ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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今回は仕組みがわかり難く議論が紛糾しているPS装甲を使う(予定)ので、PS装甲の原理について自己解釈を書き添えて始めたいと思います。(元三話からの一部コピペ)


PS装甲:電流の流れる量に応じて硬化する装甲材から作られる。
    装甲に高周波電流を流すことにより、外側と内部で断面積あたりの電流量に差が発生す
    る。電流の分布から、外側は堅く内側は柔らかい状態となり、堅く砕け難い丈夫な装甲
    となる。
    硬化は相転移に依るものであるため、変形や内部応力がある程度回復するが、電力の消費
    が多い。
    実弾攻撃でバッテリーの消費が激しいのはこの修復機能が自動で働くため。

旧版から大きめの変更が入ってます。


再筆版 三話:決断と走り

先ほどの天井の崩落で出来た足の傷は既に包帯を巻き、E()L()S()()()()()()治療を終えた。

脳量子波で、キラがあの女性を無事シェルターまで運ぶことが出来たのが分かる。

だが、肝心のキラが避難できるシェルターが既に残っていないことも分かる。

 

俺は、今クアンタを持っていない。GN粒子が薄いこの世界では、脳量子波で多数の人間と対話を行うのも難しい。

ならば、選ばなくてはならない。このまま傍観を貫くのか、それとも知った人間を守るのか。

 

中立国の立場を利用して連合のMSを開発していたオーブにも責任はあるが、民間人がいると知って攻めてきているZAFTもZAFTだ。

MS強奪でトールやキラは故郷を失うのだろうか。国家同士の理不尽に巻き込まれ、住んでいた土地を追われるのだろうか。

その確率は高いだろう。何といっても、連合は現在ZAFTのMSに対抗できる戦力を保持していない。

 

俺がMSに乗れば・・・

戦火が広がるかもしれない。10年以上もMSに乗り続けた俺の技量はこの世界では目を引くだろう。俺自身が新たな争いの火種になることすらあるかもしれない。

だが、救える命があるかもしれない。何よりも、理不尽に潰されてしまいそうな命を見捨てることを、二度としないと俺は決めた。

 

だから、選んだ。一線を越えて干渉するか、ここで退くかを。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

僕はその女性士官に呼ばれて下に降りた。降りる前に、叫ばれて分かってしまったことが一つ。

僕にはもう逃げ場がない。

 

「こっちよ!」

 

引っ張られて物陰に引き込まれると同時に、銃弾の発射される音が響く。

この機体は執拗に狙われているらしい。

機体を見た時にあの子は慟哭していたが、僕にも激情が湧きつつあった。

 

「どうして中立国でこんなものを作っているんですか!」

 

女性士官は答えない。

でも、その表情が今はそんなことを紛糾すべき時ではないと物語っている。

言葉による答えが無かったことで、むしろ冷静になれた。だから、どうやって脱出すればいいのかを考えなくてはならない。

頭を必死に回し始めた僕の目の前で、女性士官が再び発砲する。だが、今度は肩を打ち抜かれてしまった。女性士官は衝撃で倒れ、拳銃を取り落とす。

女性士官の発砲した弾も、壁や床以外の何かには当たったらしい。先ほどまでより鈍い弾着の音がした。

これ以上この人がやられたら、僕も助からない。そう頭が結論を出してしまったその時には、体が動いて女性士官を庇うように目の前に落とされた拳銃をつかんで立ちふさがっていた。

 

でも、体を銃弾とは違う衝撃が打ち貫いた。

 

「キラ・・・キラ・ヤマトか?」

「アスラン・ザラ・・・」

 

眼下のかつての親友は、明らかにヘリオポリスに攻め込んできている。

戦争になんてならないって言ってたのに。

二人とも考えたことは一緒だったらしい。だからだろうか。叫んだ言葉も同じだった。

 

「「どうしてここにいるんだ!」」

 

興奮もあってか、その緊張感は先ほどまでとは比べ物にはならない。何か小さなきっかけでも、拳銃の引き金を引いてしまいそうだ。

だが、僕が耐え切れなくなって引き金を引いてしまう前に、アスランの右膝から血が噴き出した。

同時に、さっき肩を打ち抜かれたショックから回復したのか、女性士官が僕から拳銃を奪い返し、アスランの足元に数発発射する。先のスナイパーを撃った時のことを考えれば、まだ撃たれた傷のせいで上手く体が動かないらしい。

どこかへ退避していくアスランを見て、僕にはどうしてという困惑と、死んでいないことへの安堵が残った。

 

さっきアスランはどこから撃たれたのかと辺りを見回すと、さっきまでいた欄干の上にソランさんがいた。手には、拳銃が握られている。

立ち昇る硝煙を見て、撃ったのはソランさんだと直感した。

一瞬親友を撃たれたことに怒りが湧いてくるが、少し考えなおしてみればあの状況では敵が撃たれるのは普通だ。

ソランさんは周りを見渡すこともせず、地面へと飛び降りてゴロゴロと転がりながら着地した。

 

「キラ、無事か」

「はい、ありがとうございます」

 

今日知り合ったばかりの人が拳銃で躊躇いなく人を撃ったというのは流石にびっくりだが、僕を助けるためと思うと何とも言えない気持ちになる。そもそも、拳銃は素人が扱ってもあんな風に当たるものなんだろうか?

さっきの威嚇射撃が限界だったらしい女性士官は、壁にもたれかかってソランさんを見ていたが、唐突に口を開いた。

 

「あなた、退役軍人か何かかしら」

「まあそんなところだ」

 

これはトールも知るまいと仰天しながらも考えてしまう。

ここから脱出したら教えるべきかと。だが、逆に発想から気が付いた。早く脱出しなくては。

 

「もうシェルターは無いんですよね」

 

ヘリオポリスのシェルターは、緊急時には脱出ポッドとして機能する。

だが、この女性士官の話によるとそのシェルターはもうこの辺りには無いらしい。

しかし、状況は僕たちを待ってはくれない。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「こんなOSでMSを動かそうとするなんて」

 

現実逃避気味に独り言をつぶやいて、ナチュラルの低脳さを罵ってはみるが、先ほどの光景が頭を離れない。キラがヘリオポリスへ引っ越していたことは聞いていたが、まさかこんな戦場で出会うとはだれが想像できただろうか。

罵った通りに動かしにくい新型MSが、むしろ感情よりも手を動かすことを優先させ、普段通りの働きが出来ているようにも感じる。

 

『どうやら無事に機体を確保できたらしいな』

 

後詰めとしてジンに乗り込んでいるミゲルが、オープンチャンネルで話しかけてくる。

さっと動揺を顔の奥に隠し、普段通りの冷静なアスラン・ザラを演じる。

 

「ああ。このまま帰投する」

『あれ、おい、ラスティはまだか』

 

この問いには一瞬顔が強張った。この動揺は隠しきれなかったらしく、ミゲルも苦い顔をした。

 

『・・・今はとにかく帰るんだ』

 

あの時、何故俺はラスティの遺書を受け取らなかったのか。

人が死んだときは、もうどうしようもないことばかりが頭を巡るとミゲルも言っていたっけ。

ミゲルが帰れと言ったのも、そういう精神衛生的な配慮だったんだろうか。

スラスターに点火し、コロニーの地平から飛び立つとき、ちらりと見てしまった工廠では、ラスティが奪うはずだった最後の一機の新型MSが立ち上がるのが見えた。

あれがキラなら鹵獲すればまた会えるだろうか?

混乱した今の頭では、あの瞬間が本当だったのかすらよくわからなかった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

マリュー・ラミアス技術大尉は、先ほどまでの自分の決定を自嘲気味に振り返る。頭がどうかしてたかもしれないとすら思う。あんな民間人の男を信用して試験機を預け、今はカレッジの学生と一緒に新型MS、コードネーム・ストライクに乗り込んでいる。

だが、あの男の真摯な言葉と目だけには不思議な説得力があった。いくら合理性に優れる回答を持っていたとしても、言葉を聞いたものに試験機を預けてさせてしまえるくらいには。

 

コマンド入力で、ストライクを起動する。姿勢に合わせて回転するコクピットは、常に私たちを水平に保つ。立ち上がったストライクは、当然相手から見つかる。すぐに撃たれると判断し、私の技術の粋、PS装甲を起動する。

今、外から見ればストライクの装甲は灰色から白赤青のトリコロールに変わっているはずだ。

 

すぐに、コクピットを衝撃が襲うがパラメーターから機体に異常は見られない。

更にコマンドを入力し、重斬刀を振りかざして上から攻撃してきたジンの斬撃を交差した腕で受け止める。

有効打が与えられないことに驚いたのか、敵のMSは動きが止まった。

妙な達成感を覚えたが、今は敵を叩かねばならない。だが、コマンドを入力し歩こうとした次の瞬間、ストライクは座り込んでしまった。

原因を探してコンソールを操作しようとするが、肩の痛みで上手く頭も腕も動かない。肩をがしっとつかまれて、私は意識が朦朧としていたことに気が付いた。

 

「どいてください!」

 

命が懸かっている者の目と言うのか。学生君の目は断固として譲らないという意思が見えるようだ。軍事機密だとか、学生に、なんて頭の中で弱々しい考えている私は、強引に席を交代させられる。

学生くんは、コンソールを引っ張り出すと、猛烈な勢いで操作を始めた。

 

「運動関数パラメータ、不全!メタ関数アルゴリズムから各モータの制御ボックスを随時更新、伝達式のエラー、分子モジュール接続で高速化、身体上部と下部のバランサーを分離!センサの値をパラメータへフィードバック!システムリブート!・・・ガン、ダム?」

 

私たちが数か月かけて進めてきたことを、まるで魔法のように書き換えていく。

再起動されたコンソールに、

 

General

Unilateral

Neuro-Link

Dispersive

Autonomic

Maneuver

Synthesis System

 

と、OSのタイトルが表示される。同時に、起動を確認した少年がフットペダルを押し込むと、先ほどとは比べ物にならない滑らかさで、地表を滑るように敵に接近する。そのまま、レバーを押し出し、敵のジンを殴りつける。

呆気に取られているのか、敵は中々立ち上がってこない。だが、立ち上がると猛然と重斬刀を振り回してきた。

この少年には喧嘩の経験が無いのか、なかなか近づくことが出来ない。

武器は!?と聞かれたので、もうどうにでもなれとナイフ状の武器、アーマーシュナイダーの場所を教える。

だが、この状況では武器の相性が悪すぎた。ナイフのような刃渡りの短い武器は、達人が使って初めて効果が出るものだ。あっという間に手首を叩かれてアーマシュナイダーは弾き落され、コクピットにアサルトライフルを突きつけられてしまった。

 

試験から接射にも耐えられるとはわかっていても、コクピットにこうして銃を突きつけられると動くことが出来ない。

ああ、この最後の希望も持って行かれるのか。目の前の少年の事も忘れて自爆コマンドを打ち込もうとしたが、いきなり大きな金属音がしてジンが数歩後退する。

後ろには、白く塗装されたジンが死神のように起立していた。




戦闘に刹那が乱入するタイミングが変わりました。
それと、説得のシーンを回想少しに変更。
なんだか思い返すと説得力無くて・・・

戦闘シーンはまだまだうまく書ける気がする。

もしかしすると最新話の方は更新できないかもしれません。すいません。

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