使わない部屋を四〜五部屋潰し改装した畳の敷き詰められた居酒屋の様な空間に、長テーブルを中心に各自適当に座らせる。
「皆飲み物は持ってるな?」
『はーい!!』
「はーい…」
レキ達の手元に飲み物の入ったコップがある事を確認し自分のコップを掲げると、それに合わせ全員コップを掲げた。
「んじゃ、カグラや薊、日和にソフィアの武偵校入学を祝して!乾杯!!」
『カンパーイ!!』
「乾杯…」
近場でコップを軽く当て一名以外は笑顔で料理に手を出し、会話を楽しみだした。
「うわー美味ぇ!!これは旦那とカグラが作ったのか?」
「えぇ私と武様で作りました後薊、食べながら話すのははしたないですよ…」
「口に合ったようで嬉しいよ」
「へぇ、キンジさんとレキさんも主様と同じクラスなんですかぁ、賑やかで楽しそうなんよ」
「たまに僕達も遊びにいっていい?」
「えぇ構いませんよ」
「賑や過ぎるのはどうかと思うぞ…」
レキ達は久しぶりに会う薊達との会話を楽しんでいるが、輪に入らず隅で小さくなるアリアにジュースのペットボトルと適当に料理をとった皿を持ち隣に座る。
「ン…」
不貞腐れた顔をしながら空になったコップをさしだされ、ジュースを注いでやる。
「んで、何の用」
注ぎ終えたばかりのジュースをコップの半分くらいまで飲むと俺に寄りかかると、丁度肩の位置にアリアの頭がありシャンプーのいい香りが鼻を擽る。
「乾杯の時から元気無かったからな」
「…んん…」
「ん?」
まるで猫が自分の匂いを付ける様に肩に顔を優しく擦りだした。
「よ〜しよ〜し、ゴロゴロゴロ」
「ん〜」
冗談で喉元を摩ると意外とまんざらでもない顔で受け入れた。
「他のメンバーが思っていた以上に仲が良くて、その輪に唯一他人である自分が入れないって感じか?」
「…そこまで察しているのに口に出すのは無粋よ…私にはあんな友人はいないもの…」
「アハハ友人?違うぞアリア」
「え?」
喉元を摩る手を止め、その手をアリアの頭に乗せる。
「俺達は家族だ、仲間よりも堅い絆で結ばれたな」
「家族…」
「あぁ時間なんざ関係ない…アリアはどうする?」
「え?」
料理を載せた皿を差し出すと、まだ状況を飲み込めていない様子で受け取る。
「俺の…家族になるか?」
「私も…入れるかしら…」
「勿論だ!だから奴隷…」
「その話は別よ!明日からアンタ達とクエストを受けるわよ」
元気な子供の様な笑顔で料理を食べはじめた。
「アッハハだよな…了解」
「フー美味しかったわ…それでね武」
「ん?」
「その…家族の一員として教えてカグラ達が何者なのかを…」
「…いきなりだな…どうして知りたい?」
アリアは一瞬考え口を開いた。
「彼女達が普通じゃないって感じたの…どうしてかは分からないけど…なんと言うか…血の匂いがするの…人の」
「ッ…!!」
その言葉に鼓動が早くなり、額に汗が滲むのが感じ取れる。
「分かった…教えてやる…ベランダでいいか?」
「分かったわ…」
「武さん、アリアさんどうしたんですか?」
カグラ達の事を考え俺とアリア以外に聞かれないベランダに移動する為立ち上がると、その行動を見ていたレキ達に気づかれてしまった
「いや、ほら例の件の話をだな」
「ん〜例の件?主様すごーく気になるんよぉ」
「僕も気になる」
「隅に置けないぁ旦那ぁ」
物凄く誤解をしている目で見てくる。
「お前ら勘違いしてるからな!大事な話をするんだ!レキ、カグラ、薊達をベランダに近寄らせないでくれ」
『了解』
レキとカグラを門番役にしてベランダに出て、ドアを閉めた。
「これから話すことは他言無用で頼む」
「分かったわ」
「んじゃ、揺り籠事件って知ってるか?」
「えぇ、半年前に起きた事件よね?」
「そう、孤児院[揺り籠]を装い親のいない子供達を保護し洗脳や薬物により恐怖や痛みを感じない兵隊にして、テロを計画していたクソッタレな事件だ」
アリアに話す為に当時の事を嫌々思い出す。
「あの事件は俺とレキ当時Sランクだったキンジと早間と言う刑事の4人で担当した…容疑者を全員確保して建物の調査に当たったんだ、見た目は普通の施設だったがいざ地下に降りてみるとまさに地獄が広がっていた…まず感じたのは血の匂いだ…」
「…」
「奥に進みにつれどんどん匂いが濃くなってくるんだ、それで実験室や武器庫を見つけたがまだ子供達は見つからない…でもようやく見つけたんだよ、一から五の番号が書かれた檻に入れられた子供達をな」
「番号?…」
「あぁレベル…完成度だ…番号が大きい程より強い完成した兵隊を意味している」
「でも子供達は発見出来たんでしょ?」
「あぁ、でもすぐ喜びは消えた…調査ではそこに二百人いるはずだったが実際は半数にも満たなかった…何でか分かるか?」
アリアは無言で首を横にふった。
「奴ら…子供達同志で殺し合いをさせてやがったんだ…より強い者を選ぶ為に…そして気づいた…あの血の匂いは死んだ子供達のだと言う事にな」
武の言葉を聞いた瞬間寒気に襲われ、体中鳥肌が立った。
「それで…子供達は?…」
「一から四までの子供達は精神科医で何とか治療が可能で今は別の孤児院にいる…」
「五の檻に入れられた子供達は…」
「精神科医の手に負えない、完全に人を殺す兵器になっていた四名は…」
「四名?…ッ!?」
察したアリアは部屋の中で騒いでいるカグラ達に顔を向けた。
「今では平和に人々を守る側で暮していたとさ」
「それがカグラ達の正体…でも何で?精神科医でも駄目なんでしょ?」
また俺の方に顔を向けるアリアと目を合わせ笑ってみせる。
「簡単さ教えてやったんだ、お前らは一人じゃない、俺がお前らを守る家族になる!怖いものは何も無いってな」
「それだけで…」
「あぁ奴らにはそれすら無かったんだ…さて辛気臭い話は終わり、まだ料理が残ってるから喰おうぜ!薊、日和にソフィアほれ!入学祝いだ!」
「お!旦那からのプレゼントか!」
「ドッグタグだ!!」
「ウチらの名前が彫ってある!!嬉しいんよ」
普段の顔に戻った武はベランダのドアを開け、アリアを手招きし部屋の中に戻って行った。