ごパン戦争[完結]+番外編[連載中] 作:Anacletus
キリキリと脳が熱ダレしたようなハードディスクが高熱に悲鳴を上げているような感覚に吐き気を堪えながら、目の前を見る。
「何だ―――これは!?」
滾々と紅の泉が湧いている。
泥濘の奥から溢れ出している。
(夢でも見てるのか? いや、この感覚は……)
空からリンゴーンと錆び付いたような鐘の音がなった。
カチ、カチ、カチ。
世界の果てから響く音色が世界を揺さぶり、全てを制止させる。
自分に剣を向けている三人の男達。
ウィンズ、サカマツ、アウル。
今、此処にいるはずの無い男達が足の吸い込まれそうな
憎悪に顔を歪めて、こちらを聖剣、魔剣と呼ばれる類のソレで穿とうとしていた。
しかし、その最中で時は止まり。
【XKシーリング開始。XKシーリング開始。収容違反が確認されました。ワールド・バックアップ・ロード。特別収容プロトコルが開始されました。不適切なMAPとオブジェクトを再配置。全情報《データ》を誤差0.00034%以内で再々構築。ご迷惑をお掛けしますが、ゲスト、セミ・ゲストの
全てが紅に染まった山の上。
機械音声が響く。
新鮮な死体の頂点で見える限りの光景が紅の中で芥子粒のように分解されていく。
人も周辺の瓦礫も街も全てがただの紅の輝きの中へと没していく。
呆然としているところで脳裏に魔術での通信が入った。
『婿殿!! 婿殿!? 聞こえているかや!? これは拙いぞよ!? こちらの勘が告げておる!! 婿殿の現在位置が
「ヒルコ!? これは!!? 一体何なんだ!?」
『分からぬ!! だが、
その声とほぼ同時に目の前にカチカチと音をさせて、ただの紅の山だった奥底から四体の人型が噴き出すように吐き出され、その形を取っていく。
【御子様。ご無事ですか?】
【どうやら、始まってしまったようじゃのう】
【……今回は
【ふむ。やはり、物理法則は通用しない、か……】
こちらを知っている存在。
四柱の神々。
タミエル、マスティマ、アザゼル、アラキバがこちらを囲んでから何やらコードを使ったのか。
一瞬にして全員一緒の高速飛翔へと入った。
神様に運ばれながら、紅の燐光で埋め尽くされた大地と同じ有様を見つめる。
様々な場所が斑に覆われている様子は正しくバグったゲームを神《PL》の視点から眺めるようなものとも思えた。
「お前らはこの状況を理解してるんだな? 一体、こいつは、この状況は何なんだ?」
それにタミエルがマスティマを向く。
すると、老人は頷き。
周囲が僅かな風音も光さえも消え失せた暗闇と化し、内部の正面に映像が浮かび上がり始めた。
其処には今と同じ光景が展開されている。
世界が紅に沈む。
その最中で一匹の巨大な蜥蜴の化け物と紅の燐光に染まった人型のようなものが対峙していた。
タミエルが静かに語り出す。
【これは初めて蜥蜴達が反旗を翻した時の記憶です。この時、神格総数の内、83%が過去の者達の遺物を使う蜥蜴達の反撃で存在を抹消されました。辛うじてバックアップされていたデータからの復元は為されましたが、奴もまた出て行かざるを得なくなった……】
「……一体、連中は何をした?」
蜥蜴が紅の光に呑まれながら、咆哮を上げて消えていく。
その光景を見つめながら訪ねる。
【物理法則下において生命活動の停止が不可能なオブジェクト。光学的に観測不能の
「ッ―――?!?」
その言葉よりも驚くべき事が一つだけ。
そう、一つだけあった。
【やつは言っていました……最古典物理学におけるエーテルとは正しく
ソレは幼くも見える全裸の幼女だった。
【この映像に見えているのは例外的に発生した財団における
自分の背丈よりも長い黒髪で。
薄らと瞳の虹彩が銀河のようにも輝いた誰か。
【だから、ソレを研究し、能力を
「そのやたらと面倒なオブジェクトはどうしてこの形を取ってる」
【この形?】
タミエルの前で思わず溜息が零れた。
(これは悪い夢……で済ませられたら……どんなに良かったんだろうな……オレの知らない秘密……この世界の真実……その一つだってのか。コレが……)
この世の中にこんな
其処には確かに瞳だけが普通のものとは違う。