ポケットモンスター let's goリーリエ! 作:アニポケ大好き主
ダークポケモンの調査のため【ふたごじま】に訪れたアイラ。その途中に出会ったサトシと暴れまわっているツンベアーと遭遇する。ツンベアーを押さえる事に成功したのだが、洞窟の奥から現れた謎の集団からの奇襲攻撃に襲われた。
「一体何なんだ!」
突然、攻撃を仕掛けて来た集団にサトシは問いかけた。そんなサトシに対してリーダーと思われる女は見下すような目つきでサトシを睨みつけた。
「はぁ?あんた馬鹿なの?誰だって言われてすんなり名乗るわけないでしょ〜」
答えるつもりはないリーダーの合図に他の団員たちはそれぞれのポケモン達に指示を出す。サトシとアイラに向かってポケモン達の技が一斉になって降り注ぐ。
「ピカチュウ!【エレキボール】‼︎」
「ピッカ‼︎」
ピカチュウは向かってくる攻撃をジャンプをして躱すと、ボール状に溜め込んだ電撃のエネルギーを放った。
攻撃を仕掛けて来たピカチュウを目にしたリーダーは自身のモンスターボールからポケモンを繰り出した。
「アゲハント!【ぎんいろのかぜ】‼︎」
モンスターボールから登場したと同時に相手のアゲハントは銀色に光る自身の鱗粉を乗せた強風でピカチュウの【エレキボール】を打ち消した。
「【いとをはく】‼︎」
「ピッ‼︎」
続けざまにアゲハントは糸で一瞬にしてピカチュウの身体を拘束した。アゲハントの糸で身動きが取れなくなったピカチュウはそのまま地面へと撃墜した。
「ピカチュウ!!!リザードン!【かえんほうしゃ】だ‼︎」
「グゥオオ‼︎」
ピカチュウを助けるべくリザードンに指示を出す。だが、リザードンが攻撃をするその瞬間に無数の氷柱がリザードンめがけて追撃された。不意打ちによる攻撃にリザードンはそのまま腹部にダメージを受けてしまった。
氷柱が飛んできた方へ目をやると、倒したはずだと思っていたツンベアーがより殺気を漂わしながら立ち上がっていたのだ。
「リザードン!」
「グォォォ!!!」
ピカチュウに絡んだ糸を解きながら、サトシはリザードンに呼びかける。その呼びかけに応じてリザードンは立ち上がると、鋭い雄叫びをあげた。
「よしリザードン!【ドラゴンクロー】‼︎」
あの程度の攻撃で怯むサトシのリザードンではない。そのまま龍の爪でツンベアーに攻撃を仕掛けた。だが、サトシの目にはツンベアーに接近してくるリザードンを見て軽く笑みを浮かべているリーダー格の女の素顔が映っていなかった。笑うのと同時にツンベアーの拳からはどす黒いオーラーが纏っていた。
「まさか!!!」
変な違和感にアイラは何かを察した様子でいた。慌ててサトシの方へと振り返ると、攻撃を中止するよう呼びかけた。
「ダメ!サトシ!!!」
だが、リザードンはすでにツンベアーの懐に入っていた。そしてリザードンが爪をふりかざそうとしたのと同時にツンベアーも黒いオーラを纏わせた拳をリザードンに振りかざした。
「ツンベアー!【ダークラッシュ】‼︎」
「ベァ!!!」
「グォォ!!!」
「リザードン!!!!!」
リザードンとツンベアーの攻撃が交わったその瞬間に一瞬でリザードンは後方で聳え立つ氷岩に叩きつけられてしまった。
「な…なんだ今の技は」
突然の事に驚き隠せないでいた。何よりもあのリザードンがこうも簡単にパワー負けしてしまった事とさっきまで戦闘不能寸前だったツンベアーの予想だにしないパワーにただサトシは呆然と立ち尽くしてしまった。
「へぇ〜あんた知らないの。最強のポケモンにしか使えない最強技なんだよね♡」
絶望満ちた顔したサトシを煽るように挑発すると軽くウィンクをしては次の攻撃の指示を送ろうとしていた。しかし、ただ一人。ツンベアーが使った技を見て確信したのか、怒りを露わに拳を震わせているトレーナーが一人いた。
「そうやって…また罪のないポケモン達が苦しめているのね…」
「ア…アイラ?」
「どこまでお前達は…こんな…卑劣なことができるの。そのせいで、どれだけのポケモン達が心を失い傷つき、どれだけのトレーナーが悲しんでいるのか…分かっているのか!!!」
アイラのただならぬ怒りを見てはサトシは自分が思っていた以上にあの集団がいかに非道な連中であると分かった。
そして、すぐにアイラはその怒りをぶつけるように猛攻撃を浴びせ始めた。
「ワカシャモ!【かえんほうしゃ】‼︎」
「ムウマ!【おにび】‼︎」
「シャァァァ!!!!」
「マゥ‼︎」
「ぐっ!!!」
「ぐぁぁぁ!!!」
その怒りはツンベアーにではなく、ツンベアーを苦しめた他の残党員に攻撃が向けられた。憤怒の炎に包まれた残党員はあまりの炎の勢いに前に出られないでいた。
ごめん…ツンベアー。すぐに助けてあげるから。我慢して…
「ワカシャモ!【スカイアッパー】‼︎」
「シャァァァ‼︎」
「ベェア…」
「くっ!ツンベアー!【ダークウェーブ】‼︎」
「グァァァァ‼︎」
「ムウマ!【サイコーウェーブ】‼︎」
「ムマァァァァァ‼︎」
「【つばめがえし】‼︎」
「シャア‼︎」
「ベェツツ!!!」
攻めては防いでのヒットアンドウェイで徐々にツンベアーの体力を削っていく。
「ちっ!二体同時じゃぁ…」
やはりサトシのリザードンと戦った時のダメージが残っていたのか。明らかに動きが鈍くなっているツンベアーにアイラの二体のポケモンによる攻撃に押されてしまっている。すぐに他の手持ちで応戦しようと、別のモンスターボールを手に取ろうとしたその時、アイラの左腕にある装置を見ては急に敵の女の顔色がだんだんと青くなってきた。
なんで、あの女があの装置を…
このままではまずいと思った矢先、すぐに残党員の方へと指示を出す。
「あんた達!加勢しなさいよ!」
「「「おおおおお!!!!!!」」」
命令の元、すぐに残党員は残りのモンスターボールを手に一斉に投入しようとした。それを見たサトシはすぐに別のポケモンを繰り出してはそれを防ぐ。
「ベイリーフ!【はっぱカッター】だ‼︎」
「ベーイ!!!」
ベイリーフの攻撃はモンスターボールを投入しようとした残党員に向けて放たれた。ベイリーフの攻撃に、足元が不安定な氷の道に足を滑らせては残党員の動きを封じた。
「サトシ⁉︎」
「アイラ!こいつらの事は俺たちに任せてくれ!」
「ありがとう!サトシ!」
残党員の方はサトシに任せてアイラはツンベアーとの戦いに集中した。
「ワカシャモ!【でんこうせっか】‼︎」
「シャア‼︎」
「【かえんほうしゃ】‼︎」
【でんこうせっか】でツンベアーの腹部を攻撃してバランスを崩す。そこを効果は抜群の炎タイプの攻撃を浴びさせる。怒涛の【かえんほうしゃ】の威力にツンベアーはそのまま後方へと吹き飛ばされた。
「今だ!行けっ!!!」
次にアイラは利き腕でない方の左手でモンスターボールを握りしめた。すると、左腕に装着された装着が起動し始めると、神々しく左手に握りしめられたモンスターボールが輝き始めた。急いでツンベアーを戻そうと慌てるものもう遅かった。ツンベアーに目掛けて投げられた輝くモンスターボールはそのままツンベアーを捕らえた。捕獲のカウントダウンが始まらないまま、ツンベアーを捕らえたモンスターボールはアイラの手の中へと収まった。
「スナッチ完了!」
その光景に敵の残党員だけでなく、サトシも驚いていた。そのはずだ。アイラが捕獲したツンベアーは紛れもなく野生ではなく、敵側のポケモンであったからだ。
「きぃぃぃぃぃ!!!退却よ!退却〜!!!」
敗北を確信した後、残党員を連れて奥の方へと走り去っていく。
「待て!!!」
その後をすぐにアイラはワカシャモ達を戻すと後を追いかけていく。すぐにサトシもリザードンとベイリーフを戻してはアイラの跡を追う。暗い洞窟を抜けていくと島の外へと出て行った。敵の姿を探そうと辺りを見渡したのだが、冷気によって冷やされた空気によって生み出された霧が視界を邪魔をしているため姿を捉えることができなかった。
敵の逃亡を許してしまった事でアイラは悔しさのあまりその場で崩れ落ちてしまった。砂浜の砂を握りしめている様子にサトシはアイラに声かける事ができなかった。
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クチバシティのポケモンセンターへと戻ってきたアイラとサトシはポケモン達をジョーイさんに預けた後、すぐに国際警察本部へと連絡をかけた。
『ご苦労だったな。アイラ』
「ですが、すみません。幹部と思わしき人物の確保には至りませんでした」
『いや、奴らはふたごじまのポケモン達をダーク化させていたのかもしれない。それだけでも被害を抑えることは出来たものだ』
アイラは深々と下ろした頭を上げると、もう一度、謝罪の言葉を発した。
すると、アイラの後ろから何処か聞き覚えのある声がした。
「お久しぶりです。ハンサムさん!」
『おぉ!サトシくん!そうか君もアイラと一緒に食い止めてくれたのか!』
その人物を見たハンサムの目は見開いた。彼は幾多の難事件にも共に行動した事がある人物でいたからだ。
サトシも久しぶりに再会出来た事に喜びを感じていたのだが、それよりも今日あった事についてどうしてもサトシはアイラとハンサムに説明してもらいたかった。
「アイラ!ハンサムさん!そのダークポケモンって何なんですか?」
やはりと悟ったハンサムにアイラも下唇を噛み締めては目線を下にやる。そんなアイラの気持ちも分かっているが、見てしまった以上は説明しない訳にはいかなかった。
『ダークポケモン。ひと呼んでポケモン戦闘兵器。心を壊して感情を無にしたポケモンの戦闘能力を極限にまで上げて、ただ襲わせるためだけに使わされるポケモン達のことなんだ』
「心を壊す…戦闘兵器化したポケモン…」
その言葉にサトシは驚愕した。これまで旅の中でもロケット団やポケモンの売買を繰り返す密漁団であるポケモンハンターみたいな悪の組織と対面した事は何度もあった。だけど、これは非常すぎる。ポケモンの心を壊す事を平気にやってのけるその集団にサトシは怒りを通り越して呆然としてしまった。
それは相棒のピカチュウにも伝わっている。サトシは一旦呼吸を整えた。
「なぁ、アイラは其奴らを追っているんだよな」
「えぇ…」
決意を固めたサトシはアイラにその意を語る。
「俺にも手伝わせてくれないか」
「えっ…」
「俺!いままで他の地方を旅をして、ロケット団みたいな悪の組織やポケモンハンターとも戦って来た。だけど、ハンサムさんの話からは其奴らのやっている事はあまりにも酷すぎる。ポケモンを戦闘兵器に…感情を消すだと…よくもそんな事を平然としてやれるものだよ!こんな話を聞いて黙っていられないぜ!」
「ピカチュ‼︎」
ダークポケモンの悲劇。そしてその悲劇が自分の生まれ故郷に差し伸べられいると知ってしまった以上は何もしない訳にはいかない。ピカチュウも両頬の電気袋から電力を発光させながらサトシと同じ思いである事を示した。
『サトシ君の実力はわたしも保証する。できる事なら私からもお願い…』
これまでサトシと共に悪の組織と対峙してきたハンサムはサトシの協力には賛同する。だが、その意見をアイラに告げた途端にハンサムの声を遮るようにして
「許せません!!!」
ポケモンセンターにいるトレーナーが一斉にサトシ達に集中が集まるぐらいの大きな声でサトシの意を強く否定した。
「アイラ?」
否定されたよりもアイラの気迫にサトシは驚いた。息を荒くしたアイラは落ち着くと鋭い目つきでサトシを睨んだ。蛇睨みを受けたかのようにサトシの身体は硬直した。背中から感じる寒気と頬から浸る冷や汗をかくサトシの前をアイラは一歩ずつ踏み込んで顔を覗かせた。
「たしかに貴方は強い事は認めるよ。だけどね…そんな正義感だけで協力を要請するのはやめてくれない」
声が出ない。アイラの危機迫る表情に尻込みしてしまった。それはモニター先のハンサムも同じだ。
「私の出身聞いたわよね。オーレ地方って。サトシは聞いた事あった?その地方の名を」
「えぇぇと…」
「知ってるわけないよね。オーレ地方こそがダークポケモン発祥の地。その事件のせいで他の地方とも隔離された地方なのよ。ジムもなければポケモンリーグも開催されない。ポケモン協会もオーレ地方だけは他の地方とは全く別のものと避けているのよ!」
だんだんと震えていく右拳を左手で抑えながら、サトシに言い放つ。
「ダークポケモン達の恐ろしさも何にもわかってない癖に…一緒になって戦うなんて言わないで!」
言い切ったアイラはサトシに背を向けると、ジョーイさんに預けたワカシャモ達を引き取りに向かった。そんなアイラをサトシは引き止めた。引き止めたアイラはサトシを睨み返すと、さっきとは違って真剣な眼差しで見つめてきたサトシに驚いた。
そして今度はサトシの方から一歩ずつ歩み寄って行くとモンスターボールを片手にアイラに向けた。
「だったら、アイラに実力を見てもらえばいいんだな」
「えっ?」
サトシの取った行動に戸惑ったが、彼が何しようとしているのかはすぐに理解できた。
「アイラ!俺ともう一度一対一のポケモン勝負をやってくれ。口だけじゃない!俺達の覚悟を見せてやる!」
「…分かったわ」
サトシの言葉にアイラは承諾した。二人はそのままハンサムとの通信を終えると、バトルフィールドへと向かって行く。両トレーナーサイドに立った二人。先にアイラがポケモンを繰り出した。
「私はこの子で行くよ!」
「マァァァンダ‼︎」
モンスターボールから飛び出したのは、ふたごじまで見たポケモンではない。赤い翼を広げて大空へと滑空する。
「ボーマンダか…」
ボーマンダに対して同じく空を飛ぶリザードンを出したい場面であったが、回復したとはいいリザードンはツンベアー戦で疲れ果てている。リザードンを引っ込めたサトシは別のモンスターボールを握りしめると勢いよくフィールドへ放った。
「ゲッコウガ!君に決めた!!!」
「コゥガ‼︎」
モンスターボールから解き放たれるとゲッコウガは腕を組み直立した状態でボーマンダを睨んだ。
「ボーマンダ!【りゅうのはどう】‼︎」
「ゲッコウガ!【みずしゅりけん】‼︎」
二人のポケモンが出揃った直後、バトル開始の合図を送らないまま二体の攻撃が放たれた。そのバトルを見にきたトレーナー達には二つの技の衝撃波が身体中に走る。そして感じる。
誇りをかけた。強者同士のバトルが始まったと…
番外編は次で最終回となります。