の攻撃を読めずに、一方的に嬲られてしまった。

 

「ウフフ、不思議でしょう?

貴方の能力.....そうねぇ、『運命を操る程度の能力』とでもしましょう。

運命を操る程度の能力は、封じさせて貰ったわ」

 

「どう、いうこと、だ.....!!」

 

「私の能力は『境界を操る程度の能力』。

説明は難しいけれど、なんでも出来ると思ってくれて良いわ」

 

そのなんでも出来る能力で、私の能力を封じたのか.....。

 

「親切な私が教えてあげるわ。貴方の負けた要因は、二つよ」

 

女は倒れ伏している私に指を立てて突き出す。

 

「一つは、能力に頼りすぎていたという点」

 

言われてみれば確かにそうだ。

未来が見えるからと言って鷹を括った挙句がこうだ。

現に能力を取られただけでボロ雑巾のようにされてしまった。

 

「二つ目は.......戦いではなく別の何かしか見ていなかったからよ」

 

そうか、そういうことか。

私は、彼のことしか考えていなかった。

彼への恩返ししか頭に無いせいで、戦いから目が逸れてしまっていた.....。

だが、それで、彼のことを想っていたから負けたなら......。

それは、それで......なんだ、か.......とても、うれし.........。

 

私の意識は、そこで途切れた。




※レミリアの『想う』には恋愛的な意味はありません。

ゆうかりんの心情なんかは、次回です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。