ガンダムSEED×00~異世界にイノベイターは何を思う?~<完結>   作:MS-Type-GUNDAM_Frame

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やっと!
終わった!
セイバーウォーズではなくて。


52話:弥終の住処に

元オーブ元首と現オーブ防衛軍モビルスーツ部隊大隊長の無人島での一騎討ちから、2年が経った。余波で壊れたオノゴロの一部も修復されたが、あの時の中継を見た俺は、オーブ軍に入隊しようと決意した。

モビルスーツ部隊は、広く募集の窓口を開いている。俺は、去年オーブ防衛軍でモビルスーツ部隊に配属されたけれど、試験の内容は凄まじいものだった。

まず、コーディネーターだから多少有利かもしれないという考えは、早々に捨てた。ナチュラルでも、とんでもない人間がごろごろと居るし、ナチュラルのために作られたOSの方が、寧ろ中途半端なコーディネーターよりも強いのだ。

特に、最後のモビルスーツを使ったトーナメントは凄まじかった。俺はどうにか1位になったが、決勝の相手は操作用インターフェースを自前で用意しており、凄まじい体術を再現してこちらに迫ってきた。辛くも戦闘不能になるようなダメージは避け続け、あわやコクピットに肘撃ちが直撃するか、というところで、アストレイはバッテリー切れで動作を停止した。

 

後で聞いた話だったが、それは大隊長その人だったらしい。普段と違うモビルスーツにおける操作用OSの及ぼす影響の調査と、自分の感覚で合格者を探すための出場だったらしいけれど・・・正直命の危機を覚えた。やっぱり上には上がいるもんだ。

 

そして、今日。自分のアストレイを受領した俺、シン・アスカは日課の妹への電話も終え、カスタムも済ませてしまったので営舎へ帰ろうとしたのだけど・・・

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「あーどうしよう」

「どうしたんですか?大隊長」

 

紅い瞳が、こちらを訝し気に見ていた。薄っすらと感じられる感情は珍しさなので、おそらくそれは今の僕の顔なんだろう。

 

「いや、今日カガリの誕生日なんだ・・・」

「えーっと、もしかしてプレゼントを用意してなかったとか・・・」

 

図星だ。頷いた。

 

「不味いですって!うちの妹だってすごい怒りますし、下手したら離婚とか・・・」

「それは無い」

 

自身をもって言える。それは無い。愛とは信じる事だってムウさんも言っていた。しかし、今から用意できるプレゼントなんて・・・

 

「じゃあ、とりあえず食事で時間稼ぎするとか・・・」

「それは、予約したお店にちょっと遅れて行く、とか?」

 

妙案かもしれない。少なくとも、時間稼ぎとしては。問題は、余り予約が必要なような食事が好きじゃないってことなんだけど、まあ誕生日ってことでゴリ押しできると思う。後はプレゼントか。

 

「ちなみに、それは彼女とか」

「いえ、妹から得たテクニックです」

 

もしかしてこの子は妹の奴隷とかそんなんなんだろうかとしばしば思う。

 

「まあ、これは流石に僕が決めないとね」

「じゃあ、頑張ってください!」

 

走り去るシンに手を振って、今から時間が稼げそうな行きつけのお店に電話を入れながら同時にプレゼントの内容を必死に考える。

 

「もしもし、20時からディナーの予約って・・・はい、じゃあお願いします」

 

予約が取れたので、カガリにメールを送る。音声の方が喜ばれるけれど、今はキーをタイプした方が早い。20時から、夕食を、行きつけの場所で、と、要点をまとめて書き付け送る。

僕の声が録音された目覚まし時計・・・トールに唆されて一度プレゼントしたけれど枕元で鳴ると不気味過ぎて粉砕した・・・却下・・・

 

「返信、大丈夫、か」

 

今日は、ハンコを押す書類が少なかったようだ。

何か少し高い物、というのは良くないかもしれない。なんだかんだでセレブだし。そんな気は全くしないところが、良いところだと僕は思う。

そういえば、と、少し前に受け取った手紙を思い出した。失礼ながらとてもそういう人間と接点があるような人間には見えなかったのだが、今売れているメタルバンドの「politician・of・rounds」と知り合いらしく、どんな人間なのか、詳しく書かれており―カガリはかなり引いていた―自分と同じクローンが一人いる。できれば会ってみて欲しいとあった。

もう一人のレイ、という人間も時間があれば会ってみたいけれど、ロックバンドの方も気になった。一緒に読んでいたカガリも、時間さえあればなと嘆いていた。

 

「今からオーディオショップに行ったら・・・」

 

何か、アルバムのような物が有るだろうか。

余談だが、CDというものは未だに販売されている。一世紀以上経過して進化してはいるけれど、見た目はほとんど変わらない。理由は、小さなメモリーチップよりも紛失に強いから、などなど。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ちょっと遅れる・・・よし!」

 

メッセージを送りながら、駐車場までたどり着いて、エンジンをかけた。電気式のモーターに微弱な電圧がかかり、わずかに車が振動する。

 

「一番近いレコードショップは・・・」

 

都合のいいことに、進路の途中にあった。オートドライブではとても間に合わないので、交通規制ぎりぎりの速度で走り始めた。もちろん免許は持っている。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「危ない・・・」

 

最後の一枚だった。丁度今日が発売日だったらしく、十数曲が収められたアルバムは一枚だけが陳列されていた。

後で嘆く声が聞こえたので、本当に紙一重だった。

 

「よし、じゃあもうあとは真っ直ぐ・・・」

 

車の助手席に荷物を置いて、また進み始めた。現在地はオノゴロの中心あたりだが、行きつけのお店は海底トンネルで繋がった別の島だ。

ハイウェイに車を滑り込ませて、市街地では出せなかった速度まで一気に引き上げる。思わず、笑いがこみ上げてきた。

 

「モルゲンレーテと共同開発して良かったよ」

 

この車の開発中の事を思い出した。空力特性の測定などなどはモルゲンレーテのプロに任せたのだが、操作系と駆動系の開発は自分がかなり関わっている完全なワンオフ品だ。

操作系は自分の反射神経の特性と脳波をモビルスーツ同様に反映して、完全に操作と思考の速度に追いつくことが出来るように調整してあるし、モーターは摩耗する部分をフェイズシフト化、よって出力をどれだけ挙げても完全に動力が伝達される。

なので、新規開発した超電導素材を使った超高出力モーターがモビルスーツ用のパワーエクステンダーの潤沢な電力を受け止めて力強く回転している。タイヤの形状もコンピューター制御で速度に合わせて最適な変形をするし、空力翼の動作も素晴らしいの一言・・・

 

多分、生涯で一番お金を投入した逸品だと思う。カガリに合わせたモードもあって、サーキットで運転させてみると絶賛してくれた。とても嬉しかった。

何故か主任は「夫婦そろってスピード狂・・・」と呟いていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

お店に着くと、カガリが席に座って待っていた。

 

「こっちこっち!店長が気を利かせて窓際にしてくれたんだぞ!」

 

まあ、自分の誕生日を忘れるようなタイプじゃないよな、なんて笑ってしまった。

 

「遅れてごめん、プレゼント選んでたら遅くなっちゃって」

「いいよいいよ。それでプレゼントって!?」

 

表情が、いつもの笑顔からくるくる変わる。目まぐるしいほどだ。

 

「これ。politician・of・roundsのアルバムだよ。前クルーゼさんの手紙にミーアさんの事が載ってて気になってたでしょ?」

「私の心を読むなよな!?」

 

普段は抑えているが、これくらいは脳量子波が無くても読める。

 

「けど困ったなぁ」

「何が?」

 

もしかして、もう持っているんだろうか。今日発売日と聞いて安堵したのだけど、実は予約で買っていた、なんてことも・・・

 

「明日のお前の誕生日のために私も予約したんだ」

 

目を、手元のアルバムに落とした。もう一度、カガリの顔を見る。困ったような嬉しいような顔をしていて、可笑しくて笑ってしまった。

 

「あっははははは!何だよ!笑うなよ!」

「カガリだって、あはは・・・笑ってるじゃないか」

 

これも、顔を見るだけでわかる。プレゼントが被ってしまったことが、困ったけれど嬉しいんだ。

 

「お二人とも、オードブルが出来ましたよ。アカムツの海鮮ソースカルパッチョです」

 

マスターも、くすくす笑っていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

家には、二人一緒に帰った。ハイウェイで速度の限界に挑戦しよう、と言ったカガリは少し酔っていたので、今度サーキットでやろうと説き伏せた。

家に帰ると、何枚ものメッセージカードと共にケーキが1ホール置いてあった。メッセージはかつての仲間たちからの物で、ケーキはウズミからだった。

家政婦さんの書置きによると、ウズミさんは「友人がこんなに」と顔中から液体を流して泣いていたらしい。掃除してくれてありがとうと心の中で呟きながら、自分宛ての物もあったので一緒にメッセージカードから先に手に取った。

 

「これは・・・トールか」

 

子供、という文頭の言葉を見た時点で破り捨てた。

 

「これはムウさんとマリューさんから・・・」

 

誕生日を祝う言葉と、第一子の写真が添えられていた。もしかしすると、凄まじいパイロットになるんじゃないかという気がする。

 

「アスラン・・・え、結婚しました?」

 

写真は、プラントのアイドルだったらしいラクス・クラインに抱き着かれたものだった。これしか写真が無く、仕方なくこれを送ると書いてあり、アスランらしいと思う。

 

「サイ・・・泣き言は僕に言われても・・・ノイマンさんはデートまでこぎ着けた・・・」

「へぇ!相手はあの艦長なんだろ?」

「そうだね。大分頑張ったんじゃないかな」

 

キラの印象として、艦長はかなりの堅物だった。それがここまで来ているというのは、感服すべきではなかろうか。

 

「これはマードックさんで、こっちは・・・」

 

全部読むと、今度はケーキを切り分ける。

余り甘くないビターチョコのケーキで、流石に元国家元首のセレクションだった。今の国家元首は権限が五大氏族で分割されており、正直カガリの現在のポジションは行政府とモルゲンレーテや外部組織との折衝の事務統括という、本人曰く身の丈に合った仕事、だ。

お陰でこんな風にある程度普通に暮らせているので、ウナト首相には頭が上がらない。弁解しておくと、僕の仕事もカガリの仕事も厳正な審査の元自力で手に入れた物である。

 

「ん~~、美味しぃ」

「そうだね・・・流石に外さないというか」

 

もしかしすると、まだまだカガリの事を一番良く知っているのは自分だというような挑発なのかもしれない。まあ、間違ってはいないと思う。でも、これからの時間がその差を消していくだろう。

なので、全く悔しくない。明日ウズミ氏のPCにウイルスを送り込もうなんて全く考えていない。

 

「そういえば、来週はDSSDから招待状が来てたでしょ?」

「ああ、あのスウェン・カル・バヤンとセレーネ・マクグリフの連名の・・・」

「カガリもだけど、僕も呼ばれてるらしいから一緒に行けるよ」

「ほんとか!?」

 

仕事でも、一緒に居られるならそれだけで幸せ、というのは二人ともそうだ。まあ、誕生日に仕事の話はこれ以上いいだろうと思って、ケーキをもう一切れ食べようとした―本当においしいのがやはり実は悔しい―ところで、鈴が鳴った。

 

「あれ、玄関の鈴、鳴ってないか?」

「ほんとだ・・・」

 

玄関のドアを開くと、執事が立っていた。もちろん見覚えがある人物で、

 

「ギルベルト、さん?」

「私のような下仕えの顔を覚えていただいているとは嬉しい限りです・・・こちら、アズラエル様からのカガリ様、キラ様へのお誕生日祝いの品でございます」

 

ギルベルトさんの後ろには、大きな金属の箱が載った台車が一台。

 

「何でも、DC1985年のロマネコンティだと伺っています」

「それって・・・」

 

あまり詳しくは無いが、確かフランスのワインだったと思う。

 

「そうですね・・・今ですと、38000O$(\13680000)、と言ったところでしょうか。あまり豪勢な生活はしておられないようですのでそのような価格の物は、と申し上げたのですが、成人年齢の誕生祝に顔を見せられない以上は、金額に物を言わせるしかないとのことで・・・

テイスティングは致しますので、グラスを頂戴してもよろしいでしょうか?」

 

大急ぎでキッチンの戸棚からワイングラスを3つ取り出して、お盆に置き、中へ案内した。台車の上に置かれた箱がガラステーブルの横で開き、冷気が漏れ出してきた。

 

「私が頂けるとは・・・光栄です。給金は十分に貰っていますが、こういったものに使わないもので、機会が無かったのです」

「まあ、美味しい物はみんなで頂いた方が良いですから・・・」

 

その後は金額と味と香りで意識が落ちそうだったが、なんとか堪えた。一杯でキラは切り上げたが、カガリは何杯も飲んでいた。これは元から酔っていたからなのか、それとも元々お金持ちだからなのか・・・

 

ギルベルト氏は、丁重にお礼を述べて帰った。カガリは赤ら顔でキラに抱き着いているのだが、このままでは眠りかねないのでお風呂に入れなくてはならない。

流石に酔った人間の体をべたべた触るのも良くはないので、バスタオルを巻かせて(服も自分で脱がせた。見ていない。見ていないと言ったら見ていない)、頭を洗ってあげる。

それで、なるべく見ないように脱衣所に連れてきて着替えさせる。髪だけは拭いて、タオルを巻いてあげた(もちろん体は自分で拭かせた)。

 

寝室でドライヤーをかけてあげるが、目がぐるぐるしているあたりもう意識を失う寸前だと思う。抱えてベッドの上に転がして、自分も横になる。

 

時計が、12時を知らせた。

 

「18歳、おめでとう、カガリ」

「18歳、おめでとう、キラ」

 

僕は抱き枕になった。




KENZENだね!
まあ作者が童貞だから仕方ないね!
あまあま新婚生活の誕生日編で我慢してください・・・濡場とかきついっす・・・
ちなみにキラとカガリはキラが一日誕生日が後というオリジナル設定です。

小ネタ1
データ:フルカスタムキラ専用車
金属部品がPS素材で出来ている。電気、電子系の設計はキラが担当、機械工学系はモルゲンレーテの技術力が結集されている。
最高時速1000km/h(マッハ0.9、サハラで計測)、オートドライブは180km/hまで働く。
一回の充電で1日全力で走れる。
モーター車としては世界最速である。

小ネタ2
短編:決闘の日

目の前の、そこそこ太い木が炸裂した。もちろん、火薬などで吹き飛ばされているわけではない。目の前の、獅子を超えた何かの拳によるものだった。
木の破片をガードしながら、キラは下半身のバランスを立て直した。

「(カガリの)お父さん、結婚を認めてもらえませんか!」
「誰が義父さんかぁ!!!」

目から、オーラのような何かが発散している。確実に、大地のエネルギーのような何かを体に取り込んでいるとしか思えない。人間の発揮できるエネルギーではないだろう。

「うわっ!?」
「噴ッ!!」

こちらが体勢を立て直したのを見て取ったのか、震脚で地面を大きく揺らして、足場を乱された。だが、こっちだって宇宙で鍛えた感覚があるのだ。
迫る崩拳を、化勁でいなす。手にはしびれが残り、延長線上の木は爆散した。まだまだ終わりではない。反対の足でもう一度震脚を行い、体重が落ちている。
次に来る攻撃は、肩や背中を利用した靠撃である。これは、先ほどの崩拳のように伸びない代わりに近距離の全てを吹き飛ばすだろう。具体的には塵になる。これは、腕から腰を通して地面に打ち付け、反動を利用して肘で返した。
ウズミの体が浮き上がる。

「せめて話を!」
「聞いてお前は諦めるのか!諦めまい!ならばここで塵にするまでよ!」

吹き上がる闘気のせいなのか、筋肉の鎧に覆われ血管が浮き上がった上半身は黒く見えた。
話を聞く気が無いなら、まずは行動不能までもっていかなくてはならない。

「ならば、望むところ!」

迷蹤拳の套路から、歩法を合わせたオリジナルだ。虚実の入り混じる足踏みで、地面を駆け回る。
本家には及ばないが、此処から八極の震脚と組み合わせて放つのが、今放つことの出来る最高の絶招だ。

「十面より八極へ至れ・・・十面埋伏・無名の如く!」

体から流れる力のコントロールで、高速移動と全力の発勁を繰り返す。反動で体を吹き飛ばすよりも早く、対面に回り込んで膝や肘で打ち込み続け・・・

体力の続く限り、続けた。時折の反撃で、ため込んだ勁力を、時折反撃に飛してくる。必死に躱したそれは、海岸まで到達してようやく減衰したようだ。
こちらのように激しく動き回るような絶招は無い物の、一つ一つの挙動が死につながるような一撃必殺の物ばかりだった。

息が切れる。もう、動くのは無理だと思った。それでも、意地でも倒れることはできない。
そうして前を見れば、立っているのはキラだった。

「僕は、カガリと結婚します!」
「・・・勝手にしろ。私では、止められぬ」

扇状に、島の中心から海岸へ木々がなぎ倒されていた。開けてしまった上空には、オーブ国営放送のヘリが飛んでいた。

◇◇◇◇◇◇

「ていう小説が出回ってたぞ、キラ」
「カガリ、それホント?」
「こっちのセリフだ」
「そりゃ嘘だよ。その程度で被害が済む訳ないでしょ?あと二つは島の地盤ごと壊れたからね」
「え?」

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