ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結> 作:MS-Type-GUNDAM_Frame
刹那の駆るジンには、アルテミスでいくつかの修理を兼ねたアップグレードが施されていた。
◇回想◇
MSドックで、マードックが声を大にして叫んでいた。
「だから言っただろ!曹長の方が強いってよ!」
一方で、やらかした、と顔に書いてある作業員が口から生気を漏らしながら後悔の言葉をつぶやいている。
「大穴に目が眩んだおれがバカだった・・・・」
「じゃ、約束通り曹長のジンの改修頼んだぜ!」
「ちょっと部品変えるだけじゃないですか」
「お前の勉強になるだろう?頑張りな」
「はぁ~・・・。しかたねぇ、やるか」
ここでの改修とは、四肢をの動きを補助するスラスターの出力向上と、タンクの大型化だった。
作業員の男が取り付けを始めた所で、刹那がドックに顔を出す。
「作業の進捗を聞きに来たが・・・」
「おお!旦那!いまあいつにやらせてるとこだ。あと五時間ってとこでしょう」
マードックの声がよく通るためか、作業をしている本人からも返事が返る。
「三時間でいけます!」
「丁寧にやれよ!」
「・・・ありがとう」
「いいんですよ旦那!俺たちも勉強になるってもんです」
「そうか」
刹那の改良案で、ジンのフレームを強化する案は既に完了していた。
「魔改造ってこのことだな」
作業員のつぶやきは誰に聞こえることもなかったが。
◇回想終了◇
現在、刹那のジンは目標をロストしていた。
(レーダー、熱源センサにも反応なしか)
殿を買って出たと思われる黒いMS、おそらくはブリッツは、光学的に完全な迷彩であるミラージュコロイドでの迷彩を搭載している。音までは隠せないものの、宇宙では音は伝わらないため、実質は完全な隠蔽機能と言って差し支えない。
(戦闘機動中も隠れることができるとは大した技術だ)
かつて刹那が搭乗していたエクシアをはじめとするガンダムにも迷彩機能は搭載されていたが、戦闘中の展開は不可能だった。
(どう対応したものか・・・)
対抗手段が無いわけでもないが、それを手札として切るかどうかを迷っている。
結果的に、相手の出を待つことになった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
一方のニコルはというと、こちらは相手がかかってこないことに安堵していた。
撤退の指示を出した以上、あまり一人で戦場に留まるのは得策ではない。
「機を見て離脱しましょう・・・PS装甲を展開しても気絶して捕虜になったんじゃどうしようもありません」
おそらく、相手は自分にビームを打たせて位置を把握しようとしているのだろう。
本来、虚空から出てくるビームを避けるなど人間業ではないが、おそらくあのパイロットにはやってのける自信があるのだろう。
あまり長引かせてバッテリー切れになるのも不味い。
ニコルは、ランサーダートを一本、近場へ投擲した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
(!)
刹那から見て左上の方向で小規模な爆発が発生した。
同時に、ブリッツが姿を現し、後方へ撤退していく。
(逃げられたか)
おそらく、後詰めにナスカ級が要塞の攻略にかかるだろう。
さすがの刹那にも、要塞一つを敵から守り切ることは難しい。
出来ることといえば避難を促すくらいだ。
自身も離脱しようとしたところで、アークエンジェルから通信が入った。
「曹長、無事ですか?」
「ミリアリアか?ああ。無事だ。今から帰投する」
「待て」
「なんだ、バジルール艦長?」
「馬鹿者!軍属なら目上には敬語を使え!」
「すまない、善処しよう。それで、話は?」
「まったく・・・曹長、当艦はこれより月基地へ向けて航行を開始する。指定のポイントへ移動し、回収する」
「了解した」
すぐに、座標データがジンのコントロールパネルへ送られてきた。
刹那のジンは、目標へ急行する。
◇◇◇◇◇◇◇◇
結果から言うと、脱出は上手くいった。
「サイ~、会いたかったわ~」
乗員が一人増えてはいるが。
「ちょ、よせよ、今みんな見てるから」
「じゃあ後で部屋に行くわ!また後でね!」
「はぁ」
また、そんな二人のやり取りを、キラは何とも言えない顔で見ていた。
「話しかけなくても良いのか?」
「トール・・・」
「略奪愛しなくてもいいのか~?」
「りゃ、僕はそんな・・」
「なに?キラのフレイが好きってその程度の気持ちだったの?」
「ミリアリアまで・・・」
実際、キラの心中は複雑だった。
確かに好きな女の子が楽しそうにしゃべっているのはショックだが思っていたほどではないし、サイのことも大切な友人だ。
それに、最近ちらちらと頭の隅でヘリオポリスで会ったあの金髪の女の子のことも浮かんでいる。
これがミリアリアの言う通りその程度しかフレイのことが好きではなかったのか、あの気持ちは偽物だったのか、自分が本当に好きなのはあの金髪の子なのか?
正しくキラの頭の中は混沌としている。
そこへ、トールが声をかける。
「ま、どれがホントかわからないなら一旦全部忘れて別のことやった方がいいぜ」
「な、なんで」
「勘だよ勘!行こうぜミリアリア。あっちで整備班の人が温泉作りたいとかなんか面白そうな話してたんだ」
「温泉!?艦の中に!?」
トールは一瞬だけキラの方を向いてウインクすると、ミリアリアと一緒に休憩スペースへ行ってしまった。
「もてるはずだよ・・・」
キラはトールの空気を読むスキルと気遣い能力の高さに舌を巻いていた。
そしてトールのアドバイスを思い出し、自分の頬を叩いた。
「ムウさんに言われてたナチュラル用シミュレーターのプログラム、作っちゃおう」
なんだかんだで立ち直ったキラは、自室に籠って作業を始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ブリッジでは、第八艦隊と偶然通信が取れ、ハルバートン准将と面識のあるマリューを折衝役に合流のポイントの話し合いをしようとしていた。
だが
「娘がそこにいるのか!」
突然一人の男性が声を上げた。
「失礼ですが、そちらは?」
「大西洋連邦理事のジョージ・アルスター氏です」
「!、これは失礼をいたしました。連合軍技術大尉、マリュー・ラミアスです」
「おお!君があのGシリーズの開発責任者の!一度会ってみたいと思っていたのだ!」
「恐縮です」
「よし、ここで待っていてもらちが明かない!私が直接会いに行きましょう」
「は?今、なんと」
「艦を一隻借りるよ、ハルバートン君。なに、心配はいらない。大西洋連邦の中でも第八艦隊の練度は指折りだ。おっとこうしてはいられないな。私も準備をしなくては。では諸君、次は直接お会いしよう」
画面からジョージ氏が消えると、ハルバートンが疲れ切った表情で頭を抱えていた。
「ずいぶん行動的な方だったんですね・・・」
「ああ、現場に出てきてくださるその心意気は素晴らしいの一言なんだがね・・・」
「こちらには二機のMSがありますので、なるべく早く到着して護衛いたします」
「ありがとう、バジルール艦長。彼は我々にとって欠かすことのできない人物だ。全力を尽くしてくれたまえ」
ここで、ハルバートン氏の近くにドリンクケースと薬包が持ってこられる。
「ああ、胃薬か、ありがとう。まったく君は優秀な副官だよ」
「お褒めにあずかり光栄です」
副官は笑みを浮かべながら敬礼し、画面にも一礼して去っていった。
「では改めて、頼んだぞ」
「「「はっ!」」」
ブリッジの三人には、これ以上ハルバートン准将の胃に負担を掛けるわけにはいかないという共通認識が生まれていた。
特に、士官学校で教え子だったマリューは、ハルバートン准将の人となりを知っているためにそれが顕著だ。
バジルール艦長がパイロットの部屋へ連絡を取る。
「曹長か?ちょっと頼みたいことが・・・」
トップの気味が悪いほどの連携の良さが、運命を変える。
ハルバートンさんは優秀でしかも快活な人当たりのいい人ですが軍人のため断れない無茶ぶりを受けて胃がリンチにあっています。
付録
トールの彼女倍率
一般的マンモス大学の女性の半分は狙ってるレベル
5/20追記
戦艦は一席ではなく一隻と数えます(修正しました)