ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結> 作:MS-Type-GUNDAM_Frame
分り合えるか?これ
なお、感想で希望のあったロックオン(ニール・ディランディ)との再会が番外編に載ってます。SEED×00:Extra_Contentsで確認どうぞ。(十分で作ったのであまり出来は良くないです)
「じゃあ偵察だが・・・」
ムウは、ようやく本来のパイロットとしての仕事に立ち戻ろうとしていた。いわゆる斥候である。
「嬢ちゃん、指示にはちゃんと従えよ?」
更に、シミュレーター成績が非常によかったカガリがスカイグラスパー二号機で同行する。
「分かってるよ」
最初はキサカが止めたのだが、延々と抗議し続けるカガリに折れ、エンデュミオンの鷹と一緒ならと泣く泣く許可を出した、という経緯がある。ただし、絶対服従を念押しされていたが。
「んじゃ、ムウ・ラ・フラガ、スカイグラスパー出るぜ」
「スカイグラスパー、二号機出るぞ」
現在、航行中のインド洋は雲が疎らに出てはいるが概ね視界は良好だった。だが、視界が良かろうと悪かろうと敵がいるときはいる。
「なあ大尉、あれ」
「あー、輸送艦だな。どう見てもZAFTだ。良く見つけたな」
「眼は良いんだ」
「おい、撃墜しようとか考えんなよ?中に空戦型MSでも積んでたらお前一瞬で藻屑だぞ?」
幸運なことに、ZAFT空輸艦は空戦型MSは積んでいなかった。
不幸なことに、ZAFT空輸艦は二機のスカイグラスパーに気が付き、かつ空戦可能なMSを積んでいた。
「おいおい、気付かれちまったみたいだな」
「撤退か!?」
「ああ。流石にあいつらの援護が無いときついぜ!」
ムウの判断では、この足場の無い状況でこちらへ足の遅い輸送艦が向かってきているということは、十中八九こちらを撃破可能な戦力が積まれているはずだ。それが空戦型か空中戦闘可能なMSかまではわからないが、戦力評価については敵のパイロットと全くの同意見だった。
「先に行け!分かってると思うがお前は一直線に退くんだぞ!迂回して撃墜されたりしちゃあの特殊部隊の兄さんにぶっ殺されちまう!」
「分かってるよ!」
実は迂回して敵を撒こうと考えていたのだが、流石に直接言われては指示に従う。
だが、重なる不幸で、今回はそれが最悪の選択だった。
「こちらアスラン・ザラ。敵機の退路を塞いだ」
『では攻撃を仕掛けた後、五分後に回収に来よう。幸運を祈る』
雲の一つに隠れ、背後からイージスが迫っていたのだ。慌ててカガリはビームライフルを発砲するが、イージスの盾に阻まれた。逆にカウンターを取られ、コクピット狙いの一撃こそ躱したものの翼の一部を失い、近くの無人島へと煙を曳いて流れていく。
イージスは追撃を狙ったが、ムウのスカイグラスパーが二点射でビームライフルとフライトユニットを正確に打ち抜いた。
現状Gシリーズで単独飛行が可能なのはキラたちにカスタムされたエールストライクだけなため、当然イージスもまた墜落していく。
ムウも追撃は狙ったが、アラートから背後と前方のイージスから挟み撃ちにされることを察し、いち早く離脱を選ばされた。ただし、背後の輸送艦に12Gの縦ループターンで奇襲し、ミサイルを一つお見舞いする。
輸送艦は何とか撃墜したものの、弾薬不足でアークエンジェルへ引き返さなくてはならない。
「待ってろ、嬢ちゃん」
ムウは、歯を砕かんばかりに食いしばり帰投した。
◇◇◇◇◇◇
無人島では、カガリが縛られていた。イージスのコクピットにしまわれていた食料で料理をしているアスランの頬には、立派な紅葉がついている。
「その・・・すまない。君の心情を考えれば許してもらうのは難しいとは思うが・・・」
「なんだよ。キラはもっと思いやりがあったのに・・・」
「キラを知ってるのか!」
「デリカシーの無いヅラには教えん!」
「これは地毛だ!」
不毛なやり取りは数分続いたが、ベーコン数枚とタバスコソースを犠牲に、最終的にアスランはキラについての話をぽつぽつと聞くことが出来た。
「結局、俺たちはどっちも自分の意志で戦争に参加したわけか」
キラがストライクに乗った経緯を聞いたアスランは、自嘲気味に笑う。
「一応確認するが、キラがマインドコントロールなどを受けているという可能性は・・・」
「連合って200万人はコーディネーターいるんだろ?流石にいちいち洗脳するかぁ?」
「連合では、一般人に薬物を摂取させコーディネーター以上の性能のパイロットを作る研究をしていると聞いた」
「キラはそういう処理は受けて無さそうだけど・・・なんでだ?」
俺が知っているキラとは何もかもが違いすぎるから、と、答えようとしてできなかった。こんなにも食い違いがあるというのに、自分は本当にキラを理解できていたのか?そう疑問が首をもたげる。
「俺はキラのことは誰よりも詳しいと・・・思ってた。でも、今は自信が無いんだ。キラは誰かと争いを起こすような性格ではなかったし」
「あいつは強いよ・・・だって」
アスランはそのだっての続きが聞きたかったが、それよりも先にアラートが響いていた。
「お!見つけてくれたんだ!」
それは、カガリが不時着したスカイグラスパーのコクピットからなる友軍の接近信号だった。
「俺は、お前とここで会ったことを味方に話さない。お前も・・・そうしてくれるか?」
「ああ、そうする。それと・・・」
戦争が終わったら、キラと話し合ったらいいんじゃないか?そう言ってカガリはコクピットで示された海岸へと走っていった。その言葉に、アスランは表情が思わず固まってしまった。
「戦争が終わって、二人とも無事なら奇跡だな」
再び、アスランは自嘲気味に笑うが、その未来に期待してしまっている自分にも気が付いた。
「戦争の終わりまで生きる・・か」
実は、アスランには戦争後のビジョンなど欠片も持っていなかった。母の復讐で、と思考を止めて軍に入り、作業のように訓練を続け、首席で卒業し、そして・・・今、元親友の安否が気になって仕方がない。
これが俺の望みなのか?生まれてこの方16年、誰かの期待に応えるように生きてきた俺が、望んでいるのが親友との再会だったのか?
ばからしい、とも言えない。結果としてそうなったとはいえ、父から呼びも出されなければ、ずっとキラの家族と一緒に居たかったと今なら言える。
だが、輝かしい思い出の全ては過去だ。
「それでも、俺は、俺のできることをする」
アスランの首席卒業の評価用紙から、引用しよう。
「アスラン・ザラは、実技、試験の成績のさることながら、一番に評価すべきはその意識の強さである。自身の欲求よりも全体の利益を追求するその姿は、軍人の目指すべき姿そのものである」
アスランは、イージスのコクピットで仲間の到着を静かに待っていた。
◇◇◇◇◇◇
『カガリ』
スカイグラスパーを支えるジンから、接触回線で声が響く。
『一緒に島にいた人間は知り合いか?』
思わずびくっと体を震わせてしまった。
「いや、その」
つくづく嘘の着けない人間だと自嘲するが、それで質問が消えるわけではない。仕方なしにぼかす。
「まあ、知り合いだ」
間違ってはいない。正確には知り合いでは「なかった」だろうが。
『そうか、なら良い』
何も良くは無いのだが、ここでの意味は「俺も黙っておく」である。
「ありがとう」
脳量子波の無い刹那よりは空気の読めるカガリはそれを察した。
◇◇◇◇◇◇
アークエンジェルではキサカから軽いお説教があった。一応命令には従っていたからである。
「いやー、始末書ってめんどくさいなぁ」
当然、軍の備品を壊したので始末書を書かなくてはならない。アークエンジェルのMS、戦闘機は基本的に壊れないので備品には余裕があるのだが、それはそれ。軍隊であるからには書類での報告は義務だ。ちなみにアラスカに着く前にマリューやムウが上手く誤魔化す所存である。
「終わったらキラの部屋でも行くか―」
書類はまだ数冊あるが、カガリは自分にご褒美を出してやる気を出す。何といっても、明るい未来を考えるのは楽しい。
いまさらどんな顔して合えばいいんだ!(アスラン)
いろいろあったけどなんとかなるさ!(カガリ)
うーんメンタルの差が如実に出てる・・・
ちなみにもう一つネタがあって
「アスラン・ザラ・・・中略・・・最高の兵士」(寝返った回数作中一位)
です