ポケットモンスター let's goリーリエ! 作:アニポケ大好き主
いよいよジム戦回です!!!
ニビは灰色の石の色。険しき山合いのある街。
ニビシティに到着した頃には夜の六時をまわっていた。明日のジム戦に備えるためリーリエ達はポケモンセンター内に設備されているバトルの施設でポケモン達の調整を行っていた。
「シロン!【こなゆき】‼︎」
「クルミル!【はっぱカッター】‼︎」
「はい、そこまで!」
「それじゃあ、ポケモンセンターへ行ってみんなを回復させに行こう」
明日のこともあるため早めに調整を終わらせたリーリエ達はポケモン達をボールに戻すとジョーイさんの元へ向かった。ポケモンの回復をお願いをしにカウンターへと向かおうとしたが、そこには多くのトレーナーの列が並んでいた。おそらくニビジムに挑んんだトレーナー達であろう。その中にはバッチを見つめている者もいれば悔しそうにしている者もいる。そのトレーナー達の様々な感情が次第に伝わってきたリーリエ達は少しばかりか緊張が走ってきた。
並んでから三十分ぐらい経ったであろう、ようやくリーリエ達の番が回ってきた。
「ジョーイさん!ポケモンの回復お願いしまーす♪」
「はーい!」
カノンの呼びかけに奥から返事が返ってきた。だが、その声はジョーイさんのものではなく明らかに男性の声がした。不思議に互いの顔を見合わせたリーリエ達の前に現れたのは五つぐらい年上の白衣を身に纏った青年だった。
「あれ、ジョーイさんではない?」
主に全国のポケモンセンターはジョーイさんが行っているものであるので、治療室から現れたその青年にカノンは不思議に思った。
「ああ、ジョーイさんなら他のポケモン達を診察しているよ。俺はここのジョーイさんの助手をやっている者なんだ」
「助手ですか?」
「簡単にいえば、見習いポケモンドクターってところかな」
ポケモンドクターはジョーイさんと同じくポケモン達の治療を行う役柄である。ポケモンスクールと同じく養成学校は数多く存在している。だが、医療専門分野というのもあってそこに入学できる生徒の数は限られている。厳しい試験を受かった者だけが学園の入学が許されているのだ。
リーリエ達の前にいるその青年はその学校の卒業生であり、今はここニビシティのポケモンセンターを始めとしていろいろな所で研修を行っている見習いドクターなのである。
「ポケモンドクターか!カッコイイ!!」
「あはは、ありがとな。でも自分はまだまだ修行中のみ。一人前になるまでもっと経験を積んで行かないといけないけどね」
その青年の話を聞いているリーリエ達に、一匹のピカチュウがカウンターに上がってきた。
「「ピカチュウ!!」」
サトルのピカチュウではないと分かったリーリエは少し驚くようにしてを叫んだ。リーリエとほぼ同時に叫んだそのポケモンドクターの青年も少しはっとしていた。
ピカチュウ…もしかして……
二人はほぼ同時にピカチュウがやってきた方向に目を向ける。するとそこには…
「すいません!私のピカチュウもお願いします」
一人の少女がカウンターへと向かってきた。よく見るとリーリエ達の前にいるそのピカチュウはメスであった。
「あっ、はい。お預かりしますね!」
そのままピカチュウを預けた少女はそのまま何処かへ行ってしまった。
「まぁ、ここに居るわけないか」
「まぁ、ここに居るわけないですよね」
「「えっ??」」
〜〜〜〜〜
テンテンテレテン♪
回復が終えた知らせが鳴った。
「お待ちどうさま、預かったポケモンはみんな元気になったぞ」
「「「ありがとうございます」」」
先ほど知り合った青年から預かったモンスターボールを受け取ると、一斉にモンスターボールからポケモン達を出してあげた。出てきたポケモン達はみんなすっかりと元気になっていた。
「タケシくん、お疲れ様!今日はもうこれで上がって貰っても大丈夫よ」
「いえいえ、まだ手伝うことがあれば自分におまかせ下さい」
カウンターから顔を出したジョーイさんにすぐさまタケシと名乗る青年はジョーイさんの手を取り始めた。その様子にリーリエ達は唖然としていた。
「「「えっ???」」」
「それからもし宜しければ仕事終わりには疲れた体を癒すために、彼方のカフェでゆっくりとお茶でも…っつ!!!」
ジョーイさんにデートのお誘いをしようとしたタケシ。するとすぐに後ろから感じる鋭い痺れに耐えきれずそのまま後ろの方へ倒れ込んでしまった。
「し・び・れ・び・れ〜」
痺れて倒れてしまったタケシはそのままとあるポケモンに足を引っ張られ何処かへ引きずり去っていく。
おそらくタケシの手持ちの内の一体であるのであろうか。ロトムは解説を始める。
『グレッグル どくづきポケモン
毒・格闘タイプ
毒袋を膨らませて不気味な音を辺りに響かせる。猛毒をにじませた指先で相手を攻撃する』
「諸に【どくづき】を食らってたよね」
「大丈夫なんでしょうか?」
「いや、大丈夫そうではないと思うけど…」
あまりの出来事に呆然とするリーリエ達。それに失笑していたジョーイさんはまぁ大丈夫だと思うことはリーリエ達に伝えておいた。
「あなた達、新人トレーナーみたいだけど。もしかしてニビジムに挑戦に?」
「はい!リーリエとサトル、この二人も含めた私達で挑戦しに行くんです!」
「そうなのね。だったら、タケシ君にジムのこと聞いてみたらいいわよ!」
「「「タケシ君?」」」
「そっか!もしかしたらと思ったが君たちはニビジムに挑戦しに来たんだな」
毒の痺れから解放されたタケシはゆっくりとリーリエ達の元へと戻ってきた。
「わぁ!復活はやっ!」
「あのお身体は大丈夫なのですか?」
「ああ、あれはいつものことだから心配ないよ」
「いつものことって…」
『毒ポケモンの技を受けても、自力で毒を鎮静させてしまうトレーナーとは。これはデータアップロードだロト!』
これに驚いたロトムはタケシを写真に撮ると自分のデータに保存した。リーリエ達も世の中にはいろんな意味で凄いトレーナーがいるんだなぁと、思うのであった。
「へぇ、これが噂に聞くロトム図鑑か!初めてみたがとても凄い発明だな」
『そう!ロトム図鑑はすげーロト!』
「あの、すいません。タケシさんはジムのことで何かご存知なのでしょうか?」
ジョーイさんが言ったことに疑問を持ったリーリエはタケシにその意味を探った。タケシもロトムからリーリエ達の方に目をやると乱れた白衣をきちんと整え、改めて自己紹介から始めた。
「俺の名前はタケシ。ニビジムは俺の弟が務めているジムなんだ」
「そうだったのですか」
「それにタケシ君は元ニビジムのジムリーダーでもあったのよ」
「元ニビジムの!!!」
「まぁな!」
元ジムリーダーと聞いたリーリエ達は自然と肩に力が入り背筋をピンと伸ばした。
元々ニビジムのジムリーダーを務めていたタケシは、自分はポケモンバトルをするよりも、ポケモンを育てることに生きがいを感じるようになり、ジムリーダーを目指していた弟に正式にジムを任せるとポケモンブリーダーとして旅に出ていたようだ。
度重なる旅の中の経験でシンオウ地方のジョーイさんと病気にかかった多くのポケモン達を救ったことから本格的にポケモンドクターになることを決意したのだ。
「ジム戦は明日の朝に来るといいよ。弟には俺から言っとくから」
「そうですか。それでしたらよろしくお願いします」
「おっけ!それじゃ、ジムまで俺が連れて行ってあげるよ。明日はオフだから大した用事もないからね。明日、ポケモンセンターまで迎えに行くよ!」
「はい!!!」
これ以上仕事の邪魔になってはいけないので、タケシとは明日の早朝にホームで待ち合わせをする約束をして一旦別れることにした。
夕飯を食べながら明日のジム対策について話し終えると、三人はすぐに寝室へ入って行った。旅の疲れが一気に出てきたのか、リーリエ達はすぐに布団に寝転がるとそのまま眠ってしまった。
〜〜〜〜〜
カーテンを閉め切っていない窓から入り込む朝日に眩しそうに目を擦りながらリーリエ達は起床した。
別室で眠っていたサトルと合流したリーリエとカノンは一階のレストランで朝食を済ませ、タケシとの合流場所となるポケモンセンターのホームで腰を下ろしていた。
「おはよう!おっ、どうやらポケモン達も気合入ってるようだな」
暫くして、約束の時間通りにタケシはポケモンセンターへと到着した。リーリエのポケモン達もみな気合十分なのか、溢れてくる闘志をタケシに見せていた。
「あっ!ええっと…おはようございます。き…今日はよろしくお願いします!」
「リーリエ、それはジムリーダーに言うセリフじゃない?」
「えっ…は、はい!そう…でした…ね!あはは…」
ジム戦が近づいてくるからか、リーリエは緊張のあまり普段の丁寧口調からまるでロボットのようなガタゴトの口調に変わってしまっていた。そんなリーリエを見たタケシは優しく震えているリーリエの肩に手を置いた。
「ふふっ、どうやら緊張しているようだね。無理もないジム戦はポケモン協会が認めたプロのポケモントレーナーとの真剣勝負だからね。だけど、トレーナーがそう緊張してしまうと一緒に戦ってくれるポケモン達にもその不安が伝わってしまう。何よりも大切なことは楽しむことだ。」
「はい!」
「うん、それじゃあ行こうか」
タケシの言葉とシロン達の顔を見たリーリエの緊張は次第に和らいできた。一旦ポケモン達をボールに戻したリーリエ達はポケモンセンターを出て、タケシと共にジムへと向かった。
「ここがポケモンジム」
リーリエ達はニビジムの前へとやってきた。岩タイプ専門のジムとはあって、建物全体はゴツゴツとした岩によって覆われていた。
かかって来い!!!
と言わんばかりか、扉の前に立つだけでもその圧が伝わってくる。
「それじゃ、入ろうか」
タケシの合図と共に、ジムの扉はゆっくりと開いていった。
「ジロウ!挑戦者を連れて来たぞ」
「はーい!」
タケシの呼びかけに応え、一人の少年が出迎えてきた。この人がジムリーダーなのか?現れたその人物は見た感じリーリエ達よりも二つぐらい年下の少年みたいだった。イメージしていたジムリーダーの想像図とはけっこう違っていたのだが、タケシが呼んできたというのなら、この少年はポケモン協会によって実力を認められたトレーナーであることは間違いない。
「こんにちは、僕がここニビジムのジムリーダーのジロウです。話は兄さんから聞いています。チャレンジャーは三名で宜しいですか?」
「はい!リーリエと申します。」
「私はカノン」
「僕はサトルです」
「分かりました。ジムのルールなのですが、基本は三対三によるシングルバトルです。どちらかのポケモンがすべて戦闘不能になってしまうとバトル終了です。なお、ポケモンの交代はチャレンジャーのみに許されます。」
チャレンジャーを確認するとジロウはここでのジムのルールを説明した。タケシが務めていた時はニビジムは二対二のルールであったが、チャレンジャーの実力を正確に知るためという事もあって、ジムリーダーを引き継ぐと同時にジムのルールを変えたみたいだ。
ただ、ジムのルールはあくまでもジムリーダーとしてチャレンジャーの実力を測るためであるので必ずそのジムのルールに従わなければならないという事ではない。もちろん、カノンのように手持ちが三体所持していないトレーナーも挑戦しにやってくる。
その場合の使用ポケモン数はチャレンジャーの所持ポケモンの数によって決めらる。
『誰から挑戦するロト?』
ロトムの一言にジム戦を受ける順番を決めてなかったリーリエ達は顔を見合わせる。
「う〜ん…シンプルにジャンケンで決めようか」
「そうだね!よっし、ジャンケン♪」
「あっ、ちょっと待って下さい」
カノンの突然のジャンケンコールによってジム戦を受ける順番を決めた。ジム戦をやる順番を決め終わったリーリエ達はジムリーダーに連れられジム戦を行うバトルフィールドへと案内された。
ジムのバトルフィールドはジムリーダーが得意とするポケモンのタイプに合った環境作りとなっている。ニビジムの場合は岩タイプのジムであるため、岩山の地平をイメージとしたフィールドとなっている。
ジムリーダーとチャレンジャーはそれぞれ指定されたトレーナーサイドへと立った。その他の人達はチャレンジャーへの助言等は禁止されているため観戦席へと移動する。
しかし、見慣れていないポケモンのタイプをポケモン図鑑で調べることは禁止されていないので、助言は無しという条件でロトムも一緒に連れてもいい許可が出た。
「これにより、ジムリーダーのジロウとチャレンジャーのリーリエとのジム戦を開始します。まずはジムリーダー、ポケモンをバトルフィールドに!」
審判による試合開始コールと共にジロウはポケモンを繰り出した。ジム戦では先にジムリーダーがポケモンを出す決まりがある。ジムリーダーが繰り出したポケモンを見てチャレンジャーはどんなポケモンを使って対応してくるか見極めるためだからだ。
「行けっ!イワーク!!!」
ジロウが繰り出したのはカントーのポケモンの中でも重量級のポケモンの内の一体でもあるイワークだ。
《観戦席》
「大きい〜」
観戦席で観ているカノンは初めて生でみるそのポケモンの迫力に圧倒されている。
『イワーク いわへびポケモン
岩・地面タイプ
地中をおよそ八十キロのスピードで掘り進んでいる。通った後はディグダの住処となる』
「ジロウのやつ、いきなりイワークとはね。さて、リーリエさんはどんなポケモンを使うか」
そう言うタケシはリーリエの方に目をやると少しだけ顔を歪めてしまった。それはリーリエはポケモンを繰り出す所か小刻みに震え出していたからだ。どうやら、また緊張が振り返してきたようだ。
「やっぱり、まだ緊張しているみたいだね」
「あっ…大丈夫だよ、リーリエ!えっと…そうだ!玉葱だよ!リーリエが今戦おうとしている相手は何個も繋がっている玉葱なんだよ!」
「野菜と思って戦えば緊張が和らぐと言いたいと思うけど…無理があるんじゃないかな」
と言いつつもサトルもリーリエの事を心配ではないわけではない。すぐにリーリエの元へ駆け寄ってやりたいと思うが、試合が始まっているため、もうただ見守ってあげることしか出来ないでいた。
《ジム戦》
リーリエも旅を通して、トレーナーだけでなくロケット団やレベルが高い野生のポケモンとのバトルはこなしていた。だが、それは今までカノンやサトルのように一緒に戦ってくれる友達がいたため心細いとは思わなかったからである。ましてや、ジム戦は一般トレーナーとのバトルとは違う。ジムバッチを獲得するためには勝たないといけないプレッシャーや凄腕のジムリーダーとの真剣勝負というのもあって、さらにリーリエの鼓動は早くなる。
その様子を見たシロンはリーリエの首筋に少しの冷気を吹きかけた。
「ひゃん!!!えっと…シロン?」
突然のことにリーリエは緊張する気持ちを忘れてはシロンに目をやる。シロンは心配いらないと呼びかけてると同時に半身心配そうにリーリエに目をやっていた。冷静さを取り戻したリーリエはタケシの言葉を思い出す。
自分が不安がってはシロン達にもそれが伝わってしまう
リーリエは気持ちを落ち着かせるため深呼吸を行なった。そして両手で祈るようにして握りしめたら、そのまま黙祷を始めた。黙祷の中、今までの旅の経験。そしてアローラのみんなの事を思い浮かべる。そんな中、リーリエにポケモンとのふれあう楽しさを教えてくれたある一人の人物を思い浮かべた。その人物の顔を思い浮かべると不思議と安心してきた。震えが止まったリーリエに笑顔が戻った。
少しばかりか、どんな困難にも立ち向かっていく貴方に私は憧れていました。
私がこうして旅に出る決意ができたのも貴方に追いついてみたいと思ったのもきっかけの一つです。
初めてのジム戦。シロン達と何処までやれるか分かりませんが…
どうか…少しだけでもいいので…
サトシ…わたくしに力を貸して下さい。
黙祷が終わり、改めてジムリーダーと対峙する。このジム戦に挑む誠意とともにリーリエは一回お辞儀を交わすと、最初のポケモンをバトルフィールドへと放った。
「お願いします!シロン!!!」
リーリエの掛け声と共にシロンは元気よくバトルフィールドへと立った。
《観戦席》
「リーリエ!」
「どうやら、もう大丈夫のようだな」
リーリエの顔を見て安心したカノンとサトルは自分達の胸をそっと撫で下ろしていた。互いのポケモンが出揃った所でいよいよリーリエの初のジム戦が始まる。アローラでいうとこれがリーリエの第一の試練だ。
「それではバトル開始!!!」
《ジム戦》
「こちらから行きます!イワーク【たいあたり】‼︎」
先手を取ったのはジロウだった。初級技とはいえイワークのような身体の大きいポケモンの体当たりは真面に喰らえばひとたまりもない。イワークはその身を大きく揺らすとシロンに目掛けて一直線に向かっていく。
「シロン!躱して【こなゆき】です‼︎」
体当たりを躱されたイワークはそのまま岩壁へと撃墜する。無事に攻撃を躱したシロンはイワークに向けて冷気を放った。放たれた冷気はイワークにヒットし、イワークはその寒さに身を震わせている。地面タイプを併せ持っているイワークに氷タイプの技は効果は抜群だ。
「効いています。続けて【こごえるかぜ】です‼︎」
「イワーク【がんせきふうじ】‼︎」
シロンは攻撃の手を緩めることはなく、すぐに攻撃を放った。するとイワークは岩石を自分の周りに積み立てるとそれが壁となり、シロンの攻撃を封じた。そして、その壁にイワークは自分の身を隠した。
「【たいあたり】‼︎」
イワークは作り上げた岩石の壁ごと壊し、シロンに向かって体当たりを仕掛けた。壁のせいでイワークの動きが見えていなかったシロンは回避するまもなくそのままイワークの技を食らってしまった。
「シロン!!!!!」
体当たりを受け、吹き飛ばされたシロンはそのままフィールド上の岩石に叩きつけられてしまった。だが、かろうじて何とかシロンは戦闘不能を免れることが出来た。
《観戦席》
「攻撃技を防御に使うとは、流石はジムリーダーってところだね」
ジムリーダーの戦いを見ていたサトルはリーリエを心配すると同時にジムリーダーの戦い方に関心を持っていた。
《ジム戦》
「大丈夫ですか?シロン!」
リーリエの呼びかけに元気よく応答するシロン。まだ大丈夫なようだ。
「何とか耐えましたね。イワーク!【たたきつける】攻撃‼︎」
「躱してイワークに飛びついて下さい!」
今度は大きな尻尾を使ってイワークはシロンを叩きに行った。その攻撃を躱したシロンはイワークの尻尾に飛び乗るとイワークの顔に目掛けて、イワークの胴体をそって走りだした。
「なるほど、そう来たか。イワーク【りゅうのいぶき】‼︎」
イワークは龍のような唸り声を上げるとともに物凄い息吹をシロンに向かって放った。迫り来る息吹にシロンは吹き飛ばされそうになるが、なんとか堪えては負けじとイワークの顔目掛けて走りだす。
「負けないでシロン!【こおりのつぶて】‼︎」
イワークにある程度近づくことができたシロンはすぐさま氷の塊をイワークに向かって放った。勢いよくイワークの顔面にヒットするとイワークは蹌踉めくと同時に息吹が止んだ。
「イワーク!【がんせきふうじ】だ‼︎」
「【こおりのつぶて】‼︎」
すぐにイワークは無数の岩でシロンに攻撃を仕掛けようとしたが、先制技である【こおりのつぶて】を先に食らってしまった。氷タイプの技を二連続受けてしまったイワークの体力は徐々に減らされていく。
「そこです!【こなゆき】‼︎」
「負けるなイワーク!【りゅうのいぶき】‼︎」
シロンの冷気とイワークの息吹がぶつかり合う。だが体力の限界が来ていたのかイワークは思った以上のパワーを出すことが出来ずそのままシロンの冷気に押し返されてしまった。
「イワーク!!!」
押し返されたと同時にイワークはシロンの攻撃を受け、ゆっくりとその場に倒れてしまった。
「イワーク戦闘不能!ロコンの勝ち!」
「やった!大丈夫ですか?シロン!」
最初の勝ち星を取ることが出来たリーリエ。しかし、シロンも結構なダメージを負っていた。心配そうにリーリエはシロンを呼びかけるとシロンは元気よくリーリエに向かって鳴き始め、心配ない様子を見せた。
「お疲れ様イワーク!なかなかファイトのある戦いでしたよ。ですが、次はこうはいきません。頼むぞ!イシツブテ!!!」
ジロウの二番手はイシツブテだ。だが、そのイシツブテはリーリエがよく知っているイシツブテとは姿が違っていたためリーリエは少しばかり驚いていた。
「イシツブテ⁉︎ お願いします。ロトム!」
『お任せを!』
ロトムはイシツブテのデータを開いた。
『イシツブテ がんせきポケモン
岩・地面タイプ
石ころとは見分けがつかないポケモン。頑丈な体を相手とぶつけ合いながら硬さを競い合う』
「なるほど…地面タイプを持っているのですね」
《観戦席》
「リーリエ。イシツブテを見て少しびっくりしてたけど、イシツブテにもシロンみたいに他の地方とは異なる姿が存在するんだっけ?」
「うん!そうだね。ちょっと待ってて」
サトルは自分のポケモン図鑑を取り出すと、イシツブテのデータを探した。
『イシツブテ がんせきポケモン
アローラの姿 岩・電気タイプ』
「ん?どれどれ、見せてくれないか?」
アローラのポケモンを見たことがないタケシもサトルが表示したポケモン図鑑を興味津々に見ていた。
「アローラのイシツブテは電気タイプを持っているのか。リーリエさんのロコンを見た時から気にはなっていたんだが、まだいろいろなポケモンがいるんだなぁ」
また一つポケモンの不思議な生体を知る事が出来たタケシは一人静かに頷いていた
《ジム戦》
リーリエは元気そうに振舞ってはいるが、無理をさせてはいけないと思いシロンを一旦戻すことに決めた。
「シロン、暫く休んで下さい」
リーリエの指示を聞いたシロンはリーリエの元へと戻っていった。シロンが戻ったと同時にリーリエは二番手のポケモンをモンスターボールから繰り出した。
「次はこの子で行きます!お願いします。ムックル!!!」
リーリエの二番手はムックルだ。唯一リーリエの手持ちの中ではこのジムのポケモン達とは相性が悪いポケモンでもある。
「行ってみましょう、ムックル!まずは…」
「イシツブテ!【ステルスロック】‼︎」
ムックルに指示を出そうとしたリーリエよりも先にイシツブテが光のエネルギーを放ち攻撃を仕掛けた。だが、その攻撃はムックルには攻撃を決めようとはせず、光のエネルギーはムックルの周りに飛び散り、無数の岩を浮かべたのである
「そんな!【ステルスロック】!!!」
技の知識もある程度は持っているリーリエはこの技の主旨を理解していた。
《観戦席》
「何あの技?」
「岩タイプの技【ステルスロック】だよ。場にいる相手に攻撃するのではなく、次に出てくるポケモンにダメージを与える技だよ」
「そう、つまりあの技が発動したことでリーリエさんはむやみにポケモンチェンジをすることが出来なくなったという所だね」
「え〜、なんでよ!だってチャレンジャーの交代は許されてるんでしょ!なんかズルくない?」
カノンの方はジムリーダーのその技の使用に不満を抱いているようであるが、そのことも含めてタケシは説明した。
「たしかにズルいように見えるが、これもジムリーダーの責務としてジロウはリーリエさんを試しているんだ」
「試す?」
「ジムリーダーはただ勝ち続ける為だけに挑戦者と戦っているわけではない。戦術やその場の判断力、バトルの中でそういった挑戦者の秘めたる力を引き出してあげることもジムリーダーの役目でもあるんだ」
タケシの話を聞いたカノンとサトルは改めてジムリーダーという役職を再認識した。このバトルを通してトレーナー達は勝つだけでなく、様々なバトル技術を自分の経験値として受け取り、成長の糧となっていく。訪れるチャレンジャーに対して、ジムリーダーの想いというのを知る事が出来た。
そして今まさに、ジロウはリーリエに一つの試練という物を与えているのだ。
《ジム戦》
「【ステルスロック】はバトルが終わるまで効果は持続する。ポケモンを交代するタイミングを過えば一瞬にして敗北に繋がる。それにノーマルと飛行タイプの技は岩タイプのイシツブテには効果は薄い。相性の悪いムックルでどう戦いますか?」
ジロウから降された課題。それがリーリエには重みとなって伸し掛かってくる。
「行きますよ。イシツブテ!【ころがる】攻撃‼︎」
考える間もない。イシツブテは自身の体を丸め、縦に向かって高速回転をしながらムックルに向かって突進してくる。
「ムックル!【かげぶんしん】です‼︎」
ムックルは自分の分身を創り出すとそのままイシツブテの攻撃を躱した。
「【はがねのつばさ】‼︎」
上空へと舞い上がったムックルは急降下しながら、硬化させた自分の翼をイシツブテの頭上に振り下ろした。
「鋼タイプの技か。イシツブテ受け止めろ‼︎」
ムックルの攻撃が決まる直後、イシツブテは手刀で繰り出されるムックルの翼を真剣白刃取りで受け止めたのだ。
「えっ!!!」
「イシツブテ【ロックブラスト】‼︎」
イシツブテはそのままムックルを捕まえたまま、石の弾丸をムックルに決めた。一発…二発と続き、最後の一発をイシツブテはムックルの翼を離した状態で打ち込んだ。攻撃を受けたムックルはそのまま後ろに吹き飛ばされてフィールドに設置されている岩石に叩きつけられた。
「ムックル!!!」
「続けて!【ころがる】攻撃だ‼︎」
さらにイシツブテはムックルに向かって転がっていく。飛行タイプに対して岩タイプの技は効果は抜群。戦闘不能は免れたが、もうすでに虫の息であった。飛んで躱わす体力はムックルにもうなかった。
「戻って下さい!ムックル‼︎」
間一髪の所でムックルをモンスターボールへと戻すことが出来た。
「うん。【ステルスロック】を警戒して倒れるまで戦うと思っていたがいい判断です」
ジロウが言った通り、岩によるトラップをリーリエはもちろん警戒していた。しかし、後続に繰り出される他のポケモン達には申し訳ないが戦闘不能寸前のあの場面でムックルを戻さない選択はリーリエにはなかった。
ムックルを戻すと、リーリエは別のモンスターボールを取り出し三体目のポケモンを繰り出した。
「お願いします。キモリ!」
バトルフィールドにキモリが現れた同時に【ステルスロック】によるトラップが作動した。無数の岩がキモリの周りに浮上すると、一斉にキモリに向かって追撃し始めた。
《観戦席》
「あっ、【ステルスロック】が!」
「これはけっこうプレッシャーになるね」
《ジム戦》
「草タイプ。今度は有利なタイプで来ましたか!」
【ステルスロック】により多少ダメージ
食らってしまったキモリであったが、土埃を払うと対戦相手であるイシツブテを睨みつけた。先ほどの攻撃は逆にキモリの闘志に火をつけたみたいだ。
「行きましょうキモリ!【タネマシンガン】です‼︎」
「イシツブテ!【ロックブラスト】だ‼︎」
キモリとイシツブテによる攻撃はぶつかり合い相殺した。パワーは互角のようだ。
「次は【あなをほる】です‼︎」
「イシツブテ!地面の動きを感じ取るんだ‼︎」
キモリは地中へと身を潜めると、イシツブテは静かに目を閉じると神経を集中させ始めた。地中を掘り進んでいくキモリを野生の頃に培った直感力でイシツブテは自分の真下から飛び出したキモリの攻撃を寸前の所で躱した。
『ピピピィィ!!!キモリの動きを読んだロト!』
これには流石のロトムは驚き、思わず声を上げてしまった。
「イシツブテ!【ほのおのパンチ】‼︎」
キモリの攻撃を躱したイシツブテは炎を纏った拳でキモリを攻撃した。
「キモリ!!!」
攻撃を受けたキモリはそのまま地面に叩きつけられてしまった。何よりも炎タイプの技を受けてしまったキモリには思った以上のダメージが入ってしまった。
《観戦席》
「炎タイプの技を覚えているの!」
「くっ‼︎草タイプ対策に覚させていたんだ」
タイプの相性で勝っているキモリが追い詰められていることにカノンとサトルは驚いていた。カノンはリーリエを心配に手を震わせ、冷静にバトルを見ていたサトルもだんだんと熱が入ってきたようで、強く拳を作りながらリーリエの試合を観ている。
《ジム戦》
一発だけであっても相当なダメージを食らってしまったキモリ。フラつきながらも根性で立ち上がった。
「キモリ、大丈夫ですか!」
心配するリーリエにキモリはゆっくりと頷く。
「もう一度【あなをほる】です‼︎」
再び地中に身を隠したキモリ。これではさっきと同じ展開を迎えてしまうぞ!
「イシツブテ!キモリが出て来たところに【ほのおのパンチ】だ‼︎」
イシツブテの直感力を信じているジロウは冷静に指示を出す。イシツブテももう一度気配を感じながらキモリが現れるのを待った。そして、その気配を気づいたイシツブテはゆっくりと自分が立っている下に目をやった。
イシツブテが空中へとジャンプした同時に真下から岩石が吹き出した。拳を高く上げて攻撃体勢に入るイシツブテ。しかし、キモリが現れる様子はなかった。
「えっ!」
これに戸惑ったジロウははれてくる土煙の中で岩石が吹き飛んだ場所に目をやると、そこには大きな穴が出来ておりその穴の中にはキモリが身を潜めていた。
そう、キモリ自身はまだ地中から飛び出していなかったのだ。
「【タネマシンガン】‼︎」
穴の中から放たれるキモリの【タネマシンガン】は空中で身動きが取れないイシツブテにヒットした。効果は抜群だ。
「決めさせていただきます!キモリ、【はたく】攻撃です‼︎」
今度こそ地中から飛び出したキモリは背後に回り、大きな尻尾で力強くイシツブテを真下へと叩いた。落下のスピードも加り、勢いよく地面に叩きつけられたイシツブテは目を廻してた。
「イシツブテ戦闘不能!キモリの勝ち!」
「やった!ありがとうございます。キモリ!」
《観戦席》
「すごいリーリエ!」
「うん!リーリエの方はまだ一体も失っていない。これなら行けるよ」
「たしかにポケモンの数だけでは勝ってはいるが、リーリエさんのポケモン達はみんなダメージを負っている。まだこの勝負はどっちに転ぶか分からないぞ」
スコア的にはリーリエに軍配が上がっているのは確かであるが、状況的にキツイのはリーリエの方でもあった。最後まで何があるか分からない。それはリーリエも分かっている。
《ジム戦》
「お疲れイシツブテ。リーリエさん、先ほどのキモリの動きにはすっかり騙されてしまいました。お見事です」
「ありがとうございます!」
「さぁ、これが僕の最後の一体だ!行けっ‼︎」
こうして、ジロウの最後のポケモンがフィールドに放たれた。現れたポケモンはリーリエも見たことがないポケモンだった。
『ヨーギラス いわはだポケモン
岩・地面タイプ
主に土を主食としている。大きな山ひとつ食べ終わると成長のため眠り始める』
現れたのはジョウト地方で確認されたポケモン、ヨーギラスだ。フィールドに立つなりヨーギラスは凄まじい雄叫びをあげた。恐らくさっきまで戦ったイシツブテやイワークよりも強いポケモンであると、リーリエはそう感じた。
「キモリ行けますか?」
イシツブテ戦での戦いに勢いがついたのか、キモリは溢れんばかりの闘志を燃やしていた。その気持ちに応えるようにリーリエはキモリのまま行くことに決めた。
「キモリ!【タネマシンガン】です‼︎」
先手必勝。勢いよくジャンプしたキモリは無数の種をヨーギラスに向かって撃ち込んだ。しかし、ジロウとヨーギラスは慌てる様子が無い所か躱す素ぶりを見せていなかった。
「避けない⁉︎」
その光景にリーリエは驚いていた。キモリの技が迫ってくる。するとジロウはゆっくりとヨーギラスに技の指示を出した。
「ヨーギラス!【てっぺき】だ!」
鋼タイプの技、【てっぺき】。自分の体を鋼の様に硬化させて防御力を高めたヨーギラスは迫り来るキモリの攻撃を受けた。キモリの技は確かに決まったはずだ。
だが煙がはれると、そこにはほぼ無傷の状態で立っているヨーギラスの姿があった。
《観戦席》
「いくら防御力を高めたからと言って効果は抜群の技を受けても、あの程度のダメージしか与えられていないなんて…」
ヨーギラスの行動には、カノンとサトルも驚いていた。
《ジム戦》
ヨーギラスの行動に驚いたリーリエだが近づいた隙を狙おうと、すぐにキモリに指示を出した。
「【でんこうせっか】です‼︎」
「ヨーギラス!【ストーンエッジ】‼︎」
自慢のスピードでヨーギラスに迫るキモリ。ヨーギラスは自分の体に二本の白い光の輪を包み込ませると、自分の周りに多数の鋭利な石が現れ、相手に向かって放たれた。迫り来る石の乱射をキモリは自慢の瞬発力で躱していく。
しかし、何発も撃ち込んでくる【ストーンエッジ】との差が生まれてしまったようで、あともう少しの所でその内の一つがキモリに決まってしまった。その後、連鎖するかのように無数の石がキモリに命中していく。
「よし!【あくのはどう】‼︎」
さらにヨーギラスは手から悪意に満ちた黒と紫の光線をキモリに放つ。躱しきれなかったキモリはそのまま黒いオーラに包み込まれてしまった。
「キモリ!!!」
キモリの安否を確認するリーリエ。土煙がはれると、そこにはボロボロになりながらも根性で立ち上がっているキモリの姿があった。
「大丈夫ですか!キモリ‼︎」
リーリエの方にキモリは目をやる。キモリは軽く笑みを浮かべ、軽く拳を上げたが…
「あっ…」
そのままフラつき始めるとゆっくりと地面に倒れ込んでしまった。
「キモリ戦闘不能!ヨーギラスの勝ち!」
《観戦席》
「キモリ…負けちゃた」
「イシツブテの【ほのおのパンチ】が思った以上に効いていたんだね」
《ジム戦》
「戻って下さいキモリ!ありがとうございました。後はゆっくり休んで下さい」
これでリーリエも一体が戦闘不能になってしまった。ヨーギラスの方はキモリとのバトルを感じさせていないほど、パワーが溢れていた。スピードで撹乱させて一気にチャンスを狙って行くことに決めたリーリエはいま残っている二体の中でスピードが速いポケモンを繰り出した。
「もう一度お願いします。ムックル!」
再びバトルフィールドに姿を現したムックル。それと同時に無数の岩がムックルの周りを浮上すると、そのまま追撃した。
「ムックル!!!」
岩のトラップによってダメージを負ったムックルはそのまま地面に倒れ込む。その後、根性で翼を広げて空へと舞い上がった。
《観戦席》
「【ステルスロック】は岩に対する相性分のおよそ八分の一のダメージを負ってしまう。ムックルには相当なダメージが入ったな」
「リーリエ。苦しくなってきたね」
タケシの説明の通りだと飛行タイプのムックルは普通なら戦闘不能になっても可笑しくないダメージを負ったはずだ。バトルの流れはジロウになってきたことに少しながらカノンとサトルは感じていた。
《ジム戦》
「ムックル!【はがねのつばさ】‼︎」
「ヨーギラス!【ストーンエッジ】‼︎」
翼を硬化させ急降下するムックルに無数の石が乱射される。
「さらに【でんこうせっか】‼︎」
【でんこうせっか】によるスピードも加わったムックルは無数の石を躱し着ることが出来た。そして、そのままヨーギラスに硬化させた翼を当てることに成功した。
《観戦席》
「決まった!」
「【でんこうせっか】によってさらにムックルのスピードを加速させるなんていい作戦だよ」
《ジム戦》
「もう一度、【はがねのつばさ】‼︎」
「【てっぺき】でガードしろ!」
再びヨーギラスに迫るムックル。もう一度技が決まると思ったが、体を硬化させたヨーギラスは腕でムックルの【はがねのつばさ】を受け止めた。
「【ばかぢから】‼︎」
ムックルの攻撃を止めたヨーギラスは物凄いパワーでムックルを叩きつけた。
「ムックル!!!」
格闘タイプの技はムックルには効果はいまひとつであったが、もうすでに虫の息でもあったムックルを戦闘不能にさせるのには、十分すぎる威力であった。
「ムックル戦闘不能!ヨーギラスの勝ち!」
「ありがとうございます。ムックル!よく頑張ってくれました」
《観戦席》
「残りはシロンだけか」
「ああ…。リーリエさんの勝敗はロコンの氷タイプの技を上手く決められるかどうかにかかってるね。だけど、そう一筋縄にいかないのがジロウだ」
「頑張れ!リーリエ!シロン!」
《ジム戦》
「最後は貴方です。お願いしますシロン!」
リーリエの指示にシロンは大きく吠える。リーリエの最後のポケモンが今、バトルフィールドに現れた。
「気合いが入ってるようだね。さぁ!これが最後のバトルだ‼︎」
最後の戦いをむかえたこの最初のジム戦。そこには試合する前、緊張のあまり体を震わせていたリーリエの姿はどこにも無かった。泣いても笑ってもこれで勝者が決まるのだ。
「シロン!【ムーンフォース】‼︎」
「ヨーギラス!躱して【ばかぢから】‼︎」
月のエネルギー砲をヨーギラスに放つシロン。その技をヨーギラスはジャンプして躱すと、パワーを貯めた右腕でシロンに迫ろうとしていた。
「【こおりのつぶて】です‼︎」
シロンも氷の礫でヨーギラスに迎え撃った。重なり合う二つのパワーの衝撃波によりシロンとヨーギラスはお互いに後ろの方へと吹き飛ばされてしまった。
「シロン!!!」
「ヨーギラス!!!」
なんとか立ち上がったシロンはすぐに体勢を立て直した。ヨーギラスはというとすぐに立ち上がってはいたが、その表情は少しばかりか辛そうであった。やはり【てっぺき】で防御力を上げていたとはいえ、攻撃が効いていないというわけではなかった。ここにきてキモリとムックルの頑張りが形となって現れたのだ。
しかし状況がリーリエ達に向いているとは限らない。シロンの体力も限界が近いし、長引かせるのも危険であった。
ヨーギラスに有効なのは氷タイプの技。しかし、むやみに撃った所で躱されたり、イワークの時みたいに岩タイプの技で壁を作って防いだりしてくるかもしれない。一体どうすれば……
……壁を作る……
一瞬にしてリーリエの脳裏に何かが閃いた。一か八かに賭けてみるしかない。覚悟を決めたリーリエはシロンを呼ぶ。卵の時からずっと一緒にいたシロンも口に出さずともリーリエの考えが不思議と分かっていた。お互いに軽く頷きかけると、すぐにその策を実行に移した。
「シロン!ダッシュです‼︎」
シロンは渾身の力で地面を大きく蹴り、ヨーギラスの方へと走って行った。
《観戦席》
「えっ?ヨーギラスに向かっていくよ」
「リーリエは何を考えているんだ」
突然のリーリエとシロンの行動に二人は目を見開いてしまった。
【でんこうせっか】のようなスピードに乗れていない、これでは【ストーンエッジ】の格好の的になってしまう。
《ジム戦》
「シロン!そのまま【こおりのつぶて】です‼︎」
「何するか分からないけど、これで止めです。ヨーギラス!【ストーンエッジ】‼︎」
「シロン!そのまま氷をもっと大きく‼︎」
容赦無くヨーギラスの攻撃がシロンへと撃ち込まれた。だがシロンは氷の塊を形成するとすぐに撃つことはなく、その形を保ちながらゆっくりと周りの空気を冷やしながら氷の塊を大きくしていった。大きく形成された氷の塊は次々に撃ち込まれていく石の弾丸から護る壁となり、シロンはヨーギラスの攻撃を跳ね返しながら前へと進んで行く。
「なるほどね。ヨーギラス!【ばかぢから】に切り替えろ‼︎」
【ストーンエッジ】から【ばかぢから】に切り替えたヨーギラスはその氷の塊に向かって拳で殴りつけた。ヨーギラスの攻撃で砕かれていく氷の塊は周りに飛び散った。だが、それ以上に驚くことはシロンの姿を確認しようと氷の後ろに目をやると、そこにいるばずのシロンが忽然と姿を消していたのだ。
「えっ⁉︎」
突然の事に驚いたジロウもヨーギラスも辺りを見渡しシロンを探し始めた。だが、砕けた氷の破片によって視界を遮ぎられてしまい、良く見渡すことが出来ない。焦りを感じたヨーギラスは必死に目を凝らして探していると、背後から何かの気配を感じた。
振り替えてみると、そこにはシロンの姿があった。気づいた時にはシロンは口を大きく開いて攻撃体勢に入っていた。
「シロン!最大パワーで【こなゆき】です‼︎」
ありったけの力を込めて、シロンはヨーギラスに凄まじい冷気を浴びさせた。あまりの勢いにヨーギラスは空中へと飛ばされてしまった。
「くっヨーギラス!【ストーンエッジ】‼︎」
「【こおりのつぶて】です‼︎」
なんとか空中で体勢を立て直したヨーギラスだったが、技を発動する前にシロンの氷の礫がヨーギラスに命中した。
「ヨーギラス!!!」
技を受けたヨーギラスはそのまま地面へと落下していく。倒れたヨーギラスは目を回し、再び立ち上がる様子はなかった。
「ヨーギラス戦闘不能!ロコンの勝ち!
よって勝者はチャレンジャー、リーリエ!」
勝負は決した。リーリエの勝利だ。
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『見事な勝利ロト!』
リーリエの喜びに応じて、シロンも急いでリーリエの元へと駆け寄ると元気よくリーリエの胸の中へと飛び込んだ。
「シロン!よく頑張りましたね!!!お疲れ様です!ありがとう!!!」
リーリエはシロンを優しく抱きかかえるとそのまま自分の頬をシロンの頬に重ね合わせた。シロンも嬉しそうに鳴いていた。
《観戦席》
「勝ったぁぁ!リーリエが勝った!」
「すごいよリーリエ!」
「あぁ…見事なバトルだった」
カノンとサトルも自分の事のようにリーリエのジム戦勝利を祝った。久々に熱いバトルを観たタケシも大きな拍手を送っていた。
ジム戦を終えたリーリエの元にジロウがやって来た。リーリエも頑張ってくれたムックルとキモリをモンスターボールへと出すと、二体もシロンと一緒にリーリエの前へと並んだ。
「リーリエさん!貴方の臨機応変な対応。そしてそれに応えてくれるポケモン達の戦いぶり、実に見事でした」
「此方こそありがとうございました。わたくしやシロン達にもとてもいい勉強になりました」
そしてジロウはリーリエの前に綺麗な布で覆ったお盆トレーを差し出した。そこには銀色に光り輝くバッチが添えられていた。
「それでは受け取って下さい。これがニビジムを降した証、グレーバッジです」
「ありがとうございます」
リーリエはそう一礼を交わすと、グレーバッチを受け取った。
「グレーバッジ!ゲットです!!!」
リーリエがグレーバッチを持っている手を高く上げると、シロンを含めた三体も喜びの声をあげた。
こうして、リーリエの初めてのジム戦は見事な勝利に終わった。
だが、ポケモンリーグに出場するためにはあと七つ集めなければならない。次なる挑戦を胸に、リーリエは暫くシロン達とこの勝利の喜びを分かち合うのであった。
ここまでの登場人物紹介というのも書いていこうと思います。
⚠︎ポケモン達の性格はゲームとは異なります。性格によって能力補正がかかる訳ではありません
リーリエ 10歳
出身:アローラ地方
性別:女性
この作品の主人公。母親の治療のためにカントー地方を訪れた。
強くなった姿を母に見て欲しいと思い、ポケモンリーグの出場を目標に旅に出ることを決意する。
手持ちポケモン
ロコン:アローラの姿(NN:シロン)
タイプ:こおり
性別 :♀
性格 :おとなしい
トレーナーズスクールで育てた卵から孵ったポケモン。リーリエの最初のポケモンでもあり相棒でもある。
ムックル
タイプ:ノーマル ひこう
性別 :♀
性格 :がんばりや
リーリエが初めてゲットしたポケモン。空中戦を得意とする。
キモリ
タイプ:くさ
性別 :♂
性格 :れいせい
トキワシティでスミレから譲り受けたポケモン。自慢のスピードでどんなポケモンにも立ち向かって行く。