弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 作:旋盤
ゆっくり見ていって下さい。
そこで言葉を少し詰まらせる。
忘れていたが故に良い名前が思いつかないのだ。
安直な名前になるが、許してくれ。
「〈リーフ〉。この名前でどうだ?」
その名前を聞いて、しばらく考え込んでしまった。
この少しの時間が俺には長く感じる。
リーフと名付けた理由は、まずは髪の色だろう。新緑を思わせる髪の色が、緑の木の葉を連想させた。
二つ目は、前の種族の〈ドライアド〉が、確か木の精霊とかそれに近い感じだった気がする。
まあ、理由としてはそんな感じだろう。
だが、それでも〈リーフ〉は自分でも安直な名前で、もっと良い名前があったと思う。
そんな事を考えていると、彼女が口を開いた。
「はい。私の名前は〈リーフ〉ですね。ありがとうございます」
どうやら名前に問題は無いようだ。
次の瞬間、魔力をごっそり持っていかれた感覚が起こる。
少しふらつくが、立っているぶんには問題は無い。
魔力の上限を一気に引き上げると、その感覚も一気に無くなった。
「大丈夫でしょうか?」
心配そうな声で聞いてくれているが、表情が変わっていないので、本当に心配してくれているのかがわからない。
まあ、心配してくれているだろう。
「ああ、問題ない。少し魔力を低くしすぎていたようだ」
その言葉を聞いて、
「そうですか。よかったです。こんな事で死なれては困りますから」
どうやら、心配してくれたようだ。少し疑ってすまなかった。
心の中で謝り、来た道を引き返す。
「どちらにいかれるのですか?」
「あいつらの名付けも済ましておこうと思ってな」
そう言うと、少し怒ったような声で
「主人様。さっき起こった事を忘れたのですか?このままで行くと、魔力切れで倒れて、最悪の場合は死にますよ?」
どうやら、心配で少し怒っているようだ。
「心配するな。魔力の上限はさっきとは桁違いに上がっているからな」
その言葉を聞いて、怪訝そうな顔をする。
「前から思っていたのですが、主人様は魔力の上限、いえ、ステータスさえも変動させているのですか?」
ああ、そうか。普通はできないんだろうな。俺が異常、では無いな。これは、あいつから貰ったスキルのおかげだな。
俺の前の〈エリアボス〉も異常な強さだったな。
いかんいかん。思い出に浸っている場合ではなかった。
「そうだな。そのスキルは俺では無く、俺の前の〈エリアボス〉が持っていたものだ」
その言葉にリーフは驚きを隠せないようでいた。
「ということは、前の〈エリアボス〉から任されたということですか?」
どうやら、俺があいつから貰った事に驚いているようだな。
「ああ。多分そうだな。一応言っておくと、前の〈エリアボス〉は俺の義理の父親だ」
その言葉にリーフはさらに驚いていた。
「まさか、主人様もお父上が〈エリアボス〉だったんですね。聞きにくいですが、その、お父上はどちらに」
その言葉に俺は
「義理な。そこは忘れないでくれ。そして、あいつなら、俺の手で殺した」
「……」
俺の言葉で沈黙が訪れる。
この重たい空気は俺は嫌いなんだよな。
「その事に関して言えば、俺が殺した後で、あいつが勝手に俺を義理の息子にしたんだ。だから、思い出も戦った記憶しかない」
「ですが、主人様もその方を父親として認めていますよね」
その言葉に関しては事実だろう。俺はあいつの事をこの世界の父親として認めているだろう。
「認めているが、悲しむほどじゃない。碌な思い出もない。それに、あいつは死んだ方が良かったんだよ」
「それはなぜですか?」
そこで、あいつが言っていた事を思い出す。
「あいつは今まで自分の力不足で守れなかった愛した奴の事を思い続けていた。だから、死んでよかったんじゃないのか」
「……」
その言葉に沈黙が訪れる。
俺も黙って次の言葉を待つ。
「……私には愛するという事がわかりませんし、そこまで思い続ける事もわかりませんが、確かにそれで良かったと思います」
どうやら、納得してくれたようだ。
「話が脱線したな。それで、俺はあいつらの名付けをしていいのか?」
その言葉にリーフは考え込む。
そして、結論を出したようだ。
「わかりました。しかし、私も付いていきます。主人様の容体に変化があった場合、即刻やめさせます」
どうやら俺の身を案じてくれるらしい。嬉しいね。美人に身を案じてくれるとは、運がいい。
「それで良いなら」
そして、俺は他の奴らを探して歩き出す。
「ハァァ!!」
勢いのいい声と共に地面が砕ける音が響く。
「次はどいつだ!!!」
そして、次の獲物を求める声が響き渡る。
そこに俺は顔を出した。
「ん?次はお前が俺地戦うのか?」
ハルバードをこちらに向けてそう言い放つ。
どうやら闘気は有り余っているらしい。ここでこいつと戦うのもいいが、今の目的はそうじゃない。
「戦うのもいいが、今は名付けをしていこうと思ってな」
「俺に名付けは不要。俺に必要なものは純粋な力のみだ」
どうやら根っからの脳筋思考をしていそうだな。
「名付けを行うと、名付けを施した方が強ければ強いほど、己の力は増しますが、どうします?」
えっ。俺も今初めて聞いた気がする。それじゃあ、リーフも強くなっているって事か。
しかも、俺の強さは異常だから、相当なものになっていそうだ。少し楽しみだ。
「そうか。そうだったな。では、頼むとしよう」
決まったようだ。
こいつの名前はなんとなく決まっている。
「お前の名前は〈ロウガ〉だ」
狼の牙と書いて、狼牙。なんとなく、この名前がしっくりくるのだ。
「俺の名前は〈ロウガ〉か。悪くないな」
そして、俺の魔力がごっそり持っていかれる。
まあ、全然平気なくらいだが。
「よし。さらに強くなった俺と戦え!」
どうやら、俺と戦う気満々らしい。
正直強くなったこいつらの力が気になるので、戦いたい。
「ああ。別に……」
「待ってください」
俺が了承しようと思ったが、その言葉は止められた。
「主人様は後二人名付けをする必要がありますので、無用な魔力消費を抑える必要があります」
「いや、あの程度だったら……」
「だとしてもです」
「……」
そして、俺は黙ってしまう。
「貴様。俺とこいつの戦闘を邪魔するつもりか?」
怒気をはらんだ声を出して、ロウガが闘気の矛ざしをリーフに変える。
「貴方は、名付けで魔力を消費した状態の主人様と戦い、万が一に勝ったとして、それを誇る気ですか?」
「……」
ロウガも黙ってしまう。
女性って強いね。
それを実感した瞬間だった。
「では、明日だ。明日には魔力が回復しているだろう」
「ああ。それで構わないぞ。リーフもそれで構わないか?」
「はい。それなら大丈夫でしょう」
そして、ロウガはハルバードの矛先をこちらに向け、
「では、明日お前を超えてみせる!」
「ああ。全力でかかってこい」
そして、その場を後にした。
「ウオラァァァァ!!!」
裂帛の声と共に地面が破砕される音が周囲に再び響き渡る。
面白ければ幸いです。