ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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科学雑誌で読んじゃったんですけどクローンの寿命って縮まないらしいですね。
まあやり方が悪かったという事にしておきましょう。これはクルーゼさんも激おこですわ。

ところで今週勢いのままに執筆していたら気付けば最終回、終わってしまったんですが早くも新作を考えてしまう・・・
案としては

ゼロの使い魔×Fate/Strange Fakeのフラット少年(青年)
ゼロの使い魔×AKABOSHIの戴宗
FGO×クラウス・V・ラインヘルツ
斗流血法を習得したベル・クラネル
Fate/stay night×雪代縁
劣等生×両儀式
オリジナル新作(かぐや姫+Type-moon魔術みたいな)

・・・全部書けるかチクショウ!しかし書きたくてたまらない。
今ほど影分身が欲しいと思った事は無い!

あ、番外編のキラ×カガリのイチャラブとグラハム乱入編は書いてます!書いてます!ホントなんです!信じてください!(澄んだ瞳キラキラ)
(FGOの空の境界コラボ全クリした&両儀式アサシン最終再臨&当たってしまった浅上藤乃最終再臨&アサシン・パライソ育成中)


49話:日常へ帰りたい。それは もう遅い/まだ速い/今だから

途中から、まるで砕けなくなったユニウスセブンの残骸を、アズラエルは睨み付けていた。

 

「なぜ砕けない!?」

 

今より落ちてしまえば、地球の大気圏に触れる。そうなれば例え砕けても、摩擦熱で焼き尽くされない可能性が高いだろう。

解析結果が届く。

 

「つまり、ユニウスセブンの残骸には内部の電力で稼働する巨大なフェイズシフト素材のフレーム材が埋め込まれ、破壊できないと」

「フレアモーターが邪魔ですが、首謀者がこちらへ来てしまったこの状況では操作も・・・」

「あれほど巨大ではフェイズシフト素材を破壊は出来ません。残骸を覆っている氷がエネルギーを逃がしますし」

「ビーム兵器も、フレアモーターを形成する磁場の影響で直進せず、機関部の破壊も難しいかと」

 

破壊チームが頭を抱える中、ユニウスセブンは刻一刻と北米大陸へ向けて降下していく。かつて平和に人々が暮らしていたその地平では、二つの影が跳ね回っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

キラが、ミラージュコロイドに対してとった対策は、一つがOSのアップデートだった。ミラージュコロイドによる微細な空間の歪みをストライクのディスプレイを動かす量子コンピューターが本来の画像と戦況から統合的に判断し、画像から抜き出して見えているように表示する。

完璧ではないが、キラの負担はかなり減った。

 

「これで一つ」

『ははは!やるじゃないか流石は最高傑作!だが、この星を止める手段は最早無い!』

 

キラが、ドラグーンの一つを潰した。キラが力を発揮すればするほど、クルーゼの想念はより暗く落ちていく。

 

『知ればだれもが望むだろう!君のようになりたいと!私のような怪物を作るほどに!』

「後か」

 

地面を蹴り、ストライクは後ろに三つ並んだドラグーンの砲火をすべて躱した。空中でスラスターの推力を利用して急降下し、すぐに着地して残心する。

 

「貴方は、人間じゃないのか?」

『どうかな?君は、作られた人間は人間ではないと思うのか?』

 

充電が切れたのか、ドラグーンは収納されビームサーベルで斬りかかってきた。ストライクはシールドで柔らかく受け止め、フレームのたわみを利用してプロヴィデンスを弾き飛ばした。

 

「僕は人間だ。ただ人より出来る事が多い、それだけの」

『そのように見てくれる人間はどれほどいるものかな。この状況を、人類の滅びの危機を作ったのも人類自身だというのに!』

 

どうせ当たるまいと、キラはビームライフルをプロヴィデンスに向けて投げ捨てさせた。ダガーの投擲で爆発するライフルを躱し、空中で姿勢を立て直したプロヴィデンスは、ミラージュコロイドを発動し姿を消した。

 

『人は滅びる。自らの業で!君もその一つ!共に墜ちろ!』

「何故僕を狙う!?」

 

不自然なデブリの動きから、キラはフェイントをすべて見切り当身を受け止めた。

 

『私がクローンだからさ!人類の最高傑作、キラ・ヒビキの研究資金のために作られた!故に私にはある。人類を滅ぼす権利が!』

「そう思いたかっただけだろ!」

 

キラは、焦っていた。先程から全く崩壊が進んでいないことに。その答えは、ミサイル爆撃で削れた縁にあった。

 

「あの火花の散り方!フェイズシフトか!」

『これも人間が生み出したものだ』

 

恩人の知識が悪用されている、そう思うだけで、より目の前の男が憎い、そう思えた。

 

『そうだ、私を憎むが良い、キラ・ヤマト!私もお前が憎い!故に我々は殺し合うのだ!』

「貴方が僕のせいで生まれたなら、僕が貴方を倒す!」

 

ストライクが、先ほどより荒く地を蹴った。叩きつけるようにビームサーベルを振るう。プロヴィデンスは半身で易々と躱し、返しをストライクもまた躱した。人間同士の組み打ちのように体を取り合い、氷に刻まれる足跡は入り乱れ、一歩ごとに構えだけでお互いが牽制しあう。

モビルスーツが開発されて一年。ある種の境地がそこには有った。

 

『はは、興味もないのに()()()()()とは』

「貴方は・・・貴方はどうして!」

 

お互いを緊密に見つめ過ぎたのか、お互いの脳にお互いの過去が一瞬流れ込んだ。

 

「何故その子のために生きようとしない!」

『思ったさ!それでも私がお前たちを忘れたことは無い!片時たりとも!こんな感情を抱えて生きて行けというのか!』

 

黒い霧が吹き出し続けているかのような錯覚を、キラは覚えた。今まで自分が接した人間の誰よりも鬱積された悪感情が、コクピットからモビルスーツ全てを覆うように。

 

『故に私は見逃した!あの日、ユニウスセブンに撃ち込まれた核ミサイルを!』

「・・・そんな」

 

それが真実なら、血のヴァレンタインの悲劇は

 

『連合の将校の一人が、個人で一つの核を動かしたという情報は持っていた。それを見逃したのは私だ』

「貴方のせいで、一体何人が!」

『知らぬよ。所詮人は己の知る事しか知らぬ!私が知っていたのは、昔日に私がお前のために作られたクローンだという事。その復讐心!それだけだ!』

 

伸びたストライクの腕を、プロヴィデンスが捕まえた。足払いから地面にたたきつけられたストライクを、プロヴィデンスが切り裂こうと構える。ストライクは足を振り回し、スラスターの噴射と組み合わせてコマのように回りながら立ち上がった。

 

「貴方は自分の心からさえ目を向けていない!」

『それがどうした!私の復讐は最早止まらない!遅すぎたのさ!何もかもが!』

『・・・ザザ・・・キラ!もう高度が限界よ!早く・・・』

 

最早、手が及ばないか。しかし、此処でどうにかしなければ地球は壊滅的な被害を受けるだろう。

 

「出来る事が、無い、のか」

 

呆然とつぶやいたキラを、クルーゼは冷笑を浮かべて見ていた。

 

「やっぱり、僕は人間だ」

 

不意に、一度だけ経験のある不思議な空間に再び居た。それは、ソラン・イブラヒムと最後の話をしたあの場所だった。

いや、お前にはまだ出来る事がある。そう、キラにもクルーゼにも聞こえた。

 

『お前は』

「貴方は!」

 

声に、覚えがあった。いつも自分に戦い方を教えてくれていた、それでいて何かが違う声が。

 

「そんな、だって、あの時」

「俺は、お前と一緒にいた”ソラン・イブラヒム”ではない。そして、この世界の住人でも。干渉できる時間も残り僅かだが、”ソラン・イブラヒム”最後の頼みを一つだけ叶えて行こう」

 

凄まじい速度で頭の中が読み取られ、それを最後に接続が切れた。そう感じた。意識を現実に戻したキラは、その意図を理解した。同時に、目の前の復讐者の本心が、少しわかった。

 

そして、はるか遠くからの薄赤い閃光が、正確にユニウスセブンの中心を打ち抜いた。それは、ユニウスセブンの地下発電所を制御する制御室を完全に破壊し、結果ユニウスセブンを固定していたフェイズシフトは解除された。

 

『おのれ・・・だが、まだ、まだだ!お前だけでも!』

「僕の人生には先約がある!渡すものか!」

 

外部から、フェイズシフトダウンの灰色が観測されたのだろう。一斉に砲撃が始まり、ユニウスセブンが崩壊へ近づく。

 

「これで!」

『私が生きた証は!ここにある!決して消させはしない!』

 

頭が、晴れた。周りが見える。ミラージュコロイドで消えたドラグーンを、キラは画面を見ずに蹴り壊した。周囲にある物質が、何なのか手に取るように分かる。

 

もう一つ後ろから飛来したビームを、ビームサーベルを投げて相殺した。二の矢で、ダガーを銃口に入れて破壊する。目の前まで迫ったプロヴィデンスと、再び組み打ちになった。腕や脚のみを消した状態で、中央部の装甲だけはフェイズシフトしている。腕や脚を抑えた反応から見るに、接触の瞬間のみフェイズシフトしているらしい。

 

「終わりだ」

 

先程とは逆に、ストライクがプロヴィデンスの腕を捉えた。腕を引き、倒れ込みそうになるプロヴィデンスのコックピット近くに、地面との反作用とスラスター噴射を聞かせた肘撃を当てる。その場で足払いをかけ、プロヴィデンスは完全に姿勢を崩した。

先程のビームで開いた大穴の近くで、ストライクが、マウントを取った。ビームサーベルを突きつけて、少しでも動けば止められるだろう。

 

『やはり、こうなる運命だったか』

「違う。貴方は強かった・・・そうまで鍛え続けた人間が、鍛え続けられるような人間が、人間じゃないはずがない」

『人間として生きて来た者の感想だよ。私が・・・不完全なクローン技術で生まれたせいで、寿命ももうそうはあるまい』

「なら、猶更生きるべきだった、そう思います。もう一人の貴方のためにも」

『・・・私の宿業の敵が、最も私を理解しているとは皮肉なものだよ』

 

繋がってしまって、分かった。クルーゼには迷いがあった。小さな「自分」のために、全てを忘れ友人たちと生きる努力をするべきだっただろうか。それとも、復讐心のままに復讐を完遂するべきだったのか。

 

『あの日の、血のヴァレンタインで私は迷ったよ。迷い、そして私は見逃した・・・君と同じだ、キラ・ヤマト。アスラン・ザラを殺す気だった君と。選んでしまった以上、私は突き進むしかない』

「僕と貴方は、同じですか」

『・・・止めを刺せ、キラ・ヤマト。私は、君の言う通り君に倒されねばならない怪物だ』

 

ビームサーベルが構えられたまま、ストライクの手がプロヴィデンスに触れた。

 

『何をしている』

「この機体はもらいます」

 

突如、プロヴィデンスの操作がクルーゼからでは一切不能になった。

 

「外から壊していても、限界がある。此処で核爆発を起こせば、もっと細かく砕けるから・・・」

『ふ、好きにしろ』

 

コクピットのコンソールが、カウントを始めた。もうすぐ終わりが来る。まさか、こんな穏やかな気持ちで最後を迎えようとは思ってもいなかった。

 

「それと、貴方はここで死にません」

『これは』

 

プロヴィデンス・アプスーには、脱出機能があった。コクピットブロックは排出され、ストライクの手に収まる。ストライクは、穴へプロヴィデンスを放り込んだ。それは、ラウ・ル・クルーゼを尊敬する設計者の一人が搭載した機能だった。

 

「僕は、貴方を憎いと思った。でもそれだけじゃダメなんだ。貴方の主張は、貴方が世界に届けるべきだと僕は思う」

『出来るかな?そんなことが』

「職権濫用、なるのかな。とにかく頼み込んでみましょう。もちろん裁判は受けてもらいますけど・・・」

『良い。どうせ死刑だ。話したいことを話して死ぬ』

 

ストライクが、ゆっくりとユニウスセブンから離れていく。十分に離れたところで、ユニウスセブンから白い閃光が広がっていく。ゆっくりと閃光が収まった後、かなり小さくなったユニウスセブンの残骸がばらばらと、地球へ落ちていくのが見えた。

ストライクが背を向けたそれは、赤く光って流れ星のように消えていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

ユニウスセブンが砕けて、遂に心が折れたのか、大部分のZAFT兵が降伏していた。

残る復讐心に燃える者も、死ぬか行動不能になるかしていた。

 

戦争は、終わった。

 

代表は消え、狂気のような復讐に燃えるエースはおらず、ただ装備があるだけだ。最早、まともな戦闘にはならない。

 

「はぁ、戦後処理が面倒だ・・・なぜ私がこんな非経済的な・・・いや、戦場に出てくれた全ての兵士に悪いですね。撤回しましょう。これは、我々文官の仕事です」

「いえ、今回の任務は理事が私財を投じて頂かなければ解決できないようなものでした・・・我々も、力不足を痛感しています」

 

終戦の影には、いくつもの奇跡があった。それを、忘れまいと奇跡の一つでも知るものは思うだろう。

ともかく、これで第二次ヤキンドゥーエ戦役から続く史上最大のテロ、ユニウスセブン墜落事件は終わりを迎えた。勝利したのは地球連合軍だったが、その損害は余りにも大きい。軍費、総司令部であるアラスカ基地ジョシュアの崩壊などなど。

そして、例え戦争が終ろうとも人間の営みには続きがある。

 

アークエンジェルや、ドミニオンに収容された今回の戦争における諸役にも裁判がある。

 

確かに、頭が痛くなるほどの書類仕事が残っている。それはそれとしてだ。

 

「それで、クルーゼさんの事なんですけど」

「キラ君、それは出来ないと思いますが」

「やりたくない、ではなくてですか?」

 

頭を抱えたい案件を増やすのは止めてくれまいかと叫びたかった。世界初の星を落としたテロリストの話など公開すれば、世界の首脳や行政府が黙っていないだろう。

 

「やりたくないというのも事実ですがね」

「僕は、僕のために生まれたあの人が唯々死んでいくなんて嫌なんです」

「流石に、個人のためにそこまでする訳には行きません」

 

うっすらと、笑った。それで十分なはずだった。

 

「・・・そうですね。それなら」

「・・・いいでしょう。それは脅迫と言えますが、立証は出来ない。交渉成立です」

 

周りに聞こえないようにキラの口が動いた。確かに、ストライクの最新版戦闘データを手に入れることが出来れば財閥の軍用モビルスーツの独占販売は堅い。

そして、手が滑ることを立証は出来ない。

 

「公式の連合による裁判の様子をすべて私の部下にメモさせましょう。それを販売するという形でどうでしょう。もちろんダミー会社をいくつか経由したりはしますが」

「それで行きましょう。それと」

「公正な裁判ですよ。そこは見縊らないで欲しいですね。君の出生についても秘匿します」

 

キラが、笑った。アズラエルは、直観した。これは、何か断られる時の顔だと、よく知っていた。

 

「僕は、理事の部下にはなれません。オーブでやらなきゃいけない事があります」

「・・・そうですか。技術協力ならどうです?」

 

譲歩は、珍しいことではなかった。特に、人間のスカウトでは。強制して何かをやらせた人間ほど作業能率が長期的に悪い物は無い。

 

「ええ、それなら。何度でも出向しますよ」

「なら、それで十分です」

 

アズラエルには達成したい目標があり、そしてそれを叶えるのは戦争に勝った今、義務だろうと思えた。

 

「戦争が終わった今、世界中で何もかもが不足しています。ここからが僕の出番ですよ」

「根っから商人ですね」

「ええ、それこそ最初から最後までそうですとも」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

地球連合では、今回の戦争の首謀者とその側近として、パトリック・ザラ及びラウ・ル・クルーゼの裁判が行われた。様々な政治的意図が混雑しようとしていたが、最終的には()()()裁判官が選出され、死刑が廃止された連合の法律上の最高刑、終身刑の判決が両者へ下った。

 

「じゃあ、独房に収監、という事ですか?」

「ええ。そのまま社会復帰が出来るような人間でも、許していいような人間でもありませんし、個人的な報復の対象でもあるでしょう」

「個人的復讐は不公平、ですか」

 

戦時中ならいざ知らず、やはり人を殺めるというのは罪なのだ。

 

「戦争中ならともかく、生きて捕まえてしまった以上我々の法律に照らし合わせなくてはなりません」

()()()()気持ちは無いんですか?」

「無い、と言えば嘘になります」

 

事実、アラスカ基地の地下では復讐を誓った。

 

「ふと、恐ろしくなったんですよ。私が考えたことは、いつかあそこまで至るのではないかと」

「それで、自分を抑えようと?」

「ええ。私には、資産という力がある。だからこそ、私が誰よりも・・・いえ、止めましょう、キラ君。君はとっくにそこまで考えているのでは?」

「僕は、あの人と戦って、どこかでつながった感じがしました。それ以前はきっと同じようなものです」

 

強すぎる誰かの感情を見て、我に返るというのはよくあることだが、これは最早中てられたと言っても良いくらいの凄まじさだったのだろう。

 

「僕は、日常に帰れたんです。それが、ソランさんの願いだった」

「彼が・・・」

 

消えた、という事は、既に耳に入れていた。アズラエルからすればそんな事があるのか、という疑問もあったが、悲しむアークエンジェルのクルーの様子を見るに本当だったのだろう。

 

「以前とは何もかもが違いますけど、くだらないことで笑ったり泣いたりできる日常なんです」

「結局、彼も君の事はぼかしましたからね」

 

一般の聴衆も集まる裁判において、ラウ・ル・クルーゼは自身の生い立ちを子細に語って見せた。それは驚きと共に世間へ流布され、アズラエル財閥の力で報道は世界へノンストップで発信された。

キラは、自身の出生が明かされるかもしれないと覚悟していたのだが、クルーゼは()()()()()()()()()()()の研究資金のために作られた人間である、と詳細を伏せた。それは、クルーゼの心境の変化を端的に表したものではないかと思った。

強硬な反コーディネーター論の展開が心配されていたが、小規模な展開、つまり従来の過激派反コーディネーター集団が声を荒げるに留まっているだけだった。

 

「さて、今回の呼び出しなんですが・・・」

 

呼び出された秘書が、二通の封書をキラに手渡した。

 

「君の元親友から手紙が届いています。あの時ユニウスセブンからパトリック・ザラを運び出させた彼に頼まれまして」

 

今時珍しい、紙の手紙だった。

 

「約束でしたので、読んではいませんが・・・」

「謝罪と、僕が居なくあった後の事がまとめてありました。お父さんとちゃんと話し合ったみたいで」

 

きっと、立ち直ることが出来る。生きているのなら。

 

「もう一つ、やっとプラントへ打ち込む核ミサイルを用意した将校を掴みました」

「どうするんですか?」

「どうすると思います?」

「こっちは、酌量の余地もないと言いたげな顔ですね」

 

酷く、酷薄な顔に見えた。

 

「命令違反、大量殺人、etc・・・軍法に照らし合わせれば銃殺刑ですが、こちらは余りにも気に入らない人物でしたから・・・プラントのアプリリウスに強化ガラスに詰めて晒し物と、新しく発見した資源採掘衛星でつるはしだけ持たせて採掘機械並みのノルマで強制労働というのも考えています。

コネとカンニングに賄賂と血筋だけで成り上がった、肉体労働なんてしたことの無い無能さんですからね。きっといい声で鳴きますよ」

「殺された方がマシって本当にあるかもしれませんね」

 

短く、また次の定期交流で、とあいさつをしてキラはアズラエル財閥オーブ支店ビルを後にした。出口では、スピード以外の何物をも求めていないようなデザインの車が止まっていた。

 

「おーいキラー!早く来ないとお前の分のケバブ食べちゃうぞー!」

「待ってカガリ、今行くよ!」

 

鬱屈としていた大学時代も、戦友の背を追って走り続けていた戦場でもこの光景を待ち望んでいただろうか。少なくとも、自分がこの今に幸せを感じていることは確かなのだ。それで、キラには十分だった。




終わり・・・ません!
少なくともエピローグをやります。登場人物たちの一年後くらいが書きたくてたまらないので、それはもう長々と書きたいので、二、三回に分けて投稿していきたいですね!

とはいえ、戦いは一先ずここまで。一年を超えて、お付き合いいただきありがとうございました。最初の方を見てみると、いや、良くここまで続けたもので。
素材が良かったのもあるのでしょう。技術の向上も、少しくらいはあったかと思います。
一重に、感想や評価をくださった皆様、お気に入り登録で長く読んでくださった皆様へ、もう一度感謝の言葉を述べさせて頂きます。


続編は今のところ思いつかないので、やるとしてもしばらく空きます。先に浮かんでいるアイデアを消化したい・・・
番外編もいくつか思いついたら書きたいですね。以下、小ネタ


小番外編:C.E.70 2月10日

「久しぶりじゃないか、ラウ。来るなら連絡の一つも欲しかったんだがね」
「いや、緊急でこの近くを通ったんだが、予想よりも連合艦隊の進行が遅かったらしい・・・また紅茶のブレンドを変えたのか?」

ギルバート・デュランダルは、苦笑してガラス瓶を指し示した。

「最近懇意にしている女性が中々良いブレンドを知っていてね、君の趣味にも合うだろうと思ったんだ。レイも気に入っているし」
「まあ、同一人物ではないとはいえ味覚は似ているか」

仮面を外しているクルーゼは、可笑しそうに青い目を線にして笑った。

「久しぶりにチェスでもしようか」
「良いね。流石に、レイではまだ相手にならないし、指し筋も全く違う。遺伝子学者の私から見れば実に興味深い」

率直で、それでいて煙に巻いてしまうような言葉の巧みさもあって、それでもこちらに気持ちのありようを素直に伝えてくる。よくわからない人間だが、それでも色々なものを柔らかに伝えてくるこの男が、クルーゼは嫌いではなかった。

「・・・弱くなっていないか?」
「分かるかい?最近は音楽を始めてね、そちらにかかりきりなんだ」
「レイも?」
「君が、あの子に自分とは違う生き方をして欲しいというのは分かるんだが・・・」

珍しく、直接的な言い方をすると驚いた。

「そんなに顔に出ているか?」
「何時もの趣味の悪い仮面をつけていないから猶更な」
「君なら仮面をつけていても分かるのではないかな?」
「私の悩みは、流石に相談できるようなことではない」

チェス盤を片付け終わった所で、デュランダルはカプセル剤の入ったボトルを手渡した。

「レイにも渡したが、これを飲めば寿命の先延ばしに出来るはずだ。レイはまだ幼いし、君よりも効果が望めるだろう」
「そうか」
「私にはわからないね。君を必要としている子供がここにいるのに、君は命など要らないとばかりに戦場へ躍り出る」
「ラウ?」

噂をすれば・・・何だったか。とにかく、いつの間にか起きだしたらしいレイがシックな居間に姿を現していた。

「久しぶりだな、レイ」
「最近は戻って来なかったね」

悲しそうにつぶやくレイに、クルーゼは柔らかく頬に手を当てた。

「私には、やらなくてはならない事がある」
「分かった。俺は、ギルと待ってるから。タリアの紅茶も覚えるよ」
「良い子だ」

業の深いことだと、自分でも思う。きっと、私が復讐の果てに死ねば、それをいつかギルバートに真実を聞いてレイは私をなぞるのだろう。
気付けば、しゃがみ、レイを抱きしめていた。

「次は、今流行りのラクス・クラインのアルバムを買ってきてあげよう」
「ラウ、私はいつも言っているだろう。デスメタルが最高だと。最近も素晴らしい才能の持ち主を見つけてスカウトしていたんだ。OKをもらって、まだ正式に加入してもらったわけじゃないが・・・ミーアという名前なんだがね」
「レイ、この男は中々悪くない大人だが、こいつの作る歌詞は大人になるまで読まないでくれ。後生だ」
「・・・?分かった。ラウがそう言うなら」
「いい子だ」

憤懣やるせなしという顔をしているギルバートに一言。

「風俗を著しく乱したとかで捕まるなよ?」
「大丈夫だ。この前のライブでそのミーア・キャンベルに歌わせたときは大好評だったんだ」
「そこにレイを連れて行ったらここのチェスの駒を全部飲ませるからな」

ドアがバタンと開いて、闖入者が一人。完全に気を抜いていたクルーゼは、驚いてレイの頭を撫でているところで固まった。

「ラウ、こちらがボーカルのミーア・キャンベル・・・デスメタルの申し子でね」
「何故私とレイを見てよだれを垂らして息を荒くしている?」
「メモメモ・・・あ、初めまして。ミーア・キャンベルです一枚だけで良いので写真を撮らせていただけないでしょうか」
「あ、ああ。これで良いのか?」

クルーゼは、先ほどのようにレイの頬に手を当てる。レイは、嬉しいのか恥ずかしいのか頬を少し赤くしてクルーゼを見ている。

「キャー!美少年と美青年!これは1万部越えも夢じゃないわ!ありがとうございます!今日はここで失礼します!」

嵐のように去っていった。

「まあ、ああいう残念な部分もあるが才能は本物だ」
「あそこまで近づき難い人間が居るのか」

大人二人は苦々しい表情で閉まった扉を見ていた。一方、純真極まりない少年はクルーゼに尋ねる。

「ラウ、今日は泊っていくの?」
「ああ。明日の朝に出発すれば十分間に合うし、話し込んで遅くなってしまったから、泊まろうと思っていたんだ」
「じゃあ一緒に寝よう!」
「はぁ、後でタリアに連絡して何か作ってもらおうか」
「レイにココアでも飲ませればすぐに寝るだろう」

後日、レイとラウが一緒の布団に入った無防備な寝顔の写真でギルバートは念願のボーカルをゲットし、正式にバンド活動がスタートした。


◇◇◇◇◇◇

・・・楽しさのあまり小ネタ越えてしまった感があるな。そして美しく終わらないww
よろしかったら新作についてご意見伺いたく、活動報告のアンケートに目を通して頂けると幸いです

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