「火野ライカぁ?あんな男女は最下位だ!」
専門科目の授業が終わり、あかりとライカが廊下を歩いているとそんな声が聞こえてきた。
あかりとライカは窓からコッソリと覗くと、男子たちが同学年の女子のランク付けをしているらしく5人ぐらいでノートを広げて机を囲んでいた。
そのタイトルは『可愛さランキング』。
見たところ、『間宮あかり(強襲科)』は『△〜○?←チビすぎ』。
『佐々木志乃(探偵科)』は『◎』などとなっていた。
「あ、おい待てぃ。最近ではイメージが変わってきてるって話もあるゾ」
しかし1人の男子が言葉を遮って弁明する。
「聞こうか」
「なんでもかのSランクの月島先輩と戦兄妹を組んでから雰囲気が変わったと」
「……なるほどつまり?」
「まだ判断を焦るような時間じゃあないってことだゾ」
「あっ…ふーん……」
男子達の話を聞いてあかりとライカは少し複雑そうな顔をする。
ライカ「……あたしそんな雰囲気変わってる?」
あかり「まあちょっと柔らかくなった感じはするね」
ライカ「うーん…そっか…あ、先行ってていいぞー、あかり」
あかり「あ、うん。先行ってるね」
ライカはトイレに入ると少し最近の自分を振り返ってみる。
ライカ「……そんなに表面に出てるのかなぁ…」
一方で教室では通りかかった1人の上級生が5人の1年に対してO☆HA☆NA☆SIをしていたとかなんとか……
そんな日があった翌日、その日は休みで剣護は気分転換で秋葉原に来ていた。
目的は銃と特撮グッズを漁るためである。
剣護「さーて……何見ようかなーっと。ん?」
フィギュアやドライバーなどを物色していると、ミリタリーグッズが並んでる店の棚にあかりと麒麟を見つけた。
2人が見ている方向に目をやるとライカがデレデレしながらドールを抱いてるのを見つけた。剣護はしばらくライカを見ていたがすぐに特撮グッズに向き直った。
あかり「い、意外すぎるストレス発散方法だね……でも、趣味は人それぞれだし、問題ないんじゃない?」
麒麟「いいえ。あれは『少女返り』……それも重症ですわ」
あかり「少女返り?」
麒麟「武偵高では、女子でも男勝りの活躍が求められますの。しかしそれは不自然な事。ストレスが溜まるのです。そこで心のバランスを取るため、自分には無いものを求め、ああいう少女趣味に走るッ!」
あかり「そ、そういうもの……?」
麒麟「ええ。武偵高の女子にはよくある事ですわ」
あかり「そ、そうなんだ……ってあれ?あそこにいるのって……」
麒麟「……月島様ですわね。なんでここに……」
あかり「月島先輩もライカの様子見に来たのかな……」
麒麟「さあ……どうでしょう……まあそれはさておき、今はライカお姉様ですわ!」
そう言うと麒麟はあかりの制止を聞かずにライカのいるドルフィードリームのコーナーへ突入していった。
ライカ(あーほんと、銃売って買っちゃおうかなぁー)
一方のライカはそんなことに気づかずにお人形さんに魅了されてしまい、武偵の魂を売ってしまうようなことまで考えてしまっていた。
ライカはダンスを踊るようにクルクルと回り、お姫様を中心に背景が入れ替わっていき、視界に島麒麟が入ったところでぴたりと止まった。
ライカ「アイエッ!?」
あかり「ライカそれ違う驚き方だよ」
ライカ「き、麒麟ッ!?あかりもッ……!?な、ななな、ナズェミテルンデス!?」
麒麟「お姉様、滑舌悪くなってますわ」
その場にいないはずの2人が登場してライカは真っ赤になって混乱してしまい、終いにはオンドゥル語まで出てしまっている。
あかり「あ、いや、その、いいと思う!こういうの!ライカかわいいよライカ!」
ライカ「あかり……っ」
あかり「ごめんね、ライカ。あたし……」
ライカのプライバシーを侵害した事情をあかりが語ろうとした時。
剣護「おぉ!?何故こんなところにホワイトグリントのフィギュアが!!」
ライ・あか・麒麟『ッ!?』
そんな叫び声があかりと麒麟の言葉を搔き消した。ライカは声の方を見て驚く。何せこの2人だけでなく剣護までこの場に来ていたのだから。
ライカ「つ、月島先輩まで……!?」
麒麟「こ、コホン。私は初めっから、お姉様の秘めた欲求には感付いてまひたのよ。私に対する冷たい態度は、ツンデレのツン」
剣護が遠ざかっていくのを確認すると麒麟はたくさんのドールを背景に話す。それに対しライカはそんな麒麟を睨みつける。
ライカ「……言いふらしたら殺す」
麒麟「秘匿しますわ。そのかわり……戦姉妹試験勝負。して下さいますわよね?」
ライカ「そうきやがったか……」
麒麟「正直ぶっちゃけますと言いふらしたら言いふらしたで月島様に殺されかねませんし」
ライカ「…………え?」
あかり「あのね?私も後から知ったんだけど、昨日ライカがトイレにいた後で何人かシメられたって話があったでしょ…?月島先輩がやったらしいの……」
ライカ「……月島先輩……が……?」
あかりからの話を聞いてライカは目に涙を溜めながら俯いた。剣護が自分のために怒ってくれた、そのことを知ったライカは胸がいっぱいになり、しばらくして涙を拭うと麒麟に向き直る。
ライカ「わかった。戦姉妹試験勝負、受けて立つ」
麒麟「わかりましたわ。お姉様は防弾制服ではいらっしゃらないご様子。CQCでよろしくて?」
ライカ「あぁ、いいぜ。なら屋上でやるか。あかり、立ち会ってくれ」
あかり「うん、わかった」
3人はドルフィードリームのコーナーを後にし、屋上へと続く階段を上っていった。
剣護「…………行ったか」
3人が見えなくなった頃、剣護はさっきまでいた店に戻ってくると周りを見回し武偵高の生徒がいないことを確認すると、ライカのいたドルフィードリームの店内へと入った。
店員「いらっしゃいませ。あら?あなたはさっきそこにいた方ね?」
剣護「どうもライカの先輩の月島といいます。えーっと……」
剣護は店内をキョロキョロと見てさっきライカが持っていたお姫様のお人形を見つけると。
剣護「これください」
店員「かしこまりました。それならこちらも。ライカさん、かなり気に入ってるみたいだから」
剣護「ふむふむ……じゃあそれもください」
その2つの人形を購入し、受け取るとちょっと特撮グッズと銃を覗いてから屋上へと歩いていった。
一方、戦姉妹試験勝負をしていたライカと麒麟はすでに勝敗が決していた。
ライカ「え……あ……!?……え?」
麒麟「ライカお姉様!」
ライカは未だに自分が後輩に負けたことが信じられず混乱するばかりで、そんなライカのお腹の上にいる麒麟はハートマークを飛び散らしながら胸に抱きついている。
剣護「あーららら。負けちまったか」
ライカ「ッ!?」
突然の声にライカはバッと起き上がると声のした方向に振り向くと両手に紙袋を持ったまま剣護が立っていた
ライカ「つ、月島先輩……あの」
剣護「ま、良いんじゃないの?お前が戦姉妹組むのも」
ライカ「あのっ!」
剣護「ん?」
ライカ「昨日の男子をやったの……月島先輩なんですか……?」
剣護「さあ?どーでしょうね」
ライカ「真面目に答えてください!」
剣護「…………」
はぐらかして帰ろうとした剣護をライカは引き止め、ジッと見つめる。それに対し剣護は溜息をつくと頭を搔きながら振り返る。
剣護「君のような勘のいいガキはフライだよ」
ライカ「何故にフライ!?じゃなくて真面目にって言ったでしょ!」
剣護「いやちょっとムカついて」
ライカ「えぇ……」
剣護「だって自分の戦妹が何か言われてたらムカつくじゃん。俺にとっちゃ普通の妹も変わらんけどさ」
ライカ「妹?先輩は妹がいるんですか?」
剣護「いや、その逆だ。妹もいなけりゃ親もいない」
ライ・あか・麒麟『ッ!』
剣護の言葉に3人は目を見開いた。
剣護「俺はあまり覚えてないが、俺が小学校になる頃には父さんも母さんもいなかった」
ライカ「っ…………」
剣護「父さんと母さんが亡くなってからはじーちゃんやばーちゃんが俺を育ててくれたけど……中3の頃に亡くなった」
あかり「…………」
剣護「しかもうちは一人っ子でなぁ……兄弟もいなかったよ。でも」
麒麟「でも……なんですの?」
剣護「周りには俺を助けてくれる人がたくさん居た。だから今の俺がある」
あかり「……なんか似てますね。あたしと月島先輩って……」
剣護「お前は妹がいるだろ?それにあかりは2人で今まで頑張ってきた、そうだろう?」
剣護の言葉にあかりは俯く。散り散りになっても今までののかと一緒にあかりは2人で生きてきた。しかし剣護は周りの助けがあったにしても1人で生きてきたのである。
剣護「まあでもうっすら生きてんじゃね?って最近思ったりもすんだけどさ」
あかり「えぇ………」
剣護「おっとそうだ。ライカ、これ」
ライカ「え……?っ!こ、これ……!」
剣護はライカに袋を渡す。ライカは受け取り、袋を開けると中にはライカのお気に入りのお人形が入っていた。
剣護「お前すんごい欲しそうにしてたからな。まあ昨日のこともあるし」
ライカ「せ、先ぱ……っ…………ゃん」
剣護「え?」
ライカ「…お……お兄…ちゃん」
剣護「…………WHAT!?」
麒麟「ライカお姉様が言うなら……お兄様!」
剣護「っ!?」
あかり「え、えと……お……お兄……ちゃん」
剣護「………………」
バタンッ
こうかはばつぐんだ!
剣護は倒れた!
ライ・あか・麒麟『つ、月島先輩ぃぃぃ!?』
生まれて初めて兄と呼ばれた剣護はさすがに刺激が強すぎたらしく、その場から崩れ落ちるように倒れてしまった。
その後、寮に帰ってきてもボクサーのように真っ白に燃え尽きていたと彼のルームメイトの遠山キンジは語った。
後日「流石にヤバいからいつも通りにして欲しい」と剣護から言われた。