ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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さんざん噛ませになると言われ続けたザラ隊の諸君。でも今回は一味違います。
え?タイトルだけでも誰か死んでそう?
でもいろんな実例(宇宙でヘルメット飛んだ人)とかいるしどうでしょうね?

なお前回は不調でしたが、原因は三つほど考えられます
1、恋愛物を書いたせいで脳が拒絶反応を起こした
2、疲れてた
3、スプラトゥーンでランク落ちした


38話:ZAFTのトラッパー《前編》

執務室から出て、刹那は近くにいた人間の存在を探した。場所はわかるが、目に見える場所には居ないようだ。最低限の礼儀として人間の心の中は非常時を除いて読まないようにしているため、どの様な目的をもって近くにいたのかは判断がつかない。

そのため、刹那はウズミ氏の護衛だろうと判断した。

長い政庁の廊下を歩きながら、先程の会談を思い出す。

オーブという国は平和主義だが、それ故に戦力を保持しなくてはならないはというソレスタルビーイングにも似た矛盾を孕んでいる。国家はパワーバランスで維持されている。今のような戦乱の時期にはなおのことだ。

平和のための戦力。それが今や世界最高水準であることは、しかし必然でもある。圧倒的多数の決断に従わないためには、それなりの支えが必要だ。今のオーブにとってのそれは、様々な技術が混ざって生まれたアストレイ。

そして、アストレイの開発を決断せざるをえなかったと苦悩するウズミ氏が、刹那には好ましかった。

本来、戦力を保持するものは苦悩していなくてはならない。いや、決断に際しては全てがそうなのだろう。かつては争いの破壊者になることを選んだ。今は見知った人間を助けて戦っている。悩まず人間の獣性に従って戦えば、いずれアリー・アル・サーシェスのような外道に堕ちる。

悩むことを放棄しなければ、ウズミ氏は責任ある指導者としてあり続けるだろう。

考えが一段落したところで、丁度政庁の出口まで辿り着いた。

 

「帰りの迎えは私よ」

 

大理石で設えられたエントランスでは、シモンズ主任がパンツスーツ姿で待ち構えていた。政庁はモルゲンレーテの工廠からそれなりの距離があるため、行きは外出許可を得たトールに送ってもらったのだ。

 

「あなたたちのスケジュール管理は私の仕事ですからね」

 

その言葉の意味するところは、出港日が決まったということだ。着いてきて、と駐車場に歩いていく主任の後を追う。帰りの車は、後部座席が会議ができるように改造された黒のワゴンだった。モルゲンレーテの技術で、後部座席はMSの装甲並みの強度らしい。うちの子はすごいでしょ、とボディーを軽く撫でながら、机が置かれた車内に手招きしている。

 

「確かに、素晴らしい車だ」

 

椅子の座り心地も並みではないが、刹那はその辺り無頓着である。椅子に腰かけて、目で本題を促す。主任は、それもそうね、と鞄から書類を引き出して渡してきた。

 

「明日、オーブ護衛艦隊の軍事演習があるの。それに合わせてアークエンジェルはオノゴロ沖に出港。詳しいタイムスケジュールは紙面を見てちょうだい」

 

見る限り別段問題が発生するような計画でもないように思われるが、主任の顔は険しい。

 

「計画に不備は無いように見えるが?」

「実はね、オーブ公海の外にZAFTの潜水艦が停泊しているのよ」

 

公式にはオーブにアークエンジェルは停泊していないため、それを理由に外交圧力を加えることは出来ない。オーブ諜報部によれば、ここ数日のうちに何処かの国の工作員が入れ換えになった可能性があるらしい。流石にモルゲンレーテ本社にまで侵入されたとは考えたくないが、物事に絶対は無い。だから、最悪の仮定としてオーブ出港直後に戦闘になる可能性も有り得る。

 

「それでも、これ以上の条件は望めない」

 

敵が数日ずっと待機しているということは此方がオーブに居ると確信しているということであり、作戦も練っていることだろう。此方が日数をこれ以上稼いでも良くなるのは作戦の完成度のみ。そして、それさえも相手に一日の長がある。ならば、予定通りに出るしかない。

 

「あなたたち、良く此処まで生きて来れたわね」

 

刹那の脳内で如何なる論拠が示されたにせよ、外部から観測できるのは「敵が居ようとも突破する」という決断のみだ。無謀にも見えるだろう。

 

「まあ、あなたとキラ君にうちの機体があれば大丈夫かしらね。でも、情報漏洩の可能性の件と同じで絶対は無い。気を付けてね」

 

流石は一児の母と言うべきか、その最後の言葉は完全に母性が発露したものだった。だが、そう感じた刹那の顔は主任には気が付かれない程度ではあったが苦悩に歪んでいた。

 

「どちらにしろ、俺は俺に出来ることをするだけだ」

 

その言葉に、それもそうね!と主任は破顔した。そして、そこからは到着まで延々と現在乗っている車の素晴らしさについて議論を交わしていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

出港の準備は恙無く整った。アークエンジェルはからは、此処で数名が降りた。カズィとサイは、俺頑張ったよな?ああ、人並み以上にな。誰も弱虫なんて言わないさ。なんてやり取りを交わしていた。

サイ、トール、ミリアリアは降りなかったが、サイと離れることになると判断したフレイの騒ぎようは凄まじかった。ムウなどは、ありゃあれだけで新しい戦争の一つでも起こしそうなレベルだなと苦笑していた。

その後でキラはサイから、本当にやりかねないから守ってくれと言われたが流石に笑えなかった。冗談と言うにはサイの顔が蒼すぎたからだ。

 

カガリは、ウズミ氏の必死の説得によりオーブに滞在することと成った。当然と言えば当然だ。

 

「ぎらぁ~、生ぎて帰ってごいよぉ」

 

出港の間近でキラを泣き笑いで送り出したカガリにはオーブ氏族の息女の身分を示す礼服に似合わない子供らしさがあったが、キラはその飾らなさがとても魅力的に思えた。

 

艦長は、出港の予定時刻までウズミ氏と話し合いをしていた。キラは、艦長に手渡された記録装置を見たが何と言っているのかは聞き取れなかった。艦長の疲れた顔からすれば、あまり嬉しいものでは無いらしい。

 

そうこうしているうちに時間は進み、アークエンジェルは周囲に注水され上に浮かび始めた。そうして開いた出口から、既に出口近くに停泊していた艦隊に合流する。

演習とは名目だけであると艦隊の人員も知っているため、索敵などが本格的に行われ沖へと進んでいく。

そうして、遂に何の異常も見つかることなくオーブ公海の外縁部まで到達した。

だが、護衛艦隊に返礼しアラスカへと進路を向けたあとも、艦内の緊張は解けない。聞かされていたZAFTの潜水艦。それがただ何もせずに消えるなど、あり得ないことだと艦内の全員が分かっているからだ。

そして、第一波は無人島に接近したときだった。

突如、ビームがアークエンジェルの下の海へ吸い込まれていった。次の瞬間、海からは爆炎が上がり、艦内が大きく揺れた。

 

「何事だ?!」

「ログから熱紋照合・・・これは!き、機雷です!スラスター破損!推力が低下しています!」

 

MSの兵器は、赤外線など高波長の電磁波で発射より先に照準をつける。アークエンジェルの装甲にはこれを発見する機能が搭載されており、通常は砲撃に先んじて回避行動をとるのだが、照準は海中の機雷に向けられていた。これでは回避が出来ない。だが、艦長の判断も早い。

 

「曹長!少尉!」

『発進します!』

 

遊撃戦力としてMSが発進する。アークエンジェルは推力の低下でしばらく動けない。なので、爆発と同時に展開してきた敵モビルスーツ三機に対応しなくてはならない。

だが、刹那はすぐに違和感に気が付いた。襲ってきた三機は、アストレイにデュエル、ストライクにイージスとブリッツと、二手に別れた。それは良いが、襲い掛かってきていて退き気味に戦っているのが解せない。

どうにも釣り臭い。だが、キラはそうは判断しなかったようだ。イージスとブリッツを追って無人島の方へ飛んでいく。相手の用意したフィールドへ出向くというのは、如何に腕があっても不味い。

刹那の脳裏には、過去のガンダム捕獲作戦が重なって見えていた。あの時、チームトリニティが来なければトレミィのガンダムマイスターは全滅していただろう。

 

キラを止めようとした刹那だったが、すぐ近くの海面が爆発したことで転進を余儀なくされる。

 

『お前の相手はこの俺だ!』

 

オープンチャンネルでの挑発的な言葉から、やはりデュエルは足止めのようだ。恐らくは、アークエンジェルの進路を予想してこの海域を機雷源にしたのだろう。

今はビームで水中を狙い爆破しているが、リモコン等で操作できないとも限らない。デュエル自体もそれなりの高度を保っているため、ダガーの投擲等での撃墜も難しい。

 

「キラ!、くっ、Nジャマーか」

 

手だてはある。だが、時間がかかるためにキラに耐えてもらわなくてはならない。この状況では、キラの成長を信じるしかないのだ。

 

「信じるぞ、キラ」

 

そう呟いて、刹那は反撃の準備を始めた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

無人島の密林で、アスランはストライクにサーベルを向けていた。空戦能力では到底及ばないため、平地で数の有利を恃みに勝負を仕掛けたのだ。

勿論二段構えの作戦ではあるが、ここでストライクを撃破できるならそれに越したことはない。

 

「ニコル、行けるな?」

『合わせます!先に攻撃を!』

 

ニコルは、ザラ隊のメンバー中で最もサポートが上手だ。此方が何らかのアクションを起こせば、それに合わせて追撃、援護など自在な支援を行う。

そのニコルなら、この攻撃にもフォローを入れてくれると確信して、上段からビームサーベルを振り下ろす。

対するストライクは、シールドのみを構えている。反撃は考えていないのか?咄嗟の事にアスランは判断がつかなかったが、ともかく振り下ろそうとした。

だが、腕を捕まれて止められてしまった。ならば、と右足のビームサーベルを発振させようとしたが、先にイージスのボディが持ち上がっていた。体がパイロットシートに押し付けられ、世界が一週する直前に強烈な振動がコックピットを襲い、アスランの意識は闇に落ちた。

 

ニコルは、援護射撃をしようとしたが、敵の行動に中断させられた。ストライクはイージスを一本背負いの要領で背後に回し、イージスを盾にしたのだ。

これでは!と思った直後に、そのまま地面に叩きつけられるはずだったイージスがこちらへ吹き飛んできたのだ。

予想外の事態に対応できず、現在ブリッツはイージスの下敷きになってしまっていた。

このままでは作戦が!

そう判断したニコルは、アスランに呼びかける。

 

「アスラン?!、く!ダメですか!」

 

どうにかイージスの下から這い出し、その最中にアスランに呼び掛けるがまるで応答がない。コックピットに穴はないので気絶しているらしい。幸いブリッツには故障がない。手元の無線機でディアッカに連絡を入れる。

 

「ディアッカ、アスランがやられました」

『・・・オーケィ、プランBでいく』

 

ここからのニコルの仕事は、ストライクを引き付けることだ。

 

「アスラン、見ていてください」

『・・・待つんだ・・・ニコル』

「アスラン!?」

 

それは意地なのか、アスランは意識を取り戻していた。

 

「しかしアスラン。待つといっても時間が」

『プランの内の、ネットだ。あれに、ストライクに格闘戦を挑むのは不味い』

 

アスランは、朧気ながらに自分がどうやられたのかを記憶の断片を繋ぐことで把握していた。

斬りかかった瞬間に腕を捕まれ、一本背負いでその勢いを利用してイージスをブリッツの方へ流し、体重が離れてイージスが浮いた瞬間にパイルか何かで吹き飛ばされたのだ。

想定外とは言わないが、最悪のパターンの一つだ。ストライクの格闘能力は、オーブで更に磨きがかかったらしい。

 

「それで、ネットですか」

『ああ、近接型のモビルスーツほど有効なはずだ』

「しかし、あれほどの機動性で捕らえられますか?」

 

ニコルの疑問も最もだが、アスランは苦しげな顔をニヤリと曲げて言った。

 

『此処に囮がいるだろ?』




忙しさ全く改善されず。
予定の半分くらいしか書けませんでした。ホントはここから更に話が進むのですが、残念ながら時間が有りませんでした。しかも、三連休も最悪の場合書けないのです。
モヤモヤしたところで終わって申し訳ないですが、最大で再来週までお待ち頂けると幸いです。

因みに前書きの三択、多分全部その通りです。

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