ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

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第166話「それでもと言い続けるのなら」

 薬神アスクレピオスと呼ばれる小神の神殿跡。

 遺跡は存外街道沿いの近くの山間部に存在していた。

 

 中規模の祠。

 

 人が一人通れるかどうかという扉が山肌に風化しつつも蔦に覆われて少し開けた森の一角に現れる。

 

 朝方から2時間半。

 

 今日の仕事の大半をサカマツとウィンズに任せて出てきたのだが、何とも風情のある遺跡を前に少しだけ感動していた。

 

 正しくRPGみたいと言うべきだろうか。

 

 無駄に凝った祠には薬の入った壷らしき意匠や医療器具らしき道具が幾つも彫り込まれていた。

 

「こっちニャー」

 

 周囲の雰囲気は悪い。

 少年が物凄く背中を睨んで来る。

 

 ついでに他の少女達も大半が困惑や疑念や諸々複雑そうな感情の視線をビシビシ放っていた。

 

 探索時の前衛らしい猫耳少女は仕事中はさすがに他の事に気を回している余裕は無いのか。

 

 熱心にキョロキョロしつつ、祠の先へと入っていく。

 

 それに付いていくのが何故故にこちらかと言えば、他の連中曰く後には居て欲しくない。

 

 まぁ、ざっくり数千人規模の人間を昏睡させる人物で自分達を人質にして知り合いを脅した人物ともなれば、背後を預ける事が出来なくて当然だろう。

 

「……狭いな」

「狭いで済むかよ……」

 

 毒づいたリヤを含め。

 他の少女達も基本的には身長が170以上だ。

 低重力下での成長の特性なのはたぶん間違いない。

 

 こちらもそれなりに背丈はあるのだが、それにしても自分より背が高い相手ばかりなので小人になったような気もする。

 

「案外、埃っぽくないんだな」

 

 祠の中に入ると自然そんな感想が零れた。

 通路は緩やかに下方へと続いている。

 

 壁肌はまるで切り取られたかのように滑らかで一見して凹凸も見えない均質な石材のようだ。

 

 明かりは先行するクルネの前方に魔術でお約束のような球状の光が浮いているので問題ない。

 

 そのまま歩く事30m弱。

 広い一室へと出た。

 約20m四方。

 

 光の球がクルネの呟いた呪文で増えて四隅の天井へと移動して固定化される。

 

 照らし出された室内は入って来た通路以外の三方向にまたそれなりに大きな通路が見えており、奥にはまだ部屋が幾つもあるようだ。

 

 と、そこまで確認したところでエオナがこちらの前に出て振り返る。

 

「此処が神殿の入り口です。三方向の部屋は全て確認済みで宝物の類は全て回収しました」

 

「それで何処に祭壇はあるんだ?」

「……この下です」

 

 言った傍からオーレがこちらを迂回するようにしてクルネの傍まで行くと。

 

 その手を床に置いて何やら呪文を呟く。

 途端、まるで水を流したかのように接触部分から光が溢れ。

 幾何学模様を象って回路のような刻印が耀きを奔らせていく。

 

「地下か?」

 

「はい。小神の神殿は多くの場合、下に重要な場所を置く傾向にあります。特に祭事の場所は聖堂としてそれなりの領域を確保しなければならない上、神の性質によっては外界から遮断されている事も多いのです」

 

 エオナの言葉が終わった当りで六角形の魔法陣のようなものが床に浮かび上がる。

 

「陣の上に乗るニャー」

 

 言われた通りにするとガコンという音と共に景色が下がっていく。

 

(昇降機の類か……)

 

「ボク、これ好き」

「オレは嫌いだ。このフワッとした感覚が気持ち悪るい……」

 

 フローネルとリヤが相反する意見からか。

 ニコニコと仏頂面のコントラストを描き出した。

 

「アステ。下に着く直前の警戒を」

「うん。分かってる」

 

 拳を握って構えを取ったドラゴン少女が静かに制止した。

 

 咄嗟の判断でどんな状況だろうとも対応してくれるのだろう。

 

 そうして二十秒程後。

 目の前に部屋が見えてくる。

 

 先程の部屋と同じ程度の広さしかなかったが、その先には扉が有り。

 

 天井からは仄かに陽光のような光が一面降り注いでいる。

 

 扉の左端には何やら埋め込み式のディスプレイのような場所があり、電源が入った様子で立ち上がった傍からブルースクリーンに英語が刹那でズラリとスクロールされ、ブラックアウト。

 

 続いて扉が思わずビクッとなってしまうような速度で休息に横へスライドした。

 

「前後に開くように見せ掛けて横にとか」

 

 思わずお茶目な扉の仕様に顔が引き攣る。

 

「オカシイですね。前に来た時はうんともすんとも言わず、開きもしなかったのに……」

 

 困惑するようにエオナが光の消えたディスプレイを見やる。

 

「まぁ、何でもいいさ。入っていいか?」

「え、ええ、クルネ!!」

「はいニャー。七名様ご案な~い」

 

 ササッと懐から装飾の付いた短剣を取り出した猫娘が先行して現在の部屋と同じように明るい先の空間へと入っていく。

 

 どうやら内部は広いらしく。

 幾つも長椅子があった。

 中央の道の先には登壇出来るスペースと祭壇らしき台座。

 

 それからその背後の壁にはディスプレイらしきものが縦長に広がっており、沈黙を保っている。

 

 ステンドグラスでも映し出されるのかもしれないが、どうやらまだ電源は入っていないようだ。

 

 六人で後から付いていって祭壇に上がる左右の階段横まで来た時。

 

 不意に扉が閉まった。

 

『―――よく来ましたね。子羊達よ』

 

 何処か優しげな女の声が響いたのとほぼ同時。

 世界が凍り付いたかのように静止した錯覚に囚われる。

 埃一つ舞っていない室内。

 壁のディスプレイが一斉に点灯した。

 しかし、それに自分以外の誰も反応しない。

 いや、本当に動いてすらいない。

 

『―――待っていましたよ。この時を……ラスト・バイオレット権限の保持者を……』

 

 自分の肉体も動かせない不自由。

 

 声だけ聞こえるというのもおかしな話だが、少なくともこの声は現実にはたぶん刹那以下で伝達されていると分かるが故に意識としては目を細める。

 

『あら? 権限を持っているのに思考補助用のシステムとは直結していないのですね。では、こちらから』

 

 不意に脳裏が明滅したような酩酊に襲われる。

 と、同時に身体から魂が抜け出したかのような錯覚の後。

 自分のすぐ近く。

 祭壇の前でディスプレイを半透明な肉体で見上げていた。

 

『もうお話が出来るでしょう。どうですか?』

『これは……これも科学の力ってやつなのか?』

 

 その問いにコロコロと笑うような声が返る。

 

『あら? 権限を持ちながら此処まで情報を持っていないという事は……この時代の方でしょうか?』

 

『いいや、この世界の始まりにいた方だ』

 

『……脳が認識する映像を電磁的に捕らえて再映像化する技術というのがあるのはご存知ですか?』

 

『そんなのがあるのか?』

 

『ええ、西暦2000年代には不確かながらもMRIのような機材さえあれば、AIの性能次第では可能だったのです。まぁ、当時の技術力では精度に難がありましたが、終末期の委員会内部では他者の思考を電磁的に記録してデータベース化する事で現在の変化と照らし合わせ、ほぼリアルタイムでの思考を数億種類あるパターン的に推論するシステムが出来ていました。つまり、思考の伝送を可能にしていました』

 

『映像や思考を機械側で観測、データベースの情報と比べて、推論精度を上げるのか。SFだな……でも、それを脳にどうやって伝えてたんだ?』

 

『思考補助用のシステムが受け取った情報を網膜投影で』

『結局は五感使わなきゃならなかったのか。アナログだな』

 

『あはは、その通りです。それにしても随分と文化に明るい時代だったのですね……貴方の生きた時代は……そうですか。SFなんて言われるとは思いませんでした。貴方にとって、我々はフィクションの世界の中の住人なのですね』

 

 苦笑は何処か自分と違う時代を生きる相手への自嘲が含まれているような気がした。

 

『お前がアスクレピオスか?』

 

『はい。そのように今は名乗っております。ラスト・バイオレット権限保有者の方』

 

『エニシだ』

『では、そうお呼びしましょう』

 

『で、この幽体離脱で話せる理屈が少しは理解出来たが、オレの思考データベースなんてあるのか?』

 

『専用のデータベースは高資源性のリソースですが、人類規模ならば汎用データベースが適応されます。ですから、思考速度での会話のような事は一応可能なのですよ』

 

『だが、それって機械同士の推論情報をやり取りしてるだけなんじゃないのか? その上、脳機能自体を弄れなけりゃ、思考速度での会話なんて無理だろ。ぶっちゃけ、人格の応答パターンみたいなのが機械の上で遊んでるに過ぎないんじゃないか?』

 

『ふむ。ご自覚が無いようですが、今の貴方の思考速度は少なくとも小型のマシン並みはありますよ』

 

『何?』

 

『“神の屍”に準拠する遺伝保存用のゲノム編集体は殆どの能力において一定水準以上を確保するように設計されていました。能力制限は掛かっていますが、過去の人類よりは脳機能的に千倍以上優秀です』

 

『……人間の本質はまるで変わってないように見受けられるが?』

 

『ああ、そこに気付くとは天才ですね』

『褒められてないのは分かる……』

 

『まぁ、それは人類の業というものでしょう。人はいつの時代も人という事です。ちなみに今、こうやって話しているのは機械同士ではありません。実際に貴方の思考と私の思考が光速に近しい速度で遣り取りされています。思考そのものもそれなりに速いですが、伝達のタイムラグが情報の拡散速度とほぼイコール。プラットフォームとしてサーバーのプログラムが介在してますが、大抵マシン言語並みの速度でしょう』

 

『入出力の情報量を制御してるのか?』

 

『御明察。ちなみにもう機械による推論のような無粋なものは使われていません。貴方相手には場から直接干渉するこちらの方がいいでしょう』

 

『何だって? 場ってまさか……』

 

『ゲノム編集で有機物によって構成された場に干渉する器官。そういうものがあなたには備わっています』

 

『ッ、オイオイ……それって』

 

『大戦終末期に月と地球の天才が“万物の理論”を開発した。そして、その理屈をゲノム編集に応用出来るようになった。言っている意味は判りますか?』

 

『メンブレンファイルのシステムを有機物で置換。小型化したって言うのか?』

 

『そうです……脳におけるマスターマシン機能の獲得……場に干渉し、場から情報を得る機関が開発されたのです』

 

『……そうか、夢の理屈はそれか。その上、神様みたいな力まで手に入ったとするなら、そりゃ委員会も驕り高ぶるだろうな』

 

『文字通りに夢を見ていたのですよ彼らは……夢、いい言葉ですよね。可能性に溢れている』

 

『………』

 

『そこに辿り着くまでに人類の脳内情報の電子化作業は困難を極めました。高分子ナノマシンの開発頓挫は数万年レベルで脳機能の抽出作業を停滞させましたから。更に脳機能の拡張にゲノム編集と有機系回路をどちらも組み合わせての試行錯誤が数万年。気の遠くなるような研究時間も戦争中ではおざなりでしたね』

 

『人材の質が下がってたって委員会の情報は知ってる』

 

『私もそういう人材の一人でした。専門は脳の電磁観測技術精度の向上。ですから、脳の反応を経験則としてデータベース化し、脳の能力拡張に電子機器に観測され易い仕組みを取り入れたりする施策もした。でも、それらは殆ど無駄になりました』

 

『何でだよ?』

 

『貴方の推論した通り、マスターマシンの能力を備えた人類の発生は技術階梯を一段階昇る出来事、驕るに十分な成果だった。過去の遺物、旧人類、現存していた人類の遺伝情報保存用の自立躯体群……それら全てを不要と断じられるだけの成果だったのです。委員会自身もその類にしか過ぎなくなっていたというのに』

 

『それが国家共同体を滅ぼそうとした最たる原因か?』

 

『ええ、マスターマシン、メンブレンファイルの万能化。その理屈が応用された肉体を持つ人間が個人の脳機能のみであらゆる物理現象に干渉し得るという現実が委員会に最後の決断を誤らせた。そして、全ての情報は秘匿されてしまった……自分達の優位性を永劫のものとする為に……』

 

『だが、幾ら能力があっても個人でマスターマシンと同等の能力は使えないだろ? そこら辺はどう考えてたんだ?』

 

『確かに複雑精緻な精度を要求される事象の発現は無理ですが、幾らか補助する機械を使えば、マスターマシン無しでも小規模なら万能なる力の行使は可能だったのです』

 

『そうか。疑問が氷解したな。この月面の連中が使う魔術は……』

 

『いえ、彼らは未だマスターマシン無しにはそのような事が出来ません。今の話はあくまで最高位の委員会幹部達と二人の天才のみに許された神の力ですよ』

 

『何? いや、待て……オレは今の身体を手に入れる前に一度それを使ってるぞ。それも日本帝国連合に残っていた身体でなんだか……!』

 

『あら? それは不思議な……エニシさん。貴方、一体……』

 

『カシゲ・エミの息子だ。たぶん、それが関係ある』

 

『―――!!?』

『どうやら知ってるようだな』

 

『ああ、彼女の息子さんとは……中々、面白い状況のようですね』

 

『知ってるのか?』

 

『ええ、最高神【運命神《ホイール・オブ・フォーチュン》】………彼女はこの恒久界においてそう呼ばれます』

 

『中二病過ぎるな。母さんも生きてりゃ、きっと困惑するぞ』

 

『そうですか。ですが、自分の知らない間に未来で神と崇められる人物なんて、そんなものかもしれませんよ』

 

『違いない。そして、オレは神様の息子扱いか』

 

『ラスト・バイオレット権限が彼女の親族に渡っているという現状ならば、まだこの世界にも芽があるのかもしれませんね』

 

『何?』

 

『カシゲ・エニシさん。貴方に頼みたい事があります。亡霊からこの世界への最後の贈物として』

 

『どういう意味だ?』

 

『……私は月面に残った委員会人材。その生前情報から構築された仮想人格、応答パターン。つまり、先程言った高資源性のデータベースの中身に過ぎません。ですが、もはや廃神……壊れ掛けています。だから、殆ど権限も力も無い。しかし、それでもこの世界の生みの親として子供達に何かをしたいと思うくらいには……“人間”なのですよ』

 

『機械知性云々を語るまでもなく。オレはお前を個人として話してる事は教えておこう』

 

『ありがとうございます。それで貴方のような御優しい方に頼むのも気が引けるのですが、この世界を救っては頂けませんか?』

 

『この世界が滅びそうだってのか?』

『ええ、色々ありまして』

『色々、ね……』

 

『報酬として神のコード……私の凍結された高度管理者権限を御譲りします。それがあれば、あなたはこの世界の根幹を成すシステムに接触しさえすれば、ほぼ全ての情報を手に出来るでしょう。また、最高位権限を持ってしても、個人アカウントのロックは物理破壊以外で破るのは不可能ですが、クローズド・システム内だろうとその元管理者であった私の権限を使えば、アクセスは可能です』

 

『……仲間を裏切るのか?』

 

『その内に私がコミュニティーから放棄された理由も分かるでしょう。あなたが月面にまで到達した理由が何かは分かりませんが、彼らにとって私は邪魔な存在になってしまいましたから』

 

『仲間割れか。一応、こっちは神様の正体とやらにある程度当りを付けてたんだが、生きてる人材はいるのか?』

 

『生きているかどうかは個人の主観の問題になります。存在として確定しているかと言われれば、YESと答えられますが』

 

『フワッとし過ぎだろ?』

 

『もう実は停止寸前で……処理能力も限界に近くて……このような曖昧な物言いになった事はお詫びします……でも、巡り合えて良かった……』

 

 少しずつ声にノイズらしきものが混じっていく。

 

『オイ?』

 

『委員会を導いた伝説の彼女。その時代に生きた、彼女の血脈と会話出来るなんて……ここまで残ってきた甲斐はあったかもしれません』

 

 声が掠れ始める。。

 

『私が遺した幾つかのプランをお渡しします。他にも知り得た限りの情報を保管したストレージの場所も。貴方の望みは存じませんが、きっと役に立つ事でしょう』

 

『アスクレピオス……』

 

『アシヤ。本当の名前はエマ・アシヤと言います……医療閥の爪弾き者だった私が此処まで希望を繋げられた事、忘れません……運命の彼女。その血を引きし、蒼き瞳の貴方……古き縁の導きに感謝します……ふふ、それでもと言い続けた事がこうして実を結ぶなんて、嬉しい誤算でしたね』

 

 喋るだけ喋った声がノイズの波に埋もれていく。

 そして、ふと気が付けば、自分の肉体に戻っていた。

 

「これより探索を開始しますが、いいですか?」

 

 エオナが来た時の位置から動かず。

 こちらに訊ねてくる。

 

「あ、ああ、問題ない。しばらく探索して見付けたモノを報告してくれ」

 

「?……了解しました」

 

 僅かに呆然となった様子を不審に思われたのだろうか。

 そのまま、六人全員が聖堂の中を探索し始める。

 

 十分程で探し切った全員が見付けたのは小型の端末らしき円柱型のグリップのような握りの付いた装置が一つ切り。

 

 それ以外は何も見付からなかった。

 

「空振りニャ~~。神殿の癖に医療用の道具一つ落ちてないとかどうなってるニャ……ぅう、タダ働き!!」

 

「コレ、何だろう?」

 

 フローネルの差し出した端末を受け取る。

 脳裏には幾つかの情報が既に存在している。

 使い方は単純。

 手前に握って持つだけ。

 

 すると端末の幾つかの表面がスライドして、小さなレンズが複数露出し、ホログラムで画像を映し出す。

 

「な、何だ!?」

「な、何してる!?」

 

 アステとリヤが思わず仲間達を下げさせた。

 

「……皇家の秘術……これは―――」

 

 全編英語の文章。

 

 その内容を読めば、それが確かに希望の類なのだと分かった。

 

 この端末が何処から情報を引き出しているのかも理解出来たので後で色々と確認しなければならないだろう。

 

 すぐにソレを懐に仕舞う。

 

「此処にもう用は無い。帰るぞ。勿論、報酬としてあの真面目神官の部下を何人か起こそう」

 

 いきなりの事で警戒されている。

 だが、その仲間達を置いて、エオナが前に出てきた。

 

「目的のものは見付かったようですね」

 

「ああ、重要なものを見付けた。お前らには感謝しなきゃならないかもな……これでオレの予定が大分楽になる。さっさと戻って、次の開戦に備えようか」

 

 一人で歩き出せば、慌てた様子でエオナを筆頭に全員が付いてくる。

 

(神様とやらは血も涙も無い連中だと思ってたが、案外人間らしいんだな……アンタの望みは少なくとも考慮しよう。アスクレピオス……いや、アシヤさん)

 

 その日、訓練を途中で切り上げた現地軍を再編しつつ、地域の境界へと足を進めた。

 

 早朝まで残り3時間という状況で街道沿いの山林地帯で停止。

 

 神官達を足止めするのに焼き払った山林の両端に部隊を二つに分けて陣取らせ。

 

 通常戦力の鎮圧用に用意しておいた武装をその場で倍々に増やして装備させ待機。

 

 山賊らしい格好のウィンズの精鋭とサカマツの部下数十人を引き連れて街道のど真ん中で休憩。

 

 まだ訓練も終えていない兵達だが、再編して抽出した際に纏めた戦闘向きではない人員で構成する料理人部隊が活躍。

 

 さしすせそと基礎のいろはを教えたのみだったが、それでも糧食の質が改善した結果か。

 

 戦意をある程度回復させる事には成功したのだった。


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