ポケットモンスター let's goリーリエ! 作:アニポケ大好き主
カントーの港町クチバシティ
朝早くから一隻の船が入港した。大勢の人が荷物を持ちながら続々とカントー地方へと入国して行くと、その中から四人の少年少女も初めての他国に胸を躍らせていた。
「ねぇ!あっちの方で凄い歓声が上がってない⁉︎どんな人がバトルしてるんだろ!」
「アーマイ‼︎」
「ヴェラ火山のような燃えるバトルか!確かに気になるな!」
「ガァメェス‼︎」
「ダメだよ二人とも!今はアローラ祭の準備をしないといけないんだから、まずはこっちが優先だよ!」
「モギュュ‼︎」
「そうそう!リーリエもこっちに向かってるんだから、早めにやらないといけないよ!」
「アウアウ‼︎」
「「は〜い…」」
バトルを見学できずに残念そうな二人を引っ張って、四人はアローラ祭の準備に取り掛かっていく。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その気になるバトルはあっという間に人盛りで埋め尽くされていた。あまりの人数に後方では背伸びをしながらも、なんとかこれから始まるバトルを観戦しようとするトレーナーもいた。
大勢のトレーナーに注目される中、二人のトレーナーによるバトルが始まろうとしていた。
「ボーマンダ!【りゅうのはどう】‼︎」
「ゲッコウガ!【みずしゅりけん】‼︎」
二体の同時攻撃は互いを打ち消しあった。さらに発生した爆煙がフィールド場を包み込み始めた。辺り一面に広がる爆煙はフィールドおろか観戦しに来たトレーナーをも呑み込むほどであった。
「【つばめがえし】‼︎」
「コゥガ‼︎」
その爆煙を払うようにして、ゲッコウガは一直線に飛んでいるボーマンダに向かって飛び出した。
ゲッコウガの攻撃はボーマンダに命中する。だが、アイラは技を決めたゲッコウガの着地するの瞬間を見逃していなかった。
「ボーマンダ!【かえんほうしゃ】よ‼︎」
「ダァァ‼︎」
「くっ!あの状態から攻撃に移せるのか!」
空中で上手く回避できないゲッコウガにボーマンダは燕返しのダメージに絶えながらも、すぐにゲッコウガに火炎放射を放った。
アイラのボーマンダの咄嗟の切り替えに驚きながらもサトシはすぐに指示を出した。
「ゲッコウガ!【みずしゅりけん】‼︎火炎放射を防ぐんだ!」
「コォウガ‼︎」
サトシも水手裏剣で応戦させたのだが、その行為が裏目に出てしまった。
再びぶつかり合う両者の技により生まれた衝撃波にゲッコウガはそのまま押し出されてしまい、フィールド上に強く体を叩きつけられてしまった。
「今よ!【すてみタックル】‼︎」
「ダァァァ‼︎」
立ち上がるゲッコウガよりも先にボーマンダは一気に急降下すると、そのまま突進していく。
「コゥガァ!!!」
「ゲッコウガ!!!」
身体中にパワーエネルギーを溜め込んだボーマンダの体当たりはゲッコウガを捕らえた。自らの命を燃やすようなエネルギーを放った捨て身の体当たりにゲッコウガは吹き飛ばされてしまった。
ボーマンダはというと、反動によるダメージを振り払いながらもう一度、ゲッコウガ目掛けて突進する。
「ゲッコウガ!【かげぶんしん】‼︎」
「【かえんほうしゃ】で薙ぎ払って‼︎」
危険を回避するためにゲッコウガは複数の分身を作り出した。しかし、ボーマンダは関係がないように火炎放射で全ての分身を打ち消してしまった。
「くっ!【みずしゅりけん】‼︎」
向かってくるボーマンダに水手裏剣を放つ。その攻撃はボーマンダに命中するが、ドラゴンタイプには水系攻撃は効果はいまひとつ。何事がなかったかのようにボーマンダはゲッコウガとの距離をさらに詰めていく。
「【すてみタックル】‼︎」
「【つじぎり】‼︎」
再びボーマンダの力一杯の突進をゲッコウガは常闇のエネルギーを放つ刃でボーマンダと迎え撃った。だが、ボーマンダの特性の《いかく》の影響もあったか、ゲッコウガはそのままボーマンダとの押し合いに敗れてしまった。
吹き飛ばされたゲッコウガの安否を確認を図るサトシの声にゲッコウガは左肩を支えながら、ゆっくりと立ち上がった。
「これが…アイラの本気」
アイラとボーマンダの猛攻撃にサトシとゲッコウガの顔が次第に曇ってきた。
アイラとポケモン達の強さもそうだが、サトシはふたごじまで戦った時と明らかに違う雰囲気が漂わせている感じがした。その証拠にアイラは楽しんでバトルをしているよりも、目の前の敵を全力で叩き潰しに行くような真剣な眼差しでサトシとゲッコウガを睨んでいた。
ひたすら攻撃を仕掛けてきたボーマンダの疲れと同じぐらいアイラも少し息を荒らし始めていた。ゆっくりと呼吸をした後、口を開いた。
「オーレ地方はね。ポケモンバトルが盛んな地域が有名でね。他の地方からも腕試しによくトレーナーが訪れていたの。そりゃもう毎日がお祭りみたいなものだったの…」
「いつかはポケモンジムやポケモンリーグも建設してオーレ地方の魅力をもっと多くの人に見てもらいたいと思っていたのに…」
拳を少しずつ震わせながら悔しそうにアイラは話を進めた。しかし、それとは反対にその声は何処と無く弱々しいものでもあった。
アイラの怒りと悲しげな感情が伝わったのか、サトシもゲッコウガも構えるのを止めるとバトルを忘れてるみたいにアイラの話を聞き始めた。
「それがだんだんとエスカレートして、スポーツとしてでなく、決め事や賭け事にもポケモンバトルで型を付けるようになってからは弱肉強食の世界へと変貌した。強い者が偉い!強い者が正義だ!弱者は逆らうな!弱者はずっと這い蹲ってろ!」
感情が爆発したかのように、徐々に声を荒らし始めてきたアイラ。すると、胸ポケットから輝しく放つ大きな宝石をぶら下げたネックレスを取り出すと前に差し出した。
その宝石に見覚えがあったサトシとゲッコウガは一気に緊張が走った。
「勝つ事に執着したトレーナーの末路がダークポケモンを生み出した!それを生み出したのはシャドーっていう最悪組織!だけど!オーレのトレーナーのみんなはダーク化のリスクを知っていながらも自身のダークポケモン化を受け入れた。もうオーレのトレーナー達はポケモンを一つの生き物っていう認識がなくなったの…」
その声の反応したかのようにさらに光り出すキーストーンとボーマンダに持たせてあったメガストーンが一気に光り出した。
「全ては支離滅裂な欲望のせいよ!シャドーが一度滅んだのに感謝どころか妬みを言う者の方が多かった!それを見て私は絶望した!復興して町は戻っても人の心はそう簡単に戻らない!ダークポケモンはいなくなったけど、ダークトレーナーは増えてきた!もうオーレは救われないのよ!」
涙目になりながらも叫び続けるアイラをサトシは口を固く閉じながら、アイラの悲痛な感情を受け止めていた。
そして、キーストーンの光とメガストーンの光が結び始めると、ボーマンダの身体が一気に光り出した。
「それが…カントー地方にも同じ事が起きようとしいる…させる訳にはいかない。私は!!!」
「ボォォォォ!!!!」
「救えなかったオーレのためにもこの地方を守ってみせる!もう!ダークポケモンをこの世から完全に消してやる!!!!」
光の強さが最高潮に達したメガストーンの光がフィールド一面に光り輝いた。アイラの募る感情の強さを表現しているかのようで、その光りは目を開けられないほどの眩しさを放っていた。
そして、アイラとボーマンダの叫びが響き渡った。
「ボーマンダ!メガシンカ!!!」
「ダァァァァ!!!!!!!」
紅い三日月の如く。進化のエネルギーによって艶に磨きがかかるボディーをボーマンダは空を切り裂いた。その姿をサトシにゲッコウガ。そして、観戦トレーナー全員を魅了させるほどの力強さを表していた。
「これで止めよ!ボーマンダ!【りゅうせいぐん】‼︎」
右手を大きく空に向かって指したアイラの合図とともに、ボーマンダはエネルギー砲を一気に空高く打ち上げた。
打ち上げられたエネルギーは花火のように散乱すると、流星群のように一気にゲッコウガ目掛けて降り注がれた。迫り来る無数のエネルギー弾に観戦トレーナーの誰もがバトルの終焉を予感していた。
サトシとゲッコウガも迎え撃つどころか躱す気もないまま、ただ目線を下の方へ向けながら呆然と立ち尽くしていた。
しかし、それは決して勝負を諦めたという訳ではなかった。
本当に安易な答えだったよ。
自分の想いを貫こうとするだけで、アイラのダークポケモン対する気持ちや自分の生まれ故郷に対する気持ちを考えてもいなかった。
考えていなかったけど…
だけど…これだけは言える
サトシとゲッコウガは同時に顔を上げた。勝負を諦めた者ではない。その力強く真剣な眼にアイラはサトシとゲッコウガに対して一瞬、恐怖を覚えた。
そして、またサトシもありったけの声でアイラに今の自分の気持ちをぶつけに行ったのだ。
「俺もアイラと同じだ!ポケモンが好きだからこそ俺も救いたい!自分の生まれ故郷だからこそ守りたいんだ!悲劇を繰り返したくないアイラの気持ちも分かっているつもりだ!だから俺もその気持ちに応える!俺たちの全力でその想いを伝えてみせる!」
アイラと同様。サトシは右拳を高く天へと上げた。そして、その動きにシンクロするかのようにゲッコウガもサトシと同じポーズを取った。
そしてゲッコウガの目がメガボーマンダの紅い翼と負けないぐらいの紅い眼を放つと、とてつもないパワーを解放した。
自分の想いと覚悟は口だけじゃない。それはこのバトルで…
応えてやるぜ!!!!
「行くぞ!!!!ゲッコウガ!!!!フルパワーだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「コォウガァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!」
サトシとゲッコウガの雄叫びと共にゲッコウガの力が大きな水流の渦を纏いながら一気に吹き出された。不思議な事にその光景を目の前にしたアイラにはサトシとゲッコウガが重なり合うかのように見えていた。
さらに水流の渦がゲッコウガの背中に集まると、大きな水手裏剣へと形成し始めた。
そして、明らか姿が変わったゲッコウガにアイラは驚愕した。その姿はまるで…
サトシと瓜二つのように見えた。
「ゲッコウガ!【つじぎり】‼︎」
「マァンダァァ!!!」
「ボーマンダ!!!」
えっ…何⁉︎ 嘘…いつの間に
サトシの指示と同時にゲッコウガの姿が一瞬にして消えた。そして気がつくと自分のボーマンダがゲッコウガの攻撃を受けていた。
忍びポケモンだからという訳ではない。ゲッコウガの姿に気を取られていた訳でもない。瞬間移動したかのようにボーマンダへ移動したゲッコウガのスピードにアイラは何が起きたのか分からなかった。
「くっ!【かえんほうしゃ】‼︎」
「【みずしゅりけん】‼︎」
ボーマンダの火炎放射にゲッコウガは一回り大きくなった巨大水手裏剣を放った。放たれた技は再び交わると発生された水蒸気により二体のポケモンは包み込まれてしまった。
煙が晴れるまで待つしかないみたいね…
晴れた瞬間に一気に攻撃を仕掛けようと、ボーマンダとゲッコウガの姿が見えるまでアイラは静かに待つ事にした。
「そこだ!!!ゲッコウガ!【みずしゅりけん】‼︎」
「コウガァ‼︎」
「えぇ!!!」
ゲッコウガの水手裏剣が決まるとボーマンダは爆煙の外へと放り出されてしまった。
「互いのポケモンが見えていないのはサトシも同じはずなのに何で!あんな事…ゲッコウガと同じ視線でいないと分からないはずなのに!」
同じ…視線…
まさか…サトシにはゲッコウガの見ている光景が見えているというの…
改めてサトシの方を見ていると、サトシとゲッコウガは同じ構えを取っていた。それに【つじぎり】や【みずしゅりけん】を指示した時も自分も一緒に戦っているようにゲッコウガと同じ動きをしていた。まさかと思うが、アイラにはサトシとゲッコウガは完全にシンクロしている様に感じていた。
「ボーマンダ!【すてみタックル】‼︎」
「ゲッコウガ!【つばめがえし】‼︎」
ボーマンダの追撃にゲッコウガは迎え撃つ。ゲッコウガはボーマンダの体当たりをギリギリ惹きつけてから、まず下に潜り込む。そして右拳で腹部に攻撃を決めると、そのまま左拳、右脚、左脚と連続攻撃でボーマンダを打ち上げた。
「ゲッコウガ!【みずしゅりけん】‼︎」
打ち上げられたボーマンダの上に瞬時に移動すると、そのまま巨大水手裏剣を叩き込んだ。ボーマンダはそのまま地面に向かって落とされたのだが、左右に大きく首を振ると砂煙を払いながらゲッコウガを睨みつけた。
「来るぞ!ゲッコウガ!!!」
「コォウガ‼︎」
あの猛攻に耐えたボーマンダにサトシはすぐにゲッコウガを構えさせた。両者の糸口を探り合う状況と思いきや…
「お疲れ!ボーマンダ!」
「え…」
ボーマンダのメガシンカが解けたすぐにアイラはボーマンダをモンスターボールへと戻した。一対一のバトルなためポケモンの交代はない。まだ、十分に戦えるボーマンダを戻したアイラにサトシは目が点になる。そんなサトシにアイラはさっさとサトシの元へと駆け出した。
「強いねサトシ!私達の負けだわ!」
「えっ、でも…」
「それよりも何よ!サトシのゲッコウガは!!!メガシンカじゃないわよね!本当に君は面白いトレーナーだよ!」
「えっ…えっと、ア…アイラ?」
「ピカ…」
「コォウ…」
さっきとイメージと違うアイラに両手を握られながらもサトシは戸惑ってしまった。そう感じたのはピカチュウもゲッコウガも同じだった。
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「というわけで、サトシにもダークポケモン調査のお手伝いをさせて頂こうと思います♪」
『お…おお!そうか。それではサトシ君よろしく頼むぞ!』
「はい!」
「ピッカ‼︎」
人が変わったかの様に和かな表情で語るアイラにハンサムも戸惑いを隠せないでいた。まぁ、何事かあれ。サトシの実力をアイラは認めたのは確かな様だ。
「じゃあ、これを渡すね!」
するとアイラは複数のモンスターボールをサトシに渡した。だが、その渡されたモンスターボールは今まで見てきた物とは違う不思議な構造をしたモンスターボールだった。せれをまじまじと見ていたサトシにハンサムが切り出した。
『それは国際警察部隊が開発したスナッチマシンを元にして改良した。スナッチボールだ!』
「スナッチボール⁉︎」
初めて聞く名前にさらに思考が止まっていくサトシにアイラは続けた。
「サトシはふたごじまで私が彼奴らのポケモンをゲットしたのを見たでしょ」
それを聞いてサトシは思い出した。あの時に出会った普通とは違う凶暴性があったツンベアー。ふたごじまで遭遇したトレーナーの指示を従っていたためトレーナーのポケモンであったのにアイラはそのツンベアーをゲットした。
そう、人のポケモンを別のモンスターボールでゲットすることができないのにアイラはそれを目の前でやった。
アイラはあの時、左手に装着されたマシンをサトシの前に出すと、他の人の目を気にしながら小声でサトシにこう話した。
「察しの通りよ!そのボールは他人のポケモンを奪うことが出来るボールなのよ。そしてこれが私がつけていたこのスナッチマシン。モンスターボールをスナッチボールに変える道具なの」
アイラの話からスナッチマシンは元々はオーレにいた組織【スナッチ団】が開発した物であったという。
スナッチマシンは人からポケモンを奪うという悪の目的で作られたマシンだけど、今はすべてのスナッチマシンは国際警察本部に回収されて今はそういう悪い奴からポケモンを助ける物として使われているという。
「つまり、このボールで彼奴らによってダーク化されたポケモン達を助けることができるんだな!」
『そう!だから使うときは他のトレーナーの目には十分に注意してくれ!奪われてしまったら、それこそ大問題だからな!』
ハンサムの言う通りそれがロケット団の耳にでも挟まれでもしたら一大事になる。そんな危険な事に首を突っ込んだ事を改めてサトシはその責任の重さを自覚した。
『それじゃあ、二人とも!共にダークポケモン調査をよろしく頼む!』
その意思表示を示す様にサトシはピカチュウと一緒に敬礼した。
「ウルトラジャー!!!」
「くっ///」
「くっ///あははは!!!何サトシそれ!超ウケるんだけど///」
「いや〜これは…その…」
アローラでのウルトラビーストを調査した時に発した台詞を思わず言ってしまった事にサトシは静かに赤面するのであった。
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「じゃあ、何かあったら私のポケギアに連絡して!」
「分かったよ!アイラ」
ここでアイラと別れて調査に当たる事になった。
「サトシって、今いくつ?」
「十六だけど…」
「ふ〜ん♪」
サトシの歳を聞いたアイラは小馬鹿にした表情でサトシを見つめた。
「ふふっ///年下ね!それじゃあ、頼んだよ!後輩君♡」
そう言うと、アイラはボーマンダに乗って西の方へと移動した。
「よし、行くか!ピカチュウ!!!」
「ピッカ‼︎」
アイラを見送った後、サトシの掛け声と共にピカチュウと一緒に走り出した。
微かに照らす光の一つになるべくに
サトシはカントー地方に迫り来る闇の渦へと飛び込んで行く。
番外編はこれにて終わりとなります。
本編でのサトシとアイラの登場もお楽しみください。