ごパン戦争[完結]+番外編[連載中]   作:Anacletus

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第328話「神の座」

 

 ざっと、揃え切った手札を前にして溜息を吐く。

 

 次々に押し寄せて来る()()()()()()()はかなりの代物だ。

 

 まぁ、そもそもの話として目の前にいる妖精さんの大博覧会みたいな状況を前にして親玉と交渉してみただけなのだが。

 

 ―――大陸北部鳴かぬ鳩会本拠地跡クレーター内部。

 

 完全に真球状にくり抜かれた半径300mの巨大な台地に開いた壺のような地形内部……集まって来ていた()()()()に発見され、介抱されたのは()()()()の話だ。

 

 何処かの馬鹿が時間改変系オブジェクトを使ったのはすぐに解った。

 

 倒れていたら、いきなり寝台に寝かせられていて、その間の事を何とか思い出せば、猛烈な吐き気と眩暈でダウンしたのだから。

 

 今も次々に思い出さねばならない話が大量である事を思えば、馬鹿は絶対に懲りていないだろう。

 

 寝台上の自分は正しく働きもの。

 

 寝込んでいるという主観の合間合間に強制的に挟まる準備中の話はまるで閑話休題中に回想シーンを挟み込むストーリーテラーがいるかのようだ。

 

 差し挟まれた状況はこうだ。

 

 筋肉ムキムキの厳つい未来甲冑妖精さんズに囲まれて、一部は二十台くらいのコスプレおねーさんだったりもしたが、結局は『お前、危険じゃね?』と疑われて拉致監禁紛いに蛸壺内に1日で建った彼らの野営用のプレハブ小屋の街に拘留。

 

 毎日毎日、今まで自分がしてきた事を延々と聞き出されていたのだ。

 

 途中でこんな事してる場合じゃないという事を話すのだが、彼らもまたオブジェクトに関連した知識は持っているようで、このオブジェクトの発動中ならば、時間は稼げているはずだと意に介さず。

 

 あちらの準備の為にもこちらの話をとせっつかれた。

 

 聞き出しに来たのは過去にいるのとは違うオリジナルの男であった。

 

 自分の過去に送られた複製の話辺りで胡乱な瞳になっていたものの、話を聞いて後はある程度の信頼関係は構築されただろう。

 

 元々、彼らは大昔にあった白き鳩会。

 

 鳴かぬ鳩会の前身組織の分派に当たると聞かされた時は驚いた。

 

 だが、さもありなんと納得出来た事もある。

 

 大戦中、次々と文化や常識が断絶していく中で正義の概念が薄れていく毎に倫理の欠如と同時に犯罪が横行し、人々は災厄に見舞われ、またソレそのものとなった。

 

 大戦が終了後、混乱の中で多くの民間人に正義、倫理、道を示すものとして象徴が必要とされたというのだ。

 

 彼らの創始者は白き鳩会が変質する前に所属していた事のある人物であり、戦後はオブジェクトの封印や大規模な殺戮や国家の消滅を未然に防ぎ、人類を永続させる為に嘗ての白き鳩会が蒐集していた遺産の一部を接収。

 

 見込のある戦後に生き残った者達を統率し、新たな肉体や新たな装備を与え、それらのメンテナンスを請け負う事で妖精円卓を創った。

 

 空飛ぶ麺類教団による食料事情の改善に伴って起こった食糧革命を前にしてブラウニー……嘗て台所の妖精と言われた御伽噺を模して各地で活動を開始し、自らに分かり易い属性を付与して、大陸の新規の協力者も募集した。

 

 戦後の数千年間において、彼らがいなければ、防げなかったであろう多数の破滅。

 

 その永い御伽噺は本に出来そうなくらいにトンデモな部類ばかりだった。

 

「という事なのですよ。創造主君」

「……はぁ、分かりました。お母さん」

 

 目の前の未来的なキラッキラ装甲で身を包み。

 

 何処かの変身美少女ものみたいな姿をしている紫と金の衣装を身に纏う十代くらいの少女は人種を判別出来ない程に骨格に様々な特徴が入っていた。

 

 美しいのは美しいのだが、妙に顔が現実感を帯びないというか。

 

 まるで人類の顔を平均したような美少女ぶりは神様みたいなものだとも思えた。

 薄いベールで顔の上半分を蔽っている彼女こそ妖精円卓の()()

 

 アメリアス・ホットワース。

 

 つまり、一番偉くて一番古参の年齢数万歳(永遠の17歳+?日)というお方である。

 

「いやぁ、私も数千年前の人格からはかなり離れてしまっているので同一人物とは言えないのですが、長く生きると変調した人格の核となる設定を使わないとどうしても自己同一性がねぇ~~」

 

「だから、お母さんと呼べ、と」

 

「そうそう。そゆこと。実際、こんな強そうで綺麗なドレス風な装甲を纏った完全無欠の美少女な母親がいたら、嬉しいでしょう?」

 

「いえ、済みません。出来れば、普通な衣装を着けてくれてる方がお母さん呼ばわりする時、周囲の視線が気にならなくなるので嬉しいと思います」

 

「まぁ?! 何て事!? 創造主君は反抗期なの!?」

「いえ、普通の一般常識論です」

 

 溜息を吐く。

 目の前にいる少女は正しく変人であった。

 

 髪の毛は地毛ですと豪奢な金髪を腰まで伸ばしているのに微妙に生活感のある装甲には今日付いたばかりだろうソースの染みが微妙にあったりするのだから。

 

 こう、人格的に大雑把な部分と真面目な部分が妙に同居しており、これが数万年生きた結果だと言われてはそう指摘するのも引けてしまう。

 

 事実上、彼女が天海の階箸でこっそり聞いてきた話を元に色々と準備してしまった為、こちらとしても何だか不安というのは偽らざる気持ちであった。

 

 プレハブ小屋は現代式とは程遠い樹脂を空気で膨らませるドーム球場みたいな方式であり、床も家具も色も形も普通だが、全て備え付けで微妙にプニプニだ。

 

 そんな寝台の上でこれからラスボス前の中ボスと最終決戦するのに味方の力を全て受け取って決戦フォームになったんです、みたいな衣装を着たお母さんがいたら、確実に自分は夢を見ているに違いないと思うのが普通だろう。

 

「しょうがないわねぇ。ほら、これでいい?」

 

 パチンを指を弾いた彼女。

 

 アメリアスの衣服が普通の白のレース地の過激な下着姿になる。

 

「あの……痴女を母親呼ばわりするのはちょっと……」

 

「創造主君は面白い子ねぇ。これで大抵の男の子は頷くんだけど」

 

「いや、頷いてるんじゃなくて、ゴクリしているだけなんじゃないかと」

 

「まぁ、とにかくよ。創造主君。君は私が昔にあの歯車大陸野郎と戦った時の仲間だったわけよ」

 

「はぁ、何となく想像は付きます。何か、その時はもっとカッチリした声だったような気もしますが」

 

「あ、やっぱり、記憶は引き出せるんだ。どっかにストレージ無いかなぁって探してたんだけど、見つからなくってさ。ベリちゃんに聞いてから色々と伝手を辿ってたんだけど、必要無かったわね」

 

「ベリちゃん……」

 

 ベリヤーエフのそう呼ばれて微妙な顔が思い浮かぶ。

 

「その時は色々してたのよ? 大陸を股に掛けて悪をバッタバッタと薙ぎ払ったりしてさぁ。今でも思い出せるわ。ああ、私の青春……」

 

「その時点でもう数万歳だったのでは?」

 

「ああ、当時は人格の設定をお堅くして再構成してた時でねぇ」

 

「はぁ、今もそうすればいいのでは?」

 

「そう? でも、こういう自分も好きなのよ? だって、これも私だから」

 

 胸を張るアメリアスの女性的部分は絶壁だ。

 

「創造主君が今何を考えてるかは知ってるわ。でも、お生憎様……ふふ、この胸が好きって言ってくれてたのよ? 前の君の個体は……」

 

 ダラッと汗が滴る。

 

「聞かなかった事にしておきます」

 

「大丈夫、寝台の上でドライな感じに愛し合ったのは良い思い出よ。あ、趣味嗜好は全部筒抜けだからね?」

 

「―――悪夢だ」

 

 実際、ほんの少し前に過去の女とケリを付けて来たばかりである。

 

 まぁ、別の自分が連れて行っただけだが。

 

 これからも知らぬ間に超年上の見知らぬ元愛人とか恋人とか嫁とか出て来るのかと考えただけで地球規模の大事になるのだとしたら、胃に穴が開くのは確実だ。

 

「あ、今はお嫁さん達がいるんだっけ? そっか~~ポッと出の女と言われたら、お前達こそポッと出で年季はこっちこそ数千年なんですぅ~~ってやり取りをするのが目に浮かぶわ……」

 

「浮かばなくていいです。というか、絶対過去話しないで下さいよ? 今の嫁は今の嫁で愛しているので」

 

「へぇ~~さっすが、悪の秘密結社作っちゃう程愛されてる人は違うわねぇ~」

 

「……オレの肩にはもう知る限り、数千垓人くらい人命が載ってます。ですが、だからって、全部抱えたりも出来ません」

 

「ま、そりゃそうよね。さっきまでの話を聞くと」

 

「基本は投げっ放しにしてもいいシステムを構築中です。宇宙団規模の複製地球で手一杯なので過去の同人格別人の話は出来れば、しない方向で」

 

「ふふ、了解。でも、時々は構ってね? この地球が滅ばなかったら、だけど」

 

「分かりました。妖精円卓の力を借りる度に付き合うという事で」

 

「お母さん嬉しいわ!! ご主人様がこんな立派に育って!!?」

 

「恋人だったのでは?」

 

「え? 言ったでしょ。趣味嗜好は全部筒抜けよ? 隠さなくたっていいのよ~~ちょっと首輪とむ―――」

 

 少女の唇をベチッと片手で閉ざす。

 

「分かったので、出来れば嫁にそういう事は吹き込まない方向で」

 

「自分で吹き込んじゃうのがたの―――」

「OK?」

「おーけーおーけー」

「はぁぁぁ……」

 

 少年が暗澹たる気分になるのもそこそこに妖精円卓から齎された大陸中央の情報にやっぱり残ってた副総帥をどう料理しようかと()()()()

 

「取り敢えず、明日には出ます。北部戦線の整理と進発もギリギリでしょう」

 

「まぁ、このオブジェクトの発動時は限界まで時間を使って対策練るのが得策だし、移動時間は実質0で考えていいから」

 

「分かりました。じゃあ、明日の朝4時に出発で」

「了解」

「………まだ何か?」

 

 アメリアスが苦笑しつつも、何処か懐かしそうにこちらを見ていた。

 

「変わらないのね。素っ気ないのも……例え、貴方が別人だとしても構わないわ。今生きている私が今傍にいる彼方に言っておきたい事があるの」

 

「……愛の告白以外なら何でもいいですけど」

 

「ふふ……ありがとう……この大陸を護ってくれて……ありがとう……助けてくれて……ありがとう……愛してくれて……ありがとう……こうしてまた出会ってくれて……エニシ……」

 

 思わず愛の告白よりも恥ずかしいと少年が赤くなった。

 

「それはいつか……本物に言って下さい」

「本物に?」

「ええ、いつか……その時に……」

「……分かったわ。創造主君」

 

 衣装が元に戻ると少女はヒラヒラと手を振って部屋を出ていく。

 

「お休みなさい。我らが救世主……」

 

「そんな柄なら、さっさと全部救われた世界にしてます」

 

「あははは、貴方らしいわ。カシゲェニシ・ド・オリーブ」

 

 扉が音もなく閉まる。

 

 そして、実際に救われていない世界に戻ってきた自分がどうするかなど、決まり切っていた。

 

(この世界の理不尽を一つ消して、何一つ状況に手を加えないまま、自分の力で変える……この地球の人達と、あいつらと変えていく……それが選択なら、精々頑張らないとな……まだ、本命も残ってるし……)

 

 戻って来たものの。

 

 未だギュレギュレ神から力を借りているのはそのままなのだ。

 

 全ての制約が取り払われたわけではない。

 

 過去の嫁によって封じられていた能力も未だ副総帥の顕現で戻っていないし、出来る事は限られている。

 

 だが、()()()()()()()()()と言うのならば、自分はいつだって、振ってから気付いてきたはずだ。

 

 振った賽子の目がどんな目だろうと決して諦めない事が肝要だと。

 

 それが終わりを示すまで戦えないなら、今までやってきた事など茶番に過ぎない。

 

 どんな結末だろうと納得しないし、自分は続ける為に戻って来た。

 

 だから、戦うのだ。

 救われた世界になど意味はない。

 ()()()()()()()を。

 

 これが傲慢だったとしても、その理不尽を自分の味方や傍にいる人達に押し付ける気はサラサラない。

 

 だから、何もかもが予定調和どころか。

 規定調和に進むよう準備は万全だ。

 

 未来など見えないし、分からないが、だからこそ、賽子の目にワクワクする自分を、それがずっと続く日々を望む。

 

 ―――【ようこそ。神の座へ】

 

 妹と会話した後。

 何もない世界に到達した時。

 ギュレ野郎の姿をした何かに出会った。

 

 ソレは少なくとも自分の中にあるイメージの具現化だっただろう。

 

 ―――【君には幾つもの道が開けている。強くてニューゲーム。イージーモード、いや? 今はカジュアルモード、だったか? まぁ、エクストラハード、ルナティックなストーリーでも構わないという事もあるだろう】

 

 世界には何もなかった。

 

 そう、それは世界の外側に到達した者がまずは受ける洗礼なのだろう。

 

 それが分かったのは自分が来た宇宙が掌に載ったような感覚が、見つめて内部を変更出来てしまう程度の実感があったからだ。

 

 ―――【君は何を望む? 神の座は全てを許容する。私は君の内部のイメージにしか過ぎない単なるガイドラインだ。到達者は到達者によって庭の内部を規定するが、要は認識の枠が世界と同列へと変化する事を意味する】

 

 小さな掌に載る宇宙。

 

 それは幾多の内在する無限の重なりをも自在に規定する事実上の神。

 

 だが、そんなのを愉しめるのはいつでも神のような連中だけだろう。

 

 ―――『理不尽を一つ消して後は続行だ……あのギュレ野郎を消しても意味が無い事は理解してる……どうせ、どっかの宇宙で神に上り詰めるのは目に見えてるしな……』

 

 ―――【それが君の選択か? 選択は慎重に……今一度、君が此処に来る事になるかは分からないのだから……】

 

 ―――『分かってるじゃないか。オレの内面も案外馬鹿に出来ないな……そういうこったよ。分からないからいいんじゃないか。何かを分かった気になっているのは賢い奴じゃない。賢いフリをしている奴だ……オレもその類だが、少なくとも』

 

 ―――【少なくとも、君は分かる事の楽しさと嬉しさを……続けていく事の意義を……そして、自己満足を大いに愉しむ事の重要性も知っている】

 

 ―――『過去、宇宙の最後に何をオレが思ったのかは知らんが、一つだけ言える。オレは続きが見たかったんだ。分からない続きを……例え、それが人に許されざる願いだとしても……もう一度、あいつらに……いや、あの幸せにしてやりたい世界に出会いたかったんだ……』

 

 ―――【現実はゲームじゃないと誰かは言った】

 

 ―――『だが、ゲームを現実よりも大切にする奴だっているだろう』

 

 ―――【そういう事だ……飽きる事無き世界を体感し続ける事……君はその最果てでこの場所に辿り着いた……神よりもまた人に似たる神よ……】

 

 ―――『ゲーマーよりも神に似たゲーマーの間違いかもしれんが?』

 

 ―――【ならば、問題ない……それは全て同一だ】

 

 ―――『ああ、そうかい』

 

 ―――【行け……この系列宇宙において最も旧く新しい神にして、ゲーマーにして、生き穢く醜い人間……決して滅びぬ(さだめ)を創りし者よ】

 

 ―――『じゃ、行くか……嫁に会ったら、愛し合おうと思ってたところなんだ』

 

 ―――【卑近な話だ……神の座よりも肉の欲望が勝るのは正しく人間か……くく】

 

 ―――『嫁とくんずほぐれつ卑猥な事をして愛し合う方が神様やってるよりも何倍も愉しくて気持ち良さそうじゃ、しょうがない。嫁には教えておくぜ? 神様の椅子なんてお前らの魅力に比べたら詰まらんもんだったってな』

 

 ―――【それを最高の口説き文句だと思っている辺りがお前の限界なのかもしれんな……】

 

 なら、それが限界ではなく単なる事実になるまでやり通せばいい。

 

 そう言おうとした時にはもう目は覚めていた。

 世界は何一つ変わっていない。

 

 少しだけ世界から理不尽なものが去り、少しだけ神様をやった男が戻って来ただけだ。

 

 そして、今もやっぱり理不尽に違いない敵がいて、それをどうにかしようと沢山の人間達が頑張っている。

 

「オレは間違ってると思うか? 芋虫野郎」

 

『―――もはや常に認識しているのか。貴様は』

『ならば、分かっているな?』

『我々は三竦みであるという事を』

 

 ウゾウゾと寝台横には一匹の芋虫がいる。

 

 だが、まるで一人ではなく複数人のように喋るソレはあちらの統合され切れない無意識にも近いのかもしれず。

 

『そうだ。あの神は貴様に強く』

『お前は我々に強く』

『我々はあの神に強い』

「此処まで来て相性ゲーかよ」

『良い事を教えてやろう』

『ロート・フランコがこの世を去った』

『我らが顕現である個体が再び現れるのはもうすぐ』

『魔法使いは舞台を降りた』

 

『残るは財団のみ……これだけの年月を超えて未だ存在している事にする力……たった一つの象形を見せるだけで現実を改変する実力』

 

『ああ、まったく我々の事を言えないじゃないか。奴らは……』

 

「お前らって、あのオレに似てたのに統合され掛かってから妙に知恵を付けたんじゃないか?」

 

『『『あの男がそう奴を創ったのだから、仕方あるまい?』』』

 

「一応、過去で勝ったし、こっちでも1回勝ってるようだから、問題ないと思ってたんだが……どうやらまだいるらしいな」

 

『覚えておけ。全ては貴様が招いた事なのだ』

『左様……あの男は始原に最も近しい』

『どの世界で負けようと、必ず貴様の前に立ち塞がる』

 

「……まるで預言者みたいだな。芋虫野郎」

 

『我々は複製する』

『我々は模倣する』

『我々はそれそのものになる』

 

『『『我々こそは宇宙の終わりに新たなる世界となるべき種』』』

 

「芋虫宇宙なんぞお断りだ。オレの庭で好き勝手やろうって言うなら、相手になるぞ? 勿論、世界が終わらぬ限り永遠にお前らは苦しみ続けるだろうとも」

 

 その言葉に芋虫は震えていた。

 

『暴力反対!!』

『芋虫権侵害で訴えますよ!?』

『く、やはり、芋虫は自然界の最底辺なのか!?』

 

 途端に1人コントをやり始めた芋虫はブルブルしながら扉の先へと出ていく。

 

 やはり、統一されていない個体だと色々とバラつきがあるのだろう。

 

 ついでに今の今まで模倣してきたモノの影響を受けているようだ。

 

「まったく……」

 

 世界に緑が戻ろうとオブジェクトが無くなったわけではない。

 

 いつでも世界の破滅は横にある。

 そして、またああいうものが世界で蠢いている。

 

 それを知ればこそ、戦うのは自分のような人間とその周辺の役目なのだろう。

 

 知っているという事は知らないという事の100倍義務に駆られるものなのだ。

 

 放置しておけないモノならば、尚更である。

 ゴングは明朝。

 それまでしばし眠る事にしよう。

 

 また、準備が積み上がっている事を思い出せるように。


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