ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

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第136話「機動」

 

 月が翳る夜。

 沿岸部は未だ慌しく。

 

 港町の風情も今は港湾内に屯する無数の輸送船の前にあったものではないらしかった。

 

 比較的大きな設備を備えていたようで。

 

 5隻近くからなる輸送船団の一部は近場の海上で停泊しており、戦艦は湊からいつでも出航出来る状態で海上警戒に小型艇を出してはライトで周囲を照らしている。

 

 街の様相は南欧風で煉瓦造りが目立ち。

 未だ停泊している漁船から商船まで木造が多い。

 

 中世の湊に第二次大戦期の艦隊が我が物顔で居座る様子はロマンの欠片も無いだろう。

 

 湊周辺は牧草地が広がっているのだが、そちらも現在は主要経路がポ連軍の憲兵によって封鎖され、検問所らしきものが幾つかあるようだ。

 

 沿岸地域を行き来出来るのは実質的に軍の車両のみ。

 急ピッチで進められたのだろう街の手前の丘には固定砲台よろしく。

 戦車がトーチカのように30m間隔でズラリと並べられていた。

 

 街の中心部では今日の宿を止まる軍将校達がようやく一息吐いた様子で建物内へと入っていき。

 

 近場のレストランや酒場に入れる隊は周囲で野宿決定な兵隊に「いいなぁ」という顔をされ見送られている。

 

 街から出てすぐの場所には仮設の野営地が今も建築途中であり、出来上がった端から兵隊達がゾロゾロと詰め始めていた。

 

 観察する限り、後方にも司令部らしき場所はあるかと思ったのだが、どうやら沖合いの戦艦内に置かれているらしく。

 

 野営地にそれらしき高級軍人の出入りが激しい場所は宿以外に見受けられなかった。

 

 そちらからは電磁波がガンガン飛んでいる様子も無い。

 

 シンウンによって撃破された艦隊が連れていた輸送船には戦車が満載されていたらしい……限りなく思っていた通りだ。

 

 半包囲後。

 空からの攻撃と強襲で目を内陸に向けさせておいて。

 海側から上陸。

 速攻で戦車による【統合】の地表全土の制圧を企図していたのだろう。

 

 隕石は海側よりも内陸部の方に落下地点が設定されていたのだが、何故海側に一個も落ちる予定ではなかったのか。

 

 これでハッキリしたとも言える。

 だが、艦隊はほぼ全壊。

 輸送船は戦々恐々、命辛々港まで退避する事となった。

 

 こうなれば、もう陸側から明日にも戦車部隊が【統合】の全面攻勢におっとり刀で駆け付けるという事になるのは自明。

 

 今は兵の統制回復と作戦変更による現地レベルでの調整が行われ、現地司令官からの要求に応えるべく、進軍経路と部隊の再編でもやっているのだろう。

 

 まさか、自分達が上陸前に海上で全滅する恐怖を味わうとは思っていなかったのは海軍も陸軍も同じはずで混乱の収拾を図っている今しか漬け込む隙は無いに違いない。

 

 敵戦力はザッと見積もっても数千人規模。

 近場の湊にも同じような部隊が大量にいる事だろう。

 

 これからその兵隊をザックリ数万人程片付けるわけだが、まったく緊張していない。

 

 それは単純に自分がヤバイものになったから、という事ではなく。

 純粋に師団と戦う必要性が皆無だからだ。

 

「ペロリストの真似事はしたくないが、とりあえず省力化にご期待ってところだな」

 

 自分はベトナム帰りの兵隊ではないし、数百人を機関銃や小銃片手に暴れまわりながら駆逐出来るハリウッド映画の主人公でもない。

 

 なので普通に卑怯で通常ならばテロリストが使うような手を使うというのが最も効率的に敵戦力を削ぐのに適している。

 

 現地の民間人には悪いが、他に手が無いというのも本当のところだ。

 チート完全開放で触手攻撃を全開。

 

 相手を千人単位で戦闘不能にするくらいなら出来るだろうが、その時間すら惜しい。

 

 時は金なり。

 故にやる事は極めて単純に空挺部隊を潰した手品の大規模版だ。

 

 敵前線をすみやかに抜けて後方の予備戦力がいた中間地点で一度もうやったので現在は苦も無く手順を消化するだけで事は成せる。

 

 この戦いの後。

 賞味期限切れとなる可能性が高い種を使うのはエコという奴に違いない。

 

 ポ連の物資集積所からくすねて来た高カロリー食と大量の水分を触手溜りを作って投下。

 

 触手を増やしつつ、数百m港町から離れた海側の岩場より伸ばし。

 敵の接岸場所や桟橋の付近まで侵食。

 栄養と水を送り込みつつ。

 触手の先から人体の神経系を乗っ取る種を放出。

 続いてソレが人が行き交う中で拡散して体内から浸食。

 しかし、今度はすぐに身体が動かなくなるという事は無く。

 

 肺内部に侵食し、同質の種を再生産しつつ、横隔膜を刺激して咳き込ませる。

 

 これで肺から飛び出た空気には種が混じり、数分置きに病を拡散する製造機が一杯量産されることだろう。

 

 咳き込みは初期症状で肺の裏側から脊椎に触手が到達するまでの数時間続く。

 

 この間隔は制御可能なので極めて有用だ。

 拡散が終われば兵隊は寝た切り老人と化してバッタバッタ倒れる事になる。

 

 大は垂れ流しになるが、触手は肉体を保全、代謝機能を掌握するので二週間くらいは何も呑まず喰わず、屋外に曝しっぱなしでも生きられるだろう。

 

 この手品の良いところは潜伏期間が決められて、その間の咳き込み回数が怪しまれない程度、風邪を引いたかなくらいに治まり、気付いた時には全ての部隊が感染しているという時間差での症状が出せるところにある。

 

 感染者が隔離されるよりも早く周辺の部隊間で症状が出回ってしまえば、次に上陸する師団は荷揚げするのも兵隊や兵器を収用するのも容易では無くなるのだ。

 

 感染源と感染経路の特定無しには不用意な事は出来なくなって手足を縛れれば、相手を出し抜く事などチートの塊な個人には容易だ。

 

 現地住民にはトバッチリ甚だしいが、戦闘に巻き込まれて死ぬ可能性が劇的に低くなる事に免じて許して欲しいというのが悩みだろうか。

 

 一応、後でポ連の武器弾薬以外の物資を幾らか渡して賠償する予定だが、それはまだ先の話。

 

 とりあえず、遠目に輸送船から物資の荷降ろしを行う40人程に感染させた後。

 

 すぐに触手を干乾びさせて自切。

 

 少し遠回りに迂回して検問所近くにある駐車スペースの程近くまでやってきた。

 

 そこで今度は先程までとは違い空挺部隊に使ったすぐに動けなくなる方の種を地面伝いに触手を這わせて周囲の兵隊が屯する付近で地表から放散させる。

 

 すぐに男達が身体に異変を感じて自分の身体を見回し始め、人が倒れる度に恐怖の叫びを上げようとして声帯も満足に動かせず、バタバタと倒れていく。

 

 混乱がゆっくりと広がるのを横目に各戦車のハッチへ素早く触手を地面から這わせて展開。

 

 内部に種を流し込んで、すぐに自切。

 外套を羽織ったまま闇を駆ける。

 目的は陣地の一番端に待機する車両だ。

 まだ戦闘をしているわけでもなく。

 普通に入り口を開けて談笑する男達が見える。

 これを狙わない理由も無い。

 緊急を知らせるアラームが鳴る最中。

 混乱に気付いて男達が周囲の様子を窺うのを背後から奇襲。

 

 とりあえず先端を尖らせた極細の触手を直接複数四肢と首筋に打ち込んで身体機能を掌握。

 

 内部に乗り込もうとしていた者達を二人排除して戦車の前に投げ出し、残り一人を入り口から入り込み様に同じようにして首から下を支配。

 

 パタンと上のハッチを閉め。

 外套を脱いで丸め、座席横に放り。

 そっと背後から話し掛ける。

 

「今からこの車両を預かる事になったカシゲェニシ・ド・オリーブだ」

「?!!」

 

 男は髭面の30代。

 

 後を振り返ろうとした頭を触手で網目状に覆ってウネウネと視界端に見えるよう伸ばしつつ、出来るだけ酷薄そうな声で囁き掛ける。

 

「今、君の頭の中にソレが入り込みそうになってるんだ」

「な!?!」

 

「出来れば、言う事を聞いて欲しい。ゆっくりと後退してから、西側の道に進路を取ってくれるかな?」

 

「ひ……な、何がもくて―――」

「おっと、お口にチャックだ。死にたくないだろう?」

「―――ッッッ?!!?」

 

「僕は敵だ。でも、君が勝てるわけでもないし、助けは来ない。その上、周囲はすぐに動き出してこの車両を追ってくるぞ。街に正面を向けて後ろ向きで逃げようか。砲弾で撃破された時が君の死ぬ時なのだから」

 

 無論、こんな説得で相手がどうにかなるとは思っていない。

 まずは心を折るのが寛容。

 

 あまりやりたくなかったが眼窩や口、鼻、耳辺りから細い触手を大量に生やして這わせ、顔を覆いつつ、男をゆっくりと振り向かせた。

 

「ぁあ゛!!?」

 

 心臓が止まりそうな恐怖故か。

 男が驚愕と恐怖に凍り付き。

 

「君がどんな人物なのか知らないけれど、僕は気が長い方じゃない。これを操縦させるのに君の頭を中から弄くるのはとても簡単だけど、出来れば君の意思で動かして欲しいな。今見えてるものが自分の穴という穴から噴出した姿をご家族や友人達に見せるのは恥ずかしいだろう?」

 

 瞳の端に涙すら浮かべて。

 ガクガクと震えながら小さな水音を足元に零した。

 足元に温かい黄金色の液体が広がっていく。

 この世界にホラーゲームとやらが無かった事は良いのか悪いのか。

 何処かのゾンビゲーになら出てきそうなお面は効果的面。

 

(やり過ぎたな……いや、これなら一応は最後まで走ってくれるか)

 

 男を触手の圧力で前に向かせ。

 上にある砲手席に座って男の背中を軽く足先で突く。

 

 すると、もう必死の形相で泣きべそを掻きながら、無我夢中で言われた通りに哀れな犠牲者1号は戦車を動かし始めた。

 

 エンジン始動。

 揺れるし五月蝿いのは諦める。

 

 ミリオタではないので詳しくはないのだが、基本的に怖ろしい馬力のエンジンが付いた鉄の棺桶が走っていて静かなわけがないのだ。

 

 横に置いた外套を来て遮音してもいいのだが、体力を吸われるのは避けたい。

 

(さて、まずは……)

 

 基本戦車は三人乗りくらいの乗り物。

 敵を観測する役。

 機体を動かす役。

 砲弾を装填する役。

 

 だが、現在は動かすものしかいないので敵を観測するのはこちらの役だろう。

 

 閉めたハッチを僅かに下から触手で開けて枝分かれさせ、十六等分にして機体のあちこちに這わせ、触手の先に目玉を生やす。

 

 チートスキル触手とか極めて遠慮したい能力であるが、こういう時だけは極めて有用だ。

 

 汎用性が高く。

 肉体改造と五感の向上は戦場ではBC兵器よりも貴重な仕事をしてくれる。

 戦車の観測機能を生体機能でアップグレードとか。

 正にやりたい放題。

 僕の考えた最強の兵隊も真っ青だろう。

 

(さすがに気付いてくれたか。後は次の港町に向かうだけだな)

 

 相手はこれから血眼になって戦車を追って来る。

 

 しかし、そのどさくさで触手の種の根付く初期症状は見逃され、諸々活発に人が動き回る結果として更に拡散速度は上がる。

 

 お膳立ては整った。

 

「さぁ、マラソンの始まりだ」

 

 これだけでの異変。

 軍後方が壊滅的となれば、さすがに相手も見過ごせるものではない。

 此処からまた十数km先の港街にも軍が屯っているのは明白。

 

 同じ手順を明日の終わりまで十数回繰り返せば、あっと言う間に混乱は拡大するだろう。

 

 今回、目標である【統合】の事に付いて調べが付いていたならば、敵は非耐性細粉などを使う【食工兵】用の対BC装備は殆ど持ち込んでいないと見て間違いない。

 

 此処から先は正に時間との勝負。

 相手がこちらの手品の種を見破って対処するのが先か。

 混乱の中で完全に沈黙するのが先か。

 どちらにしろ。

 あの偉そうな男が出てくるのは確定的だろう。

 

「蛇行しながら逃げよう。そろそろ撃ってくるぞ」

「は、はぃいいいいいいいいいいいい?!!!」

 

 途端。

 ドガンッと左後方の丘陵の一部に着弾。

 土埃が上がる。

 

「こいつの正面装甲はこいつに積んでる主砲で抜けるのか?」

「ぬ、ぬぬ、抜けませんッッ!!?」

 

 少し安堵する合間にも耳元のインカムに連絡が入る。

 

『伴侶殿。【統合】側の機器を使った周辺一帯への妨害工作完了したのじゃ。これで明日が終わるまでは通常の無線は使えんじゃろう。光量子通信以外の口と耳は機能せん』

 

 どうやら黒猫の仕事も仕上がったらしい。

 後方陣地襲撃の第一報の後。

 無線が使用不能となれば、現地を確認する為に誰かが来る必要がある。

 

『それにしても良かったのかや? 最初から封鎖しておけば、周辺を無警戒にさせておけたであろう?』

 

 仮にも広大な沿岸地域の無線妨害。

 

 それに使う大電力となれば、今後エネルギー不足で【統合】から怨まれるのは必至。

 

 ついでに奇襲出来る利点を潰したのは良かったかと訊ねられたわけだが、少なくともこの状況下を乗り切れると自分が思う最善手はこれしかなかった。

 

 触手で操縦席の相手の耳を塞ぐ。

 

 ヒッと声を上げて震えられたが、何かをされるのではないかという緊張の為か。

 

 それ以上の反応は無かった。

 

「無警戒じゃ困るんだ。あの仮面野郎を確実に引きずり出す為にはまず警戒中の軍からの第一報が必要だし、後方を緊張状態に曝してやる必要がある。これであの指揮官の動きも牽制出来るし、後方が直撃されたら手当てしなきゃ不味いのは誰にでも分かり易い軍を動かす動機になる。となれば、戦線から補給が下がりそうな過剰気味の兵隊を引き抜いて即応させる事は十分に考えられるわけだ」

 

『戦力の分散を企図していたと?』

 

「ああ、その時点で後方の種の放散が終息していなければ、敵軍は誘引されつつ感染。機能を停滞させながら最終的にはこちらに追いつく程度の時間で停止。前線の兵隊を薄く引き剥がしながら警戒中の沿岸部を沈黙させられれば、こちらとしては願ったり叶ったり。だが、実際に潰しに行く沿岸国は半数までになるだろうな」

 

『何故じゃ?』

 

「其処からは自然に種が広がっていくのに任せるんだ。とりあえず明日が終わるまでに占領中の沿岸地域の半数に種をばら撒いて、後はそこから直接“天海の階箸”に向かう事になる。警戒中じゃなかったら、こんな五月蝿い戦車かっぱらう必要無いって」

 

『ぬぬ……戦車で警戒中の相手を突破すると?』

 

「無論だ。一つの港に入り切らない輸送船は分散してるだろうが、前線に一番近いあそこに最も多く戦車を置いていたはずだ。なら、此処から先の港にはさっきよりも少数。撃破されそうになったら、乗り換えて追って来る度に種をばら撒く」

 

『頑丈な乗り物が手頃に無かったら大隊規模戦力のど真ん中を警戒されていると分かりつつ、生身で抜けようとしていたわけか。さすが伴侶殿……きょうじんだな』

 

「言っただろ。ついてるって……オレもそうならなくて安堵してる」

 

『確かに……憑いておるのう』

 

 何やら黒猫があちら側で薄らと笑っているような気がした。

 

「相手は伝令かライトの信号辺りでしか情報を伝えられない。車両で伝えに行くなら、そいつには出来れば感染源になってもらう。海から行くとしたら小型艇になるだろうが、海に今の状況でノコノコと出て行く馬鹿はいると思うか? 海の魔物に食われる覚悟で複数の船を出したとしても、伝えられる情報は1日じゃ高が知れてる。現場の指揮官が情報を少しでも早くと襲撃の事実だけ伝えに行かせてもこっちは痛くも痒くも無い。逆に感染者を経過観察したような情報がまともに出回る頃にはもう感染で何処もアウト。つまり―――」

 

『お主が明日の深夜に遺跡に向かう頃には何もかもが終わっておるし、今一番怖いのは直接的に戦う戦力だけと』

 

 こちらの考えを先読みする黒猫はさすが戦略に付いてはある程度説明すれば、大抵分かっているようだった。

 

「さすが黒幕属性。こういう話が分かるのは助かるな」

 

『ついでに後方が病原体で戦わずして遮断された前線は車両や戦車が無ければ、感染を恐れて後方への移動も儘ならず。工作された物資ではまともに戦えもせず、機能も維持できず、孤立。一度大規模攻勢に出たせいで物資の消耗は早く。戦線は維持出来ても停滞。その上、食料は数日分。 出回ってきた食料にも細工済み……正に悪夢じゃな』

 

「自分達の数で押し潰される軍隊なんてザラだろう? 後、オレの銃は敵兵のくしゃみだってだけだ」

 

『カッカッカッ。言うのう』

 

 黒猫が苦笑なのか困った笑みなのか分からない声を出した時。

 ドガガガンと立て続けに機体が上下に揺れた。

 被弾はしていない。

 どうやら地面の大きな岩を踏み砕いたらしい。

 

「次の港を速攻でぶっちぎれるかどうかで計画の進捗率が決まる。自動車化歩兵や機甲戦力の無力化をギリギリ港でやってのけられれば、後は生身の師団なんて相手にならない。此処からが本番だ。そっちの状況は?」

 

『夜間じゃが、暗視装置付きの望遠装置を駆使してみたぞよ。奴らの動きがどうやら一端停止したようじゃ。やはり、後方からの襲撃というのに慌てとるようじゃのう。おお? どうやらある程度の人数が引き返していくようじゃぞ』

 

「誘引は成功か。じゃあ、後はこの追いかけっこに勝つだけだな」

 

 と言っている傍から追って来る戦車の一台がよろけたかと思うと他の併走していた戦車にぶち当たってどちらも横転、停止した。

 

 また、その後方からやってくる軍用車両の群れの一部があらぬ方向へと向かっていったり、急ブレーキで停止したり、背後から追突したりと大混乱し始める。

 

「こっちは港の部隊の追撃を撒けそうだ」

 

『ぬぬ? ぁ~~伴侶殿』

 

「どうした?」

 

『一つ残念なお知らせじゃ。一機だけなのじゃが、やつら小型の飛行機というか頭に“ぷろぺら”を付けた乗り物で飛んでおるやつがおる』

 

「戦闘ヘリか!? いや、断定するにはまだ早いか。どれくらいの大きさだ?!」

 

『ん~~全長で20m程かのう』

 

「……たぶんだが、それに乗ってるのは」

 

『今、チラッと窓にあの鳩面が映ったぞよ』

 

「ああ、そうかい。そうだろうな……はぁぁぁ、現地で組み立てたのか何なのか知らないが、ここからは大変そうだな……」

 

『頑張るのじゃぞ~(棒)』

 

「今、物凄く棒読みされてる気がする……」

 

 未知の敵。

 それも数で劣る可能性もある。

 自分が勝つには常識は捨てるべきだろう。

 

(最悪、次の港で機甲部隊と一緒に撃って出てくるか? それまでにどうにかなればいいが……)

 

 思っていたよりも早く作戦の明暗を分ける戦いはやってきそうだった。


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