ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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面倒事が割と片付きました。
あとはコンスタントに続ける必要のあるタスクばかりなので執筆再開!


42話:見守ることしか出来ない彼は

潜水艦の指令室で、アスランは歯噛みをしていた。

 

捕らえられたのは自分のミスだ。猛省したい。

モビルスーツが連合に回収されたことも、経緯を考えれば殺されなかった事が奇跡と言えるだろう。

ニコルやイザーク、ディアッカに他の隊のパイロット達が戦場へ勇み足で駆けていくことも仕方がない。なにせ、この作戦にはプラントのこれからが懸かっていると言っても過言ではないのだから。

 

だが、のうのうと一つ一つと目減りしていく味方の反応を見続けるというのはあまりにも耐え難い。

 

もちろん、死んだ方がマシだった等と言うつもりは毛頭無いのだ。自分が出撃すればMIAやKIAが減るなどと傲るつもりもない。

ただただ、何も出来ない事が耐え難い重みとなって頭に腹にのし掛かってくる。

 

ふと、今の状況に父の事を思い出した。

ある意味、父は同じ状況に常に晒されているわけだが、このような葛藤が有るのだろうか?

今となっては知る由もないが。それでも疑問に思わずにはいられない。

 

思いだけでは何も変わらない。アスランは、食い入るように味方の配置図を見つめ続ける。

 

果たして海上で味方を撃墜し続けている敵はあのどちらだろうか?

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「敵はどこだ?」

 

アラスカ基地は、大瀑布に守られた入り口と、圧倒的な質量で侵入を拒む土の天井を持っている。キラが守るのはその天井だ。

出撃前に伝えられた作戦はこう。

 

『捕虜を作ること』

 

なんでも情報戦の一部らしいが、情報をプラントへ流すための運び手にするであろう事はなんとなく察しがつく。

では、作戦をどう遂行するかと言えば、まずキラは前衛だ。そして、その後ろに三小隊ほどの量産型モビルスーツが着いている。

二小隊が牽制射撃で援護し、キラが接近戦で五体を完全に分解する事で無力化、残りの小隊がボディ部分を回収するという三段構えの陣形だ。

 

既に、戦闘開始から一時間ほどが経過し、周囲にはZAFT降下部隊だったスクラップの山が出来ていた。

なんでも、これらのスクラップも資源として戴くらしい。本当に抜け目の無いことだ。

 

それはそれとして、現在既に視界の内には敵が居なくなってしまっていた。

 

「敵は・・・どうやらいないみたいです。前進するので後ろをお願いします」

『任せときなぁ!』

『けどお前さんみたいな戦果は期待すんなよ!』

『そうそう、ほどほどに頑張るぜ』

 

人の事は余り言えないが、とても1ヶ月に満たない訓練期間とは思えないほどの上手さだった。それでも謙遜する辺り、それが連合のトップまで登り詰める秘訣なのかもしれない。

 

しかし、まだ油断はできない。確かに動きの良い新型こそいたが、恐らくそれはバッテリー機の改良型であり、核動力が使われていればもっと次元の違う機動力を発揮しているだろうとキラは予想していた。

 

一機のみで不意打ちをしようと飛び出してきた新型量産機を一瞬で達磨にしながら、基地の通信スポットを探す。

 

余談だが、アラスカ基地にはNジャマーの散布を受けて設置された有線の通信スポットが至る所に配置されていた。連携が前提に据えられている現代では、通信系統がないことは死に直結するからである。また、全部の場所がそうではないが量産型はビームライフル用のコネクタを通信ポートに繋ぐことで電力を補給することも可能だ。

運良く、見つかった通信スポットは電力の補給も可能なものだった。

 

「こちらストライク、敵を概ね捕らえました。指示をお願いします」

『おお!素晴らしい戦果だな・・・コホン、今からそちらへデコイを送ろう。それと入れ替わる形で地下へ降り、海岸線の防御を頼みたい・・・』

「入口はA-10ですか?」

『話が早いな、その通りだ。五分後に入れ替えを行う。引き続き警戒してくれたまえ』

 

同じ回線を使っているので、隊の全員に話は伝わっている。

 

「聞こえてましたよね?」

『ああ。給料アップのチャンスらしいね』

『おかげで彼女(金食い虫)のオーダーにも応えられそうだ』

『お前まだあの金髪と付き合ってたのか』

『しょうがないだろ!でかいんだよ!胸が!』

『おい隊長さん、あれ!』

 

いきなり聞こえてきた切羽詰まった声に、全員が一機のモビルスーツが指さした先を見る。

 

「・・・僕が殿を務めます。じわじわA-10まで退いてください」

『なんだと、と言いたいところだがやめとこう、ありゃやばそうだ』

 

海の方から、二機のモビルスーツが接近してくる。海岸の防御線を意にも介さず、射線をすいすいと躱しながら進み続ける。

 

『司令部、こちらダガー07。最優先確保目標を発見した』

『本部了解。先ほどまでの作戦行動を全て撤回する。今後の指揮は目標の無力化までキラ・ヤマト中尉に一任するものとする。通信部、作戦行動マップの転送を』

「こちらキラ・ヤマト。了解しました。作戦行動に移ります」

 

敵機からのアプローチを前に、ダガー全機が地下区画への入り口、ポイントA-10に到着した。

 

「新兵器・・・上手くいくといいけど」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「見つけたぞ、ストライクぅ!」

 

能動空力弾性翼とリフター、連合が開発したGATシリーズに改良を施したフリーダム、ジャスティスの二機に搭載された空戦用の兵装である。特にフリーダムの能動空力弾性翼は、リアルタイムに変形して空力を最適に受けるため、従来のモビルスーツを凌駕する空戦能力をフリーダムに与えている。

 

一方のリフターも、ジャスティスに完全な単体飛行させており、当然こちらも十分に戦える飛行能力である。

 

今回は、意地からなのかジャスティスが凄まじい速度で先行している。

 

『落ち着けよ、ったく、あんなに派手に迫るから取り巻き逃げちまったじゃん?』

「あの程度の腰抜けは相手にならん!援護しろディアッカ!」

 

そう言って、イザークは一直線にストライクに向かって降下していく。血気に逸ってはいても、脚部が耐えられる限界で速度を押さえているのは素晴らしい。

ディアッカは口笛を鳴らしてハイマットモードを終了し、銃口を展開した。本来なら多数を圧倒するマルチロックオンシステムを、ただ一機のモビルスーツに向ける。

 

対するストライクは、ジャスティスの突進を宙返りで避けながら、フリーダムにビームサーベルを二本投擲してきた。

 

「やっぱりやるな!」

『誉めてる暇があるか!』

 

地を蹴ってスラスターを吹かし、ジャスティスが再びストライクに突進する。ストライクは体を深く沈めて斬撃をシールドでするりと受け流し、起き上がる力でジャスティス空中に打ち上げた。ジャスティスは空中で受け身を取るが、距離が大きく離されてしまった。

 

「おいイザーク、逃げたぞ!」

『逃がすか!追うぞディアッカ!』

 

言われなくてもやるっての!

恐らくは地下への入り口に、ストライクが駆け込んでいく。

そんなちゃちなシャッターで俺たちを止めれると思うなよ!

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

予定通りここ、A-9ゲートのシャッターを閉めて撤退すれば着いてきた。確かに核の動力は驚異だが、ここ、廃棄地下都市区画なら負けはしない。また、地下区画は、各場所にアンテナが設置されているため電波で通信が可能だ。

 

「ライフルを当てて五分か」

 

ニュートロン・ディスターバーは徐々に核反応を抑制するが、電力を消失させるわけではない。兵器なら予備電力を用意していると考えて然るべきであり、完全な無力化には五分はかかると予想を伝えられていた。

 

『まあ、接近して三分も稼げば充分ですよ』

「そうですね。それならニ対一でも問題有りません」

『こちらダガー05、入り口を埋める準備は完了だ』

 

これで、二機の核動力モビルスーツを閉じ込める準備は整った。

一発の受け流しでボロボロになったシールドを投げ捨ててストライクは転進し、距離を再び詰め始める。

 

『奴さんたち調子に乗って追っかけてきますぜ。よっぽど勝てそうなのが嬉しいんですなぁ』

 

廃棄予定だった旧市街は、大通りもあるがとても強度の高いビル群が乱立している。そのような横の足場が沢山ある場所ならば、ストライクの機動性は平地の比ではない。なにせ、ストライクにとっては天井以外の全てが足場なのだから。

 

『目標まであと200、律儀に地上近く飛んでますよ』

『まあ視界が悪いところじゃぁ飛行は避けるのがセオリーだろうさ。対空攻撃が物陰から飛んでくるからな』

「あの人たちは強いですよ」

 

通信用スピーカーからは、これだから強いんだよとか、嫌味が無いねぇなんて声が聞こえてくるが、キラはすべて無視して、ビルの合間を低空飛行するジャスティスとフリーダムに向かい、ビルを上から下へ駆け下りていく。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

『イザーク、上だ!』

 

ディアッカの叫びにカメラを上に向けたイザークは、口元を凶悪に吊り上がらせた。

 

「迂闊だな、怖気づいたかストライク!」

 

先に構えていたビームライフルを一発打ち込み、素早くビームサーベル二本を連結させる。躱すだろうと思っていたビームを、ストライクは右斜め下に加速することで回避した。その速度なら抵抗も限られるだろうとほくそ笑みながら、ビームサーベルを振り下ろそうとした矢先に、ストライクが消えた。

 

「何処だ!」

『ぐっ!』

 

すぐ後ろに居たはずのディアッカのうめき声が聞こえ、ビームサーベルを構えなおしながら素早く振り向くと、ストライクがフリーダムにマウントを取っていた。

 

「この!」

 

ジャスティスのビームサーベルが刺さるよりも早く、ストライクは地面を蹴って壁に着陸した。

 

『ああクソ、猿みたいな動きしやがるぜ』

「問題無いか?」

『ああ。貧弱なライフルで一発食らっただけさ・・・来るぞ!』

 

今度は、ストライクは壁を蹴って真上に上昇した。そしてそのまま、ビルの屋上に離脱して姿を消した。

 

「逃げるな!」

『オイ!落ち着けって!』

 

仲間がやられかけて激昂しているのか、イザークの駆るフリーダムは地面を蹴って飛び上がった。援護が出来るようにディアッカも後を追うが、不揃いな高さのビルの影にいるのか、姿が見えない。

 

「がっ!?」

 

次の瞬間、ジャスティスのコクピットが強く揺れた。

 

『そこか!』

 

PS装甲が、ライフルの一撃を完全にシャットアウトした。先ほど自分が食らったものと同様だと判断したディアッカは、イザークに確認するよりも先にフリーダムの砲門を開いた。

果たして、ビルの下から腕に装着されているライフルの銃口を向けていたストライクは、スルスルと後ろに下がりながら4本のビームとレールガンをすべて躱してしまった。

水平な壁を何度も蹴りつけて、スラスターよりも遥かに機敏に上昇してきたストライクに復活したイザークがビームライフルを乱射する。ストライクは、屋上に着地するや否や、小円を描くような体捌きで一発を除いてすべて躱し、残る一発もサーベルで切り捨ててしまった。

 

『ははっ、持久戦なら俺らに分があるんじゃないか?』

「そんな弱気でどうする、と言いたいところだが・・・」

 

流石に考えを改めて、イザークが右に、ディアッカが左に飛び出しながら、手持ちのビームライフルで十字砲火を浴びせる。砂漠の一件でミサイルは凌がれたらしいが、ビームのスピードはミサイルの比ではない。

流石にその場では捌ききれないと判断したのか、最初に当たりそうになった二発を一太刀で弾いてまたもやビルを駆け下り始めた。射角を下に下げて空から攻撃を当てようとはするが、まるで地面を走っているかのように壁を駆け抜けるストライクにはまるで当たらない。それどころか、反撃にビームを打ち込んできた。

 

二発で足りないならと、ディアッカがリフターを寄こすように言う。フルバーストモードを起動したフリーダムの能動空力弾性翼が放熱板に役目を変え、空中にいられなくなったからだ。ジャスティスは、リフターが無くとも受けるように設計されているため、空中で射撃を続ける。

 

『穴だらけのスイスチーズにしてやるぜ!』

 

バラエーナプラズマ収束砲が、ルプスビームライフルが、クスィフィアスレール砲が一斉に火線を曳いた。五本の火線がストライクへ殺到し、ストライクが腕部の装甲でレールガンを弾いたのを見たところで、フリーダムは機能を停止した。

 

「おい、ディアッカ!ディアッカ!・・・これは、エネルギーが切れているだと!?」

 

フルバーストを放っただけでも、ZAFT製の新型は素晴らしいと言えるだろう。プラズマ収束砲など、一発の発射でジンのバッテリーを干上がらせるのだから。だがフルバーストの直前に、新型の肝、核エンジンは完全に機能を停止していたのだった。結果、フルバーストで全てのエネルギーを使い果たして先に機能を停止してしまった。

 

そして、完全に機能停止したことを確認したストライクが、フリーダムに向かって急接近する。

 

「させるかぁ!!!」

 

残り少ないエネルギーなどと考えず、ビームライフルで寄せ付けまいと弾幕を張るが・・・

 

『こんな事をしたくは無いですけど・・・降伏してください』

 

空中でするりとビームは避けられ、ビームサーベルをコクピットに突き付けられてしまった。

 

『捕虜としての扱いは保証します。降伏を!』

『俺に構うな!自爆系統もイカれちまってるんだ!頼む!俺ごと・・・馬鹿野郎』

 

例え人質に取られていなくても、この状況で勝ち目がないことも分かっていた。ここで暴れても、一矢報いるどころかディアッカが死に、結局自分も掴まるという最悪のシナリオが存在する。アスランを見ても、捕虜としての待遇は問題無い物だろう。そう分かっているイザークの決断は早かった。

 

「・・・降伏する」

『・・・武器を置いてください』

 

ビームサーベルを向けられ、屈辱に震えながらジャスティスは武装解除された。速やかにダガーの回収隊が区画へやってくる。

 

「こちらへ来てもらいましょうか」

「ああ」

 

コクピットから降ろされたイザークとディアッカは手錠を掛けられてトラックへ乗せられ、基地の奥へと連れていかれた。

 

「いやぁ、すごかったねあの動き。後でログを見せてもらえるかい」

「ええ、良いですよ。でも今回の作戦が終わってからですね」

 

小休憩をとることを指示されたキラたちの隊は、トラックで運ばれてきた食料を掻き込んでいた。

 

「うめぇー!!レーションと比べたら月と鼈だぜ!」

「なんだそれ」

「アジアの諺だとよ」

 

食料は一般的な軍用レーションではなく、いつか食べたケバブを使ったサンドイッチだった。何でも、キラの好きな食べ物を聞かれたムウが答えたらしい。艦内でのカガリ&キラとムウ&檻越しのバルトフェルドのソース論争を根に持っているのか、半分はヨーグルトソースだった。

しかし辛党だというのもしっかり伝わっていたらしく、とても美味しそうな真っ赤なソースのついたサンドもあり、キラは周りに断ってそれを食べた(皿に垂れたソースを舐めた奴の反応を見た後だったので周りは退いていた)。

 

「もう少し凌げば今回の作戦は成功です」

「それもこれもアンタのおかげさぁ!」

「そうそう!きっとすげぇ勲章来るぜ?」

「勲章どころか特別給金もちゃんと出ますよ」

「理事!」

 

食事を終え、モビルスーツに乗り込もうというところでアズラエルが現れた。

 

「なぜこんな所に?」

「ねぎらいに来たんですよ。君たち、特別給金、いくらだと思います?」

「10万A$くらいですかい?」(※1A$=5円換算)

「30万A$出します。隊の全員にです」

 

適当に言った数値の三倍である。一般の兵士の基本給が7万A$だと考えれば、凄まじいボーナスだ。

 

「流石です理事!」

「一生ついて行きます!」

「本当にそんなに出して大丈夫なんですか?」

「君モビルスーツ一機につきどれくらいかかるか知ってますか?」

「10億A$位ですか?」

 

キラとしては、自分で開発に携わっていた部分もあるので高級な車よりは高いだろうというくらいの感覚だったのだが・・・

 

「新型は1200億A$です。量産型なら800億といったところでしょうか」

「そ、そんなに・・・」

「君のストライクやその鹵獲した新型なんて・・・僕の資産の数パーセントはいくでしょうね。それを考えればこの程度、安いものです」

 

コクピットに昇るロープの手前で狂喜乱舞しているパイロットたちに知らせるべきか否か一瞬考えたが、水を差すのは良くないと考えなおした。

 

「それでは、君なら心配いらないと思いますが頑張ってください」

「は、はい。あの、ソランさんは・・・」

「彼は凄まじいですね。海上ですさまじい戦果を挙げて・・・ああ、君の捕らえた新型の方が価値はありますがね、それでも君たちが今回の戦果のトップであることに変わりは無いでしょう」

「そうですか・・・」

 

やられているかもしれないとは微塵も考えていなかったが、やはり無事と聞けば安心できるものだ。

 

「では今度こそ行ってらっしゃい」

「はい!」

 

小隊は、隣の区画から地上へと戻っていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「フリーダム、ジャスティス、共にMIAです・・・」

「そんな!」

 

一体、どれだけ苛まれれば良いのだろうか。一度のミスが、取り返しのつかない後悔へと転落していくのを、アスランは感じていた。

ニコルは・・・ニコルはどうなっただろうか?必死に海のMAPを見渡すアスランの目の前で、丁度見つけたブリッツの識別信号は、アスランを待っていたかのように途切れた。




モビルスーツの価格は米軍のステルス戦闘機の二倍換算です。戦争って金かかるのね・・・
そして再びアスラン心労回。多分そろそろ胃潰瘍で癌になるか血管貫通して失血死すると思います。

ストライクが壁を走り回っていたが後悔はしていない(キリッ)

文字数が多分記録更新してます。

追伸、FGOエレキシュガル登場で財布に遂に手が伸びる予感有り

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