ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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お・・・終わった・・・
「ようやく」でしょうか。それとも、「もう」でしょうか。
続編求む、などなど、嬉しいことを言ってくださる方もおられる事は、大変うれしく思います。
続編としてSEED ASTRAYの火星編へ繋がる物が最も面白そうでやってみたかったですが、ASTRAYを読んだことが無いため、しばらくかかるかと思います。
それでも、その「しばらく」の間も執筆は何かしら続けようかと思いますので、とりあえずはまだ完結していない鉄血×ドリフターズを。
それと並行か後続で、FGO×血界戦線や、劣等生×空の境界あたりのアンケートが強かった話を書いていこうかと思います。

(少なくとも一部は)完結。お疲れさまでした。
残る二つのエピローグをお楽しみください。


Epilogue:Form of Happiness
50話:婚前パーティー


C.E.74 6月10日 PM11:00

 

「おい!早くしないと飛行場の予約時間だぞ!」

「ちょっと待って・・・このラップトップだけ詰めるから・・・わ!爆発した!」

「ええー!?」

 

オーブ、オノゴロの郊外にある邸宅では、キラのバッグが爆発していた。

 

「あー・・・バルトフェルドのおじさんとの決闘用のチリソースかぁ」

「これとラップトップは持って行かないと困るでしょ?」

 

オーブ国防軍に飛び級入隊してから、キラはそこそこに忙しくなった。実績を買われてのスカウトによる入隊で、キラはオーブ国防軍のMS部隊隊長兼技術研究部副主任という大変長ったらしい称号とかなりの給金、そして書類に限らない仕事を手に入れた。

今日も、パナマのバルトフェルドの店でのムウとマリューの婚約記念パーティーに参加するためにキラはワークステーションのラップトップを自家用飛行機にまで持ち込む必要が発生したわけだ。

 

「これは?」

「アズラエルさんの伝手で輸入したハワイ産特級コーヒー豆セット」

「あーもう!こうすればいいだろ!?」

 

業を煮やしたカガリが中型コンテナとトレーラーを手配し、荷物問題は解決した。計画性が無いわけではないが、二人とも忙しさのせいで少々馬鹿になっているらしい。

 

「はぁ、疲れた」

「そんなんで良く将校の仕事が務まるな!」

「カガリは立場のわりに仕事が少ないでしょ・・・」

 

露骨に目を逸らして砂糖入りコーヒーをすするカガリに、キラは苦笑いした。どうやら罪悪感と自覚は有るらしい。

 

「あと20分くらいでパナマの飛行場に着くらしいけど」

「それにしても、あの頃はあの二人が結婚するとは思わなかったなぁ」

 

話を聞いてから二日おきにそんなことを言っているのだが、単に当時のカガリにそういう視点があまり無かったのではないかと少しキラは思っていた。それも気にしているらしく、一度口に出して泣かれたキラは黙っている。

 

「でも、ムウさんはパイロットだけの時は良くそれっぽいことは言ってたような・・・」

「私はマリューからって聞いたぞ?」

「じゃあ両想いだったのかな」

「そうなんじゃないか?」

 

結婚式とその前祝いの招待状が来たのは先月の事だった。それは、カガリとの交際についてウズミに相談に行き、同居することを耳に入れたウズミのせいで執務室が半壊し、その日の仕事が休みになったためカガリと一緒に読んだ。

小さな結婚式で、アークエンジェルの主要クルーが呼ばれている。恩師という事で、第八艦隊のハルバートン中将も呼んだらしいが、流石に忙しかったらしい。

何としても出席しようと決意した両名は、この日に回りそうな仕事をほとんど片付けた。

その残る少しも終わり話し込む二人は、機長の着陸する、というアナウンスを聞いて慌ててシートベルトを締めた。

 

荷物検査を早々にパスし、チャーターしていたリムジンでバルトフェルドの店に向かう。此処で、北米から旅客機で来たらしいノイマンとチャンドラーが車に同乗した。

 

チャンドラーは彼女に振られたらしく、かなり暗い顔をしていたが本人は祝うと明言しており、また流石に大人だし大丈夫だろうと判断した三名によりそのまま同行の許可が出た。

 

30分ほどで、バルトフェルドの店に到着した。トランクから取り出された荷物を台車ごと受け取り、車を見送る。

 

<Nossa loja está reservada para hoje>(当店は本日貸し切りです)と、看板がぶら下がっている。普段なら、コーヒーを目当てにかなりの数の客が木造りの店の前に並んでいるのだが、かなり事前に今日の貸し切りは決まっていたらしく知り合い以外は居なかった。前日から旅行で宿泊していたサイとフレイ、トールとミリアリアはここで集合した。

 

「キラ!久しぶりだな!」

「トール!あれ、ちょっと日焼けが・・・」

「そう!昨日ビーチに行ってさ!いやーこれが良い眺めで・・・・痛い!やめて!耳は勘弁!」

 

どうやら何も変わっていない親友たちに、キラは笑いがこみ上げてくる。そうして騒いでいると、サングラスをかけたバルトフェルドが店のドアから顔を覗かせた。

 

「あー、君たち。いつもなら営業妨害だと言ってやるところだが、今日はあえてこう言わせてもらおう・・・良いぞもっとやれ!」

「何馬鹿な事言ってるの・・・あら、お久しぶりね」

 

後から顔を出したのは、アイシャだった。歳をとった様子もない。

 

「お、今日の主役が来たみたいですよ」

「同志の鷹じゃないか!」

「同志の虎さんじゃねえか!」

 

顔を合わせるなり固い握手を交わす二人に、キラは遂に堪え切れず吹き出した。すると、二人が同時にこちらを向いた。

 

「今日は祝いの席だからね・・・もちろん新郎に合わせてヨーグルトソースのケバブを用意してあるとも」

「いえ、自前でチリソースを持ってきましたから」

 

キラがハンドバッグから取り出したそれは、呪いでも溶かし込んであるのかというほどの毒々しい赤と深い黒が融合した異次元の産物だった。

 

「そうそう。やっぱり正統派じゃないとな!」

「くっ、これだから暗黒面(チリソース派)は!まあ良い!こちらも今日のためにわざわざスイスからヨーグルトを取り寄せたからね!是非食べてくれ!」

「お、そりゃ楽しみだな」

 

議論が白熱する中、マリューは遅れて到着したバジルールと和やかに歓談していた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「では、新しい夫婦の誕生を祝って!」

「乾杯!」

 

数名を除いて格式ばったことはあまり好きでない人間が集まったためか、挨拶もそこそこに食事が始まった。

 

「はふっ、チリソース旨い!」

「いやー良く出来たヨーグルトソースだ!んぐっ、作った甲斐があったというものだよ!」

「いやあんたら祝えよ」

 

食事会と言うべきか宴会と言うべきか、少なくとも料理や酒類の減り様はすさまじいものがあった。アイシャによれば、どれもこの店の人気メニューらしい。

 

「明日の式は向こうの丘にある教会でやるのね?」

「ええ。彼が見つけてきたのよ」

「実はね、私たちもあそこで式を挙げたの」

「まあ。それは良いわね!」

 

今日、殆ど初めて顔を合わせたわけだが、マリューとアイシャは話が合うらしい。トノムラ、チャンドラー、ノイマンのアークエンジェル初期クルーはチャンドラーの愚痴に付き合っていた。トールはミリアリアに拘束されていたし、サイはフレイと楽しそうに食事をしている。バジルールは、あまり酒が強くないらしくコーヒーを驚き顔で飲んでいた。

幸せが、結婚する二人だけの物でなく、周りにも同じような量にばらまかれている。幸せは、きっとどんなに分けても小さくならない物なんだろうとキラは思った。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

夜の8時ごろになって、バルトフェルドが手を打った。

 

「じゃあ、今日はここまでという事で・・・解散!」

 

各自は、ホテルやらなにやらに帰り支度をしてばらばらと、余韻に浸りながら帰り始めた。

 

「君たちとは、話し合い(デスマッチ)があるんだったね」

「いえ、ただの宿泊なんですけど」

「失礼、うちに宿泊だったね。しかし、良いのかね?君の友人たちのように二人きりで泊まらなくて」

 

当然の疑問だろうな、と、二人は全く同じく思った。

 

「いえ、そうしたいのはやまやまなんですけど」

「うちの父が・・・」

「まぁ・・・無理強いはしないが」

 

何かを察したらしく、バルトフェルドの方眉が吊り上がった。

 

「まあ、部屋は同じで良いんだろ?」

「ええ、一応」

「ベッドも一緒でいいの?」

「それはちょっと」

 

アイシャは、分かったうえでからかっているのだろう。キラも、余りムキにならずやんわり断る。

 

「それで・・・まあ、なんだ。コーヒーでも飲まないか?」

「あ、私も・・・」

「ちょっとカガリさんはこっちにいらっしゃいな」

「え、ちょっと!」

 

約一名は気が付かなかったが、かなり露骨な話題転換だっただろう。

 

「わざわざここに泊まるんだ・・・話があるんじゃないのか?」

「はい。バルトフェルドさんに相談するのが一番良いと思いました」

 

本当に、そう思っていた。だから、今日の予定を決めたのはキラだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ねぇ、最近、キラ君はどうなの?」

「えぇー?最近、ねぇ・・・あんまり変わんないと思うけどなぁ」

 

テーブルに、アイシャがコーヒーを置いた。普段店で出しているもので、今日で挽いてから日数が限界なので、淹れてしまった。日ごろの習慣なのだ。

 

「あ、最近指を良く触られた気がする」

「それで?」

「他にはあんまり・・・うーん」

 

サプライズだろうから、と、こちらはそっとしておくべきかな、そう、考える。恐らくこれは人生の一大イベントなのだから、私が伝えるべきではないのだろう。

 

「そう、変わらないのね。ちなみに、今日のケバブを焼いたのは私よ?」

「へぇ!じゃああのソース無しは」

「あの人が意地悪するだろうと思って」

 

それぞれの夜が、それぞれに更けていく。




とりあえず、前編のようなもの。来週でエピローグ完結の予定です。
まあ分かりますよね。何がしたいかは。オーブ国家元首のせいで滅びるんじゃあるまいか

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