ユグドラシルのサービス終了
それを知ったのは終了予定日の3ヶ月ほど前だった。
仕事が安定し、息抜きにネットをさまよっていたらその記事を見つけた。
俺は懐かしくなり久しぶりにログインしようとしたら、セーブデータが初期化されていた。
仕事に専念するためにデータを消していたことをすっかり忘れていた。
そこにあったはずのるし★ふぁーのアバターは無く、新規キャラクター作成の文字が表示されている。
ふと、ここでちょっとしたイタズラを思い付いた。
あのモモンガさんの事だ、最終日となればギルドメンバー全員にメールを出すだろう。
何人来るかはわからないが、最後に盛大にやらかしてやろう。
そうしてキャラの作成を始めた。
作るのはもちろんあれしかないだろう、ギルド内の28人が嫌い、恐れた存在。その名は恐怖公。
キャラを作ってからはレベル上げの毎日だった。
そして出来上がったのが現在使っている、恐怖公Lv100とも言うべき隠密特化、無限召喚系魔法詠唱者のアバターだ。最終日が近いと言うこともあり、経験値が以前の3倍ほどになっていたのは助かった。
スキルや魔法を覚えていく中で、聞いたことの無いモノがいろいろあった。
まぁ、好き好んでゴキをアバターにする人がいないからかもしれないが。
その、聞いたことの無い魔法の最たるモノがレベル100になった時に習得した超位魔法、名前的にはあのイナゴの群を召喚する超位魔法の亜種だろうが、あのクソ運営は何を考えてこんな魔法を作ったやら・・・・・・だが、今回はそれを嬉しく思う、最後の最後で未発見の超位魔法を撃てるのだから。
ユグドラシルサービス終了日
ナザリック地下大墳墓 表層
ついにこの時が来た。
予想通り、モモンガさんはメールを送ってきた、内容はユグドラシル最後の時を一緒にナザリックで過ごしませんか?と言うものだ。
だが、今のアバターはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持っていない。
なので隠密系スキルと魔法を重ね掛けし、ナザリックに侵入し、第一階層の転移罠を踏んで第六階層へ行き、第七、第八階層を抜け、第九階層 円卓の間へと駆け抜けて行く。
ユグドラシル終了3分前
円卓の間に集まっているかと思って来てみたが、人影はなく、安置してあったスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが無くなっている。
ここに居ないとなれば玉座の間しかない。
もう時間が無い、円卓の間を出て玉座の間への廊下を走っていく。
23:59:45
「せっかくここまで来たのに誰にも会えずに終わるのか!」
廊下を走り、玉座の間に向かっているが時間が足りない、こんな日に限って急ぎの仕事が入ってくるとは思わなかった。
玉座の間の扉まで後数メートル。
00:00:00
無情にも時間が過ぎ、サーバーダウンの時間が来てしまった、のだが、
00:00:01
00:00:02
00:00:03
まだ自分はゲーム内にいる。
「サーバーダウンが延期になった?」
未だに自分は強制ログアウトされず、時間が過ぎていく。
こうしてはいられない、壁を這い、スキルで玉座の間の扉をすり抜け、天井を移動して玉座へと近づく。
見下ろすとモモンガが玉座に座り、そのモモンガにアルベドが詰め寄りなにか話している?
もしかして自分のようにNPCのアバターを新しく作ったのだろうか、しかも口だけでなく表情も動いているように見える。
運営め、最後にこんなアップデートをするとは粋な事をしてくれる。
なら、このアップデートを無駄にしないため、盛大にやるしかないだろう!
俺は天井から手足を離し、モモンガ達の前に舞い降りる。
「き、恐怖公⁉」
俺をみたモモンガ達の表情がひきつっている、やはり生の反応を見るのが一番楽しい。
「我こそは恐怖公の姿を借りし、るし★ふぁーである‼
ユグドラシルの最後に、このナザリックに全力を持って恐怖をもたらそう‼〈
周囲に七つの魔方陣が描かれ、そこから大量のゴキブリが召喚され玉座の間を埋め尽くしていく。
この魔法は発動したら最後、魔法を破壊しない限り魔法陣一つが5000匹/sの速度でゴキブリを召喚し、それが三時間続く。
単純計算で秒間三万五千匹のゴキブリが召喚されていく。
「ひぃ!!!」
女性達の悲鳴が聞こえ、恐怖する表情が視界に入る。
何だか楽しくなってきた。
「ふははははは‼まだまだこんなものではないぞ‼」
そして超位魔法の魔方陣を展開する。
唱えるのはワールド一つを恐怖に落とすことが出来る危険なもの、今からその光景を見るのが楽しみだ。
「ではゆくぞ。超位魔法〈
超位魔法の発動を短縮する課金アイテムを使い、即座に魔法を発動させる。
超位の魔方陣が青から黒に変色し、そこから一匹の身長五メートル程ある巨大なゴキブリが現れ、雄叫びをあげた。
『ゥオオオオオオォォォォオ‼』
その雄叫びに呼応し、小さなゴキブリを召喚していた魔方陣も黒く変色し、そこから三~四メートル程のゴキブリが溢れ出した。
その日、ナザリック地下大墳墓はゴキブリに埋め尽くされ、支配された。
「いやぁ凄いなぁ。こんなことになるとは」
眼下では大小様々なゴキブリが蠢き、1秒に三万五千匹の速度で召喚され、玉座の間から溢れて外に流出している。
この調子なら30分もしないうちにナザリックがゴキブリで埋め尽くされるだろう。
「我輩は満足である。では後日リアルで語り合お・・・・・うぞ?」
あれ?おかしい。
メニュー画面を出そうとするが出てこない。GMコール、強制終了も不可、いったいどうなっているんだ?
そんなとき後ろから肩をつつかれた。
振り返るとそこにはモモンガがおり、何やら疲れている感じがする。
「モモさんおひさ」
「・・・・・・るし★ふぁーさん、少しお話ししましょうか」
その後、モモンガさんにメチャクチャ説教された。
ちなみに超位魔法で召喚された巨大ゴキブリが数百匹ナザリックの外に溢れて世界に放流されていたりする。
それから何やかんやあり、ここが現実と言うことが判明し、これからこの世界で生きていくことになるのだが。
一部の僕達が冷たいと言うか、よそよそしい。
まぁ、恐怖公も同じような扱いなので何となく理由はわかった。
その後、ゴキブリによって国が支配されたり、ゴキブリが伝説の魔獣になっていたり、漆黒の英雄モモンの冒険譚に時には仲間、敵、ライバルといろいろな立ち位置でゴキブリが出てきたり、
溢れ出したゴキブリ達により、地下に巨大なゴキブリ帝国が建国されていたり・・・・・・。
るし★ふぁーが引き起こしたこの騒動は、数百年にわたり、モモンガ改めアインズが頭を痛める悩みの種になったのは言うまでもない。
続かない。