巨大な黒い何かがピラミディオンの天井を突き破ってきた
「に、にげろぉーー!」
鉄骨やシャンデリアがロボットやゴレムを押しつぶす
「なんだよこいつは!?」
晴山がそう怒鳴り【駆動鎧】めがけて鉄骨を投擲。見事に操縦席の部分を貫くが何事もないようにこちらに斬りかかってくる
「んだよ!原作とは違うじゃねーか!」
黒いコートを纏った少年が天井からワイヤーで降りてきて【駆動鎧】に向けて放電。しかし【駆動鎧】自体は正常に作動しこちらに斧を振り下ろす
「チクショウ!おい、お前!ついてこい!」
先ほどの少年に向けて怒鳴る
「どこにいくんです!?」
「あのハンマーを追う!」
晴山の視線の先にはどんどん縮んでいく黒い金鎚があった
「わかりました!」
晴山は足元のベクトルを操作し、少年は袖から飛び出たワイヤーを天井に打ちこみ金鎚の行先を追う
「どこまでいくんだ?」
晴山が呟いたとき
ダァァン!!
「ゴバァア!?」
付き添っていた隊員が血を吐きながら路地裏に落ちていく
「おいぃ!くそっ!」
ベクトル変換し路地裏に下りたつ
「……ダメ、か」
脳天が撃たれており、即死だ
「……すまん」
遺体を路地に置き黙祷
ガシャン!!
「仇は取るからな」
ボルトアクションの音に反応し、晴山が立ち上がる
「……お前、一体何を……?」
晴山は驚いた。
驚く晴山を置いてその人はニヤリと笑う
「別に、ただの裏切りさ」
「晴山!雲谷!応答しろ!」
雨埼が怒鳴る
戦闘自体は収まりつつあり、雷木や霧島の連れてきた増援が【駆動鎧】を軒並み破壊してしまったのだ
霧島の【錬金術】が【駆動鎧】を串刺しにし、雷木の重火器が拳銃では対処できなかった残りを粉砕したのだ
《こちら雲谷》
「よかった!雲谷、今どこだ!?」
《今?ゴレムが邪魔だったけど配置についたよ》
ということは雲谷は今上の階にいるはずだ
「あとは晴山か……探しに行ってくれ!」
「わかった!」
「チックショー、全滅か……」
【正義の執行人】に所属する少年、【軍団】が双眼鏡片手に呟いた
彼の能力である【機械記憶】は彼の記憶にある機械を現実の物にする力だ
つまり、彼が覚えていたら【駆動鎧】や他のロボット群の調達は余裕なのだ
「こうなったら、第九トレーラー解放」
リモコンを操作し京菱社から盗んだトレーラーの荷台に積まれたラ●ュタのロボット群が姿を表す
【軍団】は軽く深呼吸して双眼鏡でロボット群を見る
「“
これは彼の【機械記憶】と【空間移動】につぐ三つめの能力
つまり彼は【機械記憶】で出した人の形をしたロボットを【王権を果たす完全人形】で操っていたのだ
【王権を果たす完全人形】は視界に入る人型の物を操る能力であり、人の形であればどれだけ損傷していても動かすことが可能だ
つまり、壊れることのないロボット群が出来上がるのだ
「さいっこぉーじゃねーかぁー!アーハッハッハッハッハァ!」
「丸見え。しかも笑い声が丸聞こえ」
燕尾服を着てDSR-1を持った男が呟いた
彼はセバスチャン・ドルネード。転生者であり名前は勿論偽名であり、現在は【スペード】と呼ばれている
そんな彼は現在日本で暗躍する【ノーネーム】と【魔女連隊】の行動を監視し時には妨害していたのだ
「しかし、ホントに能力便りの奴が多いな」
【スペード】はDSR-1を持ち上げ【ハミングバード】に狙いを付ける
京菱社製ステルスヘリ【ハミングバード】は光学迷彩を施した偵察ヘリであり見つけることは不可能と言われてる
しかし、【ハミングバード】の扉が開き、高笑いをしてると位置は丸分かりだ
DSR-1にはサーマルスコープが搭載されており、高笑いしてるバカを中心に見たらヘリの輪郭は見えた
「と、いうわけだから死ねよ」
DSR-1の引き金が引かれサプレッサーによって減音された亜音速弾が【ハミングバード】のエンジンを貫いた
続く二発めはパイロットの胴体を貫通。やがてヘリは墜落した
「ふぅ……こちら【スペード】、【クローバー】【ダイヤ】カジノの様子は?」
《ウジャウジャいる武偵はリーダー格が死んでかなり慌ててる》
《雲谷という狙撃要員にトラブルがあったようでなにやら慌てていますわ》
二人からの報告に【スペード】は眉を潜ませDSR-1を構える
すると丁度パトラが出て来てアリアを捕まえたところだ
「……………」
一瞬、迷って【スペード】は原作通りパトラの眉間をぶち抜きすぐに場所を移動する
《一発で眉間をぶち抜きました。やりますね》
「ふっ、ワトソン家の執事たるもの、この程度が出来なくてどうする?【ハート】、監視対象はどうした?」
【ノーネーム】を見張っていた隊員と連絡を取る
《監視対象をロスト、申し訳ありません……》
「仕方ない。集合地点リマに集まれ、現場から離脱しろ」
「こっちだ!」
【平和連合】の隊員が手招きする
雨崎が路地に入ると確かに晴山が倒れていた
「晴山!しっかりしろ!」
晴山は左肩がごっそりと抉れており酷い有様だった
「あ、あめさ、き……」
「しゃべるな!すぐに治してやるから!」
「う、裏切り、もの、だ……」
「なに?」
「へ、【平和連合】には、おおくの、裏切り者が、いる……」
「そ、そんなバカな!?」
「く、雲谷は……【名無し】と、通じてやがった……」
「雲谷が!?」
雨崎は信じられなかった
「き、気をつけ……」
ダァァン!
五十口径の射撃音と共に晴山の頭が吹き飛んだ
「ッ!!!?」
すぐさま物陰に隠れる
そんな雨崎とは逆に晴山を撃った相手、雲谷は悠々とTAC-50A1を持って歩いてきた
「ザマァないな!雨崎ぃ!」
「……く、雲谷にぃ!なんで!なんでこんな事を!?」
日本刀を引き抜き案外近くにいた雲谷に向ける
「……きひ、きひひひひひ!わからねぇーかぁ!?おめでたい頭してんなーぁ!私は!きひひひひひ!ヴラド編で既に死んでるんだよ!」
音程の外れたおかしな笑い声を上げ、雲谷が自身の持った狙撃銃を雨崎に撃つ
12.7mm弾は雨崎を穿つことなく雨崎の刀によって二つに切り裂かれた
「なに!?」
そのとき雨崎の脳内に雲谷との無線が一時途切れたのを思い出した
あの時に……
「んでもってぇ!私は!きひひひひひ!【名無し】に言いように使われるスパイとして戦い始めたのさぁ!めだたねぇように【平和連合】の情報を流し、戦力を削り、今日!この日まで!やってきたわけよぉ!くひひひひひひ!!」
雲谷の顔が、いや、身体が赤くぼやけ徐々に別の形に変わる
「て、テメェ……名ぁ無ぁしィィイ!」
【名無し】の形に変わった雲谷に切りかかりあっさりかわされる雨崎
「くひひひひひひ!!おかげさまでよぉ!【平和連合】の八割は削れたぜぇ!この組織はもはや、俺のものなんだよぉ!きィ!ひひひひひ!!くひひひひひひ!!」
「極威一刀流!【ミョルニル】!」
渾身の唐竹割りが【名無し】の脳天をかち割る
「くひ、ひひひ………」
【名無し】は耳に残る笑いを残して、消えた
「……………」
失意の中、路地を出る。先程案内してくれた隊員は影も形も居なかった
「……………くっそぉ!」
「よう、無事だったか?」
【ルールブック】が【空間移動】の能力で逃げてきた【軍団】に問いかける
「危なかったけどな、すまない【ハミングバード】を壊しちまって……」
「気にすんな、お前の代わりは居ないからな」
【ルールブック】がそう呟き手にしたナイフを弄ぶ
「しかし、何がしたかったんだ?お前」
「ん、あぁ。勧誘。今回の騒動で【平和連合】の殆どの隊員が死んだ。そこに漬け込んで、優秀な人員を確保するのさ」
実質、既に何人かの転生者(カッコつけたがり)とコンタクトしてる
「勝つのは俺達だよ」
【ルールブック】がニヤリと笑った
デンマークの首都、ヒレレズの一角
「かぁー!しまらねぇ!何なんだこの英国の糞スパイはぁ!雑魚すぎんぞ!」
【リバティーメイソン】のデンマーク支部を襲撃した【魔女連隊】の隊員が怒鳴った
オシャレなバーのようなこの拠点は【リバティーメイソン】の隊員の避難所兼隠れ家でもあった
「あ、あーこちら【虚無】、ポイントHMを制圧。これより帰投する」
《了解した》
無線機を仕舞いその少女は肩を回し出す
頭には黒と灰色の入り混じったモノトーン色のブニーハットが乗っかり完全にイっちゃった眼で辺りを眺め口からは今回の仕事の文句が垂れ流しにされてる
「まったく……ぶっちゃけよぉー。どんな美少女に転生してもさぁー。出逢いがなけりゃ何にも変わんないわけよぉー。もっとさぁー、こう、歯応えのある敵がきてほしぃ訳ですよぉー」
少しカールした金髪を弄りながら手にしたレイピアを仕舞う
「隊長、不満がダダ漏れですよ」
「だってさぁー、カツェくん。最近の【リバティーメイソン】はぁ、ほぼ当て馬じゃん?経済封鎖とか搦め手とかはめちゃ強いけどぉ、他に良いとこ無いじゃん?ぶっちゃけクズじゃん?茶渋じゃん?イギリスなだけに」
律儀にトンガリ帽子を被ったカツェの頭を強引にその少女は撫でる
「ぐぎゃあ!やめてください!フロール隊長!」
カツェは抵抗するがフロールはさらに力を強くしカツェを抱き締める
「カツェくん……フガフガくんかくんか……いい匂いぃー!」
「うにゅ!?どこを、舐めてるのですか!?」
「いいじゃん。お互いあんなに愛し合ったのに……」
「いいから離れてください!」
カツェが真っ赤な顔で自分を抱き締める自分の上官を睨みつける
「二人とも、そろそろ行きますよ!」
みかねた他の隊員が声を上げる
「……はぁーい」
そして二人は渋々車に乗り込む
転生者のフロール・笹原・ロンメルはあくびをかみ殺した