魔導国草創譚   作:手漕ぎ船頭

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 まんま前回の続きです。
 



鴨ネギをこちらから迎えに行く優しさ

 

 

 

 

 変わらず、八本指の会議が行われている部屋。

 久々に自ら出張ることに意気込むゼロは、ゆっくりと席から立ち、議長と各部門の長たちを見渡す。

 

「既に他の連中には招集をかけてある。あと三十分もすれば上の店に来ることだろう」

 

 その言葉に、おお、と安堵の空気が広がる。

 が、

 

 ―――それは好都合―――

 

 聞き慣れぬ声が響く。

 直後、部屋の入り口の扉が蝶番(ちょうつがい)を引き千切り跳ね上がる。外側から力任せに抉じ開けられたのだ。

 立ち込める埃の向こう、部屋の外には見張りの側近たちが倒れていた。

 

 突然のことに浮き足立つ長たち。すかさず彼らの前に立つ各々の護衛。

 その中にあって一人、ゼロは吹き飛んだ鉄製の扉に驚きも注意を向けもせず、侵入者を睨みつける。

 埃の舞う中、部屋の入り口に立つ白髪の執事は慇懃に頭を下げる。

 

「夜分遅くに突然の訪問、失礼致します。早速で申し訳ありませんが手短に済まさせて頂きます」

 

 そのあまりに場違いな姿に、だがその場の全員が思い至る。

 件の商会からの刺客。

 遠目からセバスを見知っていた者などは、窓口となっていた執事が直接荒事を担っていることにこそ驚いていた。

 

 そんな周囲の様子など無視して、執事はさも気軽にゼロの前に躍り出る。

 対する六腕最強の男は瞬時に腕を振りぬく。

 どういう勝算があるのか、この老い耄れは自分ひとりでこの場を制圧するつもりであるらしい。扉の有様を見るに多少は腕に自信があるらしいが、嘗められたものだ。怒りに顔を歪め、その肉体に力を行き渡らせる。

 

 ゼロの全身に刻まれた入れ墨が光りだす。

 足の(パンサー)、背中の(ファルコン)、腕の(ライナサラス)、胸の野牛(バッファロー)、頭の獅子(ライオン)。動物の霊魂を己の肉体に憑依させ強化するというそれを全て起動する。

 シャーマニック・アデプトという職業による特殊技術(スキル)と装備した数々の強化アイテムによって、その肉体能力が爆発的に上昇する。

 食いしばる歯の隙間から体内の熱が噴出する。

 極限まで強化された修行僧(モンク)の正拳は繰り出された瞬間、老いた執事など枯れ木の如く粉砕してしまうだろう。己に歯向かった愚か者のわかりきった末路に、ゼロは醜悪な笑みを浮かべる。

 そしてついに、セバスの無防備な腹部にその拳が突き刺さった。

 内臓がずたずたになり壁に叩きつけられる。その結果を誰もが疑わなかった。

 

 ―――しかし。

 真正面から攻撃を受け止めた老執事は微動だにしない。

 そして涼しげな表情で、己に触れる腕をひょいと軽くどかす。

 その光景に、周囲の者たちは今度こそ驚愕に固まる。各部門の長たちだけでなく、彼らに侍る護衛の者たちまでもが、あまりにも予想外の光景に口を大きく開け目を剥く。

 最も目の前の現実を信じられなかったのは、拳を叩き込んだゼロ本人だろう。これまでの自負ゆえに、渾身の一撃が何の結果も(もたら)さなかった事実に呆然とする。

 

「……なんなんだ、お前は」

 

 構う事もなく、セバスが脚を振り上げる。

 そして黒いそれが高速で迫り―――

 

 

 

 

 そこで、ゼロの意識は暗転した。

 

 

 

 

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 目が覚める。

 虚ろな意識を無理やり覚醒させ、体を起こす。

 自然と身構え、辺りを見渡す。瞬時に戦闘態勢に移れたのは強者たればこそである。

 違和感から首に触れると、金属製の首輪のようである。両の足にも重みを感じ確認すると、枷がはめられ床から伸びる鎖に繋がれていた。

 彫られた模様から見て、魔法が籠められているのだろう。腕力だけでは容易くは壊せる気がしなかった。

 ゼロがいるのは、見覚えのない石造りの一室であった。一室といってもその広さはかなりある。広めの講堂、あるいは以前見た帝国の闘技場をふたまわりほど小さくした位か。床の石畳だけでなく壁も天井も煉瓦のように石が積まれている。薄暗さから見て、ひょっとしたら地下かもしれない。

 

「生きていたようで何よりだ」

 

 声が掛けられるが驚きはしない。

 気配を読めるゼロには、この場にいるのが己一人ではないことはすでに気付いていた。

 どうやら目覚めたのは自分が最後らしい。

 

「サキュロントか。次にお前の顔を見るのは骸の確認だろうとも思ったが」

 

「……おいおい」

 

 行方を眩ませたと聞いていた男の姿に、真顔で言い放つ。別に冗談でもなんでもない、実際に思っていたことだった。

 短くない付き合いからそれを察したサキュロントは、冷や汗をかきつつ呻く。

 そんな自らの部下の姿に構うこともなく、他の人影にも目を凝らす。

 何れも鉄火場の空気を纏う三つの影が、二人のやり取りになんともいえない顔を向けていた。全員が首輪をはめられ足も鎖に繋がれている。

 

「この状況でいつも通りのあんたの姿は心強いね、まったく」

 

 薄絹という艶美な出で立ちのエドストレームは、優れた空間認識能力と器用な両腕の技を駆使する女傑で「踊る三日月刀(シミター)」の異名を持つ。

 

「気持ち良さそうによく眠っていた。今こそ、そのそっ首落として俺が最強の名を貰おうかとも思ったがね」

 

 「千殺」マルムヴィストは、金糸の刺繍を施した上着や愛剣に施された薔薇の装飾など、煌びやかな装いのレイピア使い。

 

「ぬかせ」 

 

 マルムヴィストの軽口に短く返し、無言のままの最後の一人に目を向ける。

 

「――――――」

 

 全身を鎧で覆うのはペシュリアン。その技量から「空間斬」とも呼ばれる長剣使いは、元々寡黙な男ではあったが、この場にあっては普段以上に静かであった。

 その理由はゼロの視線の先、あるべき場所に見当たらない右腕のためだろう。

 利き腕を失い完全に消沈している男に、だがゼロは構わず問い掛ける。

 

「何があった」

 

 返事は返ってこない。

 まるで彫像にでもなってしまったかのように、ペシュリアンは項垂れたまま反応しなかった。

 代わりにエドストレームが訊ね返す。

 

「ゼロはこうなる直前のこと、憶えてるかい」

 

 その言葉に、眉根を寄せ搾り出すように短く「ああ」と答える。

 最後の記憶にあるのは、振り上げられた脚。

 その瞬間は見えなかったが、耳に残る歪な音からも、あれが叩き込まれたのは間違いないだろう。

 

「俺は死んだ。死んだはずだ。忌々しいことに」

 

 受け入れ難いという内心がありありと浮かぶその顔を見て、他の者らも皮肉げに口にする。

 

「私らもさ」

 

「あんたに呼ばれて店に来た途端、正面からの一撃で、あっさりとな」

 

「俺は不意打ちだったがな。商会の屋敷で突然壁に引きずり込まれた。あれはねえよ」

 

 商会。

 サキュロントが口にした固有名詞に、ゼロは眉根を寄せる。

 この状況はまず間違いなくイプシロン商会の齎したものであるはずだ。

 そこまで聞き、首を(めぐ)らしこの場に居ない六腕メンバーの姿を探す。

 

「奴は?」

 

 「不死王」デイバーノック。黒染めのフード付きのローブを纏うおぞましい男。

 その正体は、アンデットでありながら知性を失わず、多くの魔法習得の取引のため金銭を求める死者の大魔法使い。

 

「デイバーノックなら、私が殺られる前に灰になったよ。頭を粉砕されてね」

 

 そう言ってエドストレームは手をひらひらと振る。

 不死であるはずがその骨の体を砕かれ、強制的に浄化されたのだ。元から死者ではあったが、今度こそこの世からは完全に消え去っただろう。

 ゼロは自分が死んだあの場所にいた者たちを思い浮かべる。八本指の各部門の長たちとその護衛、そして議長。彼らも捕らえられたのか。

 いや、今はどうでもいいことだ。最優先は自分たちの現状についてだ。

 それならば、と残った六腕はそれぞれに思い至った考えを口にする。

 

「やはり我々は蘇生させられたわけか」

 

「ここがあの世ってやつでもなく、死んだ記憶が幻術の類でもなければね」

 

「……いや、あれは現実だった。あまり認めたくはないがな」

 

「今は木偶のこいつもか?」

 

「多分ね。鎧の胸の部分が砕けちまってる、貫かれたんでしょう。腕が治ってないってことは、その前に落とされたんだろうねえ」

 

 思い浮かぶのは、異様な執事。

 老い耄れと侮ったのは確かだが、それでも敗北した今となっては油断の有無など大差は無かったろうと思えもした。

 そして、この状況だ。

 通常、復活魔法によって生き返った場合は能力が大幅に低下する。理由としては生命力を消費するからだと言われている。だが、ゼロは己の肉体性能が変化しているようには感じられなかった。

 理解の範疇を超える事態に直面しているのは間違いなかった。

 

「なんで蘇生されたんだろうな」

 

 それはこの場の全員が抱いている疑問だった。

 脂汗を浮かべ、マルムヴィストが吐き捨てる。

 

「碌でもないことには違いない」

 

 その意見には皆が頷く。ペシュリアンもだ。

 殺しておきながら生き返らせたからには、何か目的があるはずであった。

 

 

 

 

 突如遠くからゴトンと物音がした。次いで響くコツコツという靴の音。他にもずしずしと音が続く。

 暗さゆえに見えないが、何者かがこの部屋に入り近付いてくる。それも複数。

 やがて五人にも目視できるほど近付き、その姿が顕わとなる。

 いずれも人間ではない。

 いかにも代表だと一歩前に出ているのは、ストライプが入った赤のスーツを着込む浅黒い肌の男。オールバックに黒髪を整え眼鏡を掛けていて、その表情は隠す気もないのか嗜虐を含む笑みを浮かべていた。目を引くのはその背後で揺れる銀のプレートで包まれた尻尾だ。

 背後に控えるのはフランベルジュとタワーシールドを持ち、錆付いたフルプレートの巨体の騎士が四人。工具らしき道具を腰の周りに備えた継ぎ接ぎの体を晒した覆面男たち。

 それらを前に、六腕の者たちは恐怖に固まった。その中でも最強を自負し、先程までいくらか余裕をも見せていたゼロも例外ではない。

 ひょっとしたら数秒は呼吸も止まっていたかもしれない。

 赤いスーツの男や継ぎ接ぎ男たちはよくわからないが、四人の騎士はまずい。顔は隠しているが漂う腐臭から、恐らくはアンデットだと思われる。

 何より恐ろしいのは ゼロをして震え上がらせる強者としての気配である。一人……いや一体ならばあるいは、とも思う。だがそれが四体である。たとえこの場にいる六腕全員で相手をしたとしても、こちらの全滅という未来しか見えないだろう。

 スーツの男が手袋をはめた手を叩く。ぱんぱんという音が石室に響く。

 自分に注意を向けた男は、デミウルゴスと名乗った。

 

「まどろっこしいのは止めておこう」

 

 そう口にして鎖に繋がれた者たちに微笑む。

 友好的に見えるが、見下しているのは明らかだ。

 

「君たちにはちょっとした実験に付き合って貰いたい。ああ勿論拒否権なんてないさ」

 

 背後の騎士たちを示す。

 

「君たちの扱う武技というものに興味があってね。我々にも習得出来るものなのか試してみたい。教師役として彼らの相手をしてくれないかね」

 

 人外の者たちが人間種の技術を習得したいと言う。いささか常識から外れた話に、ゼロたちは唖然となった。

 その様子を眺め、ん、とデミウルゴスは小首を傾げる。その視線はペシュリアンの失われた片腕に注がれていた。

 顎で示すと継ぎ接ぎ男たちが進み出る。

 

「な、何だ。おいっ、何をする!?」

 

 怯えたペシュリアンが後ずさるが、構わず拘束し異形の者たちは器用に彼の纏う鎧をはずして行く。

 素顔を晒した男は更に上着も剥ぎ取られる。利き腕が無いため思うように抵抗もできず、ほとんどされるがままだった。

 突然のことに他の者らは呆気に取られていた。ゼロだけは視線をめぐらせつつ逃れる隙はないかと窺ってもいた。

 背後にまわった異形の一人が腰に下げたペーパーナイフのような道具を手に持ち、ペシュリアンの背中、左肩のあたりに宛てる。

 

「お、おい! 聞いてるのか、何を……!」

 

「その腕では、教師役は無理でしょう? ですから、せめて別の活用をと思いまして」

 

 デミウルゴスの言葉に不穏なものを感じ、表情が強張る。他の者たちも同様だった。

 その瞬間、宛がわれたナイフがペシュリアンの皮膚に差し込まれる。

 

「ぎ―――」

 

 堪らず声が漏れる。差し込まれた刃はギチギチと左肩から右肩へと走りそこから曲がり、10センチほど下がる。

 

「がああぁ、い、痛、お、やめ」

 

 ナイフが体から抜き取られ、次にペンチのような道具と鋸のような細かな刃の付いた長包丁が宛がわれる。鋸を捲れた皮膚の裂け目に差し込み、ペンチで、

 

「――――――――――――――――」

 

 絶叫が響く。長包丁を器用に前後させながら、ぶちぶちと背中の皮膚が剥ぎ取られる。

 おぞましい作業は、だが手際良く速やかに為された。

 拘束されながらも、のたうつかのように全身を痙攣させ暴れようとするペシュリアンは、血を撒き散らしながら悲鳴を上げ続けていた。

 ブラブラと揺れる皮は、薬品か何かを噴霧され、細長い立方体の容器に注がれた液体に浸される。

 そして。

 剥ぎ取りを行ったのとは別の継ぎ接ぎ男が手をかざすと、溢れるかのようだった血が止まり傷口が少しずつ塞がってゆく。ぶよぶよとした皮膚だが再びペシュリアンの背に戻っていた。

 かなりの高度な治癒魔法である。第三位階や第四位階程度では決して無かった。

 それもまた驚くべきことではあったが、ゼロたちが顔を引き攣らせた理由は別にあった。

 彼らは目の前の光景が意味することに思い至ってしまったのだ。

 その予想を肯定するようにデミウルゴスの声が響く。

 

「これならば、あと二十回は使えそうだね」

 

 そのまま、何処かへと運ばれていくペシュリアン。

 六腕とて裏社会の人間として、拷問の類など見慣れたものだ。だが自分がそれを、それも何度も繰り返し味わうというのは絶望するのに十分なものであった。

 そんな彼らに、スーツの男は微笑む。

 

「ああ、安心したまえ。先ほど伝えたように、あなた方には別の役目が与えられているので」

 

 けれど、拒否や反抗があった場合はその限りではないがね。

 そう忠告するデミウルゴスは、先ほどとは違い異質な気配を漂わせていた。隠していた本性を、敢えて(あらわ)にしたのだ。

 その姿を前にして、ゼロは逃走を諦めた。他の者たちは死人のように顔面が蒼白だ。体は恐怖で固まっているというのに、呼吸が荒く汗も流れた。

 目の前に立つモノたちは次元が違う。種としての差などという生易しいものではない。彼らにとっては六腕だろうが王国戦士長だろうが、踏み潰されるだけの虫ケラでしかない。

 それが嫌というほど理解できた四人は、一言も発することもできず、滝のような脂汗を流し身を竦める。

 巨体の騎士たちが前へ進み出る。

 

「さて」

 

 悪魔(デミウルゴス)の言葉が、囚人たちに重く重く圧し掛かる。

 

「彼らが武技を習得できるまで。頑張って死に続けて頂きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 リ・エスティーゼ王国の首都(王都)リ・エスティーゼ。

 王宮のとある一室より、二人の人物が廊下へ出て扉を閉める。

 着飾った小太りの男はこの国の第二王子ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ。

 そしてもう一方はエリアス・ブラント・デイル・レエブン。六大貴族と呼ばれる有力貴族の一人で、「蝙蝠」と揶揄されもする知恵者である。

 二人はともに大きく溜め息を吐き、廊下を進む。

 ザナックの妹である第三王女ラナー・ティエール・シャルドルン・ライル・ヴァイセルフの部屋での鼎談(ていだん)を今しがた終えたのだが、その内容に頭を痛めずにはいられないという体であった。

 父王には暗愚と思われているザナックと、狡猾な世渡り上手という印象が強いレエブン侯は、その実、腐敗の進む自国の未来を憂い、これまで水面下で改革を推し進めようと画策していた。

 先ほどは、急に重要な話があると伝えられ、陰で「化け物」と呼び警戒している相手からの呼び出しに不審を抱きながらも応じたのだった。

 だが、その内容は彼らに頭痛と胃痛をセットで届けるようなものであったため、揃って顔を顰めている次第であった。

 

「妹め、最後の最後にぶっ飛んだ性癖を暴露しおって。おかげで前半の話が吹き飛んだわ」

 

「お気持ちは痛いほど分かりますが、重要な事までは忘れないで頂きたいですな」

 

 苦笑する己の知恵袋に、同じく苦笑を返す。

 

「ああ、心配は無用だ。そちらも十分衝撃的な内容だったからな。いや、喜ばしいな。これで当分暇を持て余すなどということはない」

 

 苦虫を噛み潰したが如くといった顔で、吐き捨てる。同時に、脳をフルに回転させ、これからしなければならない行動を思い描く。しかしその(ことごと)くが、無能な貴族たちが暴挙に出ることの無いように牽制する類の事柄ばかりであるため、再び出る溜め息を抑えられずにいた。

 この度、国家経済への貢献からある人物を召致することになったのだが、異国から来た魔法詠唱者でかなりの資産家だという。

 だが、帝国とは違い王国は魔法詠唱者の地位が低い。さらに、時代に乗り遅れた選民意識が未だ根強いこの国の貴族たちは、市井の人間を搾取の対象や都合の良い奴隷程度としか見ていない。

 勿論全てがそうだという事もなく、中には良識を持ち分別を弁えた者も居るが、それでもあまり歓迎したくない展開がかなりの高確率で予想された。

 ただでさえ不興を買いたくない相手だ。さらに扱いに困る話まで齎されては、なおの事そう思うというものだった。

 

「……しかし、あの話は本当なのか」

 

「確認が取れるまで報告は控えておりましたが、私の元にも同様の情報は来ておりました。無論、鵜呑みにはできませんが、留意しておくべきではありましょう」

 

「ああ、わかっているとも。だが相手だってトブの大森林なんぞ手に入れても、どうしようもないだろうに」

 

「……実はもう支配下に置いているとか?」

 

「……笑えん冗談だ、止めてくれ。もしそうだとしたら俺は卒倒するぞ」

 

 足取りは重いまま、二人は王城の廊下を進んで行く。その先に、可能な限り良い未来があることを願って。

 

 

 

 

 

 




 今のところデミが一番異世界ライフ満喫してる。




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