ヴァチカンの水上艇がアンベリール号のそばに着水。武装した傭兵や武装神父が次々とゾディアックや小型哨戒艇に乗り込む
「よし、行くぞぉー!」
アデルの号令と共に船が動き出す
「すでに戦闘が始まってますね」
コーネリアがアデルに話し掛ける
「そうですね。少しでも戦力が減ってほしいのですが……」
アデルが【黒鍵】を持ち上げ憂鬱そうに呟く
「しかし彼らは役に立ちますかね?」
コーネリアがチラッと見たのは【スイス傭兵連団】から派遣された兵士たち
高度な訓練を積んだこの兵士たちははたして、魑魅魍魎が跳梁跋扈する戦場で生き残れるのか
「我らが父よ。どうかあなた様の僕である我らに、悪魔を伐つ力をお与えください。エェイメン」
「おかしい、なんだか同じ場所をグルグル回っている気がする」
牟田原が呟いた
「まじでか?」
「たしかに、いくら豪華客船とはいえこんなに迷うはず無いもんな」
他の面々も騒ぎ出す
「他のチームとの連絡は?」
無線手を担当する転生者に聞く
「繋がらない。手柄を横取りされたくないのかと思ってたが、不安だな」
「そうだな、一旦入り口に戻ろう」
転生者達が引き返し始めた
タァァン!
牟田原の眉間を一発の弾丸が貫いた
「なにっ!?牟田原ぁー!」
副隊長を始め全員が警戒を始める
「どこだ!どこから撃ってきた!?」
「なんだってんだよ!」
「落ち着け!とにかく落ち着くんだ!」
全員が騒ぎ出す中、二発めの弾丸がリーダーの男を射殺した
「うそだろ!」
「チクショめぇー!!」
そのうち誰かが手当たり次第に銃を撃ち、超能力を乱発しはじめた
「弱い。いくら何でも弱すぎる」
セバスチャン・C・ドルネード。彼は転生者にしてエル・ワトソンの専属執事でもある
そして、【ノーネーム】に続く『転生者狩り』のプロである
「やはり、能力にあぐらを掻いた出来損ないか」
セバスチャンが転生者の死体に唾を吐き、指を鳴らす
すると、物陰から出るわ出るわ、黒服の執事とミニスカメイドが総勢四十名
彼らはセバスチャンが手塩にかけて育てた対転生者用の戦闘部隊【ブラックジャック】である
《クローバー2よりディーラーチーム。船に
「こちらディーラーチーム、クローバー2はスペード1と合流しロザリオを足止めしろ。ハートチーム、ポイントLにてディーラーチームと合流。コウモリを叩くぞ」
《クローバー了解》
《ハート了解》
《スペード了解》
「さぁて、ウジ虫の親玉を叩くぞ」
「ぅらぁああああ!!」
【硬化】した拳で【名無し】は斬馬刀を殴る
しかし、【首切り】は意にも介さずその細腕からは予測できない強烈なラリアットを放つ
狭い船内だが、このダンスホールなら話は別で、斬馬刀やチェーンソーが床や柱を破壊していた
「チィッ!このエセホラーどもめっ!」
【名無し】は振り下ろされる斬馬刀とチェーンソーを防ぎつつ突破口を探していた
(仕方ねぇ、手札はあまりさらしたくないが……)
「アール、レディ!」
【名無し】が耳に付けた無線に向けて叫ぶ
《ラージャー》
その瞬間、【名無し】は全速力でホールを駆け抜ける
《ヤタガラス1、準備よし》
「武装はチャンネル1!すぐに撃て!」
《ラージャー、座標N74 S11ステンバイ……》
【名無し】は振り向きざまに【覇王色の覇気】を放ち追いかけてくる敵を牽制する
《
【AAR】の無機質な声が【名無し】の耳に入る
その時、【名無し】はチェーンソーを持った【サーティン】と斬馬刀を持った【首切り】に挟まれた
《掃射、五秒前》
「あばよぉ!このホラーどもめっ!」
【名無し】の袖から飛び出たワイヤーガンがダンスホールの天井に引っかかり【名無し】を一瞬にして天井に釣り上げ、振り下ろされた斬馬刀とチェーンソーが床を粉砕する
《掃射します》
その瞬間。船の横を低空飛行していたAC-130の25mmチェンーガンが発射された
何千発もの弾丸が豪華客船を横になぎはらい、ダンスホールにいた【サーティン】と【首切り】の肉体を粉砕した
いくら再生能力を保持しているでもこの弾丸の嵐は生き残れなかった
「はぁ……まったく」
【AAR】が操る無人攻撃機仕様のAC-130は再び雲の中へ上昇していった
「やったね、【AAR】」
《どういたしまして、マスター》
無線でやりとりした後【名無し】は床に下りる
「うわぁ、ミンチよりひでぇや」
【時喰みの城】で肉片や血飛沫を集めきり、歩き出した
横合いから振るわれた斬馬刀によって吹き飛ばされた
一方、雨崎は諸々の戦闘準備を整え、ようやくヘリに乗り込んだところだった
「やれやれ、全くくたびれたぜ……」
ヘリの座席でそう呟く雨崎
京菱社製の軍用ヘリKY-22はL114の改良型モデルであり、自衛隊が次世代の偵察ヘリとして採用するか決めかねている優秀なヘリである
そんなヘリに乗りながら雨崎はあくびをする
「雨崎さん!本当に船の手前で落としますけど、いいんですね!?」
ヘリのパイロットである金原が聞いてくる
「あぁ!問題ない!パラシュートも持った!」
「わかりました!」
神奈川県 横須賀
アメリカ海軍第七艦隊旗艦“ジョージ・ワシントン”
アメリカ海軍が陣取るこの港は今蜂の巣をつついたような大騒ぎだった
そこに駐屯している大勢のアメリカ兵がM16A2やM4カービンで侵入者を銃撃している
対する侵入者は残像が残るような鮮やかな速度で飛来する弾丸をかわし、時にはいなし、アメリカ兵に接近し、日本刀を抜き放つ
「龍巣閃、連打ッ!」
日本刀が縦横無尽に踊り狂い、全身の急所を突かれたアメリカ兵が吹き飛ぶ
「な、なんだ!?今の攻撃は!?」
「化け物め!」
圧倒的実力を誇る侵入者を前にアメリカ軍は為すすべもなく蹴散らされていった
やがて、ジョージ・ワシントンが占拠され、モヤイが放たれ、横須賀港を出発する
アメリカ軍の空母を乗っ取ったのは五十人程の少年少女達で、転生者でもある
「さて、諸君!」
転生者達の元締め、二階堂が叫ぶ
「戦争を始めるぞ!」