弱ければ相手から何もかも奪えばいい。 作:旋盤
エリアの外に出る途中に、これからの事を少し考える。
まずは、アレストの街に戻る。そして、ミコトと合流する。あとは、冒険者の仕事をしながらここの様子を見に来るくらいか。
エリアボスと冒険者の二足の草鞋。どうにか両立するしかないだろう。
それと、この世界に異変が起こるかもしれないからその異変の解決もしなければ。
やる事はあるが、どれも漠然としすぎて計画が練られない。というか、どれも不定期だから計画のけの字も無い。
その時その時で臨機応変に対応しろ。という事か。不器用な俺には難しいかもな。
「主人様どうか致しましたか?」
俺の歩いていたリーフが無表情のままだが聞いてくる。
「ああ。これからの事を少し考えていた」
「そうですか」
そこで会話が終わってしまう。
会話が少ないとどこかいずらい感じがする。それに、何か不満があった時にそれが聞きづらくなる。
まあ、俺のコミュニケーション能力が低いのが悪いんだけどね。
「……何か不満があるなら遠慮なく言ってくれ。出来る事なら改善するつもりだ」
その言葉に視線をこちらに向ける。これは意外にも言ってくれそうだ。
正直、俺がメンタルブレイクする様な事にならなければそれでいいんだが。
「では僭越ながら述べさせて頂きます。まずは御自身の行動や決断にもう少し自信を持ってください。後は部下の躾をするのも上司の務めだと思います。自由過ぎますよ。ここは」
「すまない」
正論だと思った。確かに俺は自分の決断や行動に今ひとつ自信が持てない。そして、部下を自由にさせ過ぎているのも正しいだろう。
そんな事を言われた時に即座に出て来たのは謝罪の言葉だった。
いつかそんな所も治るといいな。
「自由にするのが主人様の方針ならばいいのですが、御自身の決断や行動の自信は持って下さい。上に立つ者が自信無さげだと下の者が心配になるので」
「本当にすまない。以後、改善に努力しよう」
自由は俺の尊重する所だが、ロウガは少し自重してくれないと戦闘の音などが聞こえてしまう可能性がある。そうなったら、また調査をしろ。と言われるかもしれない。
ブラムも何か心配だ。何をやらかすかわからない。勿論、予感でしか無いが、何か嫌な予感がする。
しかし、短い時間でよくこうも俺の欠点に気づいたものだ。彼女の観察眼はすごい。もしかしたら、そういったスキルを持っているかもしれない。
「一ついいか?」
「何でしょう?」
今俺は他人に聞くべき事を聞こうとしているが、それでも聞いておきたかった。
「俺はどういった〈エリアボス」になればいい?」
その質問にリーフはいつもの様な無表情で淡々とこう言った。
「それは主人様が決める事です。私が口を出す事では無いです。それは主人様もわかっているはずです」
どうやらお見通しらしい。本当に凄い。俺はステータスだけ強いが彼女はそれ以外の強さがある。その部分では彼女に勝てそうに無い。
しかし、俺が聞きたいのはそういうことでは無いのだ。
そのことに気づいたのか彼女はそれにと付け加え、
「私は主人様がどの様な〈エリアボス〉になったとしても付いていきます。その覚悟は主人様の配下になった瞬間に出来ております」
どうやら俺がどんな〈エリアボス〉になろうと付いて来てくれるらしい。
「それが、迷いだらけの者であってもか?」
その言葉に迷うことなく彼女は。
「それだけ迷うという事は最適な方法を模索している証拠ですので、何を嫌になるんですか?」
その言葉に少しの間言葉を失う。そして、俺が目指すべき〈エリアボス〉も決まった。
「ありがとう。お陰で決まったよ」
「そうですか。私の発言が実を結び至極光栄に思っております」
光栄に思っていると言っても、彼女は無表情だからそう思っているのかを知る事は俺にはできない。
しかし、彼女の言葉を信じる事はできる。それが俺にできる最大限のことだから。
そんな会話をしている内に、エリアの境界線である背の高い草原へと辿り着いた。
「お前はこれから何処へ行く?」
その言葉に少し悩んだ仕草を彼女は見せる。どうやらノープランであった様だ。
普通はそうか。見も知らぬ地に行くのだ。この質問はちょっと意地が悪かったな。
「すまなかった。この質問は意地が悪かったな。どうだ、一度俺の行くアレストまで行くのは?」
その言葉に彼女は、
「いえ、大丈夫です。私も周辺の状況の確認と各国の情勢を確認してまいります」
その言葉に俺は絶句する。
何故ならば、俺より〈エリアボス〉らしいからだ。
え?周辺の状況確認と各国の情勢確認?え、できるの!?それと、このエリアは何がしたいんだ。戦争はせんぞ。
「どうか致しましたか?」
俺の気を知ってか知らずか、彼女が無表情で心配した様な声で聞いてくる。
「いや。俺よりリーフの方が〈エリアボス〉らしいな、と思ってな」
「何を言っているのですか。この様な雑事は我々配下の仕事。主人様は我々に道を示してくれるだけでいいのです。その道にある障害は我々配下が取り除きますので」
そうか言っているが、その表情は薄いながら、少し勝ち誇った様な顔をしている。
嬉しいのか俺を小馬鹿にしているのかは分からないが、どっちでもいいだろう。
「そういうものなのか?」
「そういうものです」
そう言われては仕方がない。
そこでふと思いついた事があったので、聞いてみる。
「お前は俺との通信手段があった方がいいか?」
その言葉にリーフはこちらを向き、
「あるのですか?通信手段が」
と、少し驚いた様な表情をしていた。
「今はないが、すぐに創れる」
「すぐに創れるのですか?」
ここから先は言葉よりも行動の方がわかりやすそうだったので、魔石と玉鋼を取り出して、〈道具生成〉を発動させる。
前回はブレスレットだが、今回はネックレスにする。理由は何となくだ。
そして、出来上がる。使った魔石は木属性の魔石だ。
〈補助・通信用ネックレス〉 EX装備
木属性魔法の威力を5倍にする。登録を行えば離れたもの同士でも会話ができる。
いつか見た様な効果が出ていた。そんな感じの装備を立て続けに〈全〉〈風〉〈土〉〈光〉計5つの装備を生み出す。
「これが、通信手段ですか」
風属性の装備を手に取りリーフがそう呟く。
「そうだ。登録は多分、魔力を流せばいいと思う」
そう言って全属性の装備に魔力を流す。そして、その装備が光る。
リーフも同じような事が起こる。
「後は、登録したい奴をネックレスに命じれば勝手にやってくれるはずだ」
そう言って、俺がネックレスに命じると、
『リーフを登録しました』
懐かしき無機質な声が頭に響いた。
「本当だ。こんな物まで創れるのですね、主人様は」
俺を見る目は少しだけ輝いているように見えた。多分、俺の疲労が溜まっているので幻覚が見えただけだろうが。
「ですが、どうやって他の3つをあの人達に渡すのですか?」
「…………」
その時、一つの寒風が俺とリーフの間に吹いた。
面白ければ幸いです。