弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 作:旋盤
最後までゆっくり見ていって下さい。
城門を出て、森へ入った。出てくる敵は雑魚ばっかりで、退屈であった。ただ、不満があるとすれば…
「なんで、お前らは戦わないんだよ!」
それを聞いた二人は顔を見合わせて、
「だって、私たち女の子だしね」
「そうそう。戦うのは男の人の方がいいよ。カッコつけられるし」
こいつら、一発殴ってやろうか。
「こんな弱ければ、カッコつけられるはずないだろう。側から見れば、弱い者いじめに見えそうだから、あまり好きじゃない」
「結構男らしい一面があるんだね」
「俺は男だ。それ以外何に見える」
「それはそうだけど、内面的な事だよ」
まさか、子供……じゃない。他人からこんな事を言われるとは。
「今、子供と思ったでしょ。思ったよね」
地味に怖いんだけど。
「いや、背が小さいとは思ったけど、子供とは思ってない」
「同じ事だよ」
それは見事にいい笑顔で、目が笑っていれば、微笑ましかっただろうと思わせる笑顔で言われた。
そして、手には燃え盛る業火が握られていた。
魔法は不思議だと再認識できる場面だね。
その業火をこちらに向け、
「死ね!!〈ドラゴンフレイム〉!!」
それは、見た限り広範囲に広がって、攻撃する範囲魔法的な感じだろう。
「危な!」
ミコトが一目散に距離をとったが、回避は間に合いそうに無い。
「馬鹿者が。ハァ」
ため息を吐いて、片手を炎に向ける。炎が手に触れた瞬間を狙い、炎を凍らせた。
火って凍るんだね。魔法だから凍るんだろうけど。
「危な!」
今度はシルヴィアが危険に晒された。まぁ、これは因果応報という奴だろう。
森の中で火を放つとは、馬鹿としか言いようがない。
「頭は冷えたか?」
「それはもうキンキンに」
そう言って睨んできた。
どうやら、子供扱いされたくない様だ。だけど、すぐ実力行使してくる辺り、子供だと思う。
「また子供と」
「何も」
また、あれをされて、山火事なんぞにしたくは無い。されたとしても凍らせますが。
「もうあんな事しないでください!私が死んでしまいます!」
「なら、もっと鍛えるべきだな。あんな事で死なない程度に」
「そうだよ。もっと鍛えるべきだよ」
「さっきまで喧嘩していたのに今では二人して私に鍛えろと言ってきている」
「仲がいいんだか、悪いんだか」
「そうだね」
「喧嘩していた人たちが言う事か!」
そんな会話をしながら、着実に魔境に近ずいていった。
魔境を目の前にしての晩。尚、日付は変わっていない。
「しかし、いざ魔境を目の前にすると緊張するな」
俺がそう言った。
此奴らでは、決してあこモンスター達には勝てないだろう。
冗談抜きで強いから、俺の防御が遅れれば、死ぬだろう。
そんな結末にはしたく無い。
「弱気だね。どうしたんだい?」
心配そうにシルヴィアが見てくる。
「いや、お前達を死なせない様に進むのは初めてだから。それに、一撃で即死だってありえるからな」
「え!?そんなに強いのか?」
ミコトが今更驚いた様に言った。
「聞いてなかったのかよ」
「今からでも引き返していいよ」
俺が呆れて、シルヴィアが引き返す様に促した。
「いや、ここまできたら最後まで行くよ」
そう力強く言った。
その言葉には、覚悟は決まった様な、何かが含まれていて付いてきても大丈夫だと思わせる何かがあった。
「私も大丈夫だよ。私かミコト、もしくはどちらが死んでも、貴方の所為じゃ無い。私も覚悟をして来ているから、それは覚えておいて」
ハァ。そんな言葉を聞いたら、余計死なせたく無い。だが、緊張は少しはほぐれた気がする。
「安心しろ。お前らは確実に俺が守ってやる」
「フッ、そうこなくっちゃ」
それからは、何事もなく食事をして、交代で見張りをした。
朝が来た。素晴らしいとは、これから来る敵を思い浮かべると、到底思えなかった。
「よし、朝食にしよう」
全員肉を食べた。それも、俺が持っていた〈幻兎の肉〉を食べている。
「お代わり!」
「はいよ」
俺は肉を何個も焼いている。ざっと5個ほど。
焼いている間に俺も肉を食べている。飢えることは、肉がある限り無い。ただ、健康状態が気になる。
「お代わり!」
「早い」
ミコトが呆れた様に呟いた。
シルヴィアに肉を渡し、追加で焼いていく。その間に、あと何個焼けばいいのか聞いてみる。
「あと何個いる?」
と聞くと、目を輝かせて、
「あるだけ!」
そう言って、肉を凄まじい勢いで食べ進めていく。微笑ましいな。
「はいはい」
そう言って、肉を焼くのに集中する。
「なぁ。お前って、ロリコンだったりするのか?」
若干、俺がそうでは無いか?と思っていた事を言いやがった。だが、俺はロリコンでは無い。ノーマルだ。
「それは、ありえ」
無い。と言おうと思ったが、それを言う前に、
「それは私を子供と言っているのか?そう言ったね」
それはもう笑顔では無く、相手を睨みつける姿は、肉食獣だった。
それから、かなり騒がしくなった。俺はそれをすぐには止めず、見守っていた。
魔境に入る前に支援魔法を全員にかけて、周囲を障壁を張って守っていた。
そして、周囲に注意を張り巡らして、警戒をしていた。
その時、どこからか、特大の火球が飛んで来た。それは障壁に当たると爆発した。
辺りは炎に包まれて、見えなかった。
「うわ!?!?」
「これは、中々に強力だね」
二人は驚いているが、ここでは、これが普通である。
「最初は過保護だと思ったけど、納得したよ」
今、聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ。俺が過保護?そんな事は無い。俺は必要だと思った事をしたまでだ。
それはそれ、これはこれと、置いといて。
手をかざし、火球が飛んで来た方角に、氷でできた槍を飛ばした。
バンッ!!
空気が弾けた様な音を出して、氷の槍が火球が飛んで来た場所をめがけて、飛んでいった。
「うお!?今度はなんだ!?」
「今のはマグナが魔法を放った音だ!」
軽くこっちはパニック状態になっているが、大丈夫か?
周囲を確認する限り、囲まれては無い。だが、前方に五体くらいいる。
戦闘は数では無く質だ。ならば、こちらが優勢だ。足手纏いがいても。
地面を凍らせ、敵の動きを止める。そこに、五つの槍を同時に放つ。
バンッ!!!!
五つの音が重なり、五つの氷槍が音速を超えて敵を穿つ。
一瞬で戦闘が終わる。だが、背後の二人からすれば、ありえない事尽くしだっただろう。
「ここの事を一つ教えておくと、お前達の常識の範囲を超える様な敵が無数に現れるぞ」
その言葉にミコトが、
「マジで?」
「マジだ」
「あんな戦闘を毎日やっていたのかい?」
シルヴィアが聞いてきた。それは、まだ困惑が入り混じっている様な表情をしていた。というか、ミコトもだった。
「当たり前だ。これからは、五体と言わず、数十体一気に襲って来ることもある。だから、気を抜けない」
「……すまない。そして、ありがとう」
なんだいきなり。
「気にするな。お前達は俺が守る。だから、安心しろ」
それから、また、歩き始める。
「さっき襲ってきたのは、なんだい?」
「さっきのは、多分、アルミラージとカーバンクルだと思う」
今気づいたが、宝箱の確認をしていなかった。
だが、戻ろうとは思わない。今は進む方がいいだろう。
すると、急速に向かって来る気配がした。
予想はついている。アルミラージだ。
すぐさま、〈看破〉を発動させて、アルミラージを探す。その際、半透明の人みたいな人がいたが、気のせいだ。
いたら多分、幽霊だ。
〈看破〉には、そういう効果があったはずだ。見えちゃいけないものが見えるとかがあったはずだ。
そんな無駄な事を考えている間に見つけた。
「どこ見ているの!そっちには何もいないよ!」
「そっちには何がいる!」
「でっかい白兎!」
表現可愛らしいな。
俺は俺が見えている敵に向かって、氷槍を放った。
それは、顔面に当たり、アルミラージを一撃で絶命させた。
その時、
「あれ?消えた?」
やっぱりか。
「お前が見ていたのは、アルミラージが作り出した幻だ。スキル〈幻影〉だ」
「はぁ。眼に映るものを信じちゃダメって事だね。学習したよ」
どうやら、落ち着きを取り戻した様だ。
しかし、やっぱり引き返した方がいいかな。ここは、此奴らより確実に強いし、心労が絶えない。
そういえば、モンスターを倒せば、レベルが上がるけど、その仕組みはどうなっているんだ?
「なぁ、お前らって、ここのモンスターでレベルを上げる事ってできないか?」
それを聞くと、みるみる表情が変わり、
「それがあった!」
ミコトが少し大きな声を出した。
できるんだ。多分、予想できる。
ゲームと似た感じならば、攻撃一発与えて、誰かが倒せば、それでレベルアップできるはずだ。
「そうだよ。そうすれば、私も強くなれる。そうすれば、稼ぎのいい仕事ができる!」
願望丸出しだな。
「私もその意見に賛成だね。これからの事を考えると」
「わかった。まぁ、ドンと頼ってくれ」
言葉が思いつかなかったから、なんとなくそう言った。
存外すぐ敵に会う。それも一気に数十体。
さて、気張っていくか。
「炎の精霊よ我に力を〈フレアアロー〉」
ミコトは手から、炎の槍を出して敵に放った。
なんと無く、ミコトのイメージから、火を連想したけど、腕輪の効果にぴったりだ。
「〈カオス・ドラゴン・クライシス〉!」
シルヴィアは、いつか見た魔法を放っている。それに詠唱の様なものを言っていない。ミコトは言っているのに。
そんな事を考える前に、俺は目の前の奴らを片付けなければならない。
「もういいよ。攻撃しても」
俺はそれを聞いて、今度は無数に氷槍を生み出す。その数は数え切れないほどだ。
尚、自分でも作った数を把握していない。
決して、シルヴィアの魔法と競った訳ではない。そこの所を勘違いしてはならない。
それを一気に放つ。
一瞬で、周りにいた数十体のモンスターは消え去った。
すると、
「おお。かなりレベルが上がってる」
よかった。レベルは順調に上がっていっている様だ。ただ、心配なのは、
「うるさい。そろそろ、言うのやめてくれないかな?」
シルヴィアがそんな事を言った。
やっぱり、自分よりかなり強い相手を間接的に倒したんだ。それなりにレベルは上がるだろう。
「うるさい!そろそろ黙って!」
シルヴィアは我慢の限界を迎えた。
「言うのをもうやめてくれー。ゲシュタルト崩壊しそうだ」
力なくミコトが何か言っている。その様子を見て俺は、
「まぁ、頑張れ」
こんなことしか言えなかった。
すると背後に何かの気配を感じて振り返るが、何もいない。
しかし、〈索敵〉により、気配は感じる。〈看破〉を発動させる。すると、目の前に半透明の女がいた。
まじかよ。幽霊って本当にいるんだ。俺って何かしたかな?
「どうかしたか?ボーッとして」
どうやら、レベルアップ地獄から抜け出せた様だ。
「お前は見えないのか?」
そう聞くと。
「何が?」
ミコトが言い。目の前の半透明の女が、
「!」
驚いた様に声になっていない声をあげた。
へ?声を出せるの?幽霊が?
「すみませんが、私が見えているのでしょうか?」
目の前の幽霊(仮)が喋った!まじかよ。幽霊って喋れるのかよ。
「見えているぞ」
「へ。お前誰に話しかけてんの?結構怖いぞ」
後ろの声を無視する。
「どうかしたのかい?」
シルヴィアも復活した様だ。
「お前達には見えていないのか?」
すると、目を凝らして何かを見ようとしている様だが、
「何も見えないよ?」
「そうか」
まじかよ。本物の幽霊だと。
「申し遅れました。私は種族〈ドライアド〉。名前はありません。貴方をこの森の支配者と見受けました」
支配者かどうかは知らんが、〈エリアボス〉ではある。
「本当に虚空を見ているから怖いね」
「だろ。本当に頭をおかしくしたんじゃないか?」
あいつら、聞こえていないと思って言っているのか。わざと言っているのか後ではっきりさせておこう。
「あの不敬な方々を私が始末しておきましょうか?」
何この子?半透明で口調が丁寧なのに恐ろしい事を言うね。
「ダメだ。で?他に言う事は無いのか?」
すると、一歩後ろに行くと。
「お願いがあります。どうか私を貴方の配下に加えては頂けないでしょうか」
そして、ピシッとした姿勢のまま、綺麗に頭を下げられた。
断る理由は無いが、なぜ配下?
「本当にどうかしたのかい?」
「いや、元から頭おかしそうな人だったじゃん」
「やかましい!」
そう言って、二人を黙らせ、目の前で未だに頭を下げる半透明の確か〈ドライアド〉の事を考えるのだった。
面白くできたか不安になるのは俺だけだろうか?だが、弱気になってはいけない。面白いと信じて書き続けるのみだ。
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