ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

33 / 60
アドバイスを頂いて一つずつレベルアップを重ねていきます・・・

RPGみたいだな!


25話:この戦争

現在、私たちはアジトから北に数キロ離れた町の地下にて、武器商人と軍需物資の取引を進めている。

 

「では、こちらがご注文の品になります」

「うわ・・・純正品じゃないか!」

 

ノイマン曹長の驚きようも納得だ。

しかし、連合がこのような地区まで品を流通させているとは驚きだ。

横流しとして敢えて敵の勢力圏まで流通網を作るなど、私には思いもつかない。

だが・・・

 

「この水の代金は高すぎやしないか?」

 

軍需物資は納得できる価格だが、真水の値段が高すぎる。

しかし、この質問は相手方もわかっていたようだ。

 

「この地では、水は大変貴重なものです。それをこのような量用意させていただきましたから、多少はお勉強させていただいています」

「すまんが、これは俺にもどうしようもない」

「そうですか。では支払いを」

 

サイーブ氏がここまで来る途中に提示した追加の条件を思い出す。

 

『一応艦長のあんたには話したが、カガリを連れて行ってもらうとこっちの借りが大きすぎるからな』

 

支払いをしなくていいというのはありがたい話なのだが、まさか彼女が・・・

 

「艦長?」

「ああいや、すまない。退出しよう」

 

艦長は退出ですよ?と続きを予想したのだが、実際は体調が優れないのでは・・・と商談中に顔を顰めたり顔を青くしたりした艦長を気遣ったものだった。

残念ながらどちらもお互いが勘違いしているとは知る由もないのだが。

なんとなく察しがついているのか、サイーブは冷ややかというかあきれ顔というか・・・兎に角微妙な顔をしていた。

 

「しかし少尉たちは大丈夫ですかね」

 

その質問には、二人が答えた。

 

「まあ曹長がいるさ。問題なかろう」

「あの兄ちゃんだろ?まああいつがいりゃあ大抵はどうにかなるだろ」

「まあそうですね・・・」

 

一方のキラたちはと言えば・・・

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「アイシャ、彼女を着替えさせてやってくれ」

「まあ、またケバブ?もう職人を雇えばいいじゃない」

「分かってないねー、外で食べるから美味しいんじゃないか」

 

キラたち一行は、砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドの家に来ていた。

キラと刹那は無事だが、カガリはヨーグルトソースにまみれてしまっている。

そして、カガリは目に見えて怒りの沸点が近づいている。

 

「お前がシャワーを貸してくれるって言うから・・・」

「もう少しそのままならヨーグルトソースの良さがわかるんじゃないかい?」

「お前なぁ・・・!」

「はいはいそこまで」

 

カガリの額にはっきりと青筋が立った所で、金色のメッシュが入った女性・・・アイシャが止めに入る。

 

「アンディ、あんまりヨーグルトソースをそんな風に使ってるとダコスタ君に怒られるわよ?」

「それは困るね。彼女をシャワールームに頼む」

 

アイシャはふふっと笑ってカガリの肩を抱いた。

 

「それでいいのよ。さ、行きましょう」

「あ、ああ・・・」

「カガリ!」

「あら心配?でも綺麗になるところは男の子には見せられないわ?それとも・・・」

 

連れ去られるカガリは一抹の不安を拭えない、といった体でキラの方に目を向けたのだが、ぼそぼそという声の直後顔を真っ赤にして抵抗が止まり、どうしようもなくそのまま連れ去られて行ってしまった。

 

「大丈夫ですかね・・・」

 

キラとしては、自分の身分がばれていないかとひやひやしているのだが、刹那が答えるよりも先に答えが出た。

 

「彼女のセンスは中々だ。期待してくれていいよ?連合のパイロット君たち」

「なっ!」

「・・・」

 

キラは焦って思わず腰の拳銃を目で追ってしまったが、刹那はあまり驚いた顔もせずじっとバルトフェルドを見ている。

 

「ふむ、君は気づかれている。と、気づいていたのかな?」

「ああ」

 

キラとしては、一声欲しいくらいだったが、どこで口にしても聞かれていただろうとも思いなおす。

目の前では話がなおも続く。

 

「まあ、今回君たちに手を出すことはないよ。君たちは客人として此処に来ているわけだからね」

 

そう言って、虎は身を翻して刹那達に背を向け、こっちだ、と扉を開ける。

付いて行っていいのか?とキラは刹那の方を見るのだが、刹那は何も聞かずに頷く。

ああ、勘が良いというのか・・・そう、トールと似てるんだ。

キラの中では、トールと刹那は勘の良さという点ではいい勝負だ。

だから、お互いに全て分かっているものとして刹那と共に、虎に続いて扉をくぐった。

 

そこは、応接間のようだった。

品の良い、それでいて質素なソファや机が置かれている。

恐らく昔はシャンデリアが置かれていたであろう天井には電気照明が置かれ、シーリングファンがくるくると回って空気を掻きまわしていた。

空調もどこかにあるのだろう。空気は少しひんやりとしている。

刹那は、昔の癖で逃走経路を眼で探す。

窓くらいしか目立った出口はないが、その外には数体のMSが置かれていた。

自分一人ならともかく、キラとカガリが逃げられないだろうと結論を付け、ソファに腰を掛けた。

キラも、刹那に続いてソファに座った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

バルトフェルドは、自分の執務机から来客用の成功したブレンドの豆とミル、ドリッパーを取り出す。

・・・さて、お客人のお気に召すかな?

成功したブレンドの味を他人に批評してもらうのも、ケバブに並ぶ彼の趣味である。

 

「君たち、コーヒーは好きかな?」

 

刹那は、嗜む程度には。キラは、あまり飲んだことが無い。そう答えた。

ああ、これはいい感想が聞けそうだと、少しほくそえんで豆を挽き、お湯を沸かし始めた。

丁度豆を挽き終わったところで呼び鈴が鳴る。

 

「アイシャかな?」

「ええ、そうよ。さ、入ってきて」

 

多分見違えるような恰好なんだろうなとバルトフェルドは予感する。

先ほど意見の相違があった(ダークサイドに堕ちた)彼は、仲が良かったようだからきっといい反応が得られるだろうと、そちらを振り返っておくことにした。

 

「わ、笑うなよ!?」

 

入ってきた彼女が相当な変わりようだったであろうことは、少年の顔から分かった。

何といってもこの驚きようだ。

口が大きく開いているし、頬の紅潮も顕著だ。

おまけにそのまま固まってしまっているし・・・

 

「アイシャ・・・おお、なかなか綺麗になったじゃないか」

「からかってんのか!?」

 

言葉遣いさえ直せば、どこぞのご令嬢と言っても通るんだろうな。

そんな風に思えるくらい、このお姫様のような服を()()()()()()()

翠と白を基調にしたドレスを、自然体で着こなしている。

 

ああ、ストライクの方の少年。そんなほめ方じゃあ振り向いて・・・いや、まんざらでもないのかな?

思えば、昔から人の反応を見るのが好きで広告心理学者なんてなったのかもな。

では、コーヒーも丁度蒸れて入れ時だし、こちらの反応も見せてもらおうか。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「これは・・・」

 

恐らく、オリジナルのブレンドだろう。

自慢げな顔でこちらを見ている虎の顔は、子供のようでもある。

どうだい?と聞かれ、素直に感想を述べる。

 

「驚いた。素晴らしい味だ」

 

そうだろう。と、嬉しそうに顔をほころばせる。

一応先にあちらが飲んでから口をつけたが、杞憂だったようだ。

隣のキラと、さらにその隣のカガリが恐る恐る口をつけ、全く同じように目を見開いた。

 

「すごくおいしいですよ!」

「ホントだ!旨いな!」

 

二人からその感想を聞けて満足だったのか、バルトフェルドはうんうんと頷いている。

だが、キラは次の言葉の衝撃に吹き出しそうになったようだ。

 

「それで、ストライク、だったな。凄まじい腕だね、君は」

 

先ほど同様笑顔だが、目が笑っていない。

手が、勝手に拳銃の位置を探る。

一瞬で警戒をむき出しにしたこちら側をみて、バルトフェルドは両手を挙げて向かいのソファに腰を下ろした。

 

「君、コーディネーターだろう?」

 

真っ直ぐに目を見つめられたキラは、答えに窮しているが、勝手に話が進んでいく。

 

「君の戦闘を二回見た。一度目は、砂漠上であっという間に歩行用の運動パラメーターを書き換えた。

二度目には、砂漠の熱対流を一瞬でパラメータ化してしまった。

しかも、砂漠で二足歩行型MSを使ってあんな速度まで出している。

正直、君がナチュラルだなんて言われたら、それこそ何かの冗談だ」

 

言いたいことをひと段落言ってしまったのか、バルトフェルドはコーヒーを一口含んでキラの反応を待っている。

 

キラからは質問の意図がつかめないからだろうか、困惑が。

カガリからは、少しの困惑と温かさが流れてくる。

 

キラは、腹をくくったのかバルトフェルトをはっきりと見て言った。

 

「はい。僕はコーディネーターです」

 

バルトフェルドは何とも言えない笑いを顔に張り付けているが、続く一言は予想できなかったのか、一瞬無表情で顔が固まった。

 

「でも、そんなことはどうでもいいことじゃないですか」

 

・・・これは、俺がアークエンジェルに乗っているからの特異な思考なのだろうか。

少なくとも、コーディネーターとナチュラルに分かれて戦争をしているのだからそんな考えの人間は少数派だろう。

バルトフェルドは、そんな考え方の人間ではなかったようだ。

 

「大した問題ではないと。そういう言うことかい?」

 

今度はこちらへ眼を向けて言った。

だが

 

「ああ、その通りだ。俺はナチュラルだが・・・キラと同じ人間だ。考え、食べて、寝る。何も変わらない」

 

今度こそ納得できない答えだっただろうか。

バルトフェルドからは、失望と諦念・・・少しの羨望が感じられる。

 

「それは夢物語だよ」

 

今、俺は理解した。

この男は諦めてしまったのだ。

だが、それは間違っている。

 

「だが、少なくともこのコーヒーは等価だ。

俺もお前も同様に楽しむことが出来る。

対話で分り合うことへの道が開ける。

ナチュラルとコーディネーターが分り合えば、この戦争は終わる」

 

「それこそ夢物語だよ。

うちの連中も、コーディネーターがナチュラルより優れていると言ってはばからない連中だよ。

この戦争は、ナチュラルとコーディネーターがお互いの違いが許せず始まった戦争だ。

こうして価値を共有できる人間はわずかなんだよ」

 

「それでも、お前が疑問に感じていることはお前を責め続けるだけだ。

だから非情に徹しきれず、街の住人を逃げさせた」

 

「あれは・・・」

 

バルトフェルドは否定しにかかるが、俺は断固として譲るわけにはいかない。

 

「お前の疑問が形になったようなものだ。

分り合えるはずだと。そう頭のどこかで考えているのではないか?」

 

バルトフェルドの顔に、一瞬悲しみがよぎるが、本当に一瞬だった。

 

「さて、今日はこのくらいにしておこう。

さもないと、君たちも僕を撃ち難いだろう」

 

バルトフェルドはすくっと立ち上がって、先ほど入ってきた扉を開く。

 

「僕たちは、分り合える()()()()()()

だが、その可能性を選ぶのが怖くて選べないんだ。

みんながみんな、君のように強いわけではない・・・

久しぶりに有意義な話が出来て良かったよ、奇妙なパイロット君」

「・・・ソラン・イブラヒムだ」

「・・・次はまた戦場で会おう、ソラン君」

 

バルトフェルドが俺とキラの、アイシャという女性がカガリの手を引いて、宅の外へ連れ出す。

 

「町のはずれまでは送ろう。そこの車に乗りこめ」

 

後部座席に三人が押し込まれ、運転席にバルトフェルドが乗り込む。

車は颯爽と走り、すぐに町のはずれまで到着した。

 

「憎しみは無くても・・・

結局、プラントという国に愛着があるのさ」

 

車の中では終始無言だったが、車を降りたところでバルトフェルドはそう言った。

 

「またお前と()()()()()()()()()()()()()()戦うのを楽しみにしているぞ!」

 

言うだけ言って逃げるように車を発進させたバルトフェルドに、カガリがそう叫んだ。

少なくとも、その言葉が強く彼に響いたのは空間を埋めつくすほどの歯がゆさと口惜しさから確かだろう。

 

 

 

その後、砂漠の虎に掴まっていたと聞いた艦長から数時間にわたる説教と反省文の提出を命令された。

物資の補給は上手くいったようで何よりだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

アークエンジェルの自室で反省文を書いていると、ノックの音がした。

 

「キラ?いるか?」

 

その声は間違いなくカガリだ。

 

「空いてるよ?」

 

何の用だろう。

そう疑問には思ったけれど、特に表に出さずに招き入れてしまった。

 

そういえば二人っきりだ。

・・・すごく緊張する。

 

なんだか顔が見せられず、反省文に集中するふりをする。

けれど、カガリは後ろから話しかけてきた。

 

「お前、コーディネーターだったんだな」

 

多分、鏡があったら自分の顔から色が無くなるのが見えたと思う。

その位顔から血の気が引いたような気がした。

サーっという音がしなかったのが不思議なくらいだ。

今度は、恐怖のあまり後ろが見れない。

 

直後に頭が捕まえられた。

いや、後ろから抱きしめられたの方が正確かもしれない。

しかも、次の言葉も(想像という機能が働いていたかは別にして)全く想像してない言葉だった。

 

「今まで大変だっただろ?」

 

どうやら僕がコーディネーターだから大変だっただろうということらしい。

でも、それは間違いだ。

 

「この艦にそんな人はいないよ」

 

みんな、僕に良くしてくれる。

コロニーでだってそうだ。

コペルニクスで、僕がドジだからっていじめていたような人とも違う。

一緒に向いていることを探して、結局大学のゼミまで同じだ。

ああ、思えばアスランも僕に良くしてくれて、それでうちに遊びに来るくらい仲良くなったんだっけ。

 

「みんな、僕がコーディネーターだからって変な目で見たりしないし」

 

だから

 

「だから、僕がみんなを守りたいんだ」

「そっか・・・」

 

分かってくれたんだろうか?

 

「でも、だったらお前が死ぬとみんな悲しむぞ?」

 

それは、思ってもみないことだった。

 

「それは」

 

一瞬言葉に詰まったけど、その一瞬でカガリに頬を手で捕まえられて顔を向かい合う向きに固定されてしまった。

 

「悲しむに決まってんだろ?それが友達・・・だろ?多分」

 

確かに、当たり前だ。

そっか、なら僕は、すぐに答えられないといけなかったんだなと痛感する。

 

「うん、そうだね。無茶はしないようにするよ」

 

だからまたソランさんに鍛えてもらわないとな・・・

実力があれば無茶も無茶じゃないわけだし

 

「じゃあ私は行くけど・・・その、あれほんとか?」

 

・・・?

何だろう。

もじもじしてる。

かわいいけど。

かわいいけど。

 

「虎の屋敷で言ってたこと」

「えっと・・・?」

 

何だろう。

思い出してみたけれど、思い当たるのは一つしかない。

 

「うん。お姫様みたいで奇麗だったよ?」

「そ、そうか。じゃあな!」

 

そう言って、せかせかと出て行ってしまった。

なんか変な事言っちゃったかな?

 

「キーラー」

 

トール?

 

「見たぞ・・・?」

 

本日二回目だけど、さっきまでのやり取りやカガリが今さっき出ていったことを思い出して頭が真っ白になった。




バルトフェルドさんは迷いがあっても全力は出すタイプです。
行動に甘さは出ますが。
何といっても砲台は別の人間だからね!

カガリは頑張ればヒロイン力高い!
・・・ええ、最近自分がやばい奴な自身はありますよ?
カガリに友達がいない?
なのは原作見てる人は分かるよね?

今回は地の文を足してみました。
分かりやすいといいな。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。