幼女戦記INリリカルなのは   作:路地裏の作者

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元ネタがなのは二次だと聞いてw妄想が止まらなくなっての投稿です!勢いだけで一気に書き上がってしまったぜ……!


再びの戦場~第一次海鳴戦線

(……)

 

 白い。なんというか、白い。それにどこか神聖な雰囲気すら漂っている。

 

(…………)

 

 ああ、気づきたくない。一切合切、何があろうとも、気づきたくない。漸く、よ・う・や・く!どこかの正体不明、分類不可、狭量で独善な誰かさんに強制された、第二の人生が終わったのだ。後はもう、眠るだけであろう。自分、頑張ったよね?もうゴールしてもいいよね?

 

(………………)

 

 だというのに、意識が切り替わり、暗転する予感は一切しない。仕方なく、そろそろ~、と薄目を空けると――――

 

 なんというか、何十年も前に一度来たことがあるような白と光に包まれた光景が広がっていた。

 

(……また、ここか)

 

 ああ、クソ。分かっていたさ。以前もそうだったのだ。死後の自分の魂を、無理やり略取し、監禁し、さらには見知らぬ土地に放り出すという暴挙に出た、あの――――

 

「……嘆かわしい。相も変わらず信心の足りぬ輩よ」

「存在、エェックスゥウゥゥゥゥッ!!」

 

 怨敵であり、仇敵であり、宿敵である悪魔的存在が、目の前に現れたのだ。だから出会い頭に、問答無用で爆裂術式を叩き込んでも許されると思うのだ。情状酌量の余地は十分にあると愚考する。

 

「……言いたいことは、それだけか?」

 

 だから、こちらの胸中を読むな。だから、こちらの攻撃を止めるな。というか、当たっとけ!空中で術式が停止するとか、どんなペテンだ!!

 

 ……おい、溜息を吐くな。首を横に振るな。疲れた感じを出しても、私は一切貴様に同情心を抱かないぞ?そもそもあんな面倒事に私を巻き込んだのは、貴様だろうが!

 

「神たる我が、せっかく信仰心の目覚めを期待して、魔法の世界で、女に生まれ、戦争の中で追い詰められるよう苦心したというのに……」

 

 それで信仰心を抱くのは、最初から神を信じていた狂信者か、戦争好きのウォーモンガーだけだ。むしろ『神は死んだ』という言葉の意味を、これ以上なく理解した!生命の値段が、銃弾一発に換算できる世界だったぞ!?

 

「そのような地獄を味わっても、未だ改心せぬとは……これは再び、どこぞの世界へ落とさねばダメか?」

 

 ……よし待て!落ち着こう!まずは会話を行おうじゃないか!相手の目を見て対話することは、相互理解の第一歩だ!!だから待て落ち着け話せばわかるだから思いとどま――――……

 

「黙れい! 貴様は再びかの世界にて、女として生まれ、戦場を駆け巡るがよい!!」

「クソッたれがぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 …………そうして、私はこの世界にて再び生を受けた、という訳だ。

 

 あ゛あっ!今思い出しても腹が立つ!生まれ出でて見れば、かつての故郷、極東の島国に余りによく似た『秋津島皇国』!いや、戦後は国名が変わっているのだったか?とにかくそこだ!戦後の混乱から見事に立ち直り、世界に名だたる経済大国として存在している。それ自体は嬉しい。おかげで文明大国で、戦争に関わらずに過ごすことも出来よう。

 

 だが、またもや孤児でのスタートとは、一体何の冗談だ?それも今回は孤児院の目の前ではなく、ありふれた一般家庭の目の前に捨てていくとは何事だ?その上、何故かその民間人の一般家庭の物置に、彼らの曽祖父がどこかから手に入れたとかいう、私の帝国時代の装備一式(・・・・・・・・・・・)が置いてあったのは、本当に何の配剤だ!

 

 ……いや、実行犯は分かっている。またぞろ貴様なのだろう、存在X!その要らぬ手回しのおかげで、戸籍的には彼らの養子なのにゲルマン系の顔立ちだった私は、またもや前世と同じ名前をいただくという事態に陥ったぞ!

 

 そうして生まれてから数年。私が拾われる数か月前に誕生していた、八神家の第一子を義理の姉として敬いつつ平穏な日々を過ごしていたのに、ある日両親が事故死。その上幼い私たち姉妹の後見を請け負った人物は、一度も姿を見せず表向き健全に援助を続けるという怪しさ。前世で培った危険察知能力が、全開で警鐘を鳴らしていた。

 

 そんな不安な日々から数年、姉の足が突如として動かなくなった。掛かりつけの医師の他に、私個人でも診てみたが、どうにも魔力欠乏による四肢の麻痺が疑われる。姉の私室を調べたら、これ見よがしに鎖が巻かれた本が置いてあったことだし。

 

 ……存在Xよ、そうまでして私を不幸のどん底に落としたいのか?しかも今回は、仮にも同じ家で姉妹として育っただけの一般市民が巻き込まれているのだぞ?性格も性根も、もはや矯正不可能なほどにねじ曲がった私を、それでも家族として受け入れてくれている善良な一般市民だぞ?

 

 よろしい――――ならば、戦争だ。貴様がこの国、この街、この家に降り注いでくるであろう、ありとあらゆる不幸を、災禍を、害悪を、私が全て叩き伏せてくれる。

 

 ……そんな決意を抱いていたというのに。

 

「だからと言って、これは無いだろう?!」

 

 現在私は、全速力で故郷たる海鳴の街上空を飛行中である。ことの起こりは、数日前から自宅近辺で断続的に感じるようになった巨大な魔力反応である。これが自宅のすぐ近くであったなら放置しなかっただろうが、高級住宅地の方だったり、山の中だったりしたため放置した。それが今朝になって、あのクソッたれの存在Xが、事件の詳細を伝えてきたのだ。

 

 …………なんでも、たった一個の暴走でも街一つくらい消し飛ばす不良品の魔力結晶体が、宇宙人だか異世界人の手によって、この街にばら撒かれたとのこと。その数、なんと21個。

 

「クソッたれのファッキンゴッドの存在Xに、災いあれ……!」

 

 すでに現地では、ばら撒いた張本人である異邦人が、結晶体によって作られた怪物と交戦中とのこと。なお結晶体は、直近の魔力をその裡に吸収し、暴走の危険性を高めるとのこと。現地で何故かお互いに張り合って交戦中の異邦人の集団により、その暴走の可能性は徐々に高まっていること……。

 

 ああクソッ!!この国はかつての我が祖国たる帝国と違って、魔導師の有用性が大して認められていないのだぞ!?こんな緊急事態に対し、即応出来る魔導師部隊など存在するはずもない!私が自ら、回収に赴かねばならないではないか!!

 

 戦闘可能最大速度で飛ぶこと暫し。ようやく目の前に件の異邦人が確認できた。人影は、三人。好都合にも一か所に固まってくれている。

 

「っ、ぐ、ぁ、はぁあぁぁぁ……。『我、神に祈らん。主よ、祖国を救い給え』…………」

 

 存在Xへの最大限の呪詛を込めて、その御名を賛美する……ああクソ。何が悲しくてあのクソッたれを讃えなければならんのか。どうして私の所持品であるはずなのに、『九七式演算宝珠』が入っておらず、『九五式演算宝珠』しかセットになっていなかったのか。そんなに私の精神を蹂躙したいか!?

 

 神への賛美で、久方ぶりに宝珠が目を覚ます。懐かしき奔流、懐かしき感覚。魔力が流れとなり、この身を包む。……ああ!私は再び戦場(・・)へと帰って来てしまった!

 

「ッ、ィヒッ!!」

 

 こちらに気付かれる前に、広範囲を焼き払う爆炎術式を手持ちの小銃より三連射。直前で気付かれ、真ん中の黒いのが他の二人を押しのけた。爆発。いや障壁で防がれた。間違いない。この少年兵が、敵の主力だ!

 

 即座に、魔力刃を銃剣に展開。近接戦闘へと移行する!

 

「っ、止まれ! 君は、何者だ! 我々は時空管理局の――」

 

 そんな組織は聞いたことも無いし、本当に異邦人であるならば、この世界の人権を保有している可能性も無い。つまりは、その身柄に斟酌してやる謂れも無い!!

 

「ウェヒヒィッ!!」

 

 一切足を止めず、展開した障壁ごと渾身の斬撃を叩き込んでやる。バヅンと固いものが断ち切られる音が響き、その少年の左腕(・・)が、肩口から宙を舞った。

 

「――――ッ?! う゛、わぁああああああああああああああああああああああぁぁぁぁ!?」

 

 傷口から一瞬噴水のように血が噴き出し、鉄臭い臭いがあたりに立ち込める。……懐かしい臭い。血と硝煙と、糞尿の混じる吐き気のする臭い。正しき『戦場』の臭いだ。

 

「……貴様らが、祖国の土を土足で踏み荒らした異邦人だな?」

 

 たった今腕を落とした黒いのが一人、同い年位でレオタードのような衣服を纏ったのが一人、真っ白なワンピースを纏ったのが一人。後はイタチと狼が一匹ずつ、か。

 

 こちらの誰何に、何らの反応も無い。その癖、武装解除するわけでもない。沈黙は、肯定と受け取ろう。今現在を以て、目の前のこいつ等は全員敵性勢力だ。一様に顔を青く染めているようだが、新兵か。運が悪かったな。

 

 ……ああ!戦果は選り取り見取り!これで無給でなければ、文句無しだったものを!

 

「――――初めまして、我が怨敵。只今を以て、諸君らは殲滅すべき我が敵性勢力に決定だ。なに、遠慮することはない。――さあ! 糞のような『戦争(・・)』を始めよう!!」

 

 その少女の名は、『ターニャ・(デグレチャフ)・八神』。後に、『夜天の悪魔』、『戦場の妖精』など様々な二つ名で呼ばれることになる、管理局史上最凶最悪の魔導師は、こうして歴史の表舞台へと上がったのだった。

 




なお、この後彼女は管理局執務官への暴行・傷害・殺人未遂で捕まりかける件ww

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