弱ければ相手から何もかも奪えばいい。   作:旋盤

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最後までゆっくり見ていってください。


思案

中央のいかにもラスボスがいそうな雰囲気の何の無い部屋に一人でいると少し寂しく思うが、安心も出来る。

誰もいない空間はこの部屋くらいだろう。

外へ出ると周りにはいろんな奴がいる。そして、それは俺の守ろうと思える大切な存在でもあった。

例えあった時間が短くとも、相手がどう思っていようと自分がそう思うのだから、この思いは忘れる事が無いようにしたい。

前の世界では、様々な事を忘れてきた。宿題しかり、教科書しかり、約束だって忘れていた。

今も、クラスの人の名前を思い出せるのかといえば、思い出せない。

さらに、友達の名前すらも、あやふやだ。

正直、こうも忘れると自分が自分という存在を否定したくなる。

 

「はあぁ」

 

ため息を少しこぼすが、現状は変わらない。

今の俺は、マグナ・ぜギアノスというこのエリアの魔王で、アレストの冒険者だ。

この世界に来た時は、こんな二足の草鞋を履く事になるとは思っていなかったな。

魔王と冒険者。出来るだけ両立させよう。

大丈夫だ。両方とも不定期で出社しても大丈夫なはずだ。出社っていうのかなこれ。

明日はどうするか。このままここにいるのもいいだろうし、アレストに戻るのもいいだろう。

どっちを選んでも不正解では無いだろうが、正解でも無いような気がする。

それを考えると、

 

「はあぁぁ…」

 

少し長いため息が出る。

悩み事が二つもあると、頭がこんがらがる。二つとも深刻なような気がするが、どうでもいいような気もする。

それと、今まで放ったらかしていたが、夢の中に出てくるあいつ。あいつは何者だ?

確か、復讐のために俺の体を奪うと言っていたな。そして、俺はそいつを否定した。

次会う時は、戦闘が行われるだろう。奴は俺の事を知っているようなので、それなりの策か、俺並みの強さを持っているのだろう。

だが、あいつの情報は無い。したがって対策のしようもない。

こちらは後手に回るしか無い状況だろう。

まあ、どう出るにしろあいつは倒す。倒さねばならんだろう。自己満足の殺しをさせるよりかは。

さて。もう寝るか。今日もいろいろあった。正直疲れた。

ベッドの上で横になる。この部屋は広いのにベッドしか置いていないので、凄く物寂しい。

ベッドに横になると、すぐに寝てしまった。

 

 

 

 

目を覚ますと、辺りは一面の荒野だった。ため息の一つこぼしたくなったが堪える。

前見た時のような視界を塞ぐ砂煙は全くない。辺りは一面の荒野。それ以外といえば一人いる。

一番の特徴は髪の色だろう、前髪が白くて後ろ髪が黒い。俺がよく見知った人物がそこにいた。

 

「なんで、俺がいるように見えるんだ?」

 

事実。俺の姿がそっくりそのまま荒野の中に立っているのだ。あんな髪の色は俺以外いないだろう。

 

「驚いているようだな。無理もない。この姿と力はお前からコピーしたものだ」

 

「コピー?」

 

という事は、俺と同じ見た目で同じステータスなのか。

マズイ。この勝負は技術がある方が有利だ。だが、俺は戦闘に関しては素人だ。分が悪い。

だが、それでも、逃げるという選択肢は無いな。

 

「どうやら、分が悪い事を察したな。それでも逃げ腰にならずにいるその姿勢は評価出来るぞ」

 

俺は戦闘態勢をとる。

 

「まあ待て。お前がどういった理由で殺されるのかわからなければ理不尽であろうから、せめてもの礼に教えよう」

 

その言葉を聞いて、戦闘態勢は解かずに聞く。

 

「私の復讐相手は〈ゾディアック〉と呼ばれる冒険者ギルドの秘密機関。及び、そいつらを扱う各国の代表及び重鎮共だ」

 

冒険者ギルドに秘密機関ってあったんだ。しかし。それを動かせるのは国だけってかなりの実力者なんだろうな。

 

「俺はあの日が来るまでは、幸せを幸せと感じずに生きてきた。ただ、隣に居てくれるだけで良かった存在。それをあいつらが奪ったのだ!!」

 

「私達はただ普通に生きていたのだ、それを奴らは燃やし尽くし、殺し尽くし、何もかも奪っていった」

 

それを聞いて多少の同情が生まれる。

それは、相手の作戦の一つ。という可能性を考えながら。

 

「彼女は遺骨すら残っていなかった。彼女だけじゃ無い。私が知り得る限り村人全員の姿は跡形も無かった」

 

「そして、俺は怒り、奴らの情報を得て、奴らの仲間の一人を問い詰めた。そいつがなんと言ったと思う?」

 

その質問に俺は

 

「必要ない」

 

「その通りだ。奴らは、国から依頼を受けて虐殺を行っていた。ならば、奴らは血で贖うべきだろう。奴らが起こした罪の罰として!」

 

確かにその通りかもしれない。だが、それでも、俺は否定しよう。

 

「だとしても、俺はお前を止める。お前が誰かを殺せば、遺族の人達がお前と同じ感情を抱く事になるだろうし、誰かが殺されると聞いて大人しく出来るような人間じゃない」

 

しばらくの間、無言の時間ができる。

 

「このまま話し合っても平行線だな」

 

「だろうな」

 

相手も戦闘態勢をとる。

こちらは刀を瞬時に抜けるようにしているが、相手は構え的に拳で戦うタイプだろう。

そして、一面の荒野に二つのなにかが爆発するような音と、巨大な砂煙が二つ起こった。




面白ければ幸いです。
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