ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

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第286話「明日を語るは夕闇で」

 

「皆さんにキャベツモヤシニンニクマシマシカラメチャーシューハチマイで」

 

『はいよ』

 

 屋台ラーメンなのに家系らしい。

 

 50代くらいの店主が合計8人の為に次々にラーメンの準備を取り掛かり始めた。

 

 全員が外に出た粗末な安っぽいプラスチック製の長テーブルに椅子の上だ。

 

 お冷はセルフサービス。

 

「あ、店主。オレの分だけ煮卵と出来れば、麺固めで。それと替え玉二つ用意しといてくれ」

 

『あいよ』

 

 適当にお冷を横のリエに注がれたので口を付けて一息吐く。

 

 テーブルの反対側には八人が詰めており、少し狭そうにしながらも死に装束らしいクッソ高そうなスーツで脂汗を浮かべていた。

 

 例外はこちらの正面中央の現内閣総理大臣と官房長官くらいだろう。

 

 さすがに与党の大物。

 

 こちらが一般人には単なるパーカー姿の少年にしか見えないというのに一点の曇りも無く静かにこちらを見定めていた。

 

「それにしても行きつけが屋台って渋いな。それとも近頃の日本の女子高生は毎日放課後に皆で家系ラーメンを喰ってるのか?」

 

「そんなまさか。友達の受け売りですよ。気に入ってます。ただ、こんなご時世なので休業しようかって話を聞きまして。じゃあ、店舗を出す場所を無料で私が死ぬまでお貸するので今日一席設けさせて下さいと頼んでみたらOKが……」

 

「此処、都内の一等地だった気がするけど、気にしないでおこう」

「はい。気にする程の事でもありませんよ」

 

『お通しになります』

 

 店主が八人分のラーメンの具材で作ったらしき小皿を持って来る。

 

 どうやらポテトサラダらしい。

 

 チャーシューと野菜がトッピングされたソレを割り箸を割って一口喰えば、何とも懐かしいというか。

 

 こういうのでいいんだよ、的な味がした。

 

「話を始めさせて貰ってよろしいか? ファースト・クリエイターズの黒蒼将カシゲェニシ殿」

 

 60代の官房長官に結構と頷く。

 

「では、此処にディナー・ミーティングを始めさせて頂きたい」

 

 すると、まず尖峰を務めたのは防衛大臣だった。

 40代後半の3期目。

 中堅所の軍事通とネットでは持て囃されている人物だ。

 

 まぁ、その頼みの綱の自衛隊の精鋭部隊や最新型航空機は諸々傷だらけ、戦闘機に関しては死人こそ出ていないが全部オシャカである。

 

 恨みがましい視線になっていないだけ、評価出来るかもしれない。

 

「まず、始めにあなたが今現在世界で起こっているほぼ全ての事件を引き起こしているファースト・クリエイターズのトップという認識でよいか確認を」

 

「その通りですよ。石詰彼方(いしづみ・かなた)先生」

 

「……あなたに先生と呼ばれるとは思ってもいませんでしたよ」

 

「オレは別に偉いわけじゃないですから。日本国民が選挙で選んだ人間と比べたら、勿論のように一般人でしかない」

 

「一般人……一般人が我が国の最新鋭戦闘機の半数以上を破壊し、パイロットまで助けた挙句に陸自の最精鋭の自信と誇りを粉々に打ち砕いたとするなら、随分と大した一般人だ」

 

「防衛大臣」

 

 その皮肉を官房長が嗜めた。

 

「失礼。それではこの前提でお話を聞かせて頂きたい。黒蒼将カシゲェニシ殿。あなたは何故、我が国を……いや、我が国のみならず世界の全ての国家に対して、このような争乱を巻き起こしたのか。それを教えてもらえないだろうか」

 

「人類が十万年後に物理的に灰色の世界で人間とは言えない姿で生き残っている、と言ったら、あなた達は信じますか?」

 

『それは……』

『未来シナリオか』

 

 ざわつく大臣達が恐らく幾らか予想していた幾つかの内の一つが現実だと知って、物凄く渋いが、何とも言えない顔となった

 

「……あなたは未来人なのか?」

 

「ええ、これから半年後に第三次世界大戦が起こります。いえ、起こったと表現するべきですか。そして、その後の世界はその当事者達と人類の核戦争で多くが死滅。以後、人口を減少させながら十万年近い戦争が続く。結果として人類は皆、ゲノム編集の極致である人型人造躯体として生き残り、何も食えない世界で戦争が終わっても悪びれもせず、また地獄のような戦争を続けていた」

 

「その未来を変える為に来たと?」

 

「いえ、これは純然たるオレの我儘です。そもそもオレの来た未来とこの世界の未来は既に袂を別っている。オレ自身もこの時代の人間のコピーに過ぎない。言わば、これは単なる未練ですよ」

 

「未練……未練であなたは世界をこの混乱のドン底に叩き落したのか?」

 

 僅かに防衛大臣の眉間が険しくなる。

 

「政治家の皆さんには詳しい技術的な説明は省きます。結果だけ言えば、此処はオレが知っている時代ではあっても、オレのいた未来には続かない世界。でも、オレにも人間らしい感情くらいはあった。だから、第三次大戦が確定している現在に対して、僅かばかりのお節介を働いた。それだけなんですよ」

 

「ッ、それで全てが許されるとでも?」

 

「議員の先生方。オレは単なる未来人だが、単なる未来人だから、この世界に本当の意味での執着を持っていないから、此処までの事が出来たと教えておきましょう。許される、許されないというのはこの世界の中に生きる人々が決める事であって、オレのような部外者が語っていい感情の類ではないでしょう」

 

「……あなたの話は分かった。だが、どうして魔術師やオブジェクトと呼ばれているらしい、あの恐ろしいモノ達と戦ったのかお聞かせ願いたい」

 

「人類の消滅する理由は大まかに現在、三通りしかない」

 

 割り箸立てから三本取り出して総理の前に三本並べる。

 

「一つ。オブジェクトの暴走」

 

 バキリと指で折る。

 

「二つ。世界人口を養えなくなった場合の戦争」

 

 バキリと今度は更に強く粉々にして折る。

 

「三つ。二つ目の理由が技術的ブレイクスルーで突破出来なかった場合」

 

 三つめの割り箸は軽く指で突いて魔術コードで木屑にする。

 

「オレのこの世界の教育プランは主に魔術での人類の技術力強化。更にオレの技術の一部解析による進展。最後に魔術師達を事前戦力化しての大戦での敵対者への抵抗戦力にするという三本柱で成り立っている」

 

「教育……つまり、未来で人類が絶滅する理由を潰し、第三次大戦に生き残らせる為に魔術師達の存在を公にしたと?」

 

「話が早い。そして、今あなた達自身が証明している。魔術は大いに役立ったでしょう?」

 

「………」

 

「一つだけ真実があるとするなら、オレはこの世界を少なからず尊重してるって事でしょうか」

 

「尊重?」

 

 防衛大臣の瞳が細まる。

 

「別に最初から全てオレが解決しても良かった。何もかもをあなた達が知らず、世界を勝手に変えて、その事を誰にも悟られず、その上で状況だって全部コントロールする事は可能だった。でも、それでは何も解決しない」

 

「全てを自分で解決出来ると言いながら、何故それでは解決しないと?」

 

「今現在の人類がオレが全てを解決した後も普通に生存していくとして、どれくらいの年月、絶滅せずにいられるか。お教えしましょうか?」

 

「どれくらいだと言うのか?」

「精々が1万と数千年です」

「な?! 第三次世界大戦後の世界よりも短いと!?」

 

 僅かに議員達へどよめきが奔る。

 

「理由は様々ですが、最終的な理屈は単純だ。人間が、何も、変わらなかった。たった、それだけの事です。今のまま人類が発展しても、第三次世界大戦を行っていた組織が戦争をしていた頃よりも短い時間しか生き残れない。これは人類が終末期に手にした未来の予測演算システムが導き出した厳然たる事実です。何故、戦争が起こった方が長生き出来るのか? これもまた理由は単純だ。人々が団結し、その力を結集して、あらゆる理不尽に対抗し、生き残ろうと足掻いたからだ。社会体制や主義主張の問題じゃない。マインドが変わったんですよ」

 

「―――まるで三文SF小説みたいな話ね」

 

 思わずなのか。

 女性議員が皮肉った笑みを浮かべる。

 

「一分で終わる話をしましょうか。あなた達に分かり易く言うと今の人類は絶滅に突き進んでる賢い猿と何も変わらない。火の使い方は知っていても、猿山の天辺を争っているから、最終的には餌も得られずに死んでいく」

 

「「そんなの納得出来るわけない」」

 

「!?」

 

 女性議員の言葉に被せる。

 

「オレの話はこんなところでしょう。皆さんが世界の行く末を思ってオレに関して出来る事は何も有りません。その実力も無ければ、それを止める理由も無い。オレが動かなければ、この世界は今から地獄の業火に焼かれるか。それとも大戦を前にして滅びるか。あるいは純粋に実力不足で第三次大戦を再び繰り返し、二の前を演じるだけだ。一切、あなた達が納得出来る話は出来ないし、それを教えてやれるものでもない」

 

「……この国の代表として訊ねたいのですが、いいですか?」

 

「何ですか?」

 

 60代で総理となった少し腹の太い精悍な顔立ちの男がこちらを見やる。

 

「君は自分をコピーだと言った。君は日本人なのですか?」

 

「ええ、日本人ですよ。ちょっと海外暮らしが長かった以外は日本文化を程々に愛してる何処にでもいたはずの子供だった」

 

「だが、それでも未来には君の心が残っていた。それがどのような技術かは分からない。けれども、君はその心で、その想いで我が国にまでやってきた」

 

「ええ」

 

「何故、君は人を救ってまで世界を変えようとしたのか。それが知りたい」

 

「人を救ってまで?」

 

「君は大勢の人を救った。それこそ有史以来、あらゆる宗教の救世主も無し得なかった偉業でしょう。この混乱の最中でも事件や事故で死人が出たというような話は聞かない。それがいつもならばデモで多数の死傷者が出るような国にすらも……だが、考えてみれば、オカシイ」

 

「オカシイ?」

 

「君にとって此処は未来と繋がらない過去。本当に執着する程の場所でもない。なのに、君は自らの身を晒し、自らの力を以て、数多くの破滅の可能性と相対した。君がどれだけ強いのか。我々には到底計り知れないのでしょう。ですが、そうだとしても情報の中には君を殺せそうにも思えるモノが幾らでもあった。それを君は無論のように知っていたはずだ。そこまでして、この世界を救う理由が無いはずなのに君はこの世界を自分のやり方で救おうという」

 

「………」

 

「我が国の事もそうだ。あの数日前の地震前後。我々は彼女の家から日本の半分が沈む可能性を聞かされていた」

 

 横を振り向くと澄ました顔の少女が口の端を僅か愉快気に歪ませていた。

 

「だが、蓋を開けてみれば、我が国は逆に浮上し、国土を広げ、その被害もこれ程の大隆起が起きたにも関わらず、殆ど無かった。事故や事件すらも殆どだ」

 

「………」

 

「日本人であった君が、未来人として過去に来た君が、どうして執着もしない世界に、祖国に此処までの事をするのか。その原動力は何処から来るのか。私はそれを知りたい。答えて、頂けますか?」

 

 溜息が零れた。

 

 丁度、ポテトサラダも尽き、店主が其々の席にラーメンを運び始める。

 

「オレがいた未来は地獄だった。でも、それでも愉しく暮らしていけるようなところだってあった……オレは運が良かったんだろう。それはオレの下に転がり込んできて、この時代にいた時よりもずっと日常は充実してたかもしれない。でも、此処に来て思ったんだ……オレはこの世界にまだ何一つ残してない。為してない。ただ空虚に生きていただけだった事を……思い出した」

 

 議員達の瞳がこちらを向いている。

 

「これはオレの我儘だ。その為に多くの人間に卑劣で卑怯な事もしよう。だが、オレの為したい事に人の死は入ってない。勝手な話だと思うだろうがな」

 

「………」

 

「オレはあんたらから見れば、大きな力を持ってるように見えるだろう。だが、これは本来全てが人類のものだ」

 

「人類の?」

 

「第三次世界大戦において、どちらの勢力も人類の永続の為に戦った。そして、敵として互いを認め、その脅威から生き残る為に叡智を結集し、その力の限りを以て戦い抜いた。勝敗は関係ない……後に残された技術と知識は全て先人達が遺した生き抜く為の術だ。無論、非人道的なデータの上にある技術だって幾らもあった。でも、今必要な連中の為に使う事をどちらの陣営だろうと望むだろう。オレの力は本来、その為にこそある。そして、それはオレが為したかった事を為すだけの力となった」

 

「君は世界を救いたいのですか?」

 

「いいや、オレが知ってる誰かが今日と明日を不自由なく生きて行けるだけの世界が欲しい。そこには国家も個人も無い。だが、それは与えられたものなら、長続きしない。それはオレじゃなく、アンタらが自分の手で勝ち取らなきゃならないものだ……そうしなければ、オレの願いはきっと叶わない。オレは単なる状況の提供者だ……その中で最善ではなくても未来を選び取っていく事が出来れば、人の心は変わる……それが善きにしろ悪しきにしろ……人を先に進ませるだろう。今日よりも長く、明日よりも遠く……」

 

 もう言葉は無かった。

 

 総理以下大臣達は何とも言えない顔をしていた。

 

 それもそうだろう。

 

 世界を混乱の底に落した男が未来人で世界を救ってやるとか言い出した。

 

 これが笑い話ではない理由が山盛りの状況で一個人の我儘が世界を激変させる理由として語られたのだ。

 

 否定しようにも否定したところで意味は無く。

 肯定など彼ら為政者には到底出来るはずも無く。

 罵倒なんて力関係から自重せざるを得ない。

 

 しかも、湯気を上げるラーメンはもう目の前に並んでいて、語る事は尽きたのだ。

 

「さ、話はお終いです。納得出来ないとしても、コレ食ったら帰って下さい。明日からこれでも忙しい身なもので。こちらも食べたらお暇させてもらいます」

 

 口調を戻したら、総理が何気なく訊ねて来る。

 

「明日からお出かけですか?」

 

「この世界に残った最後の大問題とちょっと戦って来ないとならないので。地球の裏の出来事……一日ゆっくりして明後日の新聞でも見てれば分かりますよ」

 

 割り箸を開き。

 

 山盛りのキャベツとモヤシのラーメンを見る。

 

 金色の油を纏う野菜達。

 

 芳醇なスープと濃厚な背油と香油、焦しニンニク。

 

 更に油で熱く熱され甘くなった葱やスープに融け込むかのように食み出るチャーシューが夕闇の中で照り輝いている。。

 

「頂きます」

 

 野菜を一口。

 

 それだけで火傷しそうな熱さと野菜の甘味とシャキシャキとした歯応えが溜まらない。

 

 野菜を数口後に、出て来た焦し葱の訃海とニンニクとスープが混然一体となったスープに被たる麺を真上に伸ばし上げ、喰らう。

 

 啜るだけで今日のカロリーは確実にオーバーだろう代物。

 

 しかし、美味い。

 

 そこに蓮華でスープを流し込めば、野菜、麺、スープの三位一体が宇宙となる。

 

 添えられたメインであろうチャーシューを一枚箸の腹で折って上げ、喰い付く。

 

 雅に至福の一時。

 だが、此処で最初の驚きに意表を突かれる。

 ポイントはチャーシューが鶏肉である事か。

 

 しっかりとした脂身と赤みの旨味が豚とは違ってサラリと喉に流れ込んで来る。

 

 その油っぽさを野菜で和らげ、麺を啜り、スープを喉に送り込めば、止まらなくなった。

 

 今の自分はこの一連の動作をする為だけのマシーンになったと言っても過言ではないだろう。

 

 此処で食べている間に伸びないのが太縮れ麺の良さか。

 

 また、醤油ベースでありながら、鶏がら、野菜、魚介を取り入れたスープが油を旨味に昇華しながらもクドイ味にはさせていない。

 

 その中心となるは恐らく柑橘系果物の皮から取った油分だろう。

 

 それもスープの底に溜まるようにあまり混ぜられていない。

 

 ドロリとした油を流し入れて蓋をしているのだ。

 

 これが箸を進める毎にゆっくりとスープ上に浮上して、他の油と混ざり合いながら、香気を奔らせ、食べる程にクドサを緩和してゆくのだ。

 

 またスープをレンゲで飲む程に箸が進むようにもなる。

 

 チャーシューが尽きる頃にはあれほど大量に存在していたキャベツもモヤシも存在せず。

 

 油の混じり合うスープと僅かな麺だけになっていた。

 

 それも一瞬の箸の動きで口内に消える。

 此処で一度、残しておいた卵を齧る。

 

 すると、中は半熟でありながらしっかりと味の付いた濃厚な黄身が舌をシットリと愉しませる。

 

「替え玉二つ」

 

『はいよ』

 

 ザッと湯切りされた麺が二つ分。

 碗で出され、それを溜まらずに中へ投入。

 

 最後のラストスパートに掛け、堅くではなく少し柔らかく仕上げられた麺がスープを僅かに含むのを待って口に運べば、そこで気付く。

 

(麺が細縮れ麺になってる、だと?)

 

 スープを吸い上げる速度が速く伸びるのも早いが、最後のラストスパートで食べ進める者達には丁度良い太さだろう。

 

 ついでに麺そのものには前のドッシリした太麺には無かった繊細な風味があり、打ち方も小麦粉も変えて、アッサリした麺に仕上げてある

 

 麺がしっかり湯切りされているのでスープが薄まる事もない。

 

 最後までスープを啜り切ったら、ジャスト12分。

 

 ボリュームの割りにきっと完食するものは多いに違いないコッテリなラーメンは案外アッサリと胃の中に納まったのだった。

 

「どうですか? 結構、良いでしょう?」

「ああ、御馳走様。もし機会があったら、また来よう」

 

 少女がこちらよりも幾分か遅く完食しつつある少しスープの油で汚れた口元で微笑む。

 

「それはようございました。では、またの機会をお待ちしてますよ。親愛なる君」

 

「その君君言うのは止せ。オレは高貴な身分でも無けりゃ、お前にそう言われて悦ぶような変態でもない」

 

 クスクスと袖で口元が隠される。

 

「付くぞ?」

「ええ、前はよく。でも、今は食べ慣れましたから」

 

「ダイエットしたくなったら言ってくれ。テレビの通販よりは簡単に痩せさせてやる」

 

「そのお気遣い。大きなお世話ですよ。それがこの世の創り主だとしてもです」

 

―――!!?

 

 議員達が固まる。

 

 少女から悪びれもしないウィンクをされながら、肩を竦め、その場から跳躍で空に飛び上がる。

 

 大気に吊られながら、心地良い風に吹かれて一路、秘密基地を目指した。

 

 ラーメン後の夕食。

 

 昔ならば入らなかったかもしれないが、今ならばまだまだイケるような気もする。

 

「帰るか」

 

 久方ぶりに食べた味を噛み締めながら、明日を想う。

 

 まだ、未来の嫁の下には帰れそうもなかった。


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