ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結> 作:MS-Type-GUNDAM_Frame
二部はASTRAY読む暇があるかどうかなんですがね。
とりあえず、書いてみます。
C.E.74 6月11日 PM11:00
時刻上は、オーブを出立して丸一日が経過した。最も、経度の問題で実際に経過した時間は高々半日と少しだろう。パナマの丘に建つ白い教会には、何人もの戦友やかつての敵が足並みを揃え、集まっていた。
今日、式を挙げて結ばれる二人の人徳がわかるだろうか。
新郎の控室には、ムウ、キラ、トールが三人で並んでいた。
「ああー緊張する」
「ムウさんでもですか?」
「そういうタイプだったんですね」
眉間を軽くつまむムウは、純白のタキシードをしっかりと着こなしていた。何でも、少々鍛えすぎたせいか特注品となっているらしいが、中々腕の良い仕立て屋が作ったらしく、違和感はまるで無かった。
そうして、意外だというような反応を示す二人にムウは噛みついた。
「俺だって人間だぞ?緊張くらいはする・・・ましてや、今までの人生最大の山場だし」
「でも出撃前でもこんなには緊張してなかったですよね」
「あはははは、ほんとかよキラ!」
鋭い払いが、トールの頭を確かに捉えた。
「いやな、マリューが俺のプロポーズを受けてくれたことはそりゃ嬉しいんだが・・・」
「目立つのがダメなような人じゃないでしょ、ムウさんは」
口には出したが、何がムウをこうしているのかを、キラなりに考えた。自分も、きっとムウがマリューに対してそうであるように信じているし愛しているのだ。それでも、土壇場で全てが夢だったように何かが崩れてしまうような不安がある。
それは、愛する彼女からの突然の拒絶かもしれないし、突然天災のような何かが起こるかもしれないという恐怖の幻影でもあった。
一度、壊れたのだ。壊れた直後から、元に戻ろうという努力は全力でやった。それでここまで帰ってきたのに、もう元の自分でない事が戻ってきたからこそわかる。一種の、幸せに対する拒絶反応染みた何かが体にあるのだ。それは、直接戦場に出たわけではないトールには無い感情ではないかとキラは思った。
「もしかして、マリューさんにここまで来て断られるんじゃないかと思ってたりします?」
そう、考えていたらトールがいきなり核心をついた。何なのだろうか、この勘の良さは。
「それは・・・その」
しかも、ムウの反応を見るにそう外れた言葉でも無いらしい。
「それならちょっとわかりますよ、俺」
「何かあったのか?」
キラの知る限り、トールはミリアリアと上手くいかなかった事はそうないように思えた。だから、キラも初めて聞く話だろうと黙って先を促す。
「アークエンジェルに、乗ってすぐぐらいなんですけど、俺、ミリーと一緒にいられないんじゃないかと思った事があるんですよ」
「そりゃまたなんで」
「キラです。俺の親友は、あんな事が出来る凄い奴なのに、俺は普通の人間なんですよ。それで、その、ミリーがキラの方見ちゃうんじゃないかって、思った事があるんです」
キラには、寝耳に水だった。もっとも、本人に面と向かって告白するような話でもないだろう。トールの話は続く。
「それで、聞きました」
「おいおい凄いなお前」
「良く出来るねそんな事」
そこは自慢げな顔をする所なのだろうか。そうかもしれないが、少々むかっ腹が立つのでわき腹を突いた。ムウも同時にやったらしく、トールが変な声を上げた。キラとムウが少々引いた。
「やめろよなぁ、もう」
軽く赤面しながら咳払いをして、トールはまだ話を続ける。
「そしたら、『今更そんなこと気にするの?私がどれだけトールの事でそれを気にしてたと思うの?』って。俺たち似た者同士だったみたいで」
「それで?」
「もう、気にならなくなりました。結局、俺とミリーは一緒にいられるくらいには人間が合ったんですよ」
「さ、参考になるようなならないような」
キラとしては、そうだった。ムウは、少し神妙な顔で考え込んでいる。
「いや、参考になった。ありがとよ、トール」
「いえいえそれ程でも」
お礼を言って、ムウは膝を打って立ち上がった。
「よし、お二人さん。そろそろ時間だから席に戻ってくれ。ビシッと決めるからよ」
それじゃあ、と、短く言って扉を出る。席には既にカガリが居て、こっちにこいと引っ張り込まれた。
「どうだった?フラガのおっさん!」
「ビシッと決めるってさ」
へぇ、と言ってクスクス笑うカガリは、やはり可愛かった。
◇◇◇◇◇◇
キラたちの座る席の後方から、サッと光が差した。扉が開いて、ムウとマリューが入場してきたのだ。
以前マリューを見ていたころは大抵顔に黒い油や煤がついており、四六時中何か工具を持っていたが、今や白いドレスにベールをかぶり、軽く化粧を施したマリュー・ラミアスは見違えるように美人だった。
否、当時ですら美人ではあったから、磨きがかかっていると言うべきか。そして、奇麗になった手を、ムウが優しく捧げ持っている。
顔にはマリューとは対照的に、かつての覚悟の決まった笑みが浮かんでいる。
二人とも、ゆっくりと神父の待つ中央まで歩いていく。扉があいた瞬間から、静寂が支配していた。
やがて、中央の祭壇で二人は止まった。教会の関係者が、対になった結婚指輪を持ってくる。
「新郎、ムウ・ラ・フラガ、前へ」
一歩、ムウが進み出た。
「私、ムウ・ラ・フラガは、マリュー、君をいつまでも大切にし、幸せにすることを誓う」
「新婦、マリュー・ラミアス、前へ」
二人が、並んだ。
「私、マリュー・ラミアスは、ムウ・ラ・フラガを生涯変わることなく愛します」
「では、この結婚に異論のある者は?」
居るはずもないな、と、キラには思えた。きっと、ここにいる全員がそうだろう。
そして、予想通り誰も名乗り出ない。
「では、新郎、新婦の両名は誓いのキスを」
マリューが、ムウの方を向いた。ムウは、マリューの手を掴んだ。
「俺は、実はこの瞬間を迎えるまで怖かったんだ。どこかで、君を疑っていたともいえるかもしれない。そんな俺でも、愛してくれるのかい?」
「私は、貴方のそんな所まで愛しているわ?」
そう言って、マリューはムウの頭を抱き寄せ、キスをした。少しびっくりしていたムウも、やがてマリュをは抱きしめ、神父が祝いの言葉を述べる。
知らず、キラは拍手をしていた。それは段々周りからも聞こえ始め、静寂だった教会中に響いた。
まるで別の世界に居るかのようにムウとマリューは身じろぎもしなかったが、数分してようやく離れた。
ムウは、泣いていた。顔は満面の笑みなのだが、安心したようにぽろぽろと泣いていた。
「ありがとう」
「良いのよ、ムウ」
見ると、ノイマンとチャンドラーが泣いていた。トールやサイも泣いていて、キラも目元が濡れていることに気付いた。口に出して、おめでとうございます、言って、少し嗚咽が漏れた。自分の事のように、嬉しかった。
ムウとマリューが指輪を交換した後、全員が外へ出た。
「じゃあ、ブーケトスの時間ね」
そう言って、階段の上でマリューが扉の方へ向き直った。女性陣が、階段の下で並ぶ。
「えい!」
ブーケが飛んだ。どうやら男性陣の位置まで届くような珍事にはならず、女性陣の誰かが順当に受け取りそうだと、キラの優秀な空間認識能力が読み取った。どうやら、位置から見るにキャッチするのはミリアリアだろうか。後から見るだけでも、目に見えない何かが発散されているのが判る。
そうして、美しい放物線を描いて落下していたブーケは、突如吹いた海風に曲げられた。温度が一度ほど低下した気もするが、素早く落下予想地点を更新した。
そこに立っているのは・・・丁度、バジルール艦長とカガリの相中だろうか。
しかし、予想ほどブーケの飛距離は伸びず、ブーケはカガリの手中に吸い込まれるように落ちた。
「わっ・・・私!?」
「お、こ~れ~は~?」
「次はキラかよ」
先日は余り存在感の無かったマードックが突いてくる。トールも突いてくる。一部始終を見ていたムウも、にやにやと笑ってこっちを見ている。先程の泣いているムウの写真を撮っておくべきだったかと一瞬黒いキラが頭を擡げたが、倫理が捩じ伏せた。流石に人として不味い。
カガリはと言えば、顔を真っ赤にしておろおろしている。こっちをちらちら見ないで欲しい。可愛いけれど。
カガリの視線がこちらに向く度に、周りからの圧力が二倍になるような気がする。此処は、僕も覚悟を決めるしかないのか。
執拗に肩を揉んでくるトールの側頭部に痛烈なデコピンを当てて、カガリの手を取った。
「その・・・カガリ?」
「な、なに?」
何時もの、男勝りな部分がまるで無かった。何度でも言おうと思う。やっぱり可愛い。それでいて、ずっとそばに居たいと思える感情がキラの胸中を埋め尽くしている。
「僕は、正直優柔不断な方だと思うんだけど・・・これだけははっきり言いたいんだ」
唾を、飲み込んだ。万が一にも、舌を噛むなんてことは起こって欲しくない。
「カガリのそばに、僕じゃない人がずっと居るのは、嫌だよ」
「えっと、私も、その、キラが・・・良い」
言い切った。ほとんどプロポーズだと思う。いや、プロポーズだった。
「いやいや、お互いベタ惚れだな」
「キラがここまで言うなんて・・・」
外野がうるさいが、頭にはカガリの「キラが良い」という言葉があった。
「カガリ・・・」
流石に、この空気この人数の前でキスは厳しかった。ハグでも、許してほしい。カガリもふにゃぁとか良くわからない言葉を発しているし。
「ヘタレ」
あのソランさんと少しだけ混ざり合った時に知ったが、脳量子波と言うらしい。トールの位置は見なくても分かった。踵でつま先をそれなりの力で踏みつけた。
「馬鹿ね」
ミリアリアにも笑われているが、僕もそう思う。そんなところは友人として好きだが。
「ふふ、カガリさんが取ったのね」
「やるなぁ、キラ。嬢ちゃんもう顔がやばい色になってるぜ」
視線を下に下げると、カガリが目を回して気絶していた。幸せそうな顔をしているのだが、これは先ほどのやり取りを覚えているのか少々不安だ。もう一度やれと言われても流石に精神が耐えられないかもしれない。
◇◇◇◇◇◇
帰りの飛行機の中で、カガリが目を覚ました。
「す、すごい夢を見た気がする」
「それ夢じゃないよ?」
僕の顔を見るなり、カガリの顔はまたそれなりに赤くなった。
「はぁ、ウズミさんをどうやって調伏すればいいのかな・・・」
「エリカに聞くか?」
現実的な問題を聞いて多少いつも通りに戻ったのか、カガリがそんな事を言った。
「いや、あの人僕らが二人で住み始める時もオーブ政庁を半壊させたし、結婚するなんて言ったら・・・」
「オノゴロで言うべきじゃないかもなぁ」
カガリとしても、親バカとして認識はしているらしい。
「じゃあ果たし状ってことで無人島に呼び出すとか!」
「それだと周りに防衛軍を配置しないといけなくなるし・・・」
冗談を言い合っている内に、普段のような空気が戻ってきたように思う。結婚式場の時のような大きすぎる幸せも、こんな平凡さの幸せも、得難く、嬉しくてたまらなかった。
次回が一部、無いし1.5部の最終回になるかと。
次回テーマは更に時間が1~2年進んだDestiny一話くらいです。
ウズミとキラの最終決戦編も観たかったですか?
感想にあれば考えたいですね。
小ネタ・結婚式前に
「アスラン!お前、ラクス・クラインと挙式するというのは本当か!」
「いや、俺はこんな男で良いのかと断ったんだが・・・」
「きっさまぁ!!!!!」
「落ち着けよイザーク・・・」
最早、ライバル心、ファン精神、もろもろ混ざって本人も何を言っているのか認識していないのではないか。
「結局結婚するんだろ?」
「きっさまぁ!!!!!」
「寝てろ!話が進まないだろ!」
イザークは、アスランの部屋のシーツで簀巻きにされた。
「結婚式には呼んでくれるんだろ?」
「それは、まあ。同じクルーゼ隊のメンバーだし・・・クルーゼ隊長にも、連絡だけはしようと思う」
「ニコルは何処にいるんだっけ?」
ベッドの方から唸り声が聞こえるが、ディアッカは黙殺した。
「ニコルは、ピアノの世界公演中だから・・・今は確かオーブじゃなかったっけな」
「じゃあ直接来れるな・・・後は・・・」
「あと、ねぇ・・・アデス副官はなんか、だし・・・」
「そうだ、俺の元親友が居るんだが」
「元、ねぇ・・・それホントに呼べるのか?」
元、とは便宜上だが、呼べば来てくれるくらいには通じ合た相手だというのはアスランの見解だった。
「アイツは来てくれると思う・・・」
「そんなとこか。後はあっちが選ぶんだろ?」
「まあな」
「それと、こんなんだけど、流石に当日は祝うぐらいの知性はあるだろうから、イザークも招待してやってくれよな」
「そうだな、そうしよう」
そこで、イザークがシーツから脱出してディアッカに躍りかかった。
「貴様だけは殺す!」
「やってみろ!」
「他人の部屋で暴れるなよな・・・」
アプリリウスの郊外に相当するコロニーで、一戸建てなのであまり外がうるさく感じる、等ということは無いのだが、流血は勘弁である。
ベッドのマットレスに後頭部をめり込ませたディアッカが、手紙を発見した。
「なになに・・・
拝啓、アスラン
地球の海は素晴らしいですね。僕は、潜水艦の甲板でイルカと遊ぶのが好きでしたが、海を見ているだけでも楽しい。今は大西洋連邦のハワイに居るんですが、サーフィンが盛んなようで、プラントではとてもできないスポーツですよね。すごいと思います。
此処ではプラント出身らしいテテス・ハレという女性に会ったのですが、地球の北米大陸出身だそうで、今度北米の夕陽を見せてあげると言われました。是非アスランも一緒にどうでしょう。
敬具、ニコル・・・
お前、ニコルと文通してたのか」
「あ、ああ。別に黙っているようなことじゃないと思っていたんだが、言うほどでもないかなと思って・・・」
急に、ディアッカがイザークと内緒話の体勢に入った。
「なあ、あんなんだからホモなんて噂が立つんじゃないか?」
「流石にそんなことはないだろう。俺とお前でも立つくらいだしな」
「うわそうだったぜ寄るな」
「貴様が近づいてきたんだろうが!」
小声で怒鳴るというのは高度な技術かもしれないが、少し聞こえた。
「別に俺とニコルはそんな関係じゃないさ」
「そりゃよくわかってるけどよ、噂にはなるぜ?」
「それにニコルには彼女が居るらしいぞ?」
この日、一番の冷え込みがアスラン宅を襲った。
「う、嘘だろ?嘘だと言ってくれよなぁ!イザーク知ってたか?」
「知らんが・・・別に普通じゃないのか?」
「う、嘘だ・・・こんなマザコン野郎にも彼女がいる、だと?」
「死にたいのか」
ニコルからの二枚目の手紙には、オーブで知り合ったらしい金髪の女性の写真が同封されていた。演奏会後に海を見ていたら、二度も同じ場所で会ったらしい。
「ステラ・ルーシェねぇ・・・」
ニコルの幼く見える容姿もあってあまり不自然さは無いのだが、どちらもおっとりしているようで、写真だけなら良い二人組に見える。踊りが得意らしく、ニコルがその場で考えた曲を弾くと、とても喜んで踊ってくれるのだとか。
「お前、まさかシホちゃんとデキてたのかよぉ!」
「そんな言い方は止めろ!」
「はやく、戻ってきてくれないかな・・・」
アスランの目には光が無かった。結婚式前だというのにどうしてこんな目に会っているのだろうか。まあ。一種の幸せでもあるのだろう。
アスランは自己完結した。
了
一度はホーク姉妹のどっちかをニコルに充てようかと思ったものの完全に非合法なのでやめました。え?ステラもアウト?Destinyで16とするとこのタイミングでは14歳くらい、ニコルは16歳なのでセーフセーフ