家に戻ってすぐに母さんにオルマリアのティアの事を話した。
「あらそうなの? ティアちゃん、ユウトちゃんの事を宜しくね。」
それだけで済んだ。
深くは話さなかったけど、母さんは理解してくれてたみたいで根掘り葉掘りは聞いてこなかった。
それから、家に戻ってからはずっとグーラさんが不機嫌だ。
ずっと親指を噛む仕草をしている。
話しかけても上の空が多い。
それに、ティアはずっと俺にベットリだ。
今はソファーに座っているが、隣にはティアがずっと腕に抱きつく形で座っている。
「あ、あの、どうかしましたか?」
「いや、何でもないよ。」
不安そうに聞いてくるティアは儚げだ。
「いや、強いて言うなら、グーラさんがずっと上の空でさ。」
それを聞いたティアは一瞬目を細めた。
「……………はぁ、こう言うのを朴念仁って言うのね。」
「何か言ったか?」
「い、いえ、何も。」
ティアはいつも通りのオドオドした感じに戻った。
「私は、グーラさんの所に行ってきますね。」
ティアは腕から離れた。
「ん? ティアから離れるのは珍しいな。」
ちょっと腑に落ちないけど大丈夫だよな?
「こ、ここがグーラさんの部屋だよね?」
私はノックする。
『空いてますよ。』
「し、失礼します。」
やっぱり、ご主人がいないと怖いよ。
「あら、どうしたのかしら?」
「あ、あの、ご主人の事でお、お話が………。」
「そう。私はね、悔しいのよ。」
「く、悔しいですか?」
「そうよ。8年間も一緒にいて、笑うことはあっても、あれだけ嬉しそうに笑うことは無かったのよ。それをティアさんは、会っただけでその笑顔を引き出した。ずっと一緒にいた私ですら出せなかった笑顔をね。」
「す、少し昔話をしましょう。」
グーラさんは首をかしげる。
「は、はい、昔話です。ある人間の姉妹がいました。その姉妹は2人仲良く暮らしていました。ところがある日、知らない人に連れ去られてしまいました。それから分からない箱の中に2人は閉じ込められてしまい、2人は来る日も来る日も実験をさせられました。」
「………………。」
「ある日、姉が動かなくまりました。代わりに紫で目の赤い人が中に入っていました。それから間も無く妹も意識がなくなり、目が覚めた時はポケモンになっていました。」
「そ、それって………。」
「ど、どうでしょうか? その後、姉は妹を連れ戻すためにポケモンになってしまい、妹は人間の悪い組織にいいように利用されるようになってしまいました。い、以上です。」
グーラさんは絶句している。
「人間に絶望してる時に、あの人に会った。あの人はその組織を解体して、居場所を作ってくれた。それから、その人の事を好きになり、一生かけても尽くしたいと思った。」
「貴方は、噂で聞いていたオルディナなの?」
「い、いいえ、それは過去です。私はオルマリアのティアと名前を貰いました。」
グーラさんはふっと笑う。
「自分からその昔話の人物と認めたものよ。」
「あっ。」
グーラさんに指摘されて気付いた。
確かに私は認めてしまった。
「ミュウツーみたいなポケモンって訳ね。」
「い、いいえ、元は人間ですから。」
グーラさんは大きく溜息を吐いた。
「貴方もなのねユウトさんが好きなのは。」
貴方もって事はグーラさんも?
「ぐ、グーラさんもですか?」
「そうよ。最初は不思議な子ぐらいでしか無かったのよ。でも、私がスピアーの群れに襲われたのよ。その時、ユウトさんは助けてくれたの。当時4歳のよ?」
「え、えっと、ご主人はな、生身でですか?」
「いいえ、緑色のマフラーをして背中から龍の翼を広げて、龍の尻尾を持つ人型のポケモンを連れてきたわ。」
み、緑色のマフラーに龍の翼?
そ、そして、龍の尻尾?
「ど、どんな様子でしたか?」
「親しそうだったけど、人型の子はユウトさんに『馬鹿、アホ、何で思い出さないのよ!』って叫んでたわ。」
「……………。」
ご、ご主人の手持ちの中の1人ですね。
ま、まさか私より早く来てるなんて………。
「そ、その子はどちらに?」
「羽ばたいて何処かに飛んで行ってしまったわ。」
あ、相変わらずのフィアさんです。
「ティアさんは知っていますか?」
「し、知り合いです。」
「そうなの?」
「は、はい。」
く、口が裂けても、絶対に言えないわよ。
言ったら、フィアに殺されるわ。
「お、お互いに頑張りましょう!」
「ええ、そうな。」
そのあとは何気無い雑雑談をして、私はご主人の所に戻った