BETA万能説 作:(やる気をだした)かわいそうなニー友達
なんだかんだで時間が過ぎるのは速かった。一日中ニート生活したり、宇宙空間散歩したり、憂さ晴らしに惑星破壊したり、そんな事で時間を潰していたらいつの間にか500年くらい経ってしまっている。
驚きだ。適当に過ごしているだけで、こんなに生きていたとは。案外俺も、人外の身体に慣れてきたのかな。
それに今や【重頭脳級】は大体10の40乗くらいいる。実はちょくちょく生産施設増やしたり、出荷用の戦艦などを創ったから、色々と効率が上がったんだ。
因みにだが、単位をつけると一
10,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000
もうね、意味分かんないね、って言うのが一番大きい。だって読めないんだもん。
それに考えてみれば、元一般人にしてみれば、これだけの部下がいるっていうのも実感が湧かない。目の前に全員整列されたら流石に、うぉお!! ってなるかもしれないけど。
今からしたら、正直言ってこれだけの部下がいるなんて信じられないわ。
あと、流石に500年近く生きているとチート転生者の馬鹿さ加減も溶けてくるらしく、やっとの事で冷静さを取り戻した。正直言って自分が何をしていたのか、恥ずかしいくらいだ。
ま、今後は普通に生きていくよ。
「ケイソ様、今日のご予定では『サイダー星人』 『クェルヒ星人』『ミネラ星人』の各首脳との会談が入っております」
スーツを着こなした長身オールバックの金髪男が、手元にあるタブレット弄りながら物静かに言い渡した。
その言葉に俺はチッ、と舌打ちしてしまった。
男はやれやれと言った様子で喋りだす。
「ケイソ様、お気を煩わせるのは結構ですが、ちゃんと会って頂かないと。以前のように逃げ出されては困りますよ?」
そう、この男の言う通り、俺は一度この会談を逃げた事がある。数がを多いくせに、一個一個の所要時間が長いのだ。
そもそも、こう言った会談が急に増えたのは、俺が冷静さを一気に取り戻してからなのだ。今まで調子乗って生きてきたから、少しでも世界に貢献出来るよう、ちょこちょこと実績を上げる事にしたんだ。
その途端だよ、BETAの活動が活性化したのは。
俺が普通にゲームしたりして普通の人間の暮らしを満喫していたら、急にBETAの開拓スピードが馬鹿みたく早くなったんだ。
しかもそれと同時に前の……なんだっけ、へーデル星人だっけ? そいつみたいな、他の星人達が言う所の『強者』が良く襲撃をして来るようになった。
勿論、戦法はいつも通り奇襲を掛けて中から崩壊、後は面圧射撃で終わりと、速攻で終わらせているが。
正直、俺は一軍を纏め上げられるような存在ではないので勘弁して欲しいのだが。こんな軍団を作った過去の俺を、思いっきりぶん殴ってやりたい。
「ああ、そうだケイソ様。外来種撃滅科の【リッケルト】が面白い物を持ってきたので、報告しておきますね」
リッケルトとは、500年くらい前のヘイデル星人襲撃後に『捧げ物』として送られてきた、あの猫耳少女だ。
【兵器格納星】に放り込んだ為か、いつの間にかパイロットになっていて、もう少ししたらエースとして君臨していた。なんか凄い娘だったらしい。
それはともかく。
「面白いもの?」
俺は実際色々な物をチート能力で創れるので、ネットを見ながらならば大体なんでも創れる。
それは彼も知っている筈だが……その上で、俺に対して面白いものを持って来るとは。いったいどんなものを持ってきたんだ?
男は懐からひし形の何やら高そうな宝石を取り出して、天にかざしてみせた。緑色がとても綺麗で美しいが、これは?
視線を受け取ったのか、男はニヤリと笑って返した。憎っくき、イケメンスマイルだ。
「これは【次元核】 その世界の中心部に位置する最高級の秘宝であり、強大なパワーを絶えず発生させる、神秘の結晶です」
詰まる所、高出力の動力源と言った所か。しかしそんなものは既に持っているので、別に欲しいとも思わないのだが。だって【ゼロ式製造機】ならほぼ何でも作れるし。
そう言うと男は手をヒラヒラと振って、苦笑しながら否定した。何が違うと言うのだ?
「実はですね、ケイソ様。これはそんな簡単な代物じゃないんですよ。なんと! 【次元移動】が出来るのです!」
「次元移動……?」
んん、久しぶりに意味不明ワードが出てきたぞ。なんだ、次元移動って。
「次元移動とは、此処とは違う世界軸の世界に転移する現象の事です。ケイソ様に分かりやすく言うならば、簡単に異世界に行けちゃうアイテムです」
「……は!?」
簡単に異世界に行けちゃうって、何考えてんだよ!! なんだそのチートアイテム、すげえ危ねえ代物じゃねえか! 誤作動でも起こしたらどうすんだよ!!
「あ、心配しないでください。【室長】に頼んで、制御核を埋め込んで貰いましたから。バニラと違って座標セットも出来ますし、暴発もありませんよ」
「お、おう」
さっき神秘の結晶とか言ってなかったっけ? それに下手したら異世界に行くような物体の筈なんだけど。
そんなものに制御装置つけるとか、流石としか言いようが無いんだが。変態過ぎんだろ。
多分これやったの『第13開発室】の室長だろうな。
「でも、だとしたら結構凄い物を拾ってきたな。異世界に行ける力か……他にも何かないのか?」
その言葉を待ってました! と言わんばかりの笑顔を見せつけ、露骨に明るくなる金髪男。
彼は悠々として語る。
「そうなんですよ! 実はですね、コレは他の星人を釣る為の、エサなんですよ!!」
……最悪のワードを。
は? エサ? 何言ってんだ?
理解不能になり、混乱している中、男は続ける。
「この核が偶然手に入ったのを好機に沢山の宇宙人が流れ込んで来たでしょう? 攻め込んで来たでしょう? それは全て、この宝石のお陰なんです!」
それを俺が怒るとは思わずに、
「『強者』の各惑星の宇宙人がコイツを挙って奪いに来、その恐怖に怯えた弱小宇宙人は我がBETAの傘元に入る」
さぞかし嬉しそうに語る。
「この最高のサイクルのお陰で、我が軍はより強大に、巨大な物となりました! 全てはケイソ様の為なのです!」
その言葉を輪切りに、ひれ伏して、捧げるように両手を広げる。その姿はさながら騎士のようであったが……
「あ、ああ。そうか……悪いが、少し一人にしてくれ」
なんとか言い訳を考えて伝え、渋々男に退出を願った。頭に?を浮かべながらではあったものの、男は素直に出て行ってくれた。
反面、俺の頭の中は最悪であった。
妙に襲撃が多いと思ったが、まさか、まさかそう言ったカラクリだったとは。
彼に貰った手のひら大の宝石を見つめる。
この宝石のせいで、襲撃が多くなったとは……。いい加減にして、欲しい。
「……旅に出よう」
こんな戦闘集団の中に、ド真ん中に居たら生命が幾つあっても足りない。自分で蒔いた種ではあるが、流石にここまで巨大化するとは思わなかった。
逃げるは恥だがなんとやら。素直に退出するとしよう。
俺は置き手紙を置いて、その場を逃げ出した。
ケイソがその場を逃げ出したその後、BETA本拠地では。
ケイソ捜索の為の、踊る大捜査が繰り広げられて居た。
原因は、金髪の男が見つけた一枚の手紙であった。
「ま、まさか自分の行動でケイソ様が居なくなってしまうとは……不覚!!」
その手に握る手紙には、こう書いてあった。
『 みんなへ。
しばらくの間、太陽系で遊んで来ます。探さないで下さい。
PS.
その手紙を読んだ瞬間、彼はこう思ったそうだ。
「くぅー、わざわざ私の名前を書いてまで、推薦して貰えるとは!! これは急いて探さねば!!
……皆の衆、太陽系へと侵攻する準備をすすめよ!!」
結局、地球へのBETA侵攻の口実を作ってしまっただけだった。
別に異世界に行く予定ないです。