とある帝国の森 ブラウセン帝国暦560年
とある森の中を男女が走っていた、背後には所々家屋が燃え人々の怒号が響く街を背にしていた。
「いたっ」
男というより少年は足元の石に躓いてころんだ。
「なにやってんのよ。あんた一応中尉でしょ。」
「ミーナのように、自分は肉体労働をしない裏方だからな・・・普段は」
薄暗闇の中、少女は転んだ少年の手を引き起こしながら罵倒した。
「何言ってんの。それでも栄えある帝国貴族、そして帝国軍士官なの!?」
「それもいまや共和主義者の台頭で消えかけてるけどね・・・」
少年の言葉に少女は顔を下に向けた。
何を隠そう、彼らの背後にある街は少女の父親の領地であり、少女の故郷なのだ。
「まあ、君の父上と僕の父が逃がしてくれなきゃ今頃絶望的な戦いに身を投じていたところだけどね。」
少年はそうつぶやき、少女の髪を優しくなでた。
「とりあえず、共和派軍人に会わないよう、そして皇帝陛下の宮殿であるヴィルヘルム宮殿まで行かなきゃね。」
少女はうつむいた顔をあげ、今にも泣きそうな顔をしながらも涙は流さず少年の言葉にうなずいた。
「とはいっても、何か特別な策があればいいんだけど。敵も馬鹿じゃないだろうし」
「そうだね。ミーナの言う通りだ。一応簡易トラップは仕掛けられるけど。」
「次の街までの街道沿いには敵もいるだろうしね。はぁ。」
少年と少女の街からの脱走は、敵にとっての予想外だったろうが。だが今、この国は内戦中である。街道の封鎖が少年たちの脱走前から行われていることは、2人にも容易にわかった。
「そうだ。ミーナ、いい方法を思いついたよ。」
そういって少女に妙案を話す少年の目は輝いていた。
その作戦を聞いた少女は愕然とした。
そして、開口一番に少年を罵倒した。
「あんたばっかじゃないの!こんな穴だらけの作戦うまくいくはずが・・・それに私、夜飛んだことないし・・・」
「それは大丈夫だよ。僕も工兵だからいろいろ持ってるんだよ。」
そういって少年は、照明弾のようなものを取り出した。
「後はミーナの度胸しだいさ、何しろ魔導を使えるのは、ミーナだけだからね。」
その言葉に少女は反論した。
「ジーク、あんただって工兵でしょ。何か魔導装置みたいなのはないの?!」
その言葉に少年は反論した。
「残念だけど、ミーナ。僕は魔導素養が低くてね。基地にあったそういう兵器はおいてきたんだ。それに君もわかっていると思うけど、魔導に優れているから魔導兵なのではなく、魔導を扱えないものがその他の兵科なのさ。」
そう自嘲して、少年は少女に重荷を背負わせている自分が心底憎かった。
もっと力があれば・・・と
彼らの受難は続く。
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