自分で書いてて、こんなん風呂敷畳めるのだろうか不安しかない。
その日、彼女は宿命の相手に出会った。
宿命ってなんの?などと聞いてはいけない。それは野暮というものだろう。たぶん。
とにかく、イシュペン・ロンブルにとってそれは生涯忘れることのできない出会いとなった。ただし断っておくが色気のある話ではない。
リ・エスティーゼ王国の城塞都市エ・ランテルのほぼ中央に位置する五階立ての建物にあてがわれている冒険者組合。
その両開きのスイングドアを開け、外から入ってきた男にフロアにいる者達の視線が一瞬集まる。が、すぐに興味を失ったのかそれぞれの会話や作業に戻る。
いかにも使い古したマントを纏った彼の姿は、初めて都市に来る精一杯背伸びした農村の若者にしか見えなかった。きょろきょろと落ち着きなく周囲を見渡している様子も、おのぼりさんの田舎者丸出しという印象を強めた。
領地開拓の為の農村からのモンスター退治の依頼か、あるいは何か勘違いした冒険者を夢見る若人か。そんなところだろうと、あたりをつけ、イシュペン嬢は居住まいを正した。男の視線が受付に座る自分に向いたためだ。
特に何もない平日の昼間、まばらに人はいるものの慌ただしくもない今日この日は、開いている受付は2つきり。一方はすでに相手がおり、何やら依頼内容の確認などをしている様子。必然、空席の前に陣取る自分に話を通すのだろうと、営業スマイルを浮かべ視線で促す。どうぞこちらへ。
眼前に座った男を見てまず最初に思ったのが、平凡な顔だな、であった。いくらか整っているとも言えなくもないが、かろうじて30に差し掛かる前かという中年一歩手前のくたびれた容貌は、不慣れな場所であるが故の落ち着かなさと相まって、彼の外見的評価を下げまくっていた。
しかし、おや、とも思う。
農村部出身者特有の品の無さは見受けられず、むしろいくらか教育を受けたと思わせるだけの気配があった。例えば、それなりの豪商の跡継ぎに見られるような、商談の席でお行儀よく畏まることが自然と身についている程度の。
そして、次に気付き、驚愕する。いや、態度には出しませんよ?負けたような気になるから。
外したマントとは名ばかりのボロ布の下には、下級中級の貴族では決して手が出せないであろう豪奢な服を着込んでいたのだ。シンプルな濃紺単色の上着には縁に白金と思われる細やかな誂えが。胸元の留め具はどう見ても宝石がはめ込まれ、ビロードのマフラーは無造作だが小綺麗に肩に掛けている。位置的に下半身は見えないが、確認するまでもなく、上半身の絢爛さに見合うものであろう。
正直、そのマントがお忍びのための変装だとするなら、やっつけにも程があると思った。対面した時点で剥がれ落ちる偽装に何の意味があるというのか。
とはいえ、相手が何者であれ、冒険者組合受付嬢の仕事に変化などはない。これは相手の何かしがの事情に配慮して、ということではなく、相手の立場如何で対応を変えるつもりも必要もないからである。
なにせ最初の言葉は決まっているのだから。
「ようこそエ・ランテル冒険者組合へ。本日はどのような御用向きでしょうか」
これまで数え切れないほど繰り返した口上だ。自分の口から滑らかに言葉が並ぶのを実感しひとり満足する。
ふふんと(そこそこの)胸を心持ち反らせ相手を見やると、ああ、と浮ついた返事。おい、そっちからやって来たんだからもうちょっと話す相手を見ろ。表面的にくらいコミュニケーションを交わそうという態度をとれ。
「冒険者として登録したいんだけど」
「承ります」
だけど、の時点で食い気味に答える。虚を突かれたかのように僅かに瞠目する男に、満足し溜飲を下げる。
すかさず必要な書類を受付台の引き出しから取り出す。契約前の注意事項について噛み砕いた説明を行い、目を白黒させながら相槌をうつ男が記入を済ませると、記入された個人情報にさりげなく目を通す。
名はモモン、異邦人、単身、住所不定。
不審者の見本の如くといった身の上だが、野盗上がりも珍しくない業界ではあるし、むしろ身なりや所作から判断するに卑しくない身分の出身ではないか。
南方風の風貌から見て異邦人というのは偽りではないのだろうが、それ以外、場合によっては名前まで偽装の可能性はある。
王国の首都リ・エスティーゼには、アダマンタイト級冒険者チーム「蒼の薔薇」が存在するが、リーダーのラキュース嬢は正真正銘の王国貴族アルベイン家の御令嬢である。感化されたか知らずにかはともかく、似たような行動派のお坊ちゃまがいても不思議ではない。下世話な話、跡を継ぐ長男が健在であれば、予備扱いの次男坊以下はそれなりに不遇であり、同じくらいそれなりに、しがらみがなく自由なのだ。極端な話、家名に傷をつけるようなことさえなければ、どこぞで野垂れ死んでも頓着されない、なんてケースも無くはないのだ。目の前の男もそういった類の人物であろうか。
あるいは、件のラキュース嬢ではないが、親の反対を押し切ってのヤンチャである可能性もあったが、例えそうであったとしても問題はない。ないことになっている。実際に「蒼の薔薇」のリーダーが冒険者を続けていることからもそれは確定だ。
冒険者組合は独立組織であり、基本外部からは不干渉であるべき。
その不文律が尊守されている限り、いち貴族のお家騒動だの家庭の不和だのといったいざこざは、知ったことかと突っぱねることができ、責任問題は発生し得ない。外部に対してはあえて示す必要もなく、冒険者の進退はその生死も含め自己責任に依るものだからである。とはいえ、実際には多方面からの圧力がないではないし、ややこしい事情が噛むこともある。
そのあたりも含め契約について、立場の取り扱いに関してなどもそつなく説明する。
一通りの署名や冒険者という職の前提について説明を終え、ひと呼吸をおく。
「―――ああ、結構つっこんだとこまで話してしまいましたね。ではこのまま続けて講習へ繋げてよろしいですか?」
「講習、ですか?」
僅かに首を傾げきょとんとする男、モモン。イシュぺンよりも年嵩の男性の割にそういった仕草が不快に思えないのは、その朴訥そうな容貌故だろうか。
「まあ、先ほど説明した自己責任云々もそうですが、依頼や報酬に関してなどですね。あと、冒険者としての階級についても」
小さく、階級・・・などと呟く姿を横目に、隣室に向かう扉を示し、
「さほどお時間を取らせるものでもないですが、別室で椅子に座ってやりましょうか?」
この場でできないこともないが、何となくテンションが上がってきたこともあって、いくらか乗り気でモモンを促す。さらっと流すようなものではなく、久々に資料片手に格好なんてつけてもいい。
ようは単純にイシュペン個人の気分転換を兼ねていた。web版でもそうだった。あれ、なんか変なの受信した?
受付のフロアは人がまばら、特に今日は会議室などを使用する予定もなく、火急の用件なんてものが飛び込んでこないのであれば、こういった対応も差し支えないだろう。
だが、彼女の期待は当然の如く裏切られる。
「いえ、このままで構いませんよ」
「そうですか」
女心が分かっていない。このくらいの異性の機微は察してほしい。
「では、まず報酬について」
息を吸い、報復がてら一気に言葉を並べる。かなりの文言を一息に。いや、流石に一息ではないが、いつ呼吸をしているのかと思わせるものであった。
相手が目を白黒差せているのを見て、内心喝采をあげる。いいぞ、私。負けてないぞ私。何にだ。
「ここまでで、なにかご質問は?」
「・・・いや、大丈夫、かな」
ほう。
そうですか。大丈夫ですか。
ふ、と不敵な笑みを浮かべる。
言ったな?確かに言ったな?
そんな明らかに尋常でない様子の受付嬢に、僅かに腰が引けるモモンだが、忌避するような態度をとることなく、正面から彼女を見て返答する。
「ええと、つまりは今この場で支払うことになるのは、あくまで所属を認め身分を保障し仕事を斡旋するという契約金。今後は依頼内容ごとに組合が情報精査を行うので、手数料を徴収される。組合側の不備によっては徴収金が減額されることもある。で、組合を通さない個人での仕事は、交渉も調査も組合は関与しないが、報告はしなければならない。・・・ということでいいですかね」
イシュペンはいかなる質問がきても明瞭に返す心構えでいたが、自分よりも噛み砕いて簡潔にまとめあげた相手に戦慄する。目の前の男は、おのれの職務に対するプライドに真っ向からステゴロを叩き込んできたのだ。
だが、その的確な要約を聞き、イシュペンは確信する。そして歓喜する。
我、生涯の強敵(とも)を得たり。
その後、理由は分からないが先ほどまでとはうってかわって、慈愛の表情を浮かべながら穏やかに説明を続けるイシュペン嬢だったが、モモンのほうは完全にどん引いていた。表情は満足げな笑顔であったが、その目に、まるで好敵手に対するかのような明らかな戦意の色が見てとれたからだ。
何故か、この受付台の周囲だけ雰囲気というか空気がねじ曲がっていた。そうとしか思えなかった。だって両隣にいたはずの他の職員とか、順番待ちしてた冒険者の方たちとか遠くへ移動しちゃってますよね。目ぇ合わせようともしてくれませんもんね!
そして眼前には、ただただ微笑みをたたえた一人の受付嬢が。
モモンは戦慄する。
え、なにこの人。
▼
その日、スレイン法国の漆黒聖典のうち6名は王国領の森の中、獣道を進んでいた。
同じく漆黒聖典に名を連ねる「千星万里」がある予言をした。強大な力を持つ何某かが王国のはずれに顕れるという。
かねてより危惧されていた「破滅の竜王」の封印が予想よりも早くに解けたのか、と危ぶんだ法国首脳たる神官たちの命により、隠密性を切り捨てたうえで漆黒聖典のなかでもとりわけ戦闘能力重視のメンバーによる、強襲偵察隊が編成され・・・早い話が取り敢えずサッと行って目視確認だけしてこいと遣わされたわけである。
が、どういうわけか道行く彼らの中に本来あって然るべき人物の姿がなかった。
「あー、あー、隊長も人がいいねえ」
最後尾の男がなんとはなしに口を開く。無言で黙々と歩みを進めることに耐えられなかったのか、あるいは肩透かしをくらう羽目になった現状の空気を払拭したいがためか。
誰も言葉を挟まないが、揶揄を含む苦笑が複数漏れる。この場の全員が概ね同意だったからだ。
幸い、予測は外れ「破滅の竜王」は依然封じられたまま、トブの大森林は低級のモンスターが跋扈している以外は平穏なもの。すでに彼らは来た道とは別のルートで帰途についているところであった。
しかし、そこで予定外の事態に遭遇した。戦闘を重視する部隊の例に漏れず、哨戒と前進を繰り返しゆっくりと進む彼らの近くに、全くの偶然だが、どうも野盗団のアジトと思われる場所を発見してしまった。
見つけたからには悪党どもを捨て置けない・・・などという事を口にする者も実行する者もこの場にはいない。彼らの存在意義とは人類の外敵となりうる異種族の排斥・殲滅であり、人類という枠内のゴミ掃除ではない。
そもそもここは王国の領内である。他国の治安に貢献してやる義理などなく、貴族の腐敗が進み政治的内乱も目立ってきている王国が速やかに滅ぶ一助にでもなってくれれば御の字である。
それで当然それで結構とそのままその場を過ぎようとする隊員たちに、だが彼らの隊長は言った。
それでも、無辜の民が傷つく事態は取り除かなければ。
無論、建前である。そういった考えも全く無いではないのだろうが、他の隊員たちから見ても、それは口先だけの理由であった。
せっかく久々に完全装備なのだから、少し運動してくる。ようはそれだけのことである。
かくして他のメンバーがそのまま帰路に就く中、後から追い付くので、と隊長たる第一次席ひとりのみ、無法者どもの殲滅へと赴いたのであった。
不幸なのは野盗たちであった。
「死を撒く剣団」はその日、特に商隊襲撃の予定などもなく、仕事に繰り出そうと精を出すこともなく、そのほとんどが塒で怠惰に耽っていた。
武器の手入れやたわいない雑談に興じる者、酒をちびちび飲みながらだらだらと寛ぐ者さまざまである。
塒となっている洞窟の出入り口を守る二人の見張りも、雑談に興じたりすることはないが欠伸を噛み殺し、明らかに暇を持て余していた。
森に迷いこんだ旅人ならば格好の獲物なので大歓迎だが、討伐に来た冒険者や兵士、森に住まう魔獣などの注意を引くわけにもいかないため、暇潰しになるようなこともできないため、気怠げでさえあった。
そんな完全に弛緩した空気の中、突然目の前の木々の間の薄暗闇から武装した男が躍り出てきたため、見張りの二人は目を剥いた。何か反応する前に、というか目視した光景を理解する暇さえなく、それらの首がごろんと落ちた。
第一席次は涼やかな表情で、実際に特に何の感慨も抱くこともなく、洞窟の中へと駆ける。
駆ける。
駆ける。
奥へと進む道中、はち合わせた者全てを斬り伏せながら。
響きわたる騒音に、ブレイン・アングラウスは腰掛けていた粗末な寝床から立ち上がる。今まさに手入れをしていた自らの愛刀・・・この周辺国では珍しい南方由来の「刀」を抜き身のまま携え部屋から出る。
敵襲だろう。どれだけ巧妙に隠そうと、無法を繰り返せばこんな塒などいつかは見つかるものだ。
(ここも潮時というわけだ)
やれやれと歩みを進め、即座に表情が険しくなる。
音とともに動き回る人の気配・・・それらの近づいてくる早さの割に悲鳴が少ない。一太刀のもと切り捨てられている。
強者である、と判断し、
濃密すぎる死の気配が躍り掛かってきたと同時に、その斬撃を切り払った。
突然すぎる強襲に受けた側は眉一つ動かさず、不意打ち同然の攻撃をあっさりかわされた側も涼やかな表情は崩れることはなかった。
ともに僅かばかり体勢を整える。
どうも双方今は無駄口をたたくつもりは無いらしい。
ブレインは久々の強敵に奮い立ち、漆黒聖典第一次席はこれまでよりはましとばかりに。ともに口元に笑みを浮かべて。
それが当然とばかりに躊躇無く互いに躍り掛かった。
▼
5分と経ってはいまい。
すでに数十あるいは百ほど切り結んだ。
ブレインは目の前の男から僅かに距離を置き、息を整える。
衣服は無数に切り裂かれ、薄皮どころかなかなか際どい傷も多く、流血具合だけ見れば満身創痍といえた。事実満身創痍だとブレイン自身、自覚していた。
目の前の強敵を睨む。
対照的に傷ひとつ負わず、変わらず涼しげな表情である。会敵直後の戦意のささやかな共有感は勘違いだったのだろうか。
先より少しばかり冷えた頭に浮かぶ戯れ言を振り払う。
かつて、王国にて催された御前試合の場にて、後の戦士長ガゼフ・ストロノーフに敗れて以後、再戦を誓い貴族たちの勧誘を断ってまで野に下った。次こそは勝利をと、武を極めんがためこうして野盗に加わりさえした。だが、
武者修行などうまくいかないものだと思い始めていた矢先の、この眼前の槍使い。
強者である。
難敵である。
待ち望んだ剣を交えるに足る相手であるはずだ。
そのはずだ。
だが。
ブレイン・アングラウスは、目の前の男が不愉快でたまらなかった。
これが例えば吸血鬼のような、人に近い姿を持つ人ならざるモノであったならば。その隔絶した種としての差に絶望し、恥も外聞もなく泣き喚きながら逃走しただろう。
だが、目の前の男は違う。
なんとなく、まっとうでない気配はある。根本的な優性ゆえの余裕が見受けられるのだ。
だが、仮にいくらかまともでない血が混じっていようと、何らかのカラクリがあろうと、こいつは「人間」なのだ。それだけは確信している。
人として、遙かな頂に手を伸ばしながら。その所作には一切の温度がなかった。冷徹に冷酷に、ではなく、単なる作業のように武を揮うのだ。
これで無造作で型も何もなければともかく、これだけ無感動に無感情に戦うというのに、その動きは洗練され技巧に冴えている。
中身に熱など無いのに。
その事実がブレインは心底不快だった。
認められない。認めるわけにはいかない。
この目の前の男の有りようだけは絶対に認められない。
かつての自分を思い出す。
生まれ持った素養に
ガゼフ・ストロノーフを思い出す。
素質を無駄にせず鍛練を重ね、鋼の如き堅牢さを持つに至った男を。自らを下した、偉大なる宿敵を。
その背に見た、彼が歩んだであろう辛酸極まる道程を。
あの御前試合の戦場には、たしかに熱気があった。観衆の静かな興奮とは別の、鍔競り合う二人の戦士の間にのみ灯っていたささやかな、だが煌々と燃え盛るそれが確かにあったと確信している。
その輝きが、敗北の瞬間から今の今まで自分を後押しし続けていた。
僅か二人の至高の戦場はかくあれり、と。
そうだ。
こんな冷めきったものでは、断じてない。
生まれ持った素質が大前提だなどといわんばかりの武なんぞ、熱も輝きも灯さない
血の滲む研鑽の果て、人でありながらその臨界を極め、人類の一歩前へ進む。そのそびえ立つが如き背中の尊さを知っているがゆえに。
こいつは必ず倒す。
この場で死ぬなど御免だ。この窮地を脱し逃げ延び、更に腕を磨き鍛え抜き、必ず打ち倒す。
決して容易くはないだろう。或いは幾度も敗れ、屈辱に膝を折ることもあるかもしれない。この男の方がストロノーフよりも強者であることは明白なのだから。
だが。
たとえそれが分かりきっていても。
ガゼフ・ストロノーフに勝利し、最強の名を戴く。
それに比べれば目の前の男に打ち勝つことなど、随分と容易いことのように思えた。なんとも前述の弁とは矛盾した話だがブレインには不思議とそれが当然と思えた。
そう至ると、不思議と口元に笑みが浮かんだ。
改めて構え、眼前の男を睨め付ける。
いざ、渾身の一撃を叩きつけんがため。
▼
結果から述べるならば、ブレイン・アングラウスは逃走に成功した。
すでに、もう半刻駆ければ森を抜けるだろうという場所まで逃げおおせた。
満身創痍ではあったが、胸の裏は幾分軽やかだった。
これまでで最高の一閃が受け流された直後に繰り出した鞘のひと凪が相手の鼻先を掠め、幾分驚いたその表情を思い出すと、体の痛みなど吹き飛んだ。ああ、いや、痛いものは痛いし、正直今すぐその場でのたうち回りたいが。
だが、笑みは消えず、わけもわからない可笑しさが後から後からこみ上げてきた。
「―――く。っくくく・・・」
何一つ届かなかった。一目散に逃げ出した。お手本のような敵前逃亡だった。それでも不思議と悔しさはなかった。
ともかく、疲労困憊見るも無惨で無様な凱旋だ。何処に、なんて現実はとりあえず忘れてひた走る、一人の男の姿があった。
夜盗たちにに囚われていた女性たちについては後程。
原作ではアインズ様視点から離れた場所の動きのほうがワクテカすることが多い気がする。
主人公の周りに危険が無さ過ぎるんですもの。なお貞操の危機と周囲の勘違いは平常運転の模様。