ポケットモンスター let's goリーリエ! 作:アニポケ大好き主
いろいろと忙しかったため、中々執筆の方を進めることが出来ませんでした。
これからも、こういった更新の遅れが目立ってしまうと思いますが何卒よろしくお願いします。
お話の続きとしてはサトルとピカチュウの過去話からとなります。
それでは、どうぞ!
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「すごい!ここがトキワの森なんだ!」
「サトル君!そんなに先に行ってしまうと、逸れてしまうぞ!」
「ご…ごめんなさい。ボルグ博士!」
初めて野生に生きるポケモン達を前に胸を弾ませ、走り出そうとしていたサトルをボルグは優しく注意を促した。
碧深き渡るトキワの森。父の知人であるボルグという研究員に連れられ、サトルは初めて野生ポケモン達が潜むエリアへと足を踏み入れた。
もうじき、十歳の誕生日を迎えるということで、将来ポケモントレーナーとして旅立つに日に備え、自分のパートナーとなるポケモンを探しに訪れたのだ。
「初めてのフィールドワークに気持ちが弾んでしまうのは分かるが、ポケモンを持っていないサトル君にはここは危険地帯でもあることは忘れずにな」
「はーい!」
ボルグの言いつけにサトルは元気よく答えた。見渡すと気持ちよさそうに日向ぼっこをしているキャタピーや進化の時をじっと待っているトランセル、そしてトキワの森を訪れたサトルを歓迎するかのように太陽の光に照らされ銀色に輝く鱗粉を撒きながら頭上を一斉に飛んで行くバタフリーの姿があった。
それからいろいろなポケモンに出会うもののサトルは目的としているポケモンは見つからないでいた。
「ところで、サトル君が探しているポケモンは何かね?」
最初のポケモンはすでにサトル自身の中で決まっているのか。ここまで出会ったポケモンに気にも止めずに探し回っているサトルにボルグは疑問を抱いていた。サトルは満面の笑みでボルグの質問に答えた。
「それはもちろん、ピカチュウだよ!」
「ほぅ…ピカチュウか。それはまたなぜ何だい?」
「僕もサトシみたいなトレーナーになりたいからだよ!そんなサトシの最初のポケモンもピカチュウだからね」
先日に行われたカントーリーグセキエイ大会。そこで初出場ながらも唯一マサラタウンのトレーナーで予選を勝ち抜きベスト16入りまで果たしたサトシの戦いをテレビ中継で観ていたサトルは彼のいちファンとなっていた。いつか彼と肩を並べられるようなトレーナーになりたい。だから、彼と同じで最初のポケモンはピカチュウと決めていたのだ。
そんなサトルの話を聞いた最中…
ズドーン!!!!!!!!!
地鳴りと共に森全体を覆うような鋭い雷が、頭上高く発せられると同時に大きな雷鳴が鳴り響いた。
「なんだ、いまの電撃は?」
空を見上げると雲ひとつない快晴。つまりさっきの雷は電気ポケモンによるものだと推測したボルグはサトルを連れ、雷が起こった場所へと急いで駆け出した。
目的地に到着すると、周りの木々は押し倒されており焦げた形跡があった。この有様から凄まじい威力であったことを物語っている。そしてそこには身体の至る所から電流を発しながら苦しんでいる一体のポケモンの姿があった
「博士!あのポケモンは?」
「ピチューだ…」
ピカチュウの進化前に該当するポケモン。そのピチューは自分の中に溜まった電気を出そうと光のように辺り一面に散乱した。
「危ない!!!」
電気がサトルに当たらないようにボルグは自分を縦にしてサトルを電流から守った。
「行けっ!ライボルト‼︎」
ボルグはピチューと同じ電気タイプのポケモンであるライボルトを繰り出した。ライボルトはすぐにピチューの元へと駆け寄ると自分の前足でピチューの身体を押さえ込んだ。すると、再びピチューの体から電気が辺り一面に放出された。
暫くして大きく放たれた電気はだんだんと治っていく。ライボルトがピチューから離れるとピチューはぐったりとその場で気を失っていた。
「ピチューが…」
「大丈夫だ!ライボルトの避雷針を利用して貯蔵できない分の電気を少しライボルトに流しただけだ。それよりも一度ポケモンセンターに連れて行かないと!」
ピチューを抱えサトルとボルグは急いでトキワシティのポケモンセンターへと走り出した。
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ポケモンセンターに辿り着つき、そのままピチューは治療室へと運ばれて行った。
数分後、安心した顔で治療室から出たジョーイさんは二人の元へと駆け寄った。
「大丈夫です。ピチューはすっかり元気になりましたよ!」
「ありがとう!ジョーイさん!!!」
ピチューの無事を知ったサトルはポケモンセンター内に響き渡るぐらいの大きな声でジョーイさんにお礼を言った。
「ですが…」
「何か問題でも?」
仕事の疲れでもなさそうだ。少し声を凝らしたジョーイを見てボルグは訳を聞いた。
「目を覚ましましたら、私を見るなり急に暴れて出してしまいまして…」
それを聞いたサトルは無我夢中に治療室の中へと走り出していた。呼び止めようと急いでサトルの跡を追うボルグ。それにつられるようにしてジョーイも跡を追った。
治療室はガラス越しからポケモンの様子をトレーナーが見ることが出来るようになっている。そこからサトル達は中の様子を覗いてみると、辺りを警戒しながら両頬の電気袋から電気を発しながら身構えているピチューの姿があった。サトル達に気がつくと目を鋭く尖らせては牙を剥き出しながらこちらを睨んでいた。その表情はピチュー特有の愛くるしさがなかった。人間への憎しみ。そんなものだけが感じられた。
「あの様子だと…我々人間に酷い事をされたのであろうな…」
その言葉を聞いたサトルはすぐに治療室の中へと入る扉の前に立つと中へと入っていった。
「サトル君!ダメよ、危ない!」
サトルの思いもよらない行動にジョーイはサトルを連れ戻そうとしたが…
「ボルグさん?」
「ここは少し様子を見てみましょう」
止めに入ろうとしたジョーイさんをボルグは肩を掴んで止めた。人に懐いていない野生のポケモンに近づこうとするまだ幼い年頃の少年。今すぐにでも止めるべき状況であることは分かっている。だが、サトルのポケモンに対する思いやりの感情がピチューの閉ざした心を開かせることが出来るのではという、実に根拠のない考えであるが、不思議とそれに賭けてみたいとボルグはそう思ってしまった。
サトルは治療室に入るなり、ピチューの元へと近づいていく。あまりピチューを刺激させてはいけないようサトルはピチューと同じ目線になるように体勢を少し下げたままピチューの元へと向かった。
「こんにちは、ピチュー。僕はサトル。僕は君に酷い事をしないよ。だから、大丈夫!こっちにおいで…」
電撃を仕掛けてこないだけよかったが、ピチューは近づくサトルを見ては唸り声をあげながら警戒している。だけど、今のサトルには恐怖心ではなくピチューを助けてあげたいという気持ちが強かったのであろう、サトルは御構い無しにピチューの頬に手を差し伸べようとしていた。
「君は僕の事が嫌い?」
サトルの手が近づいてくることにさらに身構えるピチュー。いつ攻撃されてもおかしくない。それでも…
「僕は君が好きだよ!」
サトルはピチューの頬に優しく手を置いた。ピチューが電気を貯め込んでいるのは両頬にある電気袋。そこに手をやると感電してしまう危険性もあったが、不思議なことにあれだけ電気を発していたのにもかかわらず、サトルは何事にもないように優しくピチューの頬を撫でる。するとピチューはサトルに対する警戒心が消えていき、少しずつ落ち着きを取り戻して行った。やがてサトルの気持ちが通じたピチューは自分の頬に置かれたサトルの手を優しく擦り合わせてきた。
「どうやら、もう大丈夫のようですね」
「ええ!」
ピチューの暴走が止まったことを確認したボルグとジョーイも治療室へと入っていった。再びピチューの方へと見たボルグの目にはさっきまで凶暴に暴れていたとは嘘のようにサトルに甘え始めたピチューの姿があった。その光景を見たボルグはある一つの提案が浮かんだ。だが、原因不明の暴走を引き起こすポケモンをまだ幼いサトルに任せていいのか。
だが…それ以上にこのピチューの暴走を止めたサトルの包容力に感心を持ったボルグはどうしてもサトルにピチューを任せてみようと思った。
「サトル君、そのピチューをパートナーにしたらどうだ?君が探していたピカチュウの進化前でもあるわけだしな」
突然のボルグの案にサトルは驚いた様子でいたが、サトルはピチューの方へと一瞬目をやってから元気よく答えた。
「うん!する!!!」
それにはピチューも元気よくサトルに続いて答えた。
「だったら、これを…」
そう言うと、ボルグは一つのモンスターボールをサトルに手渡した。
「フレンドボールだ!このボールはジョウト地方のボール職人であるガンテツという人が作ったモンスターボールだ。材料となる緑ぼんぐりにはポケモンの気持ちを落ち着かせる香りが強く、それに鎮静効果もある。そのぼんぐりから作られたこのフレンドボールでゲットされたポケモンはなつきやすくなるし、万が一またピチューが暴走したりしてもこのボールに入れてあげれば、落ち着かせることが出来ると思う」
「ありがとう。ボルグさん!」
「ただし、またあんなことが起きてしまうといけないから無理にピチューにバトルをさせないこと!それだけは約束だ」
「はい!これからよろしくね。ピチュー!」
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リーリエとカノンは飲み物が入ったコップを両手で握りしめながらサトルの話を聞いていた。サトルとピカチュウの出会い。そしてピカチュウの身に起こる謎の症状。サトルの話を聞き終わったにも関わらず、二人はコップに口をつけることなく、握りしめたまま固まっていた。
「普通に暮らしたり多少のバトルは大丈夫なんだけど、バトルで大きなダメージを負ったりすると、さっきみたいに暴走して制御出来なくなってしまうんだ。だから、ピカチュウにはその原因が分かるまでバトルはあまりさせないようにしていたんだ。」
「それだったら訳を話して、私みたいに二対二して貰えるようにジロウさんに頼めばよかったのに…」
「そう考えたけど、でもそれを提案すると二人とも絶対に訳を聞きに来るだろ。そのせいで二人ともピカチュウと接しづらしくなると思ったからさぁ…」
まだ旅立ってから日は浅いが、ここまで一緒に旅をしてサトルとピカチュウの悩みに気づいてあげられなかったことに対してリーリエは自分を責めてしまった。だが、そのリーリエよりも…
「ごめん…サトル」
いつものような天真爛漫な彼女とは違った。少し口を濁し、少し低めなトーンでカノンは言った。
「スクール時代からいつも一緒にいるのにサトルとピカチュウにそんな悩みがあったことに気づいてあげられなくて、ごめんね。友達なのに…」
「いや、謝るのは僕の方だよ。ここまで一緒に旅をして来たのに、そんな大事な事を二人に打ち明けようとしなかった。カノンとリーリエがピカチュウの事について話して態度を変えるような人達じゃない。だけど、頭で分かっていても消極的な方へと考えてしまう僕の悪い癖のせいで、ずっと…ずっと…黙って隠してしまった…」
悩みを打ち明けられなかったことに対して自分を責め続けるサトル。そんな彼の震えている手をそっとリーリエは自分の手を重ねた。
「リ…リーリエ?」
急なことにサトルは一瞬驚いてしまった。一度、深呼吸をして心を落ち着かせたリーリエは真っ直ぐな目でサトルの方へと向いた。
「わたくしは自分の悩みを平気で打ち明けるような人はいないと言い切りませんが、誰にだって打ち明けるのが怖くないという人はいないと思います。その一言でその人達との関係性がどう変わってしまうのか、どんなに頭の良い方でも人の感情までも正しい正解を導き出すことは出来ません」
……………………………。
「サトル、顔上げてください」
俯いていたサトルはリーリエの一言で顔を上げた。もう一度、二人の顔を見たサトルは不思議と気持ちが落ち着いてきたような感じがした。それは、二人がいつもと変わらない表情でサトルを見てくれたからかもしれない。
「サトル。話してくれてありがとうございます。ですが、これだけは約束して下さい。これから一緒に旅をしていく仲間なのですから、もう一人で抱え込まないで下さい。もう隠し事は無しですからね!
固いことはいらない。その言葉だけでもサトルは救われた。少し鼻声となってしまった声でサトルは返事を返す。ピカチュウの暴走の件には驚きもした。だけど、その事を知ることが出来た事でより一層、三人の絆をもっと深めていくことができたと思う。それはリーリエだけでなく、カノンもサトルもそう思ったはずだ。その証拠にあれだけ落ち込んでいた二人に笑顔が戻ったのだから…
「そうそう♪それぐらいのことで私達がピカチュウを怖がったりすると思ってた〜♪サトルは一人で考えすぎなんだよ!友達なんだから隠し事はこれからなーしだよ!」
いつもの感じに戻ったカノンは人差し指をサトルの口元に押し付けた。サトルの口元から離すともう一度軽く笑みを浮かべた。それを見て安心したサトルは緊張が解けたように肩の力が降りていた。
話も終わり三人は一度、自分たちの部屋に戻ろうと移動しようとしたその時…
ドッゴーン!!!!!
建物全体が地響きで揺れ始めた。それほどの衝撃音が鳴り響いた。
「何!何!なんの音?」
揺れがおさまるとリーリエ達はポケモンセンターの窓から音が鳴った方角へと目をやった。その方角からは黒い煙が立ち昇っていた。
「あそこは…確か科学博物館があった場所です!」
「何が起きたんだろ?」
「とにかく行ってみようよ!」
三人はポケモンセンターを飛び出すと一目散に科学博物館の方へと走り出して行った。
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科学博物館は大きく損傷していた。リーリエ達が科学博物館に到着すると、そこにはタケシとジロウの姿があった。
「タケシさん!ジロウさん!」
「三人共!」
「何かあったんですか?」
「科学博物館が何者かに襲撃されたみたいなんだ」
「襲撃…まさかロケット団?」
「分からない。だが、今日は休館日だったから負傷者が出なかったのが不幸中の幸いだった」
タケシとジロウから現場の状況を聞いたリーリエ達。その直後、一台の白バイが科学博物館へと向かってきた。
「ジュンサーさん」
「みなさん、怪我はありませんでしたか?」
「自分たちは大丈夫です。」
「それは良かった。だけど、何が起こったとでもいうのかしら…」
その時、建物の中から如何にも感じの悪いトレーナー達が現れ、モンスターボールを持つとリーリエ達を包囲した。突然のことで困惑するリーリエ達を嘲笑うかのように、科学博物館から少し長めの緑色の髪をした青年が現れた。
「おっと、これはこれはジムリーダさん。随分とお早い登場で…」
その男は挑発じみた態度を取りながら、リーリエ達に歩み寄ってきた。慌ててジュンサーはその青年に問い詰める。
「御前達一体何者なの?ロケット団なの⁉︎」
「さあな!素直に答えるわけでもないけどよ!」
その青年が指で音を鳴らすと同時に、周りのトレーナー達は一斉にモンスターボールからポケモンを繰り出した。そのトレーナー達もリーリエ達を嘲笑いながら、ゆっくりとその距離を縮めていく。同じ戦闘服を身につけているが、彼らの胸元にはロケット団の象徴でもある【R】マークが印されていない。
「悪いが、大人しくしてもらうからな。ジムリーダとその御一行様達もよ。お前ら!ここは任せたぞ〜」
「待ちなさい!!!」
そう言い残すと青年は一人、科学博物館の中へと姿を消した。跡を追おうとしたがその青年の仲間のトレーナー達に行く手を塞がれてしまった。そのトレーナー達も自分のポケモンに合図を送ると、一斉に戦闘体勢へと切り替えていた。
やむを得ない。タケシは二つのモンスターボールを放り投げた。
「出てこい!ウソッキー!グレッグル!」
繰り出されたタケシのポケモン達も放たれた同時に戦闘体勢へと入っていた。それに続いてカノンもヒコザルとフシギダネをモンスターボールから出現させた。その後、タケシとカノンは同時に三人の方へと振り返る。
「ジロウ!お前はあいつを追ってくれ‼︎」
「リーリエ!サトル!ここは私達に任せて!二人はジロウさんと一緒にあいつを追って!」
二人の言葉に三人は了承した。ここで全員足留めをくらう訳にはいかない。それにこれは単なるテロ行為ではないことはリーリエ達も分かっている。きっと科学博物館内にある何かを狙っているのに違いない。
「あの男の後は僕達で追います。ジュンサーさんはできるだけ増援を呼んでください」
「わかったわ!みんな気をつけて!!!」
「「「はい!!!」」」
タケシとカノンとジュンサーを残してリーリエとサトル、そしてジロウはその青年の跡を追って科学博物館の中へと入って行った。
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跡を追っていくリーリエ達が行き着いたのは科学博物館内に設備されているポケモン化石研究所だった。
「出てこい!ドサイドン!」
ジロウは自身の切り札でもあるドサイドンを繰り出すと、ドサイドンを先頭にして研究室の中へと入って行った。化石研究所ともあれば、化石ポケモンがいるはずと思っていたリーリエとサトルであったが、化石から蘇ったポケモン達は古代の環境をそのままに再現したポケモンエリアへと移されるため、化石ポケモン達が危険な目に遭わずに済んだ。
「まぁ、彼奴らだけでお前ら全員を足止めとは考えてなかったし、ジムリーダとその他二名ぐらいは俺の跡を追ってくると思ったさぁ」
薄暗い影に隠れていた青年はリーリエ達が研究所に入ってくるのを待っていたかのように、不敵な笑みを浮かべながら立っていた。化石研究所に向かったのであれば、ジロウはその青年の狙いが何なのか理解した。
「そうか…御前達の狙いは化石復元マシンだな!」
「ビンゴ〜!化石ポケモンを蘇らせることが出来る素晴らしい化学発明品。これを
化石ポケモンを蘇らせることに使われる化石復活マシン。主に化石ポケモンの生態を研究するために使わるマシンであるため世間には出回っていない代物だ。それどころか、このマシンさえあれば化石ポケモンを何体でも蘇らせることができる。それが悪の手に渡ってしまうようなことがあれば、とても大変なことだ。
リーリエはシロンを前にして、残りのモンスターボールを手に取った。
「貴方がこの発明品を使って何をなさるかわかりませんが、見過ごすわけにはいきません!」
リーリエに続いてサトルも前に出る。
「うん!その化石復元マシンをお前なんかに渡さない!」
「そうか…なら止めれるもんなら止めてみろよ!」
青年がまた合図を鳴らすと、海岸へと押し寄せてくる波のように何百体の小さなポケモン達が壁から天井からと一斉にドサイドンの体に纏わり付いてきた。一瞬にしてリーリエ達と青年の前に小型ポケモン達による大きな壁が造られた。
「このポケモン達はたしか…」
リーリエはそのポケモン達に見覚えがあった。確か、トキワの森で図鑑広げたときに表示されたポケモンだ。
「トキワの森で僕たちが会ったペンドラーの進化前、フシデとホイーガだ」
「ドサイドン!振り払うんだ」
体に纏わり付てきたフシデとホイーガをドサイドンは大きく体を振り回して振り払おうとする。だが、フシデとホイーガの毒攻撃でドサイドンは毒状態になってしまった。徐々に体力が奪われていくドサイドンはだんだんと力が抜け始めてきた。それを見かねたリーリエはシロンを前に出し、粉雪でドサイドンの体にへばりついているフシデ達を追い払おうとした。するとサトルのモンスターボールからクルミルが勢いよく飛び出してきた。
「どうしたんだ、クルミル?」
クルミルの性格から自分も加勢したいがために出てきたのかと思ったが、何かが違う。クルミルはその青年に対して身を震わせ野生独特の警戒心を露わにしていた。
「クルミル…まさか!!!」
いつもと違うクルミルにサトルはある一つの結論が浮かび上がった。
フシデとホイーガ ペンドラーの進化前
トキワの森 誰かに捨てられた
次々と頭の中へと表示されるキーワードを頼りにサトルはその青年に問いただす。
「もしかして、トキワの森のペンドラーはお前が離したポケモンなのか!」
自分のクルミルのあの様子。きっとトキワの森出身のクルミルだからこそあのペンドラーと同じ匂いをあの青年から感じ取ったのかもしれない。そんなサトルの言葉に
「さあな、何〜のことやら?」
青年は惚けた表情で軽く舌を出しながら見下した目で答えた。確証はない。トキワの森の件に関してはあの男の仕業なのか分からない。だけど、今は化石復活マシンをあいつに渡さない事が先決だ。
「皆さん!出てきて下さい!」
「ヒトカゲも頼む!」
手持ちのポケモンを繰り出したリーリエとサトル。だが、溢れんばかりにいるフシデやホイーガに行く手を遮られてしまい思うように動くことができないでいる。
「出てこいドラピオン‼︎」
リーリエ達が戸惑っている隙に、ボールから飛び出したドラピオンは二本の頑丈な爪で化石復活マシンを引き剥がそうとした。
『まずいロト!化石復元マシンが!!!』
「ムックル!キモリ!ドラピオンを止めて下さい!」
唯一、空中から仕掛けることができるムックルと垂直な壁でも登ることができるキモリはフシデ達の群れを躱しながら、ドラピオンの方へと向かって行く。化石復活マシンを引き剥がそうとするドラピオンに近づくことが出来た二体は空中へと飛び、リーリエの指示を待つ。
「させっかよ!ドラピオン!【ミサイルばり】‼︎」
ムックルとキモリの接近に気づいた青年はドラピオンに攻撃の指示を出す。指示に気づいたドラピオンは一度化石復活マシンを離すと、両腕の爪から針状の光線を二体向けて放った。惜しくも二体はドラピオンの攻撃を躱すことが出来ずに喰らってしまった。
「あのドラピオン、レベルが高すぎる!」
「戻って下さい!ムックル!キモリ!」
一撃で戦闘不能となった二体をリーリエはモンスターボールへと戻した。二体を倒したドラピオンはもう一度、化石復活マシンを掴みに掛かろうとしていた。それを見たサトルはフレンドボールを取り出した。
「頼む!ピカチュウ‼︎」
大きく投げ込まれたフレンドボールはフシデ達の群れを追い越し、その中からピカチュウが飛び出した。飛び出すと同時にピカチュウは電気袋から電気を放つとすぐに攻撃態勢へと切り替えた。
「ピカチュウ!【10万ボルト】‼︎」
「ちっ、ドラピオン!【クロスポイズン】‼︎」
体勢が不安定な空中でピカチュウは標的であるドラピオンに向けて、一気に電撃を放った。そのピカチュウの攻撃にドラピオンは具現化した毒の刃を叩き込んだ。衝突した二つの技は激しい爆発音と共に互いを相殺した。
「ひょえ〜、あのピカチュウなかなかパワーあるな」
自身の切り札でもあるドラピオンの技が打ち消されたことに青年はサトルのピカチュウの実力に驚いていた。
「【アイアンテール】‼︎」
「【どくどく】‼︎」
ピカチュウの攻撃がドラピオンに入る直後、近づいてきたピカチュウに向けてドラピオンは毒液をピカチュウに付着させた。
「ピカチュウ!!!」
毒液を浴びたピカチュウは徐々に苦しみ出した。【どくどく】は単なる毒状態ではなく時間が経つにつれて減らされいく体力量が大きくなる猛毒状態になってしまうのだ。そんな猛毒状態の苦しみからピカチュウの体力は底尽きかけていた。しかし、相手のドラピオンは攻撃を止めようとしない。
「やれやれドラピオン!【クロスポイズン】‼︎」
「弾き飛ばせ!【10万ボルト】‼︎」
再びぶつかり合う両者の攻撃。しかし、猛毒状態が響いてしまったか。さっきみたいな攻撃力を出せなかったピカチュウの攻撃はドラピオンの攻撃に押し返されてしまった。電撃を打ち消した毒の刃はそのままピカチュウに決まってしまった。
「ピカチュウ!!!」
「手こずりさせやがって、ドラピオン!早く化石復活マシンを奪って引き上げるぞ!」
ピカチュウの戦闘不能を確信した青年はドラピオンを自分の元へと戻そうとした。
その時、
!!!!!!ピカッー!!!!!!
凄まじい電撃が一直線に天井へと伸びていく。神々しく光り輝く雷撃の中から全身を振るわせるほどの雄叫びを上げたピカチュウが赤く血走った目でドラピオンを睨みつけていた。
「あっ!」
「何だ!何だ!」
何が起きたか分からない青年。再びドラピオンはピカチュウの方へとかまえた。
「ヒトカゲ!【ひのこ】‼︎」
僅かに数少なく密集しているフシデとホイーガのピンポイントを捉えたサトルはヒトカゲの炎タイプの攻撃でフシデ達を退ける事が出来た。通り道ができたそこをサトルは一目散に駆け出して行く。
「リーリエ!ジロウさん!こっちだ!」
フシデとホイーガの壁から脱出したサトルはリーリエ達をこっちに誘導させようと呼びかけた。サトルの声を聞いたリーリエとジロウはサトルのヒトカゲが追い払った場所へと急ぐ。だが、フシデとホイーガは素早い動きでサトルが穴を開けた通り道をすぐに塞いでしまった。
「リーリエ!ジロウさん!」
「サトル!貴方は早くピカチュウの元へ向かって下さい。わたくし達なら大丈夫です!」
リーリエの言葉を受け、サトルは我を失い暴走するピカチュウの元へと向かった。
「ピカチュウ!僕の声が聞こえる⁉︎」
走りながら必死にピカチュウを呼ぶサトル。だが、その声はピカチュウに届いていない。ピカチュウは四方八方に電撃を放ちながら、研究室全体に響き渡るような唸り声を上げ続けた。その内の電撃がドラピオンの方へと向かうとドラピオンは避けることなく大きな二本の爪でピカチュウの電撃を食い止めようとした。だが、さっきと比べものにならない威力にドラピオンは受け止めきれずにそのまま押し倒されてしまった。
「なぁ‼︎ドラピオン!」
そのままピカチュウの電撃に押し返されてしまったドラピオンはその場に崩れ落ちた。ドラピオンが倒れたにも関わらず、我を忘れているピカチュウはそのまま四方八方に電撃を放っていた。
「落ち着くんだ!ピカチュウ!!!」
ピカチュウの元へと駆けつけたサトルは自分の両腕でピカチュウを抱き上げた。だが、サトルの必死の呼びかけはピカチュウの耳には届いていない。自分の中で暴発的に起こる電撃を制御仕切れずに苦しみ悶えている。踠きこうとしたピカチュウはサトルを巻き込んだまま電撃を放つ。
「サトル!」
急いでリーリエ達もサトルの元へと駆けつけたいのだが、無数に湧き出てくるフシデとホイーガの群れに行く手を阻まれてしまう。
「シロン!【こなゆき】‼︎」
「ヨーギラス!【ストーンエッジ】‼︎」
『ダメだロト!いくら攻撃してもキリがないロト!!!』
いくら倒しても数が多すぎるフシデとホイーガは群れをなす。さらに取り囲まれているため何処からともなく毒針などの攻撃が飛んでくる。その技を避けながら時には喰らいながらも戦っているシロンとヨーギラスの体力はもう限界に近づいてきてしまっている。
ピカチュウの電撃に包み込まれたサトル。だが、それでもサトルはピカチュウを呼び続けた。
「ピ…ピカチュウ!この力にのまれるな!耐えるんだ!ピカチュウ!!!」
容赦無く襲いかかる電撃に負けじとサトルは何度もピカチュウの名前を叫ぶ。こうなった場合いつもはボールに戻して解決してきたのだが、それじゃダメだ。
まだ、幼かった自分の無責任な事であれピカチュウをパートナーに選んだのは自分だ。パートナーに選ばれたそのピカチュウが頼れるのは主人である僕だけだ。だったら、僕がそんなことで逃げ出してはダメなんだ。
「正気に戻ってくれ!!!ピカチュウ!!!」
ありったけの声で叫んだサトル。すると、徐々に自分の体に流れる電流が少し弱くなっていることに気がついた。ピカチュウの様子は、さっきまで血走っていた目が少しずつ穏やかさを取り戻しつつある。暴走が止んだのだ。
「あっ!ピカチュウが!!!」
『ピカチュウの正気が戻ったロト!』
正気を取り戻しその場でぐったりと崩れ落ちるピカチュウ。ことの重大を理解したピカチュウは頭をサトルの胸に押し付けながら、申し訳なさそうにサトルの顔を見上げていた。
「大丈夫だよ、ピカチュウ。…ごめんね、無理をさせちゃって…」
サトルはゆっくりとピカチュウの頭を撫でた。それに安心したのかピカチュウはそのまま眠ってしまった。
「そのピカチュウ、なかなか強いじゃねぇか。土産としてそいつも頂くのもありだな!それに…」
ピカチュウの暴走が止まったことを見計らった青年はサトルを見下すようにして吐き捨てた。
「等のピカチュウさんのトレーナーはそのピカチュウの力を全然使いこなせてないみたいだしよ!あっはははは!!!!!!!」
青年は研究室全体が鳴り響いくほどの声量で笑い始めた。それに動じず、サトルはピカチュウを抱えたまま青年を睨みつけた。
「お前が言うように僕はトレーナーとしてまだ未熟者だよ。自分のポケモンが苦しんでいるのに何もしてやることも出来ない。それどころかピカチュウを苦しめないようにとバトルさせてこなかったけど、本当はまた暴走してしまうピカチュウが怖くて、向き合うのがただ怖かっただけだったかもしれない。心配している振りをしているだけで、自分のポケモンが苦しんでいるときに何もしてやる事が出来なかった」
再びピカチュウに目をやるサトル。静かに眠っているピカチュウを見て、決意した表情でもう一度青年の方へと目をやった。
「だけど、もう逃げない。ピカチュウはあの時から今日までこんな僕についてきてくれたんだ。それに答えてあげるためにも僕はピカチュウのこの力とも向き合っていく!これからも、ずっとだ。ピカチュウの苦しみは必ず僕が救い出させてみせる!!!」
「くっ〜カッコいいな!カッコ良すぎて笑いが止まらねぇや!だったらその大好きなポケモンと一緒にぶっ飛ばしてやるよ!ドラピオン‼︎」
青年の掛け声とともにドラピオンは攻撃体勢に入る。それと同時にサトルの手持ちポケモン、ヒトカゲとクルミルはサトルとピカチュウを護るようにしてドラピオンに向かい合う。ドラピオンはその二体を威嚇するように大きな声で吠え始めた。それに負けじとヒトカゲとクルミルも一緒になってドラピオンに向かって吠え始めた。すると…
「クルミル⁉︎」
突然、クルミルの体が発光し始めた。眩い光に包まれたクルミルは新たな姿と新たな力を授かろうとしていた。
「あれは…」
「進化が始まったんだ」
光が止み、目を凝らして見るとそこには
クルミルの新しい姿があった。すぐにロトムは図鑑を開いた。
『クルマユ はごもりポケモン
むし・くさタイプ
クルミルの進化系。葉っぱで体を包み込んで寒さを防いでいる。クルマユが住む森では木々がよく育つとも言われている』
「凄い、進化したのですね!」
「サトルさんの気持ちにクルミルが新たな力を得て応えてくれたみたいだ」
「素晴らしいロト!トレーナーのために進化するポケモン。ロトムは今!とても感動しているロト!!!!!!」
「クルミル…いや、クルマユ!」
ピカチュウを抱きかかえながらサトルはゆっくりと立ち上がった。
自分のことを信じてついて来てくれたピカチュウとヒトカゲ。そしてこんな自分の気持ちに応えて進化したクルマユ
今度は僕が応えてあげる番だ!!
「よし、クルマユ!【くさぶえ】だ‼︎」
進化と同時に新しい技を覚えたクルマユは自身の葉に口を当て繭に包まれたような心地よい音色を奏でた。その音色を耳にしたフシデとホイーガに絶え間ない睡魔が襲いかかった。
「フシデ達が」
『【くさぶえ】の効果で眠り状態になったロト!』
リーリエとジロウの行く手を遮っていたフシデとホイーガは次々と眠り状態となってその場で眠りに落ちて行く。
「行くぞ‼︎ヒトカゲ!【ひのこ】‼︎ クルマユ【はっぱカッター】‼︎」
すぐにサトルは二体に攻撃の指示を下した。二体の攻撃はドラピオンに直撃した。二体による同時攻撃を食らったドラピオンは蹌踉めき始めるとそのまま背を向けた。
「よし!クルマユ!もう一度【くさぶえ】だ‼︎」
油断してはならない。いくら進化したとはいえ敵のドラピオンのレベルは相当なものであることは分かっている。しかも毒タイプのポケモンでは草タイプのクルマユとは相性が悪い。このままゴリ押して攻撃するよりも眠らせてドラピオンを行動不能にした方が勝算はある。クルマユはサトルの指示通りに再び草笛に入る。
よし!これで…
!!!!!!!ドッッッン!!!!!!!
一瞬だった。ふらつきながらもドラピオンは長い尾を使って草笛を吹く直前にクルマユと隣にいたヒトカゲを同時に薙ぎはらった。
「勝った気でいたようだが残念だったな。ドラピオン!【ミサイルばり】‼︎」
追い討ちをかけるかのようにドラピオンの攻撃が二体にヒットしてしまった。技を喰らった二体はそのまま後ろにいるサトルの方へと吹き飛ばされた。万事休す、二体の体力は底を尽き掛けていた。
「【クロスポイズン】‼︎」
「ヒトカゲ!クルマユ!」
畳み掛けるように再度ドラピオンは攻撃を仕掛けた。自分のポケモン達はモンスターボールへと戻してやればいいものだが、ドラピオンの攻撃はヒトカゲとクルマユどころか後ろに立っているサトルをも巻き込むほどの大きな攻撃エネルギーを放っていた。迫り来るドラピオンの攻撃。応戦しようと駆けつけるリーリエ達であるがシロンもジロウのドサイドンもヨーギラスも走っていく体力はもう残っていなかった…
ダメだ。間に合わない。
ドゴッッッッンンンンン!!!!!!!
ドラピオンの攻撃に飲み込まれていくサトル。それをただ見ていることしか出来なかったリーリエ達。衝撃音が止むと同時に研究室内では、勝利を確信して高笑いしている青年の声と必死にサトルの名前を叫ぶリーリエの声だけが響いていた。
サトルの安否を確認しようとリーリエは頭の中で思い浮かんでくる最悪な状況を振り払いながらもサトルの方へと目をやった。煙が晴れていく。すると、一つの人影が見えてきた。
ある一体のポケモンの影と一緒に…
「なっ⁉︎」
『良かったロト!!!!!』
「リーリエさん!サトル君は無事ですよ!」
青年の驚いた表情。そして、ロトムとジロウの歓喜の声が響いた。
「よ…よかっ…た」
サトルの姿をようやく確認し安堵したリーリエはその場で崩れ落ちる。ドラピオンの攻撃がサトルに直撃されたと思ったが、サトル含めてサトルのポケモン達も無事だった。
サトルも自分自身の身に何が起きたのか分からずにいた。ゆっくりと自分の前に目をやると、一体の大型のポケモンがサトルの前に立ちふさがっていた。このポケモンの立ち位置からサトルは自分がこのポケモンに護ってくれたのだと理解した。
鋼鉄の四本の腕を持つそのポケモンはドラピオンの技のダメージを諸共しなかった。【クロスポイズン】を防いだにもかかわらはず、そのポケモンはサトルの前から離れようとしなかった。そのポケモンは通常とは違って銀色に輝くボディーをした色違い。そのポケモンはサトルを護りながら再び青年のドラピオンに向けて攻撃態勢を取った。
『メタグロス てつあしポケモン
はがね・エスパータイプ
四本の足を折り畳んで空中に浮かぶことが出来る。四つの脳はスーパーコンピュータよりも優れている』
サトルを護ったポケモン名はメタグロス。それと同時に研究室の入り口から一人、銀髪の青年が入ってきた。
「珍しい石を見つけたから調べてもらおうと思って来たんだけど…どうやら騒がしいことが起きているようだね」
銀髪の青年は中へと入っていく。顔が見えてくるとここにいる全員は目を丸くした。その青年とは初めて会うのだがその青年を知っている。銀髪の青年は自身の手持ちであるメタグロスの元へと近づくと、サトルの肩に手を置いた。
「大丈夫だ。後は僕に任せてくれ」
メタグロスと合図を取る銀髪の青年は胸元に飾したキーストンを握り締めながら、静かな闘志を燃やしていた。
如何でしたでしょうか?
何だか、サトルはこの作品のもう一人の主人公みたいなポジションになってきたような感じもします(笑)
番外編の方もできるだけ早く投稿できるように頑張ります。
それでは次回もポケモンゲットだぜー!!!