弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 作:旋盤
よし、伏線はしいた。後は回収するように話を持っていこう。
最後までゆっくり見ていってください。
「ここはどこだ?」
ボケている訳では無い。ただ、見覚えがないのだ。この景色に。
辺りは一面の荒野。それ以外は砂塵と共に吹く風のみだ。奥の方は、砂煙によって見えない。
止まっていても、状況は変わらないので歩く。
不思議な場所だ。宿屋で寝ていたら、荒野にいるのだから。だが、何かおかしい。
いや、荒野にいる時点でおかしいけど。
そうではなく、何か違和感を覚えるのだ。知らないのに知っているような。見た事が無いのに見た事があるような。
一番近いのは、親近感だ。
本当によくわからない。
しばらく歩いたところで、何かの気配を感じた。
「誰かいるのか?」
それは、人型だった。人ではあるようだが、別の何かに感じる。
砂煙のせいでよく見えない。
「お前に生きている意味があるか」
向こうが声をかけてきた。しかも、返答に困る質問を。
「それはお前にはあるのか」
質問を質問で返した。
「それはわからない。だが、わかる事はある。私には、成したい事がある」
奴は何者だ?
成したい事があるならば、成せばいいだろうに。
「なぜ、成したい事があるのにここにいる」
「成すためには、しなければいけない事がある。その一環だよ」
どういう事だ?
その前にこいつは、ここがどこだか知っているのか?
「お前は、ここがどこだか知っているのか?」
「そういうお前はここがどこだか知らないのか?」
知っているわけが無いだろ。
「その反応は知らないようだな」
こちらの顔は見えていないはずなのに、こちらが思った事を言い当ててきた。
「ここはお前の世界なのに、本人がわかっていないとは、傑作だな」
向こう側から、笑い声が聞こえてくる。
俺の世界?何を言っているんだ。そして、こいつは何者で、誰なんだ。
「お前は誰なんだ」
「私は、お前だよ。まぁ、お前と言うには少し語弊があるがな」
本当にこいつは何を言っているんだ。
「まだわからないようだな。私がなぜいるのか。ここがどこなのか。」
ここがどこかは、考えがあるが、現実離れしぎている。ここがたとえ異世界で魔法があったとしても。
いや、冷静に考えたら、ありそうだな。
ここは俺の心の世界なのだろう。荒野とは、どういう事かわからないが、そういう事なのだろう。
だが、こいつの正体はわからない。
正体としてわかっているのは、俺であり、俺ではない者。
全くわからない。
「いずれお前とはもう一度会うだろう。その時が、私の成すべき事の始まりになるだろう」
こいつは何をしようとしているのだ?俺の世界で。
「その時まで、さらばだ。」
その時、俺は目を覚ました。
周りは、俺が寝る前の状態で全て整っている。
「あの夢は一体……」
しばらく悩むが、答えが出そうに無いので諦める。
身支度を整えて、鍵を宿屋に預けて、ギルドへと向かう。
ギィィ。と、扉を開けた瞬間に軋む音が聞こえるが、壊れていないので大丈夫だろう。
ギルド内は大勢の人で溢れかえっていた。かなり大きな作りをしているギルドでも手狭に感じる程だ。
空いている席に座り、食堂のカウンターが空くのを待つ。多分、この時間は並ばないといけないと思うけど。
周りに知っている顔は見えないし、しばらくはここで、じっと待つか。戦略を考えたりして。
「おっ、もう来たんだ。早いね」
そう言って来たのは、ここのギルドマスターだった。
いつ見ても背が小さい。
「君、今失礼な事を考えななかった?例えば、私の身長の事とか」
ズバリその通りです。そんな事、言えませんが。
「いや、戦略について、少し考えていただけだよ」
「そうか?それならいいんだけど」
そう言って、俺の正面に座った。周りの視線が、こちらに集中しているのが、なんとなくわかる。
目立ちたく無いのだがな。こいつといると、強制的に目立ってしまいそうだ。
役職が役職だけに全員知っていて、強さも大体知っているのだろう。
「戦略って、どんな感じのものだい?」
「おおよそ、あの森ではお前達が、足手まといになるのは目に見えているから、どんな感じで守ろうかと」
「あー」
納得したようだ。
「君の強さを私は知らないから、お任せするよ。大丈夫。死ぬ覚悟は元からできているから」
何気にプレッシャーになる言葉を。俺のせいで死ぬとか、勘弁してほしい。
まぁ、それは俺が全力で守りきればいい。
問題はその方法だ。
あの森の魔物は、全て遠距離攻撃ができる。なので、あまり離れることはできない。
なので、こちらも魔法主体の攻撃にしなければならない。
一撃で倒せるからといって油断はできない。魔力は有限だ。あそこの魔物の出現率は一時間で、数体ほど。
正直、日帰りでないと厳しい。奴らは、寝ている間でも容赦無く襲いかかる。その場合、俺の反応が遅れれば、こいつらは死ぬだろう。
俺が不眠で起きておくしかないか。
「そういえば、君って魔法は使えるのかい?」
「使えるぞ」
「へー。どんな魔法を使えるんだい」
俺は少し考えて。
「氷属性と無属性あと支援が使える」
それを聞くなり、意外そうな表情をして、
「もしかして、昔誰かと一緒に冒険をしていた?」
「いや、ずっと一人で冒険をしていた」
「なんで支援魔法を……。一人で冒険をする人は支援魔法は使わないよ」
そうなんだ。俺には関係ない事だが。
支援魔法か。もしかして〈支援魔力魔法〉を使えば、どうにかなるか?
ものは試しだ。ステータスを全て40000程にまで上げて、
「今から、お前に支援魔法をかける。ステータスがどれだけ上がったか確認してくれるか?」
「わかったよ」
そして、俺は支援魔法を使った。
「!?」
ギルドマスターはかなり驚きのようだ。
ステータスがどれだけ上がったかによって、戦略が立てやすくなる。
「なんの魔法を私にかけたの」
「普通の魔法をかけた」
「普通って、そういえば、君の強さは異常だった」
納得してくれたようだ。
「で。ステータスはどんな感じだ」
「全てが20000を超えているよ。これだけあれば、国を滅ぼせそうだ」
それは怖い。一人の人が国を滅ぼせるなんて、なんて馬鹿げているんだ。
などと、思ったが、それは俺にも当てはまっている。
「それだけあれば、簡単には死なないか」
それを聞いて、ギルドマスターが慌てて、
「ちょっと聞いていいかな。これだけのステータスがあっても、死ぬ事があるの」
その質問に
「あるよ」
簡単に答えた。
「マジで」
「マジだ」
それを聞くなり、ため息を吐き出して、
「この依頼が終わって、私達の中の誰かが生き残ったら、この国に報告をしてもらわないと。いや、絶対信じてもらえない……。どうすれば……」
これから先の事を考え始めた。
だが、国に報告をして、騎士団でも向かわせるのだろうか?
だとしたら、やめさせなければならない。
あの森にここの騎士団が入っても、無意味だろう。無意味な死をさせるくらいなら、この街の守りについてもらいたい。
「報告をして、万が一に国が動いて、あの森に入っても、無意味な死が増えるだけだから、オススメはしない」
それを聞くなり、落ち着きを取り戻したのか、
「そうだね。さっきの話は聞かなかった事にしよう。その方が得策だ」
そう言って、納得した。
それにしても、20000か。25000は欲しいな。ならば、俺の魔法攻撃力を上げておくか。
これで、大体の戦略が決まった。
主体は魔法攻撃。ギルドマスター達は俺が支援魔法をかけて、強化する。
魔物の攻撃に対しては、俺の無属性魔法で障壁を創り出して守る。
魔物がこちらを分断してきたら終わりだが、これしかないと思う。
これで、戦略が決まった。
目の前の子供。じゃない。ギルドマスターを見て、ふと思う。
「お前って、本当に人間か?」
そう言って、ギルドマスターが反応する。その表情は、物凄く真剣な表情だ。
「それは、どんな意味だい」
かなり威圧を感じるが、そんなに聞かれたくなかったか?
簡単な話、こいつの〈種族〉が人間かどうかが疑わしかった。
「お前の〈種族〉は人間なのか?」
それを聞くなり、席を立ち上がり、俺の隣に座った。
「君って遠慮がないね。いいよ。教えてあげる。あまり聞かれたくないから、耳を貸してくれるかい。」
俺は、ギルドマスターに耳を傾けた。
そしたら、小声で、
「実は私は獣人と人間のハーフなんだ。」
そう言って、元の席に戻った。
「ふーん。そうか」
それを聞くなり、ギルドマスターは、
「あれ?反応薄くない。ここはもっと驚くところでしょ」
「だって、驚くも何も、お前の母親と父親が愛し合って、お前が生まれたんだろ。だったら、そこに獣人も人間も関係ない。」
それを聞くなり、少し固まっていたが、やがて、笑顔が見え始めた。
「まさか、この国で、いや、この世界で獣人と人間のハーフが、許せる人を見かけるとは。」
意味がわからん。
「君は何も知らないんだね。だからこそ、言える事なのか。それとも素でそんな事を考えているのか。」
「後者だ。別に俺は愛し合っているならば、〈種族〉が違えど、子を成してもいいと思っている。」
「ハハハ。君は本当にすごいと思うよ。世間に全く流されず、我を貫いている」
そんな凄くはないと思うが、まぁ、いいか。
「この世界では、魔族以外の人が、共存しているけど、他種属同士で結婚してはいけない。子を成してはいけない。というよくわからない法律がある。」
本当に意味がわからないな。
「だから、皆他種属で子を成す事に、嫌悪感があるみたいなんだよ。」
「そうか。大体わかった。」
ここから先は気まずくなるだろうから、話題を変えよう。
「そう言えば、ミコトはまだ来ないのか?」
その質問に、苦笑しながら、
「まだ寝ていると思うよ。だって、いつも来る時間は、昼少し前くらいだから」
「おいおい、遅起きにも程があるだろ」
「仕方ないと言えば、仕方ないけど、昨日、君が帰った後にかなり飲んでいたからね」
飲んだって、酒か?この世界では、二十歳以下でも酒が飲めるのか?
「酒を大量に飲んだのか?」
それに、コクリと頷く。
まじかよ。
「馬鹿か。あいつは。酔っ払っていたら、置いていこう」
「確かに。それがいい」
そんな話をしながら、ミコトが来るまで時間を潰したのだった。
面白かったですか?精一杯書いているつもりです。たとえ、二日で終わらせた突貫工事だったとしても。
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