ポケットモンスター let's goリーリエ!   作:アニポケ大好き主

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第二十一話 VSハナダジム 水のフィールド

「サクラ姉さん。なんで勝手なことをするの!」

 

 ノゾミとの試合が終わり。何処となくサイドステージから聴こえてくる拍手に目をやると、そこには自分の一番上の姉であるサクラとタケシ。そして大勢の一般トレーナーの姿があった。

 それを見て驚いたカスミはすぐにサクラから事情を聞くと、身勝手な姉に対して注意を促し始めた。

 

「だって、折角いらしてくれたトレーナーさん達に何もせずに帰ってもらうなんて出来なかったもん」

 

「だけど、私はともかくチャレンジャーのことを考えてよ!あんたもよタケシ!元ジムリーダなら解るでしょ!」

 

「いや〜すまん」

 

 カントーにいながらも互いに忙しく、あまり顔を合わせる事がなかったため久しぶりに会えて内心嬉しかったのであったが、軽率な行動を取った二人に言いたい事で頭が一杯になってしまった。

 

「あら、なんの騒ぎ?」

 

「おお!!!アヤメさん!!!」

 

 と、カスミの二番目の姉のアヤメが帰ってくると、脱兎の如くタケシはアヤメの元へと駆け寄った。

 

「相変わらずお美しい。どうでしょうか。この後、一緒にお茶でも」

 

グリッ

 

「いててててててて!!!」

 

「まだ話は終わってないでしょ!」

 

 そんなタケシにカスミは耳たぶを引っ張りながら、アヤメから引き離した。そして、

 

「なになに?どうしたの?」

 

「おお!!!ボタンさん!!!」

 

 今度は三女のボタンが帰ってくる。

 

「貴方の心の恋人。自分タケシがここハナダジムへと戻って参りました。」

 

ズシュン!!!

 

「しびれびれ!!!」

 

「ケッケケケケケ‼︎」

 

 【どくづき】で麻痺したタケシをグレッグルはカスミの元へと身を渡した。渡し終えたグレッグルはそのまま自分のモンスターボールの開閉スイッチを押すと戻って行った。

 

「タケシさんって本当肉面白い人だな!」

 

「うん…そうだね」

 

「あはは…」

 

 サクラとタケシが怒られている中、そんなリーリエ達の方には一人の人物が歩み寄って来た。

 

「やぁ!あんた達。観戦席に座ってた人達だよね」

 

 リーリエ達の方へ歩み寄って来たのは、先ほどカスミとのバトルに勝利して、ジムバッジを手に入れたノゾミだった。

 

「あっはい!あの…ごめんなさい。盗み見るような真似をしてしまって…」

 

「大丈夫だよ!だけど…コンテストと違って下手に緊張したから、なんか恥ずかしいな」

 

 すぐにリーリエは勝手に試合を見学してしまった事を謝ると、ノゾミは照れ臭そうに笑っていた。

 そんなノゾミにカスミの説教から逃れたタケシが歩み寄る。タケシの姿を見たノゾミも軽く手を上げては合図を送った。

 

「久しぶりだな!ノゾミ」

 

「久しぶりだねタケシ。そうか!あんたとサトシはカントー出身だったよね!」

 

 タケシとの再会を終えた後、リーリエ達の前に振り返ると自己紹介を始めた。

 

「私はシンオウ地方のキッサキシティのノゾミ。訳あってカントーでジム巡りをしているんだ」

 

「シンオウ地方!!!」

 

 シンオウ地方と聞いたカノンは一歩前進すると、目を輝かせながらノゾミの手を握った。

 

「実は私もシンオウ地方出身なの!小さい時にカントーに引っ越してきたんだけどね!」

 

「そ…そうなんだ」

 

 突然の事に驚くノゾミをそっちのけにカノンの質問漬けのマシンガントークが吹き荒れる。これを見かねたサトルはすぐにカノンの肩に手を取るとそのまま引き離した。

 終始一同はカノンの破天荒さに苦笑いをした。

 

「そうだ。ノゾミ!どうしてカントー地方に来てジム巡りをしに来たんだ?コンテストの方はどうした?」

 

「あぁ…やっぱり変に思うよね。なんせ昔の私はジムとコンテストを掛け持っている人を嫌ってたんだからね…」

 

 ジムとコンテストの両方のチャレンジは一つの事に全力に取り組めていない姿勢だと嫌悪していた。そんなノゾミがジム挑戦しているのにタケシが疑問に思っている事は無理もない。ノゾミはふとモンスターボールから自身の相棒であるニャルマーを出してあげると、ニャルマーの顎を撫でながらその質問に答えた。

 

「ちょっと停滞しちゃっててね。今の私に足りない部分…一から鍛え直すという意味で挑戦しているんだ」

 

「そうか…で、どうだ⁉︎ジム戦をやった感想は」

 

「コンテストとは違う熱さを感じたよ。サトシがあんなに熱くなる理由も分かるな。てっ、あいつの場合は熱くなりすぎってのもあるけど!」

 

「あははは!それもそうだ!」

 

 そんな二人の談笑を聞いていたリーリエ達はある事を思い出した。思い出したリーリエはすぐにタケシに問いだした。

 

「そうだ!タケシ。貴方に聞きたいことがあります!」

 

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「まさかこんな偶然がこうも重なるとはなぁ!」

 

「僕たちも驚いたよ。まさかタケシがサトシと一緒に旅をしていた仲だったなんて…」

 

「俺もさぁ。しかしあのサトシが留学とはなぁ。彼奴のことだロクに勉強としかしないだろ」

 

「あ…それは一理あるわ」

 

「確かにサトシは常識では通用しない所もあるからね」

 

 ここまで一緒に旅をしてきたのにも関わらず、こんな接点があったとは今になって分かった。

 そのままリーリエ達はノゾミとタケシと同じようにサトシと旅をしていたカスミを加えて、ポケモンセンターでお茶をしていた。

 

「それよりも聞かせてよ!サトシさんと旅した話!」

 

 目を輝かせているカノンの他、サトルとソウタも大きく頷いていた。自分たちの憧れているトレーナーと旅をしていた人が目の前にいるのなら話を聞きたいのは当然の反応だ。カノンの問いにまずは最初に旅を一緒に同伴したタケシとカスミが口を開いた。

 

 タケシが初めてサトシと出会ったのは自分がニビジムのジムリーダーをしていた頃に挑戦者として現れたのがきっかけだった。その後、サトシにジムバッジを渡したと同時に自分の父に背中を押された事もあって、世界一のポケモンブリーダーになるべくサトシと旅を始めた。

 カスミはというとタケシみたいに最初から友としてではなく、ただ自分の自転車を壊された修理代を支払わせるためについて行ったと言った方が正しいのであろう。ただ、そのきっかけがなければサトシと旅をする事はなかったと思うと、少しばかりその最悪な出会いには感謝している。

 そのまま今のリーリエ達と同様にジム巡りの旅をしてやっとの想いで八つのジムバッジを集めたサトシは始めてのポケモンリーグへと出場した。ただ、ほんとんどのバッジはお情けなんだけど、という言葉にはリーリエ達は少しひっかかてしまった。

 ポケモンリーグの話題に変わるとその当時を中継でみていたサトルとカノン。そしてソウタも話題に加わった。

 

「確かセキエイ大会はリザードンの戦意喪失で負けたんだよね。その後にリザードンとはどうやって仲良くなったの?」

 

「あ!それはね!」

 

 カスミの話からカントーのポケモンリーグが終わった後、オレンジ諸島のポケモンジムへと挑戦しに行ったと言う。その途中、一時的に離脱したタケシに代わって、ケンジを加えて旅をしたと言う。そう、リーリエ達がオーキド研究所で出会ったオーキド博士の助手のその人だ。

 そして、道中でのポケモンバトルので強敵トレーナーとの勝負に敗れたリザードンをサトシは夜通し看病した事をきっかけに心を開いたという。今はサトシの主力ポケモンとして活躍している。なぉ、オレンジ諸島でのポケモンリーグは優勝を果たしている。だが、オレンジリーグは他の地方とのポケモンリーグとは異なるために優勝してもチャンピオンリーグへの参加資格が得られるわけではなかった。

 オレンジ諸島での旅を終えた後にはタケシと再会を果たすと、そのままジョウト地方へと向かったと言う。

 

「でも今じゃ本当に想像つかねぇよな。だってその次のジョウトでのシロガネ大会。あの時のリザードンVSカメックスの闘い凄かったもんな!」

 

「うん!サトシさんとリザードンの強い信頼関係はテレビ越しでも伝わって来たからね!」

 

 ここまでの話を聞いてサトシとリザードンの関係には意外だったようだ。タケシ達の話からサトシも今の自分と同じような壁にぶつかっていた事にリーリエも驚いていた。

 

「そういや、何でホウエンリーグでは他のポケモン達を使わなかったのかな?今までにゲットしたポケモンを使えば優勝は出来たはずなのに…」

 

「ホウエン地方では初心に戻って、最初のパートナーのピカチュウだけを連れて新たな気持ちで旅を始めたみたいなんだ。だからホウエンリーグではホウエン地方でゲットしたポケモン達で挑もうと最初から決めていたんだ。」

 

「私が一番好きなのはシンオウリーグかな。何よりもゴウカザルVSエレキブル!手に汗握りながら観ていたもん。ねぇ、ヒコザル!」

 

「ヒココッ‼︎」

 

「そしてイッシュリーグにカロスリーグ!」

 

「あそこでルカリオに進化してしまうのは想定外だったね」

 

「惜しかったよな〜」

 

「ゲッコウガにはびっくりしたよ!まさかメガシンカとはまた違う進化をしちゃうなんてね!」

 

「それは私も観たわ。あの水タイプの子でしょ。欲しいなぁ〜」

 

「相変わらずだな。カスミは!」

 

「あはは!私はジョウト地方まで一緒に旅をしてきたんだけど、彼奴の無鉄砲振りに着いて行くのは大変だったわ」

 

「ふふっ!それはわかる気がします」

 

「だけど、一緒に旅をしたからこそ彼奴からもいろいろと教えられた事もあるのよね」

 

「あぁ、そうだな。今は何処で何してるのかな…」

 

 ふと、タケシの一言につられてリーリエはサトシを思い浮かべながら天井へと目線を当てた。そんなリーリエにカスミは好奇心満載な表情でリーリエに問いかけた。

 

「ねぇ、今度はアローラにいた時のサトシの事教えてくれない?」

 

「はい!もちろんです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 後半はアローラでのサトシとの話が盛り上がった。気がつけば日は落ち、空の暗転と共に月が顔を出していた。

 そのまま夕食を終えると、カスミはジムへと戻り、リーリエ達はそれぞれの宿泊先へと荷物を降ろした。ネグリジェに着替えたリーリエはシロンを抱きかかえながら、光る満月を眺めながていた。

 

「サトシの旅の話。わたくしが学校へ行き、休みの日には部屋で本読んでいた頃には、サトシはいくつもの地方を転々と旅をしていたのですね。自分の足で踏み込んで行ったからこそ、得られた経験を自分の中へと吸収して、自分を作り上げて行ったのですね。外に出ないと分からない事は本当にたくさんありますね。シロン!」

 

「コーン‼︎」

 

 旅をしていればいずれ再会できると思ったのですが、本当にサトシは今何処にいるのでしょうか。まだ旅を始めてもうすぐ一ヶ月となりますが、少しばかりか強くなったわたくしを見て貰いたいものですね。

 

 

「わたくしは…彼に…近づけたのでしょうか」

 

 シロンの頭に自分のあごを乗せながら、サトシの事を思うリーリエに…

 

「えっ⁉︎サトシさんに?」

 

「!!!」

 

 突然、部屋から現れたらカノンに驚いた。今回はハナダジムの対策を練るために一人の時間も必要なのかと思い、部屋はみんなバラバラになっている。だから、リーリエの様子を覗きに来たカノンにリーリエは驚いたのだ。そして、カノンは少しばかり頬に赤みが混じっているリーリエを見てはカノンは悪そうな顔でリーリエの顔を覗いた。

 

「大丈夫だよリーリエ!この事は私とのだけのひ.み.つ♡たがらね!」

 

「ちょ///カ!!!カノン///」

 

「私も出来る限りのサポートはしてあげるからね♪」

 

「だ///だから//!!!そんなんじゃ、ないですってぇぇぇぇぇぇ///////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 翌朝、再びハナダジムに訪れたリーリエ達。水のフィールドによって反射された太陽の光に眩しく目をこするリーリエは向かい合うカスミに丁寧にお辞儀返した。

 再びハナダジムに訪れた理由…決まっている!それは…

 

 

「おはようリーリエ!昨日は良く眠れた?」

 

「えぇ!カスミ!今日は宜しくお願い致しますね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハナダジム戦!リーリエの二回目となるジム戦だ!

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまより、ジムリーダーのカスミとチャレンジャーのリーリエによるハナダジム、ジム戦を開始します。使用ポケモンは三体。どちらかのポケモンがすべて戦闘不能になりますとバトル終了となります。なお、ポケモンの交代はチャレンジャーのみ認められます。」

 

 ジムのルールはニビジムと変わらない。呼吸を整えたリーリエは先にカノン達がいる観戦席の方へと振り返った。

 

「シロン!今日は応援お願いね!」

 

《観戦席》

 

「コーン‼︎」

 

 リーリエの呼び声にシロンは大きく返事を返した。今回はシロンはお休みのようだ。

 

「シロン。今日は一緒に応援しようね♪」

 

「コン‼︎」

 

「さて、リーリエがどんなバトルするか楽しみだね!」

 

 リーリエの今の実力を興味津々に眺めるノゾミと一緒にカノン含む四人もリーリエの二回目のジム戦を見学する。

 

《ジム戦》

 

「行くのよ。ヒトデマン!」

 

「へア‼︎」

 

 審判の合図と同時に先に繰り出したのはジムリーダーのカスミだ。カスミの先鋒はヒトデマン。昨日見たスターミーの進化前に該当するポケモンである。

 

「一体目はヒトデマンですね」

 

『お任せを』

 

 すぐにロトムはヒトデマンの写真を撮ると解説を始めた!

 

 

 

 

 

 

 

『ヒトデマン ほしがたポケモン

 水タイプ

海辺に多く生息している。夜になると中心のコアが赤く輝き出す。まるで星のように見える』

 

 

 

 

 

 昨日とは違うポケモン。やはりノゾミさんの時とは全く選出が異なりますね。

 ここは水のフィールドでわたくしのポケモンの中で自由に動き回れるのは…

 

この子です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コイキング!お願い致します!」

 

「ココッ‼︎」

 

 リーリエが選んだのは同じ水タイプのポケモンのコイキング。リーリエの手持ちに加わってからの初陣にコイキングは気合が入っている。水のフィールドって事もあるが、何よりもリーリエのコイキングは頑張り屋であり自分の信念を貫こうとする強情な部分もある。先鋒に選んだのもその勢いで流れ掴むためでもあるとも言えよう。

 

《観戦席》

 

「リーリエの一体目はコイキングだ」

 

「水系同士のバトルか!面白くなりそうだな。頑張れよリーリエ!」

 

 ソウタの声援に気づいたリーリエはさらに気合が入る。もう一度コイキングとコンタクトを取ったその後、すぐにコイキングはヒトデマンと向かい合った。

 

《ジム戦》

 

「いくわよ。リーリエ!」

「こちらも全力で行きます!」

 

 それぞれの意気込みを述べた同時に…

 

「バトル開始!!!」

 

 審判による試合開始の宣言が下された。

 

 

 

➖リーリエVSカスミ➖

 

「さぁヒトデマン!【バブルこうせん】‼︎」

 

「ヘア‼︎」

 

 先に攻撃を仕掛けたのはカスミの方だ。無数に撃ち込まれた泡の砲弾が一斉にコイキングに向かって行く。水系のコイキングにとって効果はいまひとつであるが、追加効果で素早さを下げられてしまう場合もあるため、直撃は避けたいものである。

 

「コイキング!【はねる】です‼︎」

 

「ココッ‼︎」

 

 コイキングは尾を勢いよく水面に叩き込むと、その反動で天井に向かって飛び上がった。ただ跳ねるだけのこの技も使い方によっては緊急回避にもうってつけの技だ。

 

「そのまま【たいあたり】です‼︎」

 

「コッ‼︎」

 

「ヘアッ!!!」

 

 一気に急降下した体当たりはヒトデマンのコアの中央部位を捉えた。世界最弱と言われたポケモンにしては、リーリエのコイキングの物凄いパワーにカスミは一瞬目を見開いていた。

 

 急降下で勢いがついたとはいえ、あのパワー…あのコイキング相当鍛えられているわね。

 

 リーリエのコイキングの攻撃力から見て良く育て上げられているとカスミは感心した。

 

「ヒトデマン!【こうそくスピン】よ‼︎」

 

「もう一度【たいあたり】です‼︎」

 

「ヘア‼︎」

 

「ココッ‼︎」

 

 それぞれの技の指示を聞いた二体は水中へと潜ると同時に互いにぶつかり合う。地上とは違って自由に泳ぎ回れる水系ポケモン同士の水中バトルは迫力がある。観戦席にいるカノン達にもそれは伝わっていた。

 元々カスミは物理攻撃しか覚えられないコイキングに対し、接近戦に持ち込まれないためにも特殊攻撃で距離を取っていくつもりでいたのだが、リーリエとコイキングの根性を前に真っ向勝負を受けて見たくなったみたいだ。目の前のトレーナーを見て熱くなるのは誰かの受け売りなのかもしれない。

 

「ココッ!!!」

 

「ヘア!!!」

 

 二人の指示の後からコイキングとヒトデマンはどちらとも勢いが衰える事なく激しいぶつかり合いの嵐を巻き起こしている。息を切らしながらも負けじと突っ込んで行く二体を見ればいつ体力が尽きてもおかしくないのは上級トレーナーでも初級トレーナーでも理解できる。

 

 次です…あの攻撃で一気に決めます!

 

 もう一度、コイキングとヒトデマンがぶつかり合うその瞬間にリーリエは別の指示を下した。

 

「コイキング!【じたばた】です‼︎」

 

 リーリエの指示を聞いたコイキングは体を大きく揺らし始めた。【じたばた】は体力が残り少ないほど威力が増す技であり、その最大威力は二百もなる。最強物理技とも称される【ギガインパクト】を超える威力を発揮するのだ。この攻撃力ならヒトデマンの【こうそくスピン】ごと吹き飛ばすのは容易いと思ったのだが…

 

 やっぱりね…そうくると思ったわ。

 

 コイキングが覚える技を全て理解しているカスミにはリーリエの手の内を読めていた。 カスミの指示がなくともヒトデマンは攻撃をするのを止めると、接触するギリギリの所で躱した。攻撃が躱されたコイキングの真下に潜ったヒトデマンは距離を取ると頭頂部の先端部位をコイキングに向けた。

 読まれていたリーリエはとっさのヒトデマンの行動にすぐに対処する事が出来なかった。

 

「ヒトデマン!【みずてっぽう】‼︎」

 

 勢いよく噴射された水流はコイキングに攻撃を食らわせただけでなくそのまま外へと一気に押し出しては放り出した。打ち上げられたコイキングは身動きが取れない状態になってしまった。そこに追い打ちをかけるようにして水面から顔を出したヒトデマンはさらに攻撃を仕掛けた。

 

「いまよ!【バブルこうせん】‼︎」

 

「ヘァァ‼︎」

 

「コイキング!もう一度【じたばた】です‼︎」

 

「コココココ‼︎」

 

 空中で身動きが取れないコイキングにヒトデマンの攻撃が迫りくる。だが、その攻撃をコイキングは体を揺らし始めると尾を使って次々と弾き返しては防いでいく。

 

「そのまま【とびはねる】‼︎」

 

「コォォ‼︎」

 

 全ての【バブルこうせん】を防いだコイキングはそのまま猛スピードでヒトデマン目掛けて突進していく。風のエネルギーを纏っているため、先程食らわせた【たいあたり】よりも攻撃力は増しているであろう。

 

「ヒトデマン!【ダイミング】‼︎」

 

「ヘア‼︎」

 

 迎え撃つきだ。ヒトデマンはいったん水の中へ潜ると、水の衣を纏いながら一気に水面から飛び出した。

 まるで空と海の衝突だ。それぞれの技がぶつかり合うと、火花を散らしながらの押し合いが始まった。一瞬でも気が緩むとやられてしまうこの場面、一歩も引かない二体はやがて大きな衝撃波と同時に水面へと叩きつけられてしまった。

 

「コイキング!」

 

「ヒトデマン!」

 

 暫くの静寂の中、二人に緊張が走った。やがて二体のポケモンが水面から現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「コイキング戦闘不能!ヒトデマンの勝ち!」

 

 

 

 水面から顔を出したコイキングは目を回していた。最初の勝ち星を手にしたのはカスミだった。

 

《観戦席》

 

「軍配が上がったのはカスミさんの方か」

 

「コイキング…頑張ったのに」

 

「コーン…」

 

《ジム戦》

 

「ココッ…」

 

 勝負に敗れたコイキングはそのままリーリエの元へと戻った。勝利を得られなかったことに落ち込んでいるコイキングにリーリエは優しく頭を撫でては励ました。

 

「ありがとうございます。コイキング。良く頑張ってくれましたね!」

 

「ココッ…」

 

「これからもっと頑張って行けば良いのです!今はゆっくり休んでください」

 

「ココッ‼︎」

 

 リーリエの言葉に笑顔が戻った。元気になったコイキングを見て安心したリーリエはモンスターボールへと戻した。

 モンスターボールへと戻した後、すぐにリーリエはヒトデマンの状態を確認した。

 

 コイキングのおかげでヒトデマンもかなりのダメージを受けているはずです。まだ勝負は終わっていません。頑張ってくれたコイキングのためにも絶対に勝ちます。

 

 決意を新たにリーリエは二体目のポケモンをバトルフィールドへと投入した。

 

「キモリ!お願い致します!」

 

「キャモ‼︎」

 

「キモリ!相手は水系のポケモンです!この場では水中では上手く動けない貴方の方が不利ですが、落ち着いて勝ちを取りに行きましょう!」

 

「キャモ‼︎」

 

 気合十分に飛び出したキモリはリーリエの忠告を聞くと、そのまま対戦相手であるヒトデマンを睨みつけた。そんなリーリエのキモリにカスミは身構えた。

 

「草タイプね。行くわよ!ヒトデマン!」

 

「ヘア‼︎」

 

 カスミの合図にヒトデマンもさらに気合を入れ直した。そして審判による開始の合図が下された。

 

「新しい力をぶつけて行きましょう!キモリ!【エナジーボール】です‼︎」

 

「キャモ‼︎」

 

 先に動いたキモリは両手を合わせると、翠緑に輝くエネルギー砲をヒトデマンへと放たれた。キモリの新しい技に驚いているカノン達の声が響きながらヒトデマン目掛けて放たれた。

 

「ヒトデマン!【こうそくスピン】‼︎」

 

「ヘア‼︎」

 

 ヒトデマンは水中に潜ってキモリの攻撃を躱したら、そのまま高速回転を加えた体当たりをキモリに仕掛けた。

 

「躱して!」

 

 スピード自慢のキモリはギリギリのところで躱す。昨日のノゾミのスターミーの【こうそくスピン】を見る限り、また水中に潜られてしまわれては捕える事が出来ない。そうはいくものか。

 

「キモリ!水面に向かって【はたく】攻撃です‼︎」

 

「キャモ‼︎」

 

 リーリエの指示でキモリは大きく尻尾で水面を叩いた。衝撃で水しぶきが舞う中、ヒトデマンはそのまま水中から弾き出された。そしてキモリはヒトデマン目掛けて飛び出した。

 

「来るわよ!ヒトデマン【みずてっぽう】‼︎」

 

「ヘア‼︎」

 

 ヒトデマンは向かって来るキモリに攻撃を仕掛けようとしたその瞬間

 

「へ…ヘァ…」

 

 ヒトデマンの攻撃をする手が止まってしまった。何が起こったか分からないカスミはヒトデマンの様子を伺う。見た感じ身体が痺れてしまっているようだった。

 

「まさか!麻痺してるの!!!」

 

 そうヒトデマンはさっき受けたコイキングの【とびはねる】の追加効果により麻痺状態になっていたのだ。ヒトデマンには特性《しぜんかいふく》があるが、ジムリーダーの交代は認められない。そのルールによってヒトデマンの特性も活用されない。動きが止まったヒトデマンに向ってキモリは距離を詰めて行った。

 

「【エナジーボール】‼︎」

 

「キャモ‼︎」

 

 動けないヒトデマンに接近できたキモリは【エナジーボール】を押し当てた。緑色の発光とともに吹き飛ばされたヒトデマンはそのままカスミを通り越してジムの後の方の壁へと叩きつけられた。カスミはヒトデマンを呼びかけるも、ヒトデマンは壁に張り付いたままコアが点滅しながらぐったりとしてしまった。

 

 

 

 

 

「ヒトデマン戦闘不能!キモリの勝ち!」

 

 

 

 

 

「やった!ありがとうございます。キモリ!」

 

「キャモ‼︎」

 

 コアの点滅はヒトデマンの戦闘不能を知らせるものだったようだ。

 一体目を倒せた事にリーリエとキモリはお互いにガッツポーズを取った。

 

「ありがとうヒトデマン。ゆっくり休んで」

 

 ヒトデマンの状態を見抜けなかった事を反省してからカスミはリーリエの方へと顔を向けた。

 

「行くのよ!スターミー!」

 

「フッ‼︎」

 

 カスミの二番手はその進化系のスターミーだ。昨日のノゾミ戦では【こうそくスピン】や【サイコーウェーブ】を使ってくる事は分かっている。その技に注意するよう頭の中で整理すると、次の試合に集中した。

 

「始め!!!」

 

「キモリ!【エナジーボール】です‼︎」

 

「【こうそくスピン】よ‼︎」

 

 キモリが打ち出した技をスターミーは【こうそくスピン】で軌道を変えながら躱すと、キモリに向かっていく。

 

「【でんこうせっか】‼︎」

 

 躱されてもプランはあった。次にキモリは物凄い速さでスターミーへと近づいていく。これはニビジムでも見せた【でんこうせっか】のスピードを利用しての追い討ち攻撃だ。一気にスターミーへ近づいた直後に【エナジーボール】を当てるのがリーリエの狙いだ。そして、その狙い通りにキモリはスターミーへと近づく事ができた。そして、すぐにキモリは【エナジーボール】を放つ体勢を作った。

 

「まずい!スターミー!【こごえるかぜ】‼︎」

 

「フッッ‼︎」

 

「キャモ…」

 

「キモリ!」

 

 だが、カスミはすぐにスターミーに別の攻撃の指示を下すと、スターミーは横回転したまま冷気でキモリを吹き飛ばした。

 

「負けないでキモリ!もう一度【でんこうせっか】です‼︎」

 

「キャモ‼︎」

 

 リーリエは再度同じ作戦でスターミーに接近しようとしたのだが、さっきよりも明らかにスピードが落ちてしまっている。すぐにキモリの接近に気づいたスターミーはそのまま【こうそくスピン】で弾き返した。

 

《観戦席》

 

「おい!キモリのスピードが落ちてるぞ!」

 

「【こごえるかぜ】の追加効果で素早さを下げられたんだ」

 

 シロンも使う技なので、追加効果にはリーリエも分かっていたのだが、まさか元から素早い種族値を持つキモリが肉眼でもすぐに追いつけてしまわれるほど素早さが下がっているとは思わなかったのであろう。

 

《ジム戦》

 

 弾き返されたキモリはジムの壁にひっついていた。冷やされた足を見ては辛そうな表情をしていた。下唇を噛み締めながらリーリエの指示を待つ。

 

「キモリ!【エナジーボール】‼︎」

 

「スターミー!【サイコーウェーブ】‼︎」

 

「キャモ!!!」

 

 自慢のスピード愚か動作まで若干鈍ってきたキモリよりも先にスターミーの攻撃が決まってしまった。吹き飛ばされたキモリは水中へではなく近くに設置されている浮島へと不地着する。

 

「続けて【バブルこうせん】‼︎」

 

「フッ‼︎」

 

 さらに起き上がれていないキモリに【バブルこうせん】が襲いかかる。すぐにリーリエはキモリのモンスターボールを取り出した。

 

「戻ってください!キモリ!」

 

 間一髪のところでキモリをモンスターボールに戻す事が出来た。

 

「危ない所だったわね。さぁ、次はどの子で来るのかしら」

 

 互いに手持ちが二体であるのにカスミは余裕そうな表情を見せる。まだ隠している手段があるのかとリーリエの頭の中を遮るが、両手で軽く両頬を叩くと、集中と自分に言い聞かせた。

 

「ムクバード!お願い致します!」

 

「ムックバー‼︎」

 

 リーリエの最後のポケモンはムクバードだ。空中戦を得意とするムクバードにはどんなフィールドが来ても関係はなかった。

 

「行くわよ!スターミー!【こごえるかぜ】‼︎」

 

「フッ‼︎」

 

「躱して!【でんこうせっか】‼︎」

 

「ムクッ!!!」

 

 今度は【こごえるかぜ】を躱すと、スターミーの背後へと回り込んだ。そのままスターミーに体当たりを仕掛けるムクバードにカスミはすぐに指示を出す。

 

「スターミー!潜って!」

 

 スターミーは水中へと潜ると、ムクバードの攻撃を躱した。だが、水中に潜ったとなると、昨日見た【こうそくスピン】の連続攻撃が来るかもしれない。リーリエはすぐにムクバードを上昇させて距離を取らせた。

 

「【こうそくスピン】‼︎」

 

「【かげぶんしん】‼︎」

 

 案の定。リーリエの読んだ通りの攻撃が飛んで来た。それをムクバードは複数の分身を作り上げて躱すと同時にスターミーを惑わした。

 

「それなら、スターミー!!!」

 

 カスミの指示にスターミーは再び水中へと潜る。すぐに出て来ようとはせずに、スターミーは体を大きく回転させると渦潮を発生させた。その渦潮は大きな水流とともに空中にいるムクバードへと放たれた。

 

「ムッククク!!!」

 

「ムクバード!!!」

 

 立ち昇る水流を纏った竜巻にムクバードは吹き飛ばされた。スターミーは水中にいるため攻撃が届かない。大きく巻き起こる渦潮に太刀打ちできないでいる。

 

《観戦席》

 

「地形を利用した水ポケモンならではの技だね。流石はジムリーダー。見せてくれるね」

 

「んだよ。俺の時はあんな事してこなかったぞ!」

 

 カスミの咄嗟の判断に一同は驚いていた。対して威力が高くない【こうそくスピン】をこうもアレンジを加えて攻撃力を倍増させるなどジムリーダーとしてでなくベテラントレーナーとしてカスミの強さを感じた。

 

《ジム戦》

 

「どうしたら…」

 

 激しく巻き起こる竜巻はだんだんと範囲を広げてはムクバードを再び飲み込もうとする。竜巻を見続けたリーリエは昨日見たカスミのギャラドスの暴風を対処したノゾミのエルレイドを思い出すと一つの案を絞り込んだ。

 

「ムクバード!体を回転させながら【はがねのつばさ】です‼︎」

 

 ムクバードは翼を硬化させると、体を右に回転させ始めた。

 

「そのまま竜巻の中に!!!」

 

「ムックバァァァ!!!」

 

 ムクバードはそのまま竜巻の中心部へと一直線に突っ込んで行った。中心部は無風であり、僅かな空洞になっているはずであった。そこを辿れば水中に潜っているスターミーに攻撃を決める事が出来る。さらに回転を加えることによって渦潮の回転力をも利用して攻撃力を高める働きも加えている。一直線に突き進んで行くムクバードは底にいるスターミーの姿を捕えると、そのまま遠心力で威力を上げた硬化させた翼をおもいっきり振りかざした。

 

「フッ!!!」

 

 振りかざされた翼によって、衝撃でプールの水が割れると攻撃を受けたスターミーはそのまま水中の外へと放り出され浮島に不地着した。ムクバードはそのまま割れたプールの水からすぐに飛び出すと、そのままスターミーに向かって行く。

 

「頑張ってスターミー!【バブルこうせん】‼︎」

 

「ムクバード!【かげぶんしん】‼︎」

 

 すぐに立ち上がったスターミーは【バブルこうせん】でムクバードを狙い撃ちする。それをムクバードは再び分身を作り出してはその技を躱した。

 

「そのまま【でんこうせっか】‼︎」

 

「クルルル‼︎」

 

 分身を残したままムクバードは一直線にスターミーへ突っ込んで行く。異様なスピードと前後左右にどれが本体か見分けがつけられない分身達を引き連れたまま、ムクバードの【でんこうせっか】が決まった。

 

「【こごえるかぜ】‼︎」

 

「【つばめがえし】です‼︎」

 

 蹌踉めきながらもスターミーは冷気をムクバードに向かって放つ。それをムクバードを負けじと嘴にエネルギーを集中させると、冷気の突風に押されながらも急降下しつつスターミーに向かって突撃した。

 追撃されたスターミーはそのまま後ろの方へと吹き飛ばされると、ヒトデマンと同じようにコアが点滅してしまった。

 

 

 

 

 

「スターミー戦闘不能!ムクバードの勝ち!」

 

 

 

 

 スターミーの戦闘不能が審判の口から下されると、ムクバードは空中を飛び回りながら勝利を喜んだ。

 

「やりましたね!ムクバード!」

 

「クルル‼︎」

 

「お疲れ様。スターミー。ゆっくり休んでね」

 

《観戦席》

 

「やるね!リーリエ」

 

「あぁ!【つばめがえし】も物に出来たようだな」

 

「かっこいいよ!ムクバード!!!」

 

「コーン‼︎」

 

《ジム戦》

 

 スターミーを戻したカスミはルアーボールを手にした。それを見たリーリエとムクバードはすぐに集中モードへと入った。

 現時点では二体を残しているリーリエの方が有利とも見えるが、最後まで何が起きるか分からないのがポケモンバトルだ。水のフィールドからも不利な状況は変わりないないことはリーリエには分かっている。

 

「リーリエ!この子が私の最後のポケモンよ!!!」

 

「はい!」

 

「行くのよ!サニーゴ!」

 

「サゴサゴ‼︎」

 

 カスミの最後のポケモンはサニーゴだ。

 

 

 

 

 

 

 

『サニーゴ さんごポケモン

 水・岩タイプ

サンゴの枝は太陽の光を浴びると七色にキラキラと輝きとても綺麗。折れても一晩で元通りに生えてくる』

 

 

 

 

 水岩タイプであるなら、ムクバードの【はがねのつばさ】なら大ダメージを与える事が出来る。だが、それはサニーゴも同じでいる。リーリエはムクバードのこのままの勢いに任せて続投させることに決めた。

 

「ムクバード!【はがねのつばさ】‼︎」

 

「クルル‼︎」

 

「サニゴッ!!!」

 

 ムクバードの攻撃は見事にサニーゴの頭部に直撃する。岩タイプは鋼タイプの技に弱い。サニーゴは頭部を抑えながら悶えている。

 

「いいですよ。ムクバード!もう一度です!」

 

「ムックバー‼︎」

 

 手応えを感じたリーリエは再度ムクバードに同じ指示を出す。ムクバードもスピードに乗っては硬化させた翼で空を切りながらサニーゴへと迫って行く。だが、すぐにカスミはサニーゴに指示を出す。

 

「サニーゴ!【パワージェム】‼︎」

 

「サニゴッ‼︎」

 

 指示を聞いたサニーゴは宝石のように神々しく光り輝くエネルギー砲をムクバードに向けて放った。放たれた【パワージェム】はムクバードに直撃する。

 

「大丈夫ですか⁉︎ムクバード!!!」

 

「ムック‼︎」

 

 技を受けてプールへと急降下していくも、なんとか翼を広げたムクバードは不着寸前の所で体勢を立て直した。

 立て直したもののムクバードは蹌踉めきながら飛行していた。岩タイプの技も、もちろんムクバードには効果は抜群である。

 

 もう一度の接近攻撃は危険ですね。でしたら、サニーゴの様子を伺うのが適切。

 

 リーリエはムクバードに後退するよう指示を出す。

 

「ムクバード!ここは【かげぶんしん】です‼︎」

 

「ムック‼︎」

 

 さらに分身を出現させてはサニーゴの周りを取り囲む。安全な対策を取ったつもりでいたのだが、それはいとも簡単に崩されてしまった。

 

「【みずのはどう】‼︎」

 

 サニーゴは球体状に形成させた水のエネルギーを分身するムクバードにではなく、プールにと放った。プールに放たれた【みずのはどう】は振動によって大きく四方八方へと波打ちをあげた。

 飲み込まれたムクバードの分身が次々にと消えていくと、本体を残したままムクバードを押し出した。

 

「立て直して!【でんこうせっか】です‼︎」

 

「ムック‼︎」

 

「【パワージェム】‼︎」

 

「サゴ‼︎」

 

 押出されたものの力一杯に翼を広げたムクバードは猛スピードでサニーゴに突っ込んでいく。その予想外のカウンターにカスミもサニーゴもすぐには対処できないと思っていたのだが、幾多の挑戦者と戦ってきたハナダジムのジムリーダーを甘く見てしまった。

 ムクバードが接近する方へとサニーゴは【パワージェム】を放つ。躱すすべがなくそのままムクバードに直撃する。

 

「ムクバード!!!」

 

 気力を果たしたムクバードはそのままプールへと不着してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムクバード戦闘不能!サニーゴの勝ち!」

 

 

 

 

 

 二回目の攻撃には流石のムクバードも耐える事が出来なかった。

 

「戻って下さい。ムクバード!ありがとうございました。ゆっくり休んでください」

 

 懸命に戦ったムクバードを戻すと、最後の一体を解き放つ。

 

「行きましょう!キモリ!」

 

「キャモ‼︎」

 

 飛び出したキモリは軽やかに浮島に着地を決めた。その様子はスターミー戦でのダメージ感じさせないほどであった。

 ハナダジムは終盤へと向っていく。

 

「キモリ!【エナジーボール】‼︎」

 

 先手必勝に相性の良い草タイプの技を放ったキモリの技はサニーゴへと向っていく。するとカスミは冷静に対処する。

 

「サニーゴ!【ミラーコート】‼︎」

 

「サッゴ‼︎」

 

 躱さずにキモリの【エナジーボール】を受けたサニーゴはそのままそのエネルギーをキモリへと跳ね返した。跳ね返されたエネルギーはキモリを包み込んだ。包み込まれたキモリは雄叫びを上げながら吹き飛ばされてしまった。

 

《観戦席》

 

「跳ね返された!!!」

 

「そうなんだよ!あのサニーゴこの技を使ってくるから厄介だったんだよ!」

 

 リーリエを含む観戦席でバトルを見ているカノン達もサニーゴの【ミラーコート】に驚いていた。だが、驚いていたのは跳ね返された事ではなく、その威力にだ。

 

「【ミラーコート】は自信が受けた特殊ダメージを倍返しに跳ね返す技だ。サニーゴは岩・水タイプ。キモリの草タイプの技はサニーゴには通常よりも四倍近いダメージを受けてしまう。そのダメージを倍返しされてしまったら、キモリには相当なダメージが入ったのは間違いないな」

 

 ジョウト地方で一緒に旅をしていたタケシにはカスミのサニーゴが【ミラーコート】を使ってくるとは予想していた。それよりもキモリの【エナジーボール】を受けてもサニーゴはすぐに攻撃に移せるほどでいた。おそらく【エナジーボール】の直撃を食らう所でわざと霞めて受けるダメージを最小限に抑えていたのかもしれない。受けたダメージをおさえた所であっても、キモリに跳ね返ってくる四倍ダメージの倍返しの威力はかなりのものだ。

 

「だけど、【ミラーコート】はサニーゴもダメージを受けないと発動できないんでしょ!だったら、まだリーリエの方が優先だよ」

 

「コン‼︎」

 

 カナンの言ったように、技を受け流されようとも霞めたダメージは蓄積されれば長くは持たない。それに【ミラーコート】を発動させる前にサニーゴを先頭不能にすればいいのも確かだ。だが、カスミのサニーゴにはあの技も持っていることはタケシ以外に知る者はいない。

 

《ジム戦》

 

「キャ…モ…」

 

「大丈夫ですか!キモリ!」

 

 サニーゴの【ミラーコート】には驚いたが、リーリエもカノンと同じような事を考えていた。【ミラーコート】の長所と短所を理解しているリーリエの目は諦めていなかった。

 だが、ここでタケシが予想していたもう一つのサニーゴの技がカスミに指示される。

 

「サニーゴ!【じこさいせい】‼︎」

 

「サッニ‼︎」

 

 その技も使えることにリーリエは唖然とした。サニーゴは自身を光り輝かせると、見る見る内に受けた傷が治して行く。光終えたサニーゴを見ると小刻みにジャンプしている元気に回復したサニーゴの姿があった。

 【ミラーコート】に【じこさいせい】によるコンボ。受けたダメージを回復させられてしまえば、どう立ち回ればいいか分からない。今は戦いの中でその攻略法を見つけるしかない。

 

「キモリ!【でんこうせっか】です‼︎」

 

「サニーゴ!水の中へ」

 

 キモリの【でんこうせっか】を避けるとサニーゴはキモリの技が届かない水の中へと避難した。

 

「【じこさいせい】‼︎」

 

 さらに安全な水中の中で【じこさいせい】で回復する。

 

「水面に【はたく】攻撃です‼︎」

 

「キャモ‼︎」

 

「サニゴッ!!!」

 

 ヒトデマンの時にやった戦法でキモリはサニーゴを水の中から引っ張り出すと、すぐにサニーゴの姿を捕らえた。

 

「今です!【エナジーボール】‼︎」

 

「【みずのはどう】‼︎」

 

 吹き飛ばされたサニーゴにキモリは【エナジーボール】を叩きつけるも、サニーゴはそれを【みずのはどう】で相殺させた。

 

「【じこさいせい】‼︎」

 

「サニッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      じこ…さいせい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      まさか…

 

      もしかしたら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何かを察したリーリエは一か八かではあるけど、その可能性に賭けてみる事を決めた。その真剣な目はキモリにも伝わっていた。キモリも自分の主人であるリーリエに全てを任せる気でいる。キモリと相槌を立てるとキモリに指示を出した。

 

「キモリ!【エナジーボール】です‼︎」

 

「キャモ‼︎」

 

 

《観戦席》

 

「えっ!【エナジーボール】!!!」

 

「【ミラーコート】の倍返しを食らっちまうぞ!」

 

「たしかに冷静な判断ではないみたいだね」

 

 

《ジム戦》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 わたくしの読みが正しければ…カスミの次のこうげきは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サニーゴ!【ミラーコート】‼︎」

 

「サニゴッ‼︎」

 

「躱して下さい!」

 

 再びキモリの【エナジーボール】を受けたサニーゴはそのまま力一杯に跳ね返した。跳ね返された技はキモリに迫ってくるが、瞬時にキモリはそれをジャンプで躱した。するとすぐにリーリエは…

 

「もう一度!【エナジーボール】‼︎」

 

 なんとすぐに【エナジーボール】をキモリに指示を出す。カノン達は再びサニーゴの【ミラーコート】の餌食になってしまうのではないかと思っていた。だが、

 

「サニーゴ!【パワージェム】‼︎」

 

 今度は【ミラーコート】ではなく別の技でキモリの技を相殺させて防いだ。

 

 やはり、そうですよね。

 

 何かを確信したリーリエはふと笑みを浮かべると、それに気づいたカスミはふとリーリエに笑みを立てて返した。

 

《観戦席》

 

 リーリエの破天荒な攻撃の指示にサトルは突然に何か閃いたかのように、その場に立ち上がった。

 

「そうか!これは逆に【ミラーコート】封じになっているんだ!」

 

「【ミラーコート】封じ?どういうことだよ?サトル?」

 

 最初の【エナジーボール】を【ミラーコート】で防いだのだが、二回目の【エナジーボール】は【パワージェム】で打ち消した。この一部始終を見てサトルの閃きは確信に変わった。

 

「【ミラーコート】を発動するには倍返しにする技を受けなければならない。だけど、それはサニーゴにとっては大きな負担になるんだよ。その証拠にサニーゴは小まめに【じこさいせい】で回復しているからね」

 

 サトルの言った事にカノンとソウタはまだ意図を掴めていない様だが、それを聞いてサトルの言っている事を理解したノゾミも口を開いた。

 

「なるほどね。一回の【じこさいせい】だけでは完全に回復するのに追いつけていない訳だね。一見して強力な技とも見えるけど、全ての技を【ミラーコート】で対処してしまえば先に力尽きるのはサニーゴの方になる」

 

「そういう事だよ!」

 

 それを聞いてやっと分かったカノンとソウタは同時に声を揃えた。

 

「それに気づいちゃうなんて、凄いよリーリエ!」

 

「コーン‼︎」

 

 サトルとノゾミの説明で【ミラーコート】の欠点を知る事が出来た。

 分析から勝つための糸口を探り当てながら、大きな逆境を跳ね返していくリーリエの力強さに元ジムリーダーでもあったタケシは感心していた。

 

《ジム戦》

 

 リーリエの観察力にはカスミも驚かされた。多くの挑戦者はサニーゴの【ミラーコート】を前に萎縮してしまうのだが、リーリエは諦めず戦いの中から勝利への活路を導き出して来た。

 

「本当に…驚かせてくれるわね」

 

 初心トレーナーとは思えない諦めない強情な精神。カスミにはリーリエとサトシが重なって見えているようだった。

 

「どうしました?カスミ」

 

「なんでもないわ。さぁ、行くわよ!泣いても笑ってもこれがラストバトルよ!」

 

「はい!」

 

 カスミの声にリーリエも大きく返事を返した。両者の気合の入った声にキモリもサニーゴも一段と身構えた。

 

「キモリ!【エナジーボール】‼︎」

 

「サニーゴ!【みずのはどう】‼︎」

 

 二つの技は一気に衝撃波とともに相殺された。

 

「【でんこうせっか】です‼︎」

 

 その衝撃波に飛ばされないように堪えながら、キモリは思いっきり地面を蹴り出すと一直線にサニーゴへと突っ込んでいった。

 

「迎え撃って!」

 

 キモリのスピードから躱すのが難しいと判断により、サニーゴは躱さずに硬いボディーでキモリの【でんこうせっか】を受けた。効果はいまひとつであったが、キモリの強烈な体当たりにはサニーゴも決めたキモリも後退した。

 

「ジャンプです!!!」

 

「キャモ‼︎」

 

 さらに今度は地面を大きく蹴ると、キモリは天井高くまで大きくジャンプした。サニーゴの姿を捕えると、両手を前に出した。

 

「【エナジーボール】‼︎」

 

「【みずのはどう】‼︎」

 

 再び両者の技が激突した。さっきとは力一杯に込めて放ったため、すぐに相殺はされずに重なり合うエネルギーから火花を散らしながらの押し合いが始まった。

 

 一気に肩を付けようとリーリエはもう一度【エナジーボール】を指示するわ。それなら一度回復させてから【ミラーコート】で勝負を決めるわ。

 

 そう読んだカスミはサニーゴに【じこさいせい】を指示する。だが、ふとキモリの方へと目をやったカスミは目を見開いた。

 キモリは空中に跳んだまま尻尾を大きく回し始めたのだ。そしてそれを見たリーリエは力一杯にキモリに指示を出した。

 

「キモリ!【エナジーボール】に【はたく】攻撃です‼︎」

 

「キャァモ!!!」

 

 キモリはそのまま尻尾でぶつかり合う【エナジーボール】を力一杯に下へと叩きつけた。叩きつけられた【エナジーボール】はそのまま一気に押し出されては【みずのはどう】を打ち消しながら、サニーゴの方へと撃ち込まれた。

 

「サニゴッォォォ!!!」

 

 押し出されたスピードにサニーゴは気づくも躱す時間がないまま、そのまま緑の発光に包み込まれてしまった。

 

「サニーゴ!!!」

 

 サニーゴを呼びかけるも、【エナジーボール】の衝突により爆煙が生まれた。爆煙が晴れた頃にはプールで目を回しているサニーゴの姿が確認された。サニーゴの様子を見た審判は大きく手を上げてコールした。

 

「サニーゴ戦闘不能!キモリの勝ち!

よって勝者はチャレンジャー、リーリエ!」

 

「やったぁ!!!やりましたよ。キモリ!」

 

「キャ…キャモ‼︎」

 

 審判の声にリーリエは大きく跳び上がった。勝負が終えたキモリがリーリエがいるトレーナーサイドに戻ると、リーリエは思いっきりキモリを抱きしめた。キモリは若干頬が赤く染まりながらも、涼しげな表情で返事を返した。

 

《観戦席》

 

「勝ったぁぁぁぁぁ!!!」

 

「コーン!!!」

 

「凄くいいバトルだった!」

 

 勝負を終えた二人に大きく拍手が巻き起こった。

 

《ジム戦》

 

「お疲れ様。サニーゴ!」

 

「サゴ…」

 

「気にしないで!よく頑張ってくれたわ。ゆっくり休んでね」

 

 サニーゴに感謝の意を伝えると、すぐに休ませてあげるようにルアーボールへと戻した。ルアーボールをしまうと、カスミは今日のジム戦で頑張ってくれたコイキングとムクバードも加えて喜び合うリーリエの元へと向かった。

 

「やるわねリーリエ。凄く楽しかったわ!」

 

「カスミ。お手合わせして頂いてありがとうございました!」

 

 互いに握手を交わすと、カスミはポケットから青く光る雫をモチーフにされて作られたバッジをリーリエの前に差し出した。

 

「さぁ!受け取って、ハナダジムを降した証のブルーバッジよ!」

 

「ありがとうございます!カスミ!」

 

 お礼を言ってカスミからブルーバッジを貰うと、そのまま天高く掲げた。

 

「ブルーバッジ!ゲットです!」

 

「ココッ‼︎」

 

「キャモ‼︎」

 

「ムックバー‼︎」

 

 こうしてリーリエは二つ目のバッジを手にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「一緒に行けたらって…思ったけどな」

 

「ごめん。アローラの水系ポケモンには興味があったんだけど、急にジムを閉めることはできないわ」

 

 その後、カノンとサトルのジム戦を終えてはその後みんなで祝勝会を挙げた翌日、リーリエ達はクチバシティへと旅立とうとしていた。

 一緒にアローラ祭に参加しに行かないかとタケシに誘われたのだが、急にジムを閉める事は出来ないと残念そうにカスミは断った。

 

「何処かでサトシにあったら、宜しく!って伝えといて!」

 

「あぁ!」

 

「五人はこれからのジム戦頑張りなさいよ!ポケモンリーグには私も応援しに行くから!」

 

「ありがとうございます。カスミ!」

 

「うん!がんばリーリエ!」

 

「がんば…リーリエ?」

 

「気にしないで下さい/////」

 

 こうしてカスミと別れたリーリエ達はハナダシティを後にした。しばらくの間、アローラのポケモンに興味を持ったソウタとノゾミも加えて一同はクチバシティへと旅立った。

 

 

 

 

 




 このお話では【ミラーコート】はゲームに基づいて書いていきました。
 正直、アニメの【ミラーコート】はチートすぎますよね(笑)

次回もお楽しみに!
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