ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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もうすぐ地球に着きます。
このやっと感すごい・・・

ここまでこれたのは一重に読者の皆様のおかげでございます。
ありがとうございます。


19話:ジョージ・アルスターという男<後編>

「そろそろ合流できるかね?」

「ええ、准将」

 

月軌道にて、世界にその練度の高さを知らしめる第八艦隊がその威容を示しながら続々と集結していた。

 

「ふふ、彼女と話すのも久しぶりだな」

 

ハルバートン准将は普段から温和な人物ではあるのだが、このときは普段よりも親しみに満ちた、父親のような顔をしていた。

 

「彼女もここまで心労もあっただろうが・・・よくここまで来てくれたものだ」

 

旗艦のブリッジのメンバー全員が、それはあなたもだろうと、うっすら目に涙を浮かべているあたり彼の人徳が窺える。

 

「さて、諸君、この付近の宙域にあのクルーゼ隊が接近しているとの情報がある。後一仕事で、我々は連合を大きく勝利へと近づけることが出来るわけだ。彼らを無事地球へと送り届けたら、基地でパーティーを開くとしよう!是非参加してくれたまえ!」

 

実は、現在連合の勝率は3割にも満たない。

メビウスとジンでは戦力が違いすぎるのだ。

そんな彼らにとって、Gは正に希望の星である。

しかも、それが全戦全勝の勝率を保っていると聞けば皆彼ら、アークエンジェルのクルーたちへ賭けたくもなるだろう。

 

「准将!アークエンジェルから入電です!」

「おお!それで、なんと?」

 

一瞬、通信担当の兵士の顔が青くなる。

 

「現在、クルーゼ隊と思しきZAFTの部隊と交戦中とのことです!」

 

ブリッジの間に緊張した空気が流れる。

 

「皆、覚悟はいいな?」

 

ハルバートンの問に、ブリッジの全員が強く頷く。

 

「では、全艦隊に艦長より通達!船腹を敵ナスカ級へ向けて回頭!ミサイルをすべて近接信管にセットして発射準備だ!」

「続いて副官から全ネルソン級に通達!全艦ビーム砲の発射準備!目標、敵ローラシア級!」

「アークエンジェル、及びバーナードへの通達完了しました!」

 

ラウ・ル・クルーゼの名前は、世界樹攻防戦において人間とは思えないその戦果から、連合、ZAFT問わずその名を知られている。

ましてや、自分たちの開発したGを四機も奪取されているのだから、その危険性は言うに及ばずだ。

だが、第八艦隊の士気は高い。

全員が目的を理解し、共有する第八艦隊は、必ずやアークエンジェルを地球へ送り届けるという意思をその全ての所属兵士が一丸となって動く、まさに軍隊の理想形と言えるものだろう。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

現在、ヴェサリウスはアークエンジェルに追撃をかけていた。

全員が、つい先日までプラントの歌姫救出という任務をこなしていたとは思えないほどの元気さだ。

 

それもそのはず、艦の乗員はラクス・クラインに声をかけられて皆有頂天だった。

 

イザークが普段見られないような笑顔だったこと、ニコルが完全に音楽家に戻っていたこと、ディアッカが部屋に誘ってリンチにあった事、アスランが嫉妬と羨望と憧れの視線を向けられ、かなりの居心地の悪さを味わっていたことをここに記しておく。

 

加えて、ラクスが宇宙で彷徨う羽目になったのは地球軍のせいだと知った時、彼らを止めるものはどこにもいなかった。

 

「諸君、これから第八艦隊と交戦するわけだが・・・」

「ええ、ナチュラル共に正義の鉄槌をくだしてやりましょう!!」

「そうだ!ラクス様をあんな目に合わせて!生かしておけん!」

 

正直クルーゼとしては、自分のような存在を生み出した要因であるコーディネーターが正義など・・・、と失笑モノなのだが、そこはあえて黙っている。

 

「ふむ、士気は十分なようだ。ここはZAFTらしく、パイロット諸君には個々の力を発揮して戦ってもらうとしよう」

 

イザーク、ディアッカは待ってました!と言わんばかりの顔で詳細を急かし、パイロットスーツに瞬く間に着替えて出撃していった。

ブリッジにまだ残っているニコルとアスランに、クルーゼが顔を近づけてささやく。

 

「君たちは彼らほど浮ついてはいないな?引き際を彼らにしっかりと知らせてやってくれ」

「了解」

「了解です。行きましょう、アスラン」

 

イザークとディアッカに続いて、アスランとニコルも出撃していった。

 

「隊長は出撃されなくてよろしいので?」

「彼らが危なくなったら出るさ」

 

ジンの部隊をメビウスの部隊にぶつけ、戦力を削るだけでも戦果としてはかなり美味しい。

メビウスは量産できてもパイロットの育成には時間がかかるからだ。

国力で大幅に劣るZAFTとしては、連合の戦力は削れるときに削っておきたい。

 

(彼らを焦らせた方が、こちらにも都合がいいからな・・・)

 

もちろん、クルーゼ本人にも得があるわけだが。

 

「後10分ほどで第八艦隊の射程に入ります」

「アデス、相手はあの知将ハルバートンだ。ゆめゆめ油断するなよ?」

「はっ!」

 

ヴェサリウスのモニターに、次々と発進していくジンが映っている。

クルーゼは、薄い唇を僅かに曲げて笑っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「キラ!準備は良いな!」

「ムウさんがあれほどやらせなければ・・・」

「なんか言ったかチャンドラー!」

 

アークエンジェルのブリッジでは、ムウとキラがハルバートン准将から伝達された作戦の説明を受けていた。

 

「そういやアイツは?」

「曹長ならもう準備を済ませているはずだが?」

「まじかよ・・・」

 

実際はムウとキラが寝坊しただけのことである。

 

「じゃあ俺が右翼で」

「僕が左翼ですね」

 

ちなみに刹那は右翼の守りである。ストライクは近接戦も遠距離戦闘もこなせるバランスの良い装備だが、刹那のジンは経戦能力が悪すぎて遠距離戦は不向きだし、ムウは近距離戦闘は不可能に近いため、バランスをとってこの配置である。

 

「ああ、速やかに行動しろ。速やかにな」

 

「はい!」

(大事なことだから二回言ったな・・・)

 

顔がくすくすと笑っていたフラガ大尉は頭をはたかれたが、その後は急いで準備を終えて発進準備を進めた。

 

『艦長』

「アルスター理事、何の御用でしょうか」

『見せてもらったストライク。素晴らしい出来だった。まだまだ改良を重ね続けているとは頭が下がる思いだよ。

連合の未来、君たちに預けたぞ』

「・・・!はっ!必ずや、アラスカ基地まで辿り着いて見せます!」

『いい返事だ。大尉には、追加の予算を組み込んでおくことを伝えておいてくれたまえ。

娘のこともよろしく頼むぞ。・・・その、私では連れて帰ることが出来なかったからな・・・』

「はっ。ご武運を祈ります」

『こちらこそ、だよ。頑張り給え』

 

「嵐のような人でしたね・・・」

「居なくなると寂しい気もします」

「そこ!私語は慎め!」

 

「「イエスマム!」」

 

余談だが、アークエンジェルの正規クルーの中で最も人気なのはマリュー・ラミアス大尉、次点はナタル・バジルール中尉である。

評価の声を聞くと・・・

「叱られたい」

が多数を占めているとかいないとか。

 

叱られて笑っているトールを、ミリアリアがすごい顔で見ていたのは偶然見てしまったキラしか知らないことであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「おう、遅くなってすまん!」

「昨日は訓練しすぎですよ・・・」

 

まだキラは体力があまりないため、先日の疲労から回復しきっていないようである。

 

「俺の方はいつでも大丈夫だ」

「こっちもだよ。そんじゃ行きますか」

 

刹那たちがMSへ乗り込もうとしたとき、キラは動けずにいた。

 

「僕は・・・」

「キラ」

「何ですか?ソランさん」

「殺人はヒトを変える。永遠にな。だから覚悟がないなら・・・お前は当てなくてもいい。

ただし、生きた敵がお前の周りをどうするかは忘れるな。

・・・俺からはそれだけだ」

「まあ、お前さんが逃げ回ってるだけでも周りからすれば大助かりだ。せいぜい上手くやりな」

 

刹那はキラをその瞳で一瞥してジンに。

ムウはキラの肩をポンと叩き、メビウス・ゼロにそれぞれ乗り込んでいった。

 

キラは、少しドックの中を漂っていたが、間もなくストライクに乗り込んだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ブリッジでミリアリアが声を響かせる。

「メビウス・ゼロ、ジン、ストライク、発進どうぞ!」

「ムウ・ラ・フラガ、メビウス・ゼロ、行くぜ!」

「キラ・ヤマト、ストライク、発進します!」

「ソラン・イブラヒム、ジン・メビウス、発進する」

 

三機は、それぞれの決められた方向へと飛び去って行った。




次回、キラはついに・・・

余談の女性士官人気ランキングは作者のねつ造です。

この19話が更新される頃、私は必死に翌日の面接の練習をしていることでしょう。
ちゃんと20話も更新するからね!

9/8追記
ヴェザリウス→ヴェサリウス

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