ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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(皆さんがこれを12/24/18:00に読み始められているなら)間に合いました。

皆が納得できる人類絶滅ビームの発射理由を考えてみるともうパトリック氏が取り返しのつかない悪役と化してしまった・・・
全国のパトリック・ザラ・ファンの皆様お許しください

エレシュキガルガチャは財布と相談した結果、お金がFate/蒼銀のフラグメンツドラマCD一巻&Fate/StrangeFake1~4に変換されたため課金しませんでした。ボックスガチャは20超えたので許してください。
正月こそは・・・・


End:This is a war for world True/False
44話:偽証と告白


オペレーション・スピットブレイクを終え翌日、プラント評議会では緊急会議が開かれていた。凍り付いたように遅々として進まない空気を読めずか。それとも敢えて読まずか。後悔など一片の欠片も無いとばかりに悠然とした態度で扉をくぐり、非難の目を物ともせずにどかりと椅子に腰を下ろした。

 

「議長、何故緊急会議が招集されたのかお分かりですね?」

 

代理で議長を務めているのは、クライン派の中でも特にその実務能力と穏健さで知られるアイリーン・カナーバ。しかし、幾ら穏やかだと言っても今日ばかりはその限りではない。同胞を気遣ってか、非常に低い声で話しかけた。

 

「もちろん、分かっているとも」

 

パトリック・ザラは、平然とそう返した。演技には到底見えないその様子に、議員たち、特にシンパでない者たちはいったいどのような考えなのか、と。特に、シーゲル・クラインは顔に出る寸前だった。

そうこうしている内に、パトリック・ザラは今回のために設えられた尋問用の檀に登った。

 

「今回、私は我らがZAFTの兵士を含むエリアを標的にγ線レーザーの照射装置を使用した。その理由は・・・()()()()()()()()()()!」

 

驚愕からか、それとも困惑からか。議員たちは騒めくが、議長代理が珍しく声を張り上げ、周囲を制する。

 

「静粛に!ザラ議長、発言の意図を掴めませんでした。説明を要求します」

「良いでしょう。君、書類を」

 

見慣れない黒髪碧眼の人物が、円卓に座る議員たちに書類を手渡していく。最初に書類を渡されたエザリア・ジュールは、あっ、と声を上げた。

 

「行き渡りましたかな?それでは説明しましょう。私へ大西洋連合の理事が送ってきたこの書類について」

 

そこに写っていたのは、沢山の人間のファイルだった。前半はその人物の詳細なプロファイルが記され、後半には何やら薬品を点滴されている者、頭に機械を取り付けられ虚ろな目をしている者、それからも何枚も続く写真、データを見る限り、これは・・・

 

「コーディネーターへの人体実験・・・!」

「そう、あの理事は!あろうことか大人しくすればモルモット扱いは勘弁してやろう等と抜かし、我々に降伏を迫ってきたのです!」

 

またもや、議会は騒めき始めた。最早言っても収まらないと判断したのか、議長代理はそのまま続けるよう促した。

 

「無論、私は降伏する気など無い!しかし、我々の部下はスピットブレイクでその全てが生け捕りにされていたのだ!このような書類を受け取った後で!連中がどのような事を考えていたのか想像に難くはないでしょう!

信用に足る部下たちに、もしそのような状況になった時には、すぐにγ線レーザー制御室に直接連絡を入れ、せめて味方の手で楽にするようにとの命令を出しておいたのです。

私も人の親だ・・・直接息子に手を下すなど、決心が鈍ってはならぬと・・・

加えて、フリーダムとジャスティス、あの二機がナチュラルどもの手に渡れば、連中は再び核を・・・ユニウスセブンの二の舞ではないか・・・そのようなことに、私は耐えられない。1500万の同胞のためならば、私は例え我が子といえども犠牲にして見せる!」

 

演説は終始力強く、同情を引くべき所では涙ぐみ、最後にはザラ派からのこの拍手だ。上手いものだよ、と、黒い鬘をつけ、マスクを外したクルーゼは内心ほくそ笑んだ。彼らにとっては憎々しい相手であるアズラエルに自らの行いを押し付け、息子も帯同していたという事実を逆手にとって自分の息子は、と主張する声を抑える。

すすり泣くエザリア・ジュールに息子は苦しまなかったはずだ等と嘯いている事も、反論を抑えるいい材料だ。ジュール女史は本心からだろうが、議長殿は打算でやっている。公衆の意見というものは女性や母の叫びに弱いのだから。

 

クルーゼにしても、こうして双方が大きな傷を負っていくのは嬉しい位なのだから、喜々として情報工作に手を貸した。自らの身にも似た境遇に若干の嫌悪を覚えないでもなかったが、人類廃滅のためならば安いものだ。

 

その後、ザラ派の一部と、中立だった議員の合わさった過半数票でパトリック・ザラは無罪。議長は再び会議の舵取りを始め、すでに学徒動員、工業労働と食糧生産への注力を政策として認可させた。このままなら、必ずや酷いことになるだろう。愉悦に浸るクルーゼの懐で、ふるふると端末が震えた。

 

「ああ、私だ・・・そうか。ではパイロットスーツのままヘルメット着用で議長の執務室控えへお通ししろ・・・くれぐれも姿を見られんようにな」

 

どうやら、悲願達成の日は近いようだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「シーゲル・クライン!」

「これはこれは・・・アマルフィ議員。どうされましたか?」

 

会議が終わった後、シーゲル・クラインの執務室のドアを開いたのは機械工学のマイウス市代表、ユーリ・アマルフィだった。

 

「私は・・・分からないのです。息子が人体実験をされていると思えば、怒りもあるが我慢もできる。戦局が傾きかねない危機だったことも頷けるのです。ザラ議長にアズラエルの手紙が届いていることも私の部下が確認しているが・・・しかし・・・・しかし、この気持ちはどうすればいいのですか!あの子はまだ!」

「・・・法律が制定された時、15歳で成人というのは、早すぎると思いました。ですが、奴は・・・パトリック・ザラはコーディネーターの優位性を示すため絶対に存在すべき法律だと主張し、最終的には私も同意しましたが・・・」

 

シーゲルは頭を振った。

 

「やはり、早すぎたようだ。子供たちにとっても、我々にとっても。しかし、パトリック・ザラの行動が目に余るのも確か」

「では」

「水面下になるが、第三勢力を結成しようと思う」

 

マイウス市は、ZAFTの軍需工学品を一手に生産している。その代表ならば、物資の横流しごときは容易いものだ。

 

「他に当てが?私の方から物資は提供できると思いますが・・・」

「ああ。ジャンク屋は、我々が思っている以上の技術の宝庫だ。技術力も申し分ない」

 

その後、5人に満たない議員がシーゲルの執務室を訪れ、ザラ派に及ばないまでも大きな組織内組織が誕生した。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「それで、よろしかったので?」

「ああ。地球のコーディネーターは裏切り者も同然だ!ならば、少しでも我々の力の一部になるのがコーディネーター全体にとっての利益となるだろう・・・」

 

議会で提出された連合の人体実験の証拠写真は、パトリック・ザラが保有する地球のコーディネーターを使った実験施設の物を加工して得られたものだった。

 

「人間の恐怖を消す、従順にする、反応速度を上げる・・・我々コーディネーターがこうもしなければ勝てぬとは、我々の主張の根幹にかかわるな・・・」

「ご冗談を」

 

無論、本気でそんなことを思ってはいない。どうしてもムラのある兵士の実力水準を引き上げ、より確実に勝てるようにするためだ、とパトリック・ザラは本気で信じている。そう、コーディネーターが絶対的に勝っているわけではないと、考えが至らないのだ。

 

「それで、議長。ご子息が面会を希望しておられますが・・・」

 

一瞬、パトリック・ザラの目に逡巡の色が走った事を、クルーゼの感覚は見逃さなかった。

 

「・・・通してくれ」

「”ジェネシス”の施工の進み具合を見ねばなりませんので、私はこれで」

 

くるりと回れ右をして扉を向いたクルーゼの口元は、かつてないほどの喜悦に歪んでいた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ザラ議長、本日は質問があって参りました」

「・・・内容は、分かっているつもりだ。掛けなさい」

 

椅子に腰を下ろしたアスランは、正面に座る父の顔に何らかの決意を見た。

 

「今日は・・・お前の父として言っておかねばならないことがある。お前の母、私の妻・・・レノア・ザラのことだ」

「母さんの?」

「お前に教えていない事実がある・・・レノアは・・・ナチュラルだったのだ」

 

今、世界で最も強くナチュラルを敵視する人間の一人とは思えない告白に、しばしアスランは固まった。

 

「まあ、信じられない気持ちも分かるが、ともかく話を聞くんだ」

 

コーディネーターが生まれ始めた、黎明期。大西洋連邦にて、パトリック・ザラは生まれた。

 

「あの頃は、コーディネーター黎明期ということもあり、そしてジョージ・グレンの活躍によって世界は二分されていた・・・」

 

秘密裏にコーディネートされ誕生したパトリックは、英才教育を受け、常人の何倍もの能力をもって成長していった・・・

 

「そして、我々コーディネーターが成長し、種としての違いが発露した時、迫害が始まったのだ」

 

迫害は凄絶を極めた。仕事を追われると思ったものが就職を制限しようとし、経済活動から弾かれる。芸術家からは疎まれ、アスリートとしても干され活躍の場を与えられない。「作られた」才能に多くの人が忌避感を抱き、自分の価値を証明するためにコーディネーターを貶めようとした。

 

「我々が生まれた事に何の罪があったというのか・・・そうして社会から爪弾きにされ、いよいよ命も危ういかと思われた時、私を救ったのがレノアだった。それをナチュラル共は!」

 

異分子に混ざる物は異分子だ。社会の大きな声は、個人の主張を撥ね退ける。パトリック・ザラというコーディネーターを庇うものは社会に歯向かう異分子として、より凄絶な迫害を受けた。

 

「私たちは、一つ所に留まることが出来なかった。そうして、各地を放浪している時に、このプラントを作るという大事業に携わることになった」

 

一足早く成人し、一代にして大企業を作り上げたコーディネーターがいた。その男はせめてコーディネーターが世界に溶け込む足掛かりになればと、L5ポイントに建設計画が立ち上がったスペースコロニー、プラントに多額の出資をし、作業員としてコーディネーターを雇い入れたのだ。

世界から集まった多くのコーディネーターは打ち解け、互いの夢を語り合った。我々の国さえあれば。コーディネーターが安心して暮らせる理想郷が!

そうして、完成も間近となった頃。遂に事態は抗争へと発展し、数の上も単体性能も有利だった独立派のコーディネーター達は安住の地を勝ち取ったのだ。

 

「私は安堵した。これで、レノアと平穏に暮らせるのだと・・・それを・・・それを奴らが・・・そうだ!いつもナチュラルが私の幸せをすべて奪う!壊す!生かしてはおけぬ!存在を許してはならない!地球でのうのうと暮らす者共全てだ!

そう、地球に巣くう全てが私の敵なのだ!」

 

狂っている。それが、アスランが抱いた最も大きな感想だった。愛する人を殺されたから、だから力に頼り、プラントを守らんとすることは自分と同じだ。だが、これは余りにも・・・

 

「そして、これも必要な事なのだ。許せ・・・いや、許さずともよい。アスラン」

 

いきなり、視界が歪んだ。みるみるうちに見えるものが暗くなっていく。

 

「まさか、そんな」

「まだ意識があるのか。流石は私の息子だ」

 

父さん、貴方は間違っている。その言葉がアスランの口から漏れることは無かった。




前回よりちょっと短くパトリックさん外道モード。
補足を入れると、コーディネーター感情の実際の変遷は

最初期:混乱
黎明期:混乱
中間期:排斥
晩期 :安定
現在 :共存

です。だいたいアズラエル財閥のおかげ。(ブルーコスモスはコーディネーターの新規生産を禁止。財閥は働き口を用意した。なおブルーコスモスに入っているテロリストもいるが見つかり次第監獄行きとなっている)
最初期に生まれた年代は反コーディネーター感情が最悪だった時代に育っているので、かなりナチュラルを敵視している。
中間期に生まれたコーディネーターは、法整備が追いつき感情がかなり和らいだ年代に育っているのであまり浮いていない(プラント育ちを除く)。

そして、評議会の派閥が少しばらけて再構成されました。その辺次回で詳しくやれたらと思います。

小ネタ
某所にて
「ギル、ラウは何で帰ってこないの?」
「なんでも遂に願いが叶いそうらしいよ」
「ギル、なんで女物の服があるの?」
「タリアが置いて行ったのさ」
「ギル、なんで昨日の夜タリアと裸で」
「さあお薬の時間だ!」

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